ゾウに襲われた子ライオンは死んでしまったように見えたが、母親が体をなめてやると、元気に一鳴きした。
だけど、母親には(フレーメン反応という方法で)子ライオンの匂いをかいで、その子がもう助からないほどの重傷であることが分かる。
悲しいけど、次に取るであろう母親の行動は察しが付いた。
子ライオンの頭を口にくわえ、子ライオンを窒息死させた。
安楽死。
無意味に苦しませたくない母親の愛情からの行動。
でもその後の行動は、予想外。
まさに野生動物の厳しさを見せつけられた。
母親が子ライオンを食べてしまった。
亡くなってしまった子供の体を食べる行為によって、そのエネルギーまでをも自分の体に取り込んでるように私には思えた。
母ライオンは残った子供達を育てていかなければならない。その為には、自分は食べなければならない。
子ライオンの死体を残しておいても、すぐにハイエナ達のエサになってしまうだけ。
それなら、母親に食べられて残された兄弟達の為にもなるなら、死んでしまった子ライオンにとっても救われるのかもしれない。
そんなこと思うのは人間だけかな。野生動物は、その本能に従って最善の方法を選んでいるにすぎないのだろう。
生きるためのルールだから。
翌朝、無事だった三匹にお乳をやった後、迷子になった一匹を探しに出る母親。
迷子の一匹も無事見つかった。母ライオンはお乳をあげる。
だけど、その一匹を隠れ家に連れて帰ることはしない。
その小さい体に染みついてしまったゾウの匂い。
そのせいで、隠れ家に連れ帰っても、他の兄弟ライオンから兄弟と認識されず攻撃を受けることもある為らしい。
三匹と一匹の、それぞれの隠れ家を行ったり来たり。
母ライオンの育児が二倍に忙しくなってしまった。
それでも精一杯子供達を育てていく母ライオン。
百獣の王ライオン。
私は、健気なメスライオンよりも、オスのライオンになりたい。

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