「映画のなかの現代建築」 飯島洋一/著
40本の映画を取り上げて、ロケに使われた建築が、その映画の中でどのような意味を持って取り上げられてるのか、
制作者の隠された意図を探りながら書かれていたりする。
映画の中の建築を読み解くことによって、制作者さえも意図しなかった‘新しい映画の見方’の発見もあるということだ。
そういう映画の見方があるなんて!
映画って、建築って、奥が深い。
‘闇に浮かぶ光の塔が暗示する肉食的なイメージ―――
「ブラック・レイン」’
この映画を形容したタイトルからして面白い。
他の作品の評にしても然り。
(一例・‘オカルト的な記憶術のルーツを秘めたニューヨーク市立図書館―――「ゴーストバスターズ」’)
大阪を舞台にした、リドリー・スコット監督作品。
この映画の中で、監督が意識的に捉えているとする建築は、
京都を拠点として活躍する建築家・高松伸の代表作
「KIRIN PLAZA OSAKA」。
監督がこの建築を使った理由として、高松伸の建築が
ギーガーの絵画と類似したイメージを持っているとしている。
素材と装飾に偏執的な凝りようを見せる高松伸の建築は、
日本的というより、どこか西洋の建築のような、
こってりとした肉食的イメージを感じさせるのらしい。
ギーガーによる、人間や動物の腐った臓器の内部のような宇宙船のデザイン、ねばっとした液体を口から垂らし続けるエイリアンのデザイン。これらが高松伸の建築とどこか奇妙に通底するところがある、と著者は言う。
それだけインパクトのある建築ということだろうか。
建築についての考察の深さはもちろん、
建築抜きの映画評としても楽しめる本だ。

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