今週も一作家一冊ずつ。
『店長がいっぱい』山本幸久(光文社文庫)
丼ものチェーン店を舞台にした短編連作集。解説でも書かれていましたが、山本幸久さんの良さは「読んだ後で、その職業の人への見方が変わる」こと。人にはそれぞれ人生がある、という事を思い出させてくれる作家さんです。
『モップの精は旅に出る』近藤史恵(実業之日本社文庫)
清掃人キリコシリーズ最終回。ちょっと無理矢理だけど、ちょっと有り得そうなプチミステリー。ミステリーですが、それ自体よりもありそうな日常に潜む人の闇みたいなものが秀逸。
『ボーダーレス』誉田哲也(光文社文庫)
成熟した作家さんの後期作品に現れる作家としての技術が光る作品に感じました。四つの物語が一つの結末に収斂していく感じ、クライマックスに向かってのスピード・加速感、そしてハッピーエンド。結構グロい警察小説作家でありながら、青春小説も光る。凄いです。
『極悪専用』大沢在昌(文春文庫)
久しぶりの大沢在昌さんの作品。ノワール×コメディの帯解説の通り、何でもありのドタバタストーリー。大沢在昌さんのハードボイルド感、エンタメ感、ハリウッドテイストのミリタリーテイストなどなどを折り込んだ作品。純粋に楽しく読めました。
『我が家のヒミツ』奥田英朗(集英社文庫)
家族を舞台にした短編集。解説にもありました通り、「ユーモラスで、ちょっぴり切なくて、温かい」「ささやかにしておおらかな人生讃歌」。今まで読んでいなかった文庫本の『解説』ですが、「そうそう!」と思う、結構良いことが書いてあります。要は読書家であり、作家さんのファンの代表としてのコメントですので。書評家って素晴らしい職業。
『こちら横浜市港湾局みなと振興課です』真保裕一(文春文庫)
最初は短編集的なスタートから、後半は謎解きへ。ちょっと謎がややこし過ぎるのと、想像・推測過ぎて、置いてかれた感はありました。よく練ってあるなぁ、と思う一方、時に練り過ぎ?って感じちゃって、現実離れして冷めてしまうことがあります。難しいですね。

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