東京地検特捜部といえば、世間一般的には「悪を捕らえて正義を遂行する政治権力から独立した機関」というイメージが今でも流布している。
私自身も、そう思っていた世間の一般人の一人であった。
この本を読むと、特捜部がいかに劣化してきているのかが理解できる。
捜査を進めていき事件の真相に迫るのではなく、特捜部があらかじめ描いた「事件の筋書き」に事実を強引に当てはめて事件を作っていく恣意的な捜査、被疑者への恫喝、マスコミや世論の反応を気にして捜査を進めていく「劇場型捜査」の弊害など、特捜部の「劣化」がこれでもかと綴られている。
帯には、この事件で一貫して検察の対応を批判しているヤメ検弁護士の郷原信郎氏の推薦文が書かれていることからも推察されるが、この書が出版された背景には、おそらく先月の政治資金規正法で小沢一郎民主党代表が逮捕された事件が背景にあるのだろう。
ただ一つ気になるのが、著者である石塚健司氏の経歴。
なんと産経新聞の現役記者である。
産経新聞といえば、体制擁護的な論調を取り、小沢秘書逮捕に関しては最も強硬に小沢代表辞任を訴えている新聞社である。
その産経新聞の記者が、いくら友人が検察の恣意的な捜査の被害に遭っているからとはいえ、自社にとって不利になるような書を世に出したのか、その理由が非常に気になるところである。

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