今でも地球温暖化はそんなに深刻な問題じゃない、とか、あれはウラに欧米の「陰謀」が隠されているという人がいます。確かに二酸化炭素排出量だけが政治問題化して、なんとなくウンザリ感がなきにしもあらずですが・・・。
しかし、二酸化炭素排出量の増加が海の「酸性化」を招き、サンゴが死滅し始めているとなると、やはりちょっと不気味です。物事は、やはり最悪のことも考えておくべきかも。
IPCC(気象変動に関する政府間パネル)の報告書では、最悪の場合、地球表面の平均温度は今世紀末には1990年に比べて6.4度上昇するとしています。しかし、専門家の間では、もっと早く温暖化するという説もあります。
現在、海や陸地は私たちが放出した炭酸ガスの約半分を吸収しています。このため海の酸性化が進み、2050年くらいになるとプランクトンが減少し光合成の能力が落ちるそうです。
また、陸地では森林や土のバクテリアの炭酸ガス吸収能力が落ち、逆に放出する方向に変わります。これが温暖化を加速することになります。
そして、北極海氷が急減して温暖化を加速させ、ツンドラを融かすといいます。
結果として、人間の努力によっては温暖化を統御できない域に達する、といいます。
さらに、メタンガスの問題があります。北シベリアだけからでも、ツンドラが融けて年間380万トンのメタンガスが放出されています。2050年までにツンドラの半分が融けて消失するとの予測もあります。
温暖化の進行を放置すれば、さらに海に溶けているメタンハイグレード(メタンガスが閉じ込められた塊)が不安定化して、メタンガスが大気中に吹き出してくる可能性もあるそうです。
今は緩やかな温暖化が、やがて暴走の引き金を引いてしまう可能性がある、と山本良一・東京大学生産技術研究所教授は語っています。
http://recruit.polyplastics.com/rec2010/network/professor/prof01.html
化石燃料などから出る二酸化炭素(CO2)が温暖化の原因になるだけでなく、海洋の酸性化も招き、サンゴが死滅するなど、生態系に大きな影響を与える恐れがあるという研究は、世界各国で注目を集めています。
海は大気に放出された二酸化炭素の約3分の1を吸収するとされ、それによって海水のアルカリ性が弱まる酸性化が起きます。(北海道大学と海洋研究開発機構のグループが行ったその影響を評価するための研究による。)
海は現在、水素イオン濃度指数(pH)が8.1と弱アルカリ性です。CO2が海に吸収されると、水と反応して水素イオンが増えるため、酸性には至らないが中性(pH7)に近づき、アルカリ性が弱まります。この反応を「酸性化」と呼ぶそうです。
増えた水素イオンは海水中の炭酸イオンと反応し、炭酸イオン濃度を下げます。炭酸イオン濃度が一定の値より低くなると、炭酸カルシウムを主成分とするサンゴ礁などが溶け出す恐れがあるということです。
現在の海水の水素イオン濃度指数(pH)は8.1ですが、産業革命当時より約0.1酸性化しました。大気中のCO2が年に1%ずつ増える場合は、21世紀末にpH7.8まで酸性化が進むと予測されています。
酸性化が進むと、炭酸カルシウムでできたプランクトンの殻やサンゴの骨格が溶け出す恐れがあります。ただ、従来は、影響が出るのはまだ将来のことと考えられていました。
だが、50年ごろにCO2濃度が500ppmになるとすると南極海の一部で炭酸カルシウムが溶け出し、21世紀末に780ppmになるとすると南極海全体と北太平洋の一部に広がる恐れがある、と警告する05年に出された研究報告もあるそうです。
英王立協会や全米科学財団などは、さらなる研究の必要性を訴える報告書をまとめました。日本でもスーパーコンピューターを使って、今後100年の酸性化の進行を季節変動や地域性も考えて詳細に予測。生態系の変化も推定しています。
(朝日新聞「温暖化CO2 海の酸性化も招く サンゴが死滅危機 07年1月23日」)
http://www.asahi.com/science/news/TKY200701220400.html

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