社長の息子はガンを再発してから何ヶ月か経った。
再発は何やら深刻な状態だったようで腹膜撒腫という、
腹膜やその付近に種を撒き散らすかのようにガン細胞が広がっているらしい。
なので開腹したが、何も出来ずにそのまま閉じられた。
退院してから病院を移り、抗ガン剤治療をまたやった。
そこでの再なる診断では、大きな4センチくらいのガンがみっつあり、
他に小さなのが多数あると。
抗ガン剤治療でそれが4→3センチにまで小さくなったらしく、
もう少し小さくなったら摘出すると言う事だった。
息子はと言うと、まぁまぁ元気だ。
しかし、食欲が出ないので果物くらいしか食べない。
検査に行くと、どうやら肝臓が不調らしい。
薬の影響だろう、でも肝臓の薬が効いてまぁまぁ食べられるようである。
家族はとっても心配しているが、
それでもワタシから見るとイライラするくらいに何もしない。
本人もあまりしようとしない。
免疫が落ちているので風邪などひいては大変だし、衛生面も気をつけるべきだ。
でも、ぜんぜん、気をつけたりしない。
食事も色々と考えるべきだが、そこもまるでダメ。
食欲が戻ってもコンビニ弁当や果物やお菓子を食べている。
彼の母親は心配でかなり痩せたが、心配が行動に伴わないのだ。
ガンの食事療法だが、これは医者によって意見は分かれる。
再発したならともかく食べられる物は何でも食べて体力を維持する。
と、
ガンの栄養素である脂肪分と糖分は摂ってはならない、あるいは控える。
果物もダメ。
肉なら赤身やささ身、そして野菜をたっぷり摂る。
単純に、和食がいいようだ。
けれども食欲の落ちた患者に食べさせるには創意工夫しなければならない。
洋食的なものでも考えればガンの療法となる献立が出来る。
ともかく、これらはガンの療法としては誰にでも出来る事なのだ。
でも、やってないし
何もしないけど、TVなどでよくやる医療番組はよく観ているようだ。
前にも社長に頼まれて、免疫治療について調べた事がある。
最新の免疫治療は、自分の癌細胞を培養した免疫細胞に教えて体に戻し、
癌細胞のみを攻撃できるようにすると言うものだ。
培養でパワーアップした免疫細胞がガン細胞目掛けて攻撃させると言うわけだ。
これは東京の病院だが、札幌の系列病院でも出来るそうだ。
しかし、その時は抗がん剤治療中で、
その間は免疫力が落ちているので良好な免疫細胞は採取できず、
しばらく待たなくてはならないようだった。
で、そのしばらくが経ったんだけど、やってないし
本人がやりたがらないのか、病院の治療に差し障りがあるのか?
ともかく、新しい試みには手をつけていない。
そしてまた、社長に頼まれたのが、「ハンプ」と言う治療だった。
ハンプ? うーん、これは初耳だった。
深夜の番組でやってたらしいが、ネットではほとんど扱っていなく、
探し出すのがひと苦労だった。
ハンプとはhANPと言い、どうやら心臓の治療に使う薬剤らしい。
それがガンの治療、再発防止に効きそうだと研究されているのだ。
社長は何でも半端にしか聞かない、
と言うか、自分に都合の良いところしか聞いてないし覚えないのだろう、
「どんなガンにも効くんだって!保険は利かないけどもう使えるって!」
いや、そんな素晴らしい奇跡的な発見なら朝からニュースで取り上げるって。
新聞の一面になってもいい。
それが午前2時過ぎという超深夜番組でしか取り上げないって、
何だか怪しいじゃないか?
でも切実そうだから調べてあげた。
あげたら、やっぱりそれはまだ、ほとんど動物実験段階だった。
ただ、薬はすでに完成されて使われているものだ。
だが、それを心臓疾患(急性心不全)の患者に使うのは許可されているが、
ガン疾患の患者への仕様はまだ保険診療では認められていないのだ。
これから臨床データーを取り、許可を取れるように頑張る、だって。
ところで具体的にどんな事でどんな治療となるのかだが、
〜なぜ、ガンは心臓に移転しないのか?〜
から始まった研究である。
心臓から分泌されるホルモンである心房性ナトリウム利尿ペプチド(ANP)が、
血管を保護することによって、
様々なガンの転移を予防・抑制することを突き止めました。
ANPは心臓ホルモンであり、現在は心不全に対する治療薬として臨床で使用されています。
なるほど、これは期待できそうである。
人間では肺がん術後に使用して効果を得たと言う結果の出ている。
これは近いうちにでも使用可能、保険診療可能にまでなりそうだ。
ただ、今すぐにこれをやって欲しい!
は、難しそうだ。
臨床データーの治験に参加するとか方法はあろうが、
そこまでは調べられなかった。
ただ、この研究を進めているのは国立循環器病研究センターと言うところである。
そこに直接働きかけてみれば詳しい状況も何もかもが分かるだろう。
あとは、社長や家族やそして本人自身が動くほかない。
そしてワタシの心配は、すでに再発した患者にも有効となるのかと言うことだ。
再発前ならばかなり期待できそうだが、
すでに再発して深刻な状態である彼にはどうなのだろうか?
ガンを死滅させるのではなく、ガンを転移させないという治療のようだからだ。
願わくば、今回の再発の治療がうまくいき、
その後の再発防止に役立てばいいとは思う。
ガンの治療は本当にここに来て大躍進しそうな気配なのだ。
少しでも長く延命し、素晴らしい治療に出会えるように準備することが最良である。
なので息子よ、社長よ、
ともかく、一度、免疫治療の相談に病院へ行って来い!

まづはそこからだ。

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