5月21日の東京新聞は薮中三十二元外務次官のインタビューを報じています。
オバマ氏が初来日する前の麻生政権時代、薮中外務次官は、オバマの広島訪問は時期尚早だと米政府に伝えていた事がウィキリークスで暴露されました。
その時の事を聞かれて、薮中氏は次のように答えています。
「その件にはコメントしないが、そんなことは言った覚えはない」。
記事のなかで薮中氏は、オバマの広島訪問は謝罪ではなく核廃絶を訴える目的であってほしいということと、日本が核の傘の下にあったとしても、核保有国に対してさらに核軍縮を進めるべきだと言い続けなければならない、ということを強調しています。
おやおや、この人どうしちゃったんだろうというのが第一印象です。
全体から見れば、少なくとも核軍縮問題に関する限り、日本外交はもっと核軍縮の理想を語れと言っています。これまでの外務省の行動から見て、にわかには信じられないことです。
だが記事冒頭のウィキリークスにおける彼の言動については、そもそもその情報源について無視すると言い切っています。そして、伝えられた発言もウソだと言い切っています。
このインタビュー記事、冒頭の彼の発言自体がウソから始まるということです。
ということは、ウィキリークスで使えられた薮中氏の発言はホントであるし、ウィキリークス情報はかなり信用できるということなのでしょう。
手品の種明かしみたいな話だが、このインタビューからわかる「真実」は次のようなものなのでしょう。
最初にオバマ大統領が広島訪問を希望したとき、日本国の外務省は謝罪めいたものを大統領にされては困ると強く感じたようです。だから時期尚早と反対したのですね。しかし、今回は謝罪抜きだという確信を得たということです。だから受け入れた。
少なくとも核軍縮問題に関しては、日本はアメリカの意見に「反対」してもよいという許可を得たのでしょう。だから国連の場での意見表明でアメリカに反論、批判してもかまわない、たとえ日本が核の傘の下にあったとしても…。
さらに言えばこのようなことも言えるでしょう。
もしもオバマ大統領が広島で原爆投下について「謝罪」してしまったら、日本も第二次世界大戦の敗戦に至る1931年以来の加害行為を改めて他のアジア諸国へ語らなければならない、ということになってしまいます。
アメリカが日本に謝罪した、少なくとも原爆投下に関しては加害を認めた。では、加害者であった日本は被害国に何をすべきか。そんなこは極力避けるためにこれからも努力しなければならない、ということなのでしょう。
オバマ大統領はもう任期の終わりが迫っていて、アメリカ国内世論の反発を買っても「謝罪」することも可能であったかもしれないのですが、それは避けたということのようです。
アメリカ大統領が謝罪しない以上、日本政府もアジア諸国への謝罪めいた一言も言わないぞ、という首相の決意表明が聞こえてきます。

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