2013/5/13  23:34

椿本興業中日本営業本部を巡る不正会計事件と安中市タゴ51億円事件から見える横領の連鎖(その2)  他の自治体等の横領事件とタゴ51億円事件

■平成25年5月8日に椿本興業がプレスリリースし、同社のホームページで公表した事件の調査報告書は83ページにも及ぶ労作です。社内調査委員会(同社の椿本社長が委員長)と第三者委員会(三浦州夫弁護士が委員長)のそれぞれの調査報告書から構成されています。まずは、社内調査委員会の報告書から見てみましょう。なお、安中市土地開発公社で18年前の5月18日に発覚したタゴ51億円事件との共通点について、都度、赤色でコメントをしてみました。参考になれば幸いです。


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【添付資料1】
          調 査 報 告 書
                    平成25年5月2日
                    椿本興業株式会社
                    社内調査委員会
<目次>
第1 不正取引が行われていた中日本営業本部/東海東部SD、東海西部SDの位置付け
及び事業内容••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••1
1 社内における中日本営業本部/東海東部SD、東海西部SDの位置付け•••1
2 中日本営業本部の事業内容•••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••• 1
第2 社内調査委員会の設置及び目的•••••••••••••••••••••••••••••••••••• 2
1 社内調査委員会の設置に至る経緯•••••••••••••••••••••••••••••••••••• 2
(1) 架空取引の疑いの浮上••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••• 2
(2) 内部調査の開始及び社内調査委員会の設置••••••••••••••••••••••••••• 2
2 社内調査委員会の構成•••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••• 2
3 社内調査委員会の目的•••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••• 3
第3 調査体制、調査対象及び調査方法の概要•••••••••••••••••••••••••••• 3
1 調査体制•••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••• 3
2 調査対象取引•••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••• 3
(1) 不正取引の手口••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••• 3
(2) 中日本営業本部••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••• 4
(a) 特定取引先7 社及びA社との取引••••••••••••••••••••••••••••••••••• 4
(b) その他の取引先との取引••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••• 4
(3) その他の営業部門••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••• 5
(a) 調査対象会社8 社との取引••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••• 5
(b) その他の取引先との取引••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••• 5
3 調査対象期間•••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••• 5
4 調査項目•••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••• 5
(1) 取引の実在性の確認及び架空・循環取引の特定••••••••••••••••••••••• 5
(2) 特定取引先の確定••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••• 5
(3) 架空・循環取引の全体把握••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••• 6
(4) 潜在債務の確認••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••• 6
(5) その他••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••• 6
5 調査手法•••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••• 6
(1) ヒヤリング••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••• 6
(2) 証憑書類の確認••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••• 6
(3) 取引の実在性の確認••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••• 6
(4) 電子データの調査••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••• 7
(5) その他••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••• 7
第4 調査結果•••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••• 7
1 不正取引の概要•••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••• 7
(1) 納入実態のある仕入取引に水増し発注した取引••••••••••••••••••••••• 7
(2) 納入実態のある仕入取引に架空工事代金を追加発注した取引••••••••••• 8
(3) 納入実態のない架空・循環取引••••••••••••••••••••••••••••••••••••• 8
(4) 納入実態のない架空・循環取引に架空工事代金を追加発注した取引••••• 9
2 不正取引が行われていた中日本営業本部の組織概要ならびに社内関与者及び不正取引の相手方となった取引先••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••• 9
(1) 中日本営業本部の組織概要••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••• 9
(2) 社内関与者•••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••10
(3) 不正取引に関与した取引先の概要•••••••••••••••••••••••••••••••••••11
(a) A社•••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••11
(b) B社•••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••11
(c) C社•••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••12
(d) D社•••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••12
(e) E社•••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••12
(f) F社•••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••12
(g) G社•••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••13
(h) H社•••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••13
(i) 過去に関与したと思われる会社•••••••••••••••••••••••••••••••••••••13
3 不正取引に至る経緯、動機及び背景••••••••••••••••••••••••••••••••••14
(1) 個人的な遊興費・接待費の捻出•••••••••••••••••••••••••••••••••••••14
(2) A社への資金支援•••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••14
(3) 中日本営業本部特有の社内環境とチェック体制の不備•••••••••••••••••15
(a) 人事異動の少なさ•••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••15
(b) 日常の営業事務処理方法の悪用•••••••••••••••••••••••••••••••••••••15
(c) 小規模の事務所•••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••16
(d) 工事案件収益管理の甘さ•••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••16
(e) チェック体制の不備•••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••16
4 不正取引の全体像••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••17
(1) 各取引先の架空・循環取引の時期と位置付け ••••••••••••••••••••••••17
(a) 第T期 平成18年8月以前••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••18
(b) 第U期 平成18年9月〜平成21年8月•••••••••••••••••••••••••••••••••18
(c) 第V期 平成21年9月以降••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••20
(2) 架空・循環取引の破綻•••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••20
(3) 架空・循環取引の総額及び破綻による各社の資金ポジション•••••••••••21
(4) 当社における修正すべき取引•••••••••••••••••••••••••••••••••••••••22
5 当社における、不正取引にかかる年度別取引額••••••••••••••••••••••••22
6 社内関与者による現金着服額の推定••••••••••••••••••••••••••••••••••22
第5 過年度決算への影響額••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••22
1 過年度決算訂正の方針••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••22
2 過年度決算訂正による内容及び影響額••••••••••••••••••••••••••••••••23
(1) 決算訂正の主な内容•••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••23
(2) 主要な財務諸表項目への影響額•••••••••••••••••••••••••••••••••••••23
(3) 連結損益計算書及び連結貸借対照表の主要項目への影響額•••••••••••••24
(4)損益計算書及び貸借対照表の主要項目への影響額•••••••••••••••••••••26
第6 内部規定及び内部統制に関する事項••••••••••••••••••••••••••••••••27
1 不正取引に関する内部規定••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••27
(1) 職務権限及び業務分掌•••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••27
(2) 決裁権限•••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••28
(3) 売上及び仕入に関する規定•••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••28
2 内部統制の整備状況 •••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••28
3 内部統制上の問題••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••29
(1) 中日本営業本部内における実行•••••••••••••••••••••••••••••••••••••29
(2) 中日本営業本部内における特殊要因•••••••••••••••••••••••••••••••••29
(3) 内部統制を無力化させようとするための手段の存在•••••••••••••••••••29

<本文>
第1 不正取引が行われていた中日本営業本部/東海東部SD、東海西部SDの位置付け及び事業内容
1 社内における中日本営業本部/東海東部SD、東海西部SDの位置付け
 椿本興業株式会社(以下「椿本興業」という。)は、国内外の産業界全般に、動伝事業・設備装置事業・産業資材事業を展開している。
 椿本興業における中日本営業本部/東海東部SD、東海西部SD(Sales Divisionの略)の位置付けは、下記図1のとおりである。
(図1 会社組織図、平成24年度)
  株  主  総  会
   ↓     ↓
 取締役会  監査役会
   ↓
  社長 → 経営会議 → 経営戦略本部・コンプライアンス室
   ↓ → 内部監査室(内部統制チーム)
 常勤役員会
   ↓ → 開発戦略本部
   ↓ → 営業総括本部 → 東日本営業本部
   ↓   ↓ → 中日本営業本部 → 東海東部SD → 動伝営業部・装置営業部
   ↓   ↓         ↓ → 東海西部SD → 動伝営業部・装置営業部
   ↓   ↓ → 西日本営業本部
   ↓ → 管理本部
2 中日本営業本部の事業内容
 中日本営業本部は、東海地区を担当エリアとしており、機械部品をはじめ、自動車関連企業を中心に搬送設備等の自動化・省力化商品を売上している。
 各SDの動伝営業部では、動力伝動機器として各種駆動・搬送チェーン、減速機、ギアードモータ、カップリング、各種センサー、制御機器等の部品を売上している。
 各SDの装置営業部では、自動車関連には組立・加工・検査・溶接・塗装ライン、食品関連には原料の計量・調合・投入・洗浄・殺菌・冷却・冷凍等のシステム、物流では入荷検品・保管・流通加工・ピッキング・荷捌・仕分・包装・梱包・検品出荷等あらゆる産業界向けに装置・システムを売上している。

第2 社内調査委員会の設置及び目的
1 社内調査委員会の設置に至る経緯
(1) 架空取引の疑いの浮上
 中日本営業本部/東海東部SDにおける元SD長(事業部長クラス)が関与する取引において平成24年1月に926百万円(百万円未満切捨て。以下同じ。)のたな卸資産残高となっている状況につき、コンプライアンス室及び経理部門と元SD長との、たな卸資産の状況ヒヤリングと業務処理手順の改善のための打合せ会議があった。会議では、取引契約書の整備、取引の本部長決裁等の確認を取り決め、運用を開始していた。その後も、数回にわたりコンプライアンス室及び経理部門が元SD長にたな卸資産残高の削減を行うべく打合せ会議を開催したが、たな卸資産残高は減らず、平成24年12月末のたな卸資産残高が、1,303百万円に達し、常勤監査役も、元SD長への聞き取り調査を開始、業務関連の書類提供、現場視察の段取りを指示した。その後、取引先に対する売掛金残高も滞留し始めたことから、経理部門の最高責任者である岡本常務執行役員から、中日本営業本部長である濱本常務執行役員へ、たな卸資産残高及び売掛金残高水準の高さ、削減目標とした与信限度内に取引が制御できていないこと、装置部門の一担当者の案件数が非常に多く、元SD長が全てを把握できているか疑問であること等から、取引全般が不透明であること、たな卸資産が万一売上出来ない場合及び売掛金回収が出来ない場合の当社のリスクがあまりにも高い、等の理由で一連の取引を中止させるよう、平成25年2月に勧告した。このため、それまで正常取引を装っていた架空・循環取引による資金が、それを中止したことにより循環を止め、資金繰りに困った元SD長が、平成25年3月13日に営業総括本部長の西田専務執行役員に対し、濱本常務執行役員、岡本常務執行役員の同席のもと架空・循環取引を行っていた旨の告白をしたものである。
(2) 内部調査の開始及び社内調査委員会の設置
 以上のとおり、元SD長関与の取引において、機械の架空取引によるたな卸資産や売掛金が実在しない疑いが生じたため、当社は、平成25年3月14日に経理部門及びコンプライアンス部門からなるタスクチームを直ちに立ち上げ、元SD長からの事情聴取を開始した。
 当社は、元SD長が約10 年前から架空・循環取引を単独で実施していたことを供述し、書類捏造に要した書類・印鑑類を提供したため、本件不正取引(以下「不正取引」または「本件」という。)が行われていたことが確実となったとして、社内調査委員会を設置した上で同年3月18日にこの事実を開示した。また、この事実関係の有無及びその内容の解明等のために、同年3月25日に第三者委員会を設置し、同日にその事実を開示した。
2 社内調査委員会の構成
 社内調査委員会のメンバーは、以下のとおりである。
委員長   椿本 哲也(代表取締役社長)
副委員長  岡本 正風(取締役 常務執行役員)管理本部長
委員    中島 省三(常勤監査役)
      大河原 治(取締役 執行役員)経営戦略本部長
      春日部 博(取締役 執行役員)管理本部 副本部長
      宮崎  捷(執行役員)管理本部長 補佐
      玉野 晃彦(内部監査室長)
      藤井 誠人(財経部長)
      三好 秀樹(コンプライアンス室長)
      善澄  壮(財務グループ長)
3 社内調査委員会の目的
 社内調査委員会の目的は、@不正取引に関する事実関係の調査・解明、A過年度決算への影響額の確定、B上記@及びAの調査結果を記載した調査報告書の作成である。
 なお、再発防止策の検討及び提言等については、現在、第三者委員会において調査中であり、社内調査委員会の調査対象には含まれていない。

第3 調査体制、調査対象及び調査方法の概要
社内調査委員会は、平成25年3月18日に設置された後、直ちに調査を開始し、以後、本調査報告書作成日である同年5月2日までの間、以下のとおり調査を行った。
1 調査体制

社内調査委員会の委員長、副委員長及び委員のほか、調査補助者として、当社の経理部門から10名余り、及び外部専門家チームとして株式会社アカウンティング・アドバイザリー所属の公認会計士等7名を加え、調査を行った。
2 調査対象取引
(1) 不正取引の手口
 中日本営業本部の営業部員、営業事務職員、名古屋経理課員へのヒヤリング、当社の取引先8社との面談、資料の分析によって、元SD長が決裁権限を悪用し、独断で複数の取引先と架空・循環取引を行っていたことが判明した。これら架空・循環取引は、直送取引(当社が仕入先に商品を発注し、売上先である機械商社または機械メーカーに売却するものの、商品そのものは当社の仕入先、あるいは仕入先の先の下請先が製造後、当社の売上先、あるいは売上先の先の最終ユーザーである大手プラントメーカーや大手鉄鋼会社等の地方工場へ直送され、当社と仕入先が最終ユーザー立会いのもと据付・動作確認まで実施する)を利用したもので、元SD長が営業担当として、商品の発注から売上、据付工事指示まですべてを担当し、取引先へ納期・金額等を指示していた。
 元SD長は、中日本営業本部長に次ぐ立場で、東海東部SDを統括していた。また、部下には、実在取引の中へ紛れ込ませた架空発注や水増し発注(実在取引に架空の仕入原価を追加計上したり、応諾した仕入価格以上に仕入金額を過大計上すること。)を指示したものの、これら取引内容について詳細に関与させることはせず、部下の社員番号を別枠で勝手に使用していた。さらには、部下の印鑑を偽造した上で、仕入先への商品発注、売上先への納品・請求書作成などを元SD長の管轄下の営業事務職員に入力処理を行わせ、あたかも部下が営業活動を行ったかのように見せかけていた。
 つまり、SD長という地位を利用して部下に協力させながら、実際には単独ですべての売上・仕入取引を画策・まとめ上げ、その業務処理を指示していたものであった。
 この不正の手口にあっては、仕入先のさらに下位に位置する下請先の協力が欠かせない。当社の仕入計上においては、通常、仕入先が当社に納品書を送付し、この納品書をもって最終ユーザーへの商品納入が当社側で書類上確認されるが、今回の手口は、当社の仕入先のさらに下位に位置する下請先の存在があり、下請先の出荷報告を当社の仕入先が受信すれば、当該仕入先は当社に納品書を送付することが行われてしまうことを利用したものであった。
 この様に、不正の手口は、当社の仕入先の下請先であるA社と元SD長が共謀し、直送取引を利用して出荷・納品・設置があたかも行われたかのように装ったもので、当社の売上側の商流については、A社が特定の取引先7社(以下「特定取引先7社」という。)の売上先となり、当社の仕入側の商流については、特定取引先7社のうちの4社を当社とA社との間に介在させた形で、納品書・請求書等の証憑書類に基づき入出金を行い、更には、経理部門の証憑チェックをパスする目的で、各種書類の捏造をすることによって、社内において架空・循環取引であることを隠蔽していたものである(商流については、後述第4.1(3)の図2、架空・循環取引の概要を参照)。
 直送取引のうち、元SD長が関与・指示していた取引は、当社の商品セグメントで言う「設備装置事業」であるため、中日本営業本部における設備装置事業の取引を中心に調査することにした。
(2) 中日本営業本部
(a) 特定取引先7社及びA社(以下「調査対象会社8社」という。)との取引
 調査対象会社8 社との過去10年間(平成15年4月1日から平成25年3月31日まで)の全取引
 調査対象会社8社の内の特定の2社を仕入先とする取引については、調査の過程で水増し発注が疑われる事実が発覚したため、さらに過去5年間(平成10年4月1日から平成15年3月31日まで)の仕入取引を追加調査した。
(b) その他の取引先との取引
 元SD長の管理下にあった営業部門のため、その他の取引先との取引についても調査の
対象とした。
 設備装置事業に区分される、東海東部SDと東海西部SDのそれぞれ装置営業部の直近
2年度(第109期:平成23年4月1日から平成24年3月31日まで、第110期:平成24年4月1日から平成25年3月31日まで)の各年度の取引額の年間合計額が30百万円以上の実績がある取引先のうち、1件5百万円以上の取引があった場合の当該取引先の全社を対象とし、この取引先各社との取引のうち、各社ごとの取引の任意に3件を抽出(3件未満の場合は、全件数)した取引の実在性を確認した。
(3) その他の営業部門
(a) 調査対象会社8社との取引
 調査対象会社8社との過去10年間(平成15年4月1日から平成25年3月31日まで)
の全取引
 調査対象会社8社の内の特定の 社を仕入先とする取引については、他の営業部門での仕入実績があったため、水増し発注が無いことを確認する意味で、上記(2)(a)と同様に、さらに過去5年間(平成10年4月1日から平成15年3月31日まで)の仕入取引を追加調査した。
(b) その他の取引先との取引
 中日本営業本部とは地区を異にするが、ビジネスモデルが共通している他地区(東日本営業本部、西日本営業本部)の設備装置事業に区分される装置営業部の直近2年度(第109期:平成23年4月1日から平成24年3月31日まで、第110期:平成24年4月1日から平成25年3月31日まで)の各年度の取引額の年間合計額が30百万円以上の実績がある取引先のうち、1件5百万円以上の取引があった場合の当該取引先の全社を対象とし、この取引先各社との取引のうち各社ごとの取引の任意に1件を抽出した取引の実在性を確認した。
3 調査対象期間
 本調査の対象期間は、元SD長の自白により、約10年程度前から不正取引を実施していたことがわかっていたが、A社提供の資料や元SD長が提出した書類と当社の売上データとの突合等により、平成10年のA社設立時から調査をするべき、と判断した。この結果、事実の確定と訂正額の確認ができた範囲において、平成15年度以降について決算の訂正を行うべき、と判断した。
4 調査項目
(1) 取引の実在性の確認及び架空・循環取引の特定
 本件は、実際には商品の納入が行われていないにもかかわらず、あたかも当社が仕入先から商品を仕入れ、客先へ売上(直送取引)されたかのように偽装されていた。そこで、架空取引の疑いのある取引を当社の売上・仕入記録(会計記録)から抽出し、取引された商品が確実に存在し、確かに売上先に引き渡された取引であるかどうかを調査することで、取引の実在性を確認し、架空・循環取引の特定を行った。 ←【当会コメント】架空の取引をでっち上げる手法はタゴ事件でも多々見らえた。役所の場合、土地の登記手続き等は、役人性善説のといういい加減な理由で「嘱託登記」という名のもとで、契約書など証拠書類を登記所に提出する必要がない。タゴはこれを最大限利用して土地ころがしをしていた。 
(2) 特定取引先の確定
 不正取引を実現するためには社外の協力者の存在が必要不可欠であることから、不正取引に関わったA社と資金を循環させる役割の中間会社(特定取引先7社)を確定させるため、関与の可能性がある会社については、ヒヤリングを実施するとともに関連取引の証憑書類の調査を行った。 ←【当会コメント】不正を働くにはこの事件のように、社内外の協力者の存在が不可欠だが、安中タゴ51億円事件では、元職員のタゴの単独犯行として幕引きがなされてしまった。したがって、不正の温床が今でも残存している。 
(3) 架空・循環取引の全体把握
 元SD長が提出した書類、循環取引に関わったA社及び特定取引先7社の一部から過去の売上・仕入に関するデータ等の入手により、当社及び特定取引先相互間における売上・仕入取引を相互に突合し、架空・循環取引による資金の流れを推定、一連の循環取引による平成25年3月31日時点における各社の資金ポジションの算定を行った。
(4) 潜在債務の確認
 複数の取引先を巻き込んで架空・循環取引を行った結果として、帳簿外の潜在債務が発生している可能性があるため、未了の架空・循環取引の有無を調査することにより、潜在債務とその内容、金額を確認した。
(5) その他
 架空・循環取引に関する社内・社外関与者の範囲、関与の状況・程度、動機等の背景事情を明らかにすることも、社内調査委員会の設置目的である事実関係の解明に不可欠であるため、調査項目とした。
5 調査手法
(1) ヒヤリング
 不正取引の当社における主導者と認められる元SD長からは集中的にヒヤリングを行った。また、元SD長の在籍していた中日本営業本部の営業役職員を中心にヒヤリングを行った。A社及び特定取引先7社についてもヒヤリングを行った。ヒヤリングの過程でA社より、元SD長が手書き作成した取引指示書をEXCEL資料化した書類などが提出されたため、これら各種資料も参考資料とした。 ←【当会コメント】安中タゴ51億円事件の場合も、証拠書類は市役所に残されていたが、事件発覚直後、平成2年以前の書類や証憑類は役所の外に運び出され焼却処理をされるなどして証拠隠滅が図られた。椿本事件では、共犯のA社が証拠を保全していたため、このように短期間にきちんと調査結果が出てきたものと推察される。 
(2) 証憑書類の確認
 本件では、元SD長がA社及び特定取引先7社との取引について、A社と共謀し、出荷・納品記録が偽装されていた疑いがあり、当社の保管する証憑書類によって取引の実在性を判別することは困難であった。しかし、元SD長が自白した内容や、A社から提供された不正取引の特定取引先7社との関係を示した資料のとおりに実際の証憑書類のやり取りや代金が決済された事実から、自白内容及び本書類が本不正取引の全貌を示していると想定した。
 また、A社から後日資料のコピーが提供されたため、それらを読み込み、当社の保管する証憑書類や取引記録と突合する作業を行った。
(3) 取引の実在性の確認
 不正取引は、元SD長が単独で画策し、当初は部下の2 名の営業部員が、不正と知りつつ水増し発注や架空発注について加担したことが確実であったため、他のSD、中日本営業本部内の他部署、中日本営業本部内の元SD長担当以外の案件について、その実在性を確認するため、以下の手順で、前述2「調査対象取引」の調査対象とした取引について調査を実施した。
 実施されたサンプリングの結果、抽出された取引に対し、
 @納入したものを確認する。(実地検分)
 A@が実施できない場合には下記のような書類を代替手段とした。
  ・引渡し先の受領印等の入った確認書を再度受領
  ・納入当時の客先受領印と、客先検収書等の証憑書類との整合性の確認
  ・運搬業者の配送伝票の入手による、当社納入記録との突合
  ・納入当時に客先が受領した旨が記載されたメール等の保存文書の確認
  ・ISO準拠工場へ納入した際の生産技術部門の能力検査レポートの確認
(4) 電子データの調査
 元SD長の使用していたパソコン及び会社が配布したUSBメモリに保存されているデータの確認を行った。また、中日本営業本部に勤務している主任クラス以上の社内関与者7名の電子メールにつき、検索語68 語を用いて絞り込んだ上で、約70,000 件の電子メールとその添付ファイルを調査した。
(5) その他
 その他、ヒヤリングや、上記の電子データの調査によって得られた情報で、決算に影響がある可能性があるものについては、個別に証憑書類その他の書類・記録の収集を行って実態の調査を行った。
 また、全社の営業部員について、不正取引を過去に行っていない旨の宣誓書を提出させることで、他の不正取引が存在しないことを確認した。

第4 調査結果
1 不正取引の概要
 調査の結果、中日本営業本部の東海東部SD及び東海西部SDの各装置営業部において、大別して4種の不正が行われていたことが明らかとなった。4種とは、
 @納入実態のある仕入取引に水増し発注した取引
 A納入実態のある仕入取引に架空工事代金を追加発注した取引
 B納入実態のない架空・循環取引
 C納入実態のない架空・循環取引に架空工事代金を追加発注した取引
である。
(1) 納入実態のある仕入取引に水増し発注した取引
 特定取引先7社以外との直送取引(この取引は、納入実態があることが確認されている。)を利用して、元SD長が部下に命令して、最終ユーザーにおける当該装置商品売上分について、実際に現場据付・調整工事等をA社に請け負わせたものの、その発注金額の査定を甘くし、正当な金額以上を水増し発注して当社からA社に支払っていたものであった。これは、A社にこの代金をプールし、後日の赤字取引等に充当させる目的であったとの証言を得た。しかし、社内調査の結果、実際にはこれらプール金の大部分が、元SD長及び一部の社内関与者の現金着服に利用されたものであったと判断した。水増しした現金の残りは、A社の取り分であり、その意味でA社への資金援助であったとの元SD長の証言を得た。
(2) 納入実態のある仕入取引に架空工事代金を追加発注した取引
 上記と同様な形態での装置商品売上分について、あたかも現場据付・調整工事等があったかのように装い、その代金を機械本体の納入代金に追加発注することにより、架空でA社へ支払わせていたものであった。これは、追加工事費の名目で架空工事代金発注を行い、A社にこの代金をプールし、後日の赤字取引等に充当させる目的であったとの証言を得た。しかし、社内調査の結果、実際にはこれらプール金の大部分が、元SD長及び一部の社内関与者の現金着服に利用されたものであったと判断した。 ←【当会コメント】これも安中タゴ51億円事件と類似。タゴも実態のある取引を装って、発覚しないように偽装工作をしていた。そのために虚偽公文書の作成・行使のオンパレードだった。 
 追加発注して得た現金の残りは、A社の取り分であり、その意味でA社への資金援助の目的でもあったとの元SD長の証言を得た。
(3) 納入実態のない架空・循環取引
 4種の不正取引のうち、当社の損益に与える影響が大きなものとして、A社と共謀し、特定取引先7社を通じて架空・循環取引を行っていたものがある。その詳細については、後記4で詳述するが、その概要について説明する。
 中日本営業本部で行われていた架空・循環取引の概要は以下の図2 のとおりである。
 なお、1回の取引は、当社から見て売上先、仕入先とも1社ずつの取引となり、売上先・仕入先が同時に同じ会社になることはない。
(図2、架空・循環取引の概要)(矢印は資金の流れ)
         A社←←←←←←←←←←←←←←
 ↓  ↓  ↓  ↓  ↓  ↓  ↓     ↑
 B社 C社 D社 E社 F社 G社 H社    ↑
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       椿本興業梶@            ↑
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   B社 D社 F社 H社 A社→→→→→→→→↑
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         A社 →→→→→→→→→→→→→↑
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 本件の共謀先であるA社が平成17年頃、運転資金不足となり、これを補う形で元SD長が、当社から資金を融通することを実現するために画策した取引である。
 当社からA社へ営業取引を装った形で資金を融通するために、まず、当社がA社から商品を購入して、その代金を支払うことが必要になる。事実、A社から直接購入していたものもあるが(全体件数の約20%)、大半の取引は、特定取引先7社のうちの4社から直接購入する形をとり、この4社を経由した形で当該4社の下請先としてA社を指定、商品購入する形でA社へ資金融通している。これは、A社からの直接購入だけでは、従来の当社の営業取引から違和感が生じること(通常取引では、上記4社はそれぞれ得意分野の業種があるため、A社だけへの発注では違和感が生じる。)、A社の会社規模から、多額の発注金額に見合う商品製作能力がA社1社だけでは無いことが社内で容易に判別出来ること、当社の経理担当者等のチェックを逃れるために、上記4社との取引をクローズアップさせ、注意を分散させる必要があったことなどからである。
 この仕入取引の、いわゆる帳合取引(帳簿上の取引相手先と商流の上の実際の相手先とが異なる取引を含み、具体的には、仕入先と納入業者との間に伝票を通す帳合先を入れる取引)について、元SD長は、当該4社に対して「A社への当社の発注枠がオーバーするために中間の取引に介在して欲しい。」と依頼したと証言している。
 一方、当社の売上先として、特定取引先7社をA社との間に挟む取引である帳合取引を画策した。
 この点、元SD長は、特定取引先7 社の担当者には、「当社とA社との直接取引では、当社の与信枠がオーバーしているため協力して欲しい。」等の理由により、帳合取引に参加させたと証言している。
 このように、当社がA社や帳合取引先から架空の商品を購入しその代金を支払うことから開始された資金循環は、当社の売掛金を帳合取引先から回収することで、架空・循環取引として完成したものである。
(4)納入実態のない架空・循環取引に架空工事代金を追加発注した取引
 上記の架空・循環取引にあたかも現場据付・調整工事等があったかのように装い、その代金をA社またはA社の関連会社及び下請会社へ支払わせていたものであった。これも、追加発注して得た現金の一部をA社または関連会社及び下請会社から元SD長にキックバックさせ着服する目的で行った取引であった。追加発注して得た現金の残りは、A社の取り分であり、その意味でA社への資金援助の目的でもあったとの元SD長の証言を得た。
2 不正取引が行われていた中日本営業本部の組織概要ならびに社内関与者及び不正取引の相手方となった取引先
(1) 中日本営業本部の組織概要(平成25年3月31日現在)
 不正取引が行われた中日本営業本部の装置営業部の組織概要は、下記の図3のとおりである。
(図3、中日本営業本部の組織概要、営業部員数)
  中日本営業本部 → 東海東部SD → 装置営業部9名
          → 東海西部SD → 装置営業部7名
(2) 社内関与者(役職は、元SD長を除き平成25 年3 月31 日現在)
 不正取引に中心的に関与した社内関与者は、元SD長であり、a 元部長を除いたその他の社内関与者は元SD長から指示・命令されて一部の取引に協力したものである。 ←【当会コメント】安中タゴ51億円事件の場合、元職員タゴが横領したカネに市役所の相当数の職員がたかっていた。そのため、タゴの行動がエスカレートして「市役所の七不思議」などと市民の間で噂がたっても、職員らで誰も告発するものはなかった。事件発覚で警察が捜査したところ、市役所ぐるみの犯罪であることがわかり、このままだと市役所の機能がにっちもさっちも行かなくなるという理由で、タゴの単独犯行という幕引きを選択せざるを得なかった。だから当時の事件関係職員らが次々と幹部に昇進し円満退職をしているし、土地開発公社の理事・監事だった当時の市会議員も首長になっている。事件の真相徹底解明と責任所在明確化が再発防止策の重大用件であることをあらためて噛み締めたい。 
 また、中日本営業本部の東海東部SD及び東海西部SDの各装置営業部に所属する、営業部員2 名が、取引先の接待費や個人的な遊興費を捻出するため、元SD長の指示により、架空発注や水増し発注を実行し、A社を経由する形で、その資金のうち一部を受領していた。
・納入実態のある取引に水増し発注や架空発注をすることに加え、A社やJ社から現金を受領。さらには、架空・循環取引を首謀
  元SD長  昭和56年4月入社
・元SD長から架空発注・水増し発注を指示され実行し、A社から現金を受領(受領額は確定できないが、取引先の接待費、個人的な遊興費、デジタルカメラ代金やパソコン代金程度を受領している。)
  b 課長
  c 課長
・元SD長から架空発注・水増し発注を指示され実行
  d 課長及び元SD長の部下7 名
 d 課長を除く部下7 名の社員は、調査対象とした資料の分析や元SD長及び本人へのヒヤリングの結果、不正取引において指示された発注業務は実行したものの、A社及び元SD長から現金等を受領していた事実は発見されなかった。また、そもそも不正の認識は希薄であった。
 調査の過程で、d 課長が海外ゴルフ旅行に参加している事実が確認された(参加者は、他にB社のe 氏、元SD長、b 課長、c 課長、当社社員1 名)。d 課長へのヒヤリングによれば、海外ゴルフ旅行代金がどのように精算されたのかは不明、A社及び元SD長から現金を受領したことは無いと証言している。但し、本人の証言、A社提供資料により、d 課長は元SD長の指示により旅行代金相当額を架空発注・水増し発注によって処理を行っており、結果、旅行代金はA社が負担している。なお、当社社員1名は海外ゴルフ旅行に、日頃の慰労として元SD長に招待されただけであり、不正取引には関与していない。 ←【当会コメント】安中タゴ事件では、元職員タゴが当時の小川勝寿市長のゴルフ好きに便乗して、官官接待(この場合は上下逆転接待とでもいうのか)で市長の信任を得たと言われていた。また、タゴは親しい政治家や知人らを連れて海外(中国)に骨董買い付けを名目とした旅行を実施していた。 
・この他に、不正取引に関与した者として、中日本営業本部にかつて在籍していた(在籍期間:平成5 年4 月〜平成14 年3 月)a 元部長が、架空発注や水増し発注を実行し、A社から現金を受領していた。
(3) 不正取引に関与した主な取引先の概要
 中日本営業本部において行われていた不正取引については、後述4において詳述するが、元SD長とこの取引を共謀したA社との密接な関係が不正取引を引き起こす要因となったと考えられる。 ←【当会コメント】安中タゴ事件の場合は、横領金の補給元となったタゴによる不正借入先の群馬銀行が9億円債務を減額して、残りの24億6千万円を公社が安中市の債務保証の元に103年ローンで返済することで幕引きがなされた。群銀側の責任はなぜか追及されず、タゴが不正借り入れでせしめたカネに群がった多くの市関係者や議員らについても、警察の捜査は一部にとどまり、枝葉の部分は手がつけられなかった。さらに、タゴの親族や知人、愛人、出入り業者らに流れたカネについても、ある程度捜査の手は及んだが、民事的には全て不問とされ、警察の捜査結果でも14億円以上とされる巨額の使途不明金についても、手付かずのまま残された。 
(a) A社
 元SD長とA社との関係は、A社元社長が平成10年4月に同社を設立した際、A社現社長がQ社を退職して役員に就任した時からである。元SD長とA社現社長とは、A社現社長がQ社に勤務していたころからの知り合いであった。なお、A社現社長はA社元社長の甥である。
 A社元社長が平成13年頃事業に行き詰った際に元SD長に相談したことから、A社の運転資金を元SD長が本格的に支援することについて画策することとなった。
 元SD長は、実物件の先行検収(前渡金支払い)で支援をし、A社元社長は当社宛の売上債権を銀行にて流動化(資金化)することなどで資金繰りをつないでいたが、平成15年頃には、プール金取引を開始し、また、平成17 年頃から新たな資金調達手段として、架空・循環取引に着手したものと思われる。
 この当時は、そういう活動を実行したものの、決済資金は手元に残らず、仕入代金の決済資金を入金分以上に自分で調達して上乗せして支払うこととなり、決済資金はすぐにショートしていたものと思われる。このため、後を引き継いだA社現社長も、A社の資金繰りを支援してもらう目的で継続させた架空・循環取引ではあったが、常にA社の資金はショートしており、倒産回避のため、また現金着服のために不正取引を止めるに止められなかった状況が続いていたと思われる。
(b) B社
 当社とB社とは、従来から長年の間、搬送設備・部品等の取引関係があった。当社から見て売上先としても仕入先としても取引関係があるため、この取引関係を利用し、平成12年頃B社側の当社担当の一人であるe 氏に取引に参加するよう要請した。平成20年頃から先方からは、当社の見積書・工事の工程表・図面を要求されるようになり、元SD長が偽造して手渡していた。平成23年には、何らかの理由で、e 氏と関係が悪化したが、接待を繰り返し、関係を繋ぎ止めた経緯がある。
 また、B社側の回収不安については、元SD長が、物件ごとに万一回収不能になった場合には当社が支払を確約する旨の念書を当社の決裁権限を無視して、独断で作成し、差し入れていたことにより、先方を安心させていた。
(c) C社
 当社は昭和54 年に取引を開始している。A社元社長がC社のf 氏と友好関係にあった関係から本ビジネスが始まった。C社側の当社担当であるg 氏には、元SD長より、当社の売上先であるA社の与信不安のための帳合取引に参加して欲しい旨の申し入れをしていた。
 C社側にしてみれば、A社からの入金を確認した上で、売上処理をし、さらに仕入先である当社への検収を完了するため、回収リスクは無くなり問題は無かった。
(d) D社
 D社とは、平成14 年頃取引が開始されたと思われる。焼却炉用クレーンをE社に相談した際にD社の紹介を受け取引が始まった。クレーン・搬送機関係のメーカーであるため、取引関係に違和感は無かった。D社側の当社担当者には、元SD長より、当社の売上先であるA社の与信不安のための帳合取引に参加して欲しい旨の申し入れをしていた。一方、当社の仕入先としても不正取引に参加している。こちらも、A社への信用力の無さを補完するため、発注業務を代理する目的で参加要請をしたものと思われる。先方によれば、低マージン(2.5%)での取引だったため、経営指標も悪くなりがちで、取引減額を検討中であったとのことである。
(e) E社
 E社とは、平成11年頃取引が開始されたと思われる。大手焼却炉メーカーの案件の関係で取引が始まった。焼却炉やクレーンの関係のメーカーであるため、取引関係に違和感は無かった。E社側の当社担当者には、元SD長より、当社の売上先であるA社の与信不安のための帳合取引に参加して欲しい旨の申し入れをしていた。同社は、A社からの回収分と当社への支払分の差額を営業外収益として経理していたとのことである。
(f) F社
 F社とは、昭和61年頃取引が開始されたと思われる。当初は元SD長が焼却炉関係のコンベヤ設備を発注したことから関係が始まった。その後、当社取扱い装置商品との関係が深まり現在に至っている。コンベヤを含むプラント関係設備の製作等のメーカーであるため、取引関係に違和感は無かった。不正取引に参加するにあたり、F社側の当社担当であるh 氏には、元SD長より、当社の売上先であるA社の与信不安のための帳合取引に参加して欲しい旨の申し入れをしていた。このため、元SD長は、万一回収不能になった場合には当社が支払を確約する旨の念書を当社の決裁権限を無視して、独断で作成し差し入れていたことにより、先方を安心させていた。
 なお、同社の実物件管理は他社に比べて厳しく、上記の取引各社に提出する見積書、工程表、図面に加え、実物写真、検査成績表も要求され、元SD長は要求される都度、そのすべてをA社と共謀、捏造し提出していた。また、F社は、年1回の現物実査もA社へ出向いて実施していた模様であるが、架空取引であることは確認できなかったようである。
(g) G社
 G社とは、平成5 年頃取引が開始されたと思われる。当初はA社とG社との直取引(A社からG社への売上)が行われていた関係であったが、A社の運転資金支援の必要が生じたため、元SD長の主導のもと、当社が2 社との間に入り一時的な立替資金を賄うことで取引が始まった。従って、不正取引の実行にあたっては、G社は当社から見て売上先としてのみの位置付けとなっている。なお、元SD長は2 社との間に入ることについて、G社の地理的関係から、商圏拡大のための取引と偽っていた。
(h) H社
 H社とは、平成9 年頃取引が開始されたと思われる。当初は大阪装置部門での取引が大半であったが、当社中日本営業本部において、大手機械製造メーカー向けの製造設備納入案件を受注し、それに関連した設備納入の実績から中日本営業本部での取引が深まった。元SD長は、この関係を利用し大手プラントメーカーからの架空受注を実在取引と見せかけ、取引に参加するよう依頼をしたことから、不正取引に関係することになった。
(i) 過去に関与したと思われる会社
 調査の過程で、A社から提供された資料をさらに調査した結果、調査対象会社8社以外に関与の可能性がある取引先が8 社(以下「追加8社」という。)がリストアップされた。これら追加8 社は、当社の第110 期(平成25年3月期)決算における会計帳簿には取引の記録が無く、不正取引の最近での取引に関与していないため関与の察知が遅れたが、A社から提供された資料に基づき当社の過去の取引データを突合したところ、平成21年8月まで当社の直接の仕入先として6 社が実績として記録に残っている。また、残りの2社は当該6 社の先の仕入先であり、当社の直接の仕入先としては確認できなかった。
 これら追加8社は、元SD長の個人的な遊興費捻出の目的で利用されたことがA社提供の資料で確認できた。
・ A社及び元SD長の遊興費捻出の目的で、架空の設備据付代金として仕入を計上し、それを当社から直接に支払い、その代金を下請代金としてA社に支払っていた3社
 @ O社
 A P社
 B E社
・ 上記@〜B各企業とは別に当社からの支払い代金を受領後、下請代金としてF、Gの会社に発注代金を支払っていた3 社
 C L社
 D M社
 E N社
・ 実際に架空代金を現金化した会社(これらの現金は、一定の金額(税金見合い)を残し、A社と元SD長に渡されていた)
 F J社
 G K社
**********

■企業会計の決算書を書き換えるほどの事件にしては、社内関係者による横領金額は意外に少ない気がする。民間の場合、投資家への信頼回復のためには、当然ながら、透明性のある情報開示が重要であることがこれをみても良く分かる。一方、安中市タゴ51億円事件では、使途不明金が14億円以上にも達したまま、捜査が打ち切られてしまった。それについて安中市は市民に真相と責任を明らかにするどころか、かえって胸をなでおろしたと見えて、その後、なにも語ろうとしてこなかった。松井田町との合併に際しても、松井田の住民への事件についての説明は行われなかった。

【ひらく会情報部・タゴ51億円事件18周年記念調査班・この項つづく】

※安中タゴ51億円事件の参考情報
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