2015/11/3  1:11

八ッ場ダム建設工事に係る土地収用法に基づく6.26公聴会の模様(その8)  八ッ場ダム問題

■午後の部の休憩の後、最後の公述人らが次々に登壇しました。


【議長】 それでは、公聴会を再開します。
 次は、冨永靖徳さんから公述をしていただきます。
 冨永さんは、壇上に上がり、公述人席に着いてください。
 また、公述人からは起業者への質問の希望がありますので、国交省関東地方整備局の方も、壇上に上がり、起業者席に着いてください。
          (公述人・起業者登壇)
【議長】 よろしいですか。
【公述人(冨永)】 はい。
【議長】 そちらは大丈夫ですか。
【起業者(小宮)】 はい。
【議長】 現在の時刻は4時1分です。ただいまから公述を開始し、30分間で終了するよう、お願いいたします。また、終了の10分前、5分前、1分前に呼び鈴で合図をするとともに、表示によりお知らせしますので、目安にしてください。
 なお、終了時間までに終了しない場合には、公述の中止を命ずることとなります。それでは、公述を開始してください。
【公述人(冨永)】 埼玉からやってまいりました冨永と申します。私はしばらく前まで大学で教鞭をとっておりましたけれども、河川工学の専門家でも地質の専門家でも、ましてや法律の専門家でもありませんので、一市民として、埼玉と、それから、群馬に利害関係を持つ一市民として、自分が違和感を感じたことについてお話をして、それから、二、 三、事業者に質問させていただきたいと思います。
 まず、この事業認定なんですけれども、事業認定制度に少し問題があるのではないかというふうに思います。それはどういうことかというと、土地収用の申請者とその申請者に土地収用の法的根拠を与える事業認定者が同一の機関、つまり国交省であるということは極めて不備なんじゃないかというふうに思います。第三者機関、あるいは、全く関係のない機関が当然認定すべきことであるというふうに考えますので、まず、この不備を今後ただしていただきたいなというのが1つの意見です。
 それから、国交省がなさることですから、どこにも違法性はないかと思うんですけれども、八ッ場ダムについては著しく不当であると私は考えておりますので、その立場を明らかにして、それから、幾つか二、三の質問をさせていただきます。
 まず、既に八ッ場ダムの不当なことにつきましてはもう何人かの、もう既に出尽くしていると思いますけれども、一応私が考えている不当なことということについて二、三お話ししたいと思います。
 八ッ場ダム事業による公益性というのは、憲法29条1項で規定されている財産権の侵害を正当化するものでありますので、非常に慎重に検討していただきたいと思います。私の結論は、この八ッ場ダム事業は決してその財産権を侵害するほどの公益性と、それから、-162- 緊急性を持っていないというふうに考えています。
 それは以下のとおり簡単にまとめますと、1つは、もう既に出てきましたけど、治水の問題であります。カスリーン台風の話がたくさん出ていましたけれども、先ほど、高橋さんからお話があったとおり、現在、カスリーン台風が同じように襲ったとしても、八ッ場ダムはほとんど役に立たないということを国交省自身も認めているわけで、そんなところに、ダムをつくるということ自身が私はとても違和感を感じています。
 また、その治水の根拠となる基本高水というものは、カスリーン台風以後の実績から見ても、非常に突出して高い値なので、これは恣意的な設定としか思えません。この件については後で質問いたします。
 利水につきましても、最近、これももう既に出尽くしたと思うんですけれども、最近は水需要が減っておりますので、東京都の予想というのは全く恣意的なものであるとしか言えないわけですね。人口も減る傾向にありますので、利水の点からいっても、八ッ場ダムというものの緊急性、公益性というのは非常に低いであろうというふうに思っております。それから、地盤の問題ですね。これは皆さんご承知と思うんですけれども、現在のダムサイトの位置は既に過去において、国会において、ここは危険だから、別な場所に移せということで下流に移されたはずなんです。下流に移したときに、吾妻渓谷が破壊されるからということで、またもとに戻したんですね。これは全く理解できない。一度ここは地盤が危ないからといってやめた場所にまた移したということは、何かが変化しなきゃいけないわけですね。ですから、国会答弁が間違っているか、あるいは、国会答弁の後で何かの変化があったかということで、これも後で質問いたします。
 それから、もちろんダムを建設しますと環境破壊は免れません。ですから、環境を破壊しないでダムを建設することはできないんですが、そのときに、環境破壊とダムに対する公益性をやっぱりてんびんにかけなきゃいけないわけですね。我々が生活していく上で必ず環境を破壊しなきゃいけないんですけれども、その環境の破壊する程度と、それから得られる公益性あるいは緊急性というものをはかりにかけてやらなきゃいけないんですが、八ッ場ダムに関してはそれは全く環境破壊を上回るような、そういう緊急性と公益性を持っていないというふうに私は考えています。
 それから、これも既に出たと思いますが、文化遺産ですね。非常に縄文から天明期に至る遺跡の宝庫なわけですけれども、ダム事業はこれらの文化遺産を不可逆的に破壊いたします。日本国民全体の大きな損失を伴いますけれども、そのダム事業がこの損失を上回るほどの緊急性と公益性を持っていないというふうに私は考えています。
 以上が、ほかにもいろいろありますけれども、とりあえず簡単にまとめると、以上が私のこの八ッ場ダムに対する一つの立場であります。
 これから国交省に対して3つ質問いたします。1つは戸倉ダムと倉渕ダムの中止と八ッ場ダムの推進との整合性について、それから、2番目は先ほどお話しいたしました地盤の問題について、3番目は基本高水のことについてご質問いたします。順次質問いたしますので、お答えしていただきたいと思います。
 まず、戸倉ダムと倉渕ダムの中止と八ッ場ダムの推進の整合性についてですね。国交省は2003年、このときはまだ国交省じゃなかったかもしれませんけど、建設省だったと、水資源機構ですか。2003年12月25日に群馬県の片品村で建設中の戸倉ダムの事業中止を決めました。中止の主な理由が水需要の減少、それから、自然環境への配慮という、いっぱいあったと思うんですが、等々なんですが、これは八ッ場ダムとほとんど同じ状況ですよね。
 しかも、戸倉ダムの場合には水没人家もないし、地域住民はある意味、完成を願っていたわけで、反対運動もなかったわけですね。さらに、建設費用は八ッ場ダムと比較して格段に少ない計画だったはずなんです。ですから、なぜ多くの問題を抱えている八ッ場ダムは建設を推進して、もう格段に条件のよい戸倉ダムは中止になったか、両者を比較して、まず、納得のいく説明、まずそこからお願いいたします。
【議長】 起業者側、回答願います。
【起業者(小宮)】 お答えいたします。戸倉ダム、水資源機構の、当時、水資源開発公団の事業だったと思いますけれども、これにつきましては、全ての利水の参画する参画者、利水参画者が事業から撤退するという意向を表明しております。そうしますと、治水、利水としての共同事業としてのメリットがなくなったために、ダム事業を中止したものでございます。それは……。
【公述人(冨永)】 なぜそれは、なぜ撤退するようなことに……。
【議長】 公述人、公述を続けてください。
【公述人(冨永)】 なぜそれは撤退するような事情があったんでしょうか。そのことについて、ちょっと今は理解できなかったんですけれども。
【議長】 回答願います。
【起業者(小宮)】 利水の参画につきましては、各利水参画者、地方自治体になるかと思いますけれども、そこが適正に判断されてくるということで、その中で参画者が撤退を表明するというようなことがあったというふうに考えております。
【公述人(冨永)】 それが主な……。
【議長】 地方公共団体の判断だったということですね。公述を続けてください。
【公述人(冨永)】 何の判断と、今の。
【議長】 地方公共団体の判断だったという。
【公述人(冨永)】 地方公共団体がやめろと言ったことで、そのときに国交省はその指導その他は入らなかったんですか。国の事業として、その地方公共団体の考えがほんとにそうなのかということを確かめることはなさらなかったんですか。
【議長】 ちょっと別のダムのことですので、そこまでどうかわかりませんけども、回答できるのであれば、回答してください。
【起業者(小宮)】 戸倉ダムは水資源機構の事業ですので、詳細について我々のほうでは、八ッ場としては存じておりません。
【公述人(冨永)】 わかりました。
【議長】 では、公述を続けてください。
【公述人(冨永)】 それでは、次に、倉渕ダムなんですけれども、これは平成15年度、2003年12月3日に自由民主党の一般質問に対して、小寺知事さんが以下のように答弁をしているんですね。それは、「倉渕ダムの建設事業につきましては」、省略ですね、「財政面から考えますと、本体工事に着手することによって、今後数年間で二百数十億円に及ぶ大きな投資を必要とすることになります。現在の県の厳しい財政状況を考慮すれば、これはなかなか難しいことであります。また、事業の緊急度や県民の事業に対する理解度という点において、カスリーン台風以来、大きな被害が出ていないことや、ここ数年、水道需要が伸びていないこともあって、治水、利水の両面において、さらに慎重な対応が必要であると考えております。これらを総合的に勘案いたしますと、現時点におきましては、倉渕ダムについては来年度より当分の間、本体工事及び残りの工事の着手を見合わせることにして」と、以下いろいろ続くんですが、その後、倉渕ダムは凍結されて中止ということになっております。
 この答弁から、倉渕ダムの取り巻く環境といいますのは八ッ場ダムとほとんど同じですよね。お金がかかって、利水に必要でなくて、それから、治水としてもほとんど問題ないという判断なわけです。
 ですから、そういう、しかも、八ッ場ダムの場合はそれ以上の問題をさらに抱えていますね。ヒ素の問題であるとか、あるいは、酸性土の問題であるとか、炭酸カルシウムの問題であるとか、いろんな、品木ダムの問題とか、いろんな問題を抱えているわけですけれども、その倉渕ダムを取り巻く環境、八ッ場ダムを取り巻く環境、同じどころか、八ッ場ダムのほうがもっと厳しい環境なわけですけれども、それにもかかわらず、倉渕ダムはやめて、それで八ッ場ダムは推進なんですが。
 そのときに、おそらく国交省が答えるだろうことは、これは県のダムであると、八ッ場ダムは国のダムであるというふうにお答えになるんじゃないかと予想されるんですけれども、その場合、予算で自然が変わるわけはないんです。自然として必要なことは、県のダムであろうと、国のダムであろうと、やっぱりつくるものはつくらなきゃいけない、要らないものは要らないということで、県のダムだから、あるいは、国のダムだからということでそれを2つの区別をされるということは非常に私としては納得がいかないんですが、その点についてぜひお答えいただきたいと思います。
【議長】 起業者側、回答願います。
【起業者(小宮)】 お答えいたします。今ご指摘にように、倉渕ダムにつきましては群馬県の事業でございますが、利水者、利水者が別途、水源の確保可能となって、倉渕ダムの治水、利水上の共同事業としてのメリットがなくなったということなので、群馬県において事業が中止されたというふうに聞いております。
【公述人(冨永)】 倉渕ダムの利水の……。
【議長】 公述人、続けてください。
【公述人(冨永)】 倉渕ダムの置かれた治水に関する状況と八ッ場ダムに置かれた治水の状況というのはどれだけ、どういうふうに違うんでしょうか。ほとんど隣ですよね。八ッ場ダムが治水上必要ならば倉渕ダムだって必要だし、倉渕ダムが必要だということで、要らないということであれば、八ッ場ダムも要らないというふうに、普通の考えならそう思います。
 もし財政上に問題があって、どうしても必要ならば、おそらく県で負担ができないなら、 国が援助しましょうということぐらいやるのが国交省の役目だろうと思うんですね、必要 ならですよね。だけど、片方で、国交省はこれは要らないと多分思ったんだと思います。ですから、地方公共団体が要らないと言ったら、それに乗っかったんじゃないか。私は邪推しているんですけれども、そのあたり、ぜひとも、なぜ倉渕ダムは利水上、治水上の問題でもう問題ないと判断したにもかかわらず、八ッ場ダムはどうしてそういう判断をしなかったんでしょう。
【議長】 ご承知のようですけれども、県ダムのことではありますので、ちょっと正確な答えができるかどうか分かりませんけれども、今のご質問は、利水の撤退の話はわかったけれども、治水上の観点は倉渕ダムはなかったのかというご質問かと思いますけど、それについてご回答できますでしょうか。
【起業者(小宮)】 議長も言われるように、県のダムの事業で詳細の点については我々は答える立場ではございませんけれども、聞いているところでは、治水に関する部分について、これについては、引き続き、河川管理者である群馬県が検討を行っていくというふうに聞いております。
【議長】 公述を続けてください。
【公述人(冨永)】 今も検討しているんでしょうか。もう中止になったんじゃないでしょうか。ごめんなさい、まだ中止になっているわけではないんでしょうか。私、そのあたり、ちゃんと把握してないんですけれども。私は中止になったというふうに、はい。
【議長】 県ダムの判断の話ですけれども、お答えできるのであれば、お答えください。
【起業者(小宮)】 ちょっと県において、ダムにかわる治水が必要というふうには聞いております。我々のほうとしては、県のダムのことですので、ちょっとこれ以上お答えする立場にはないと。
【議長】 今の回答ですと、ダムでやるか、ほかの手段でやるかはちょっと把握してないという。
【公述人(冨永)】 わかりました。そうすると、でも、なおかつ、八ッ場ダムは利水、治水上の問題として必要だというふうにお考え、今でもお考えていらっしゃる。
【議長】 今、八ッ場ダムの治水上の必要性と。
【公述人(冨永)】 そうです。はい。
【議長】 治水ですね。はい。
【起業者(小宮)】 端的に申しますと、八ッ場ダムは治水、利水上必要な事業として検証、あと、いろいろその他を経て、継続という決定がなされておりますので、必要というふうに考えております。
【議長】 公述を続けてください。
【公述人(冨永)】 決定はどなたがなさったんですか。
【議長】 回答願います。検証の結果、継続が必要だと決定は誰がしたのかというご質問ですね。
【公述人(冨永)】 どなたが責任を持ってそれを決定されたんでしょう。つまり、どなたがその決定する権限を持っていらっしゃるんですか。
【議長】 ご回答ください。
【起業者(小宮)】 八ッ場ダムの事業につきましては基本計画というものがありますけれども、国土交通大臣が作成した基本計画に基づいて実施していくものでございます。
【議長】 公述を続けてください。
【公述人(冨永)】 それは私も存じておりますけれども、実質的に権限を持って、八ッ場ダムの推進を決定した責任者、つまり何かあったときに責任をとるべき人というのはどういう立場の方でしょうか。
【議長】 要旨にはございませんけれども、お答えできるのであれば、お答えいただい て。
【起業者(小宮)】 大臣の計画に、基本計画に、作成した計画に基づいてやっているということ、あと、今回、事業認定について申請をしているのが関東地方整備局長が申請しているというようなそれぞれの立場、責任を持って事業を推進して……。
【公述人(冨永)】 関東地方整備局長……。
【議長】 公述を続けてください。
【公述人(冨永)】 関東地方整備局長というふうに考えてよろしいんでしょうか、関東地方整備局長。
【議長】 どうぞ。
【起業者(小宮)】 事業の執行、法律に基づいてやっているわけでございますから、一概に誰が、誰の責任がというようなこと、それは一概にはお答えできませんけども……。
【公述人(冨永)】 それは困るので、必ず……。
【議長】 公述人、公述を続けてください。
【公述人(冨永)】 必ず権限を持って決定をされる方が必ずいらっしゃるはずなんですが、それはどなたなんでしょう。権限がない人が決定……。
【議長】 権限というのが、工事実施の権限者は誰かということでいいですか。
【公述人(冨永)】 実施ではなくて、八ッ場ダムの計画を決めた権限を。
【議長】 計画決定権者ということですか、八ッ場ダムの計画決定権者は誰かというご質問ということで。
【起業者(小宮)】 何度も繰り返しになって恐縮でございます。国土大臣が作成した基本計画に基づいて実施しているわけでございますので……。
【議長】 だから、計画決定権者は国土交通大臣だということですね。
【公述人(冨永)】 わかりました。じゃあ、実施の責任者はどなたでしょうか。
【議長】 事業の実施の責任者は誰かということですね。
【起業者(小宮)】 すいません、ちょっと恐縮なんですが、事業実施の責任者ということが質問の事前のものにはありませんでした、なかった、ございませんでしたが、何ていうんですかね、ということでございますが。
【議長】 ちょっと概念として、法律的にいろいろな形があるので。
【公述人(冨永)】 それはわかります。法律的はわかりますけれども、実質的にこの八ッ場ダムを決定して推進しようとした人が必ずいるわけですね。大臣はおそらくそれを聞いて、これは違法でないと、これは違法でないからということで大臣の職務として決定したんだと思うんですが、実質的にこの事業全体を把握して、これは治水、利水面について必ず必要であるから、多少住民の犠牲を払っても、国民の公益のために必要であるというふうに考えて、おそらく考えて、考えていただいたかどうかはよくわかんないですが、考えて決定をされた方がいるはずなんですけれども、それはどなたなんでしょう。
【議長】 はい。
【起業者(小宮)】 いいですか。
【議長】 はい。
【起業者(小宮)】 ちょっと何回も恐縮でございますけれども、今、私が大臣の計画に、作成した計画に基づいてやっているというようにお答えしておりますけども、それがお答えでございまして。
【公述人(冨永)】 権限のある方というのは必ず責任があるんですよね。権限と責任というのは表裏一体のものなんです。権限がなければ責任はありません。だから、私は八ッ場ダムに権限がありませんので、八ッ場ダムが何が起こっても責任はありません。ただ、国交省の方は権限はあるわけですから、それに対して責任があるわけですね。その責任は一体どなたなんでしょう。それははっきり、多分はっきりしていると思うんですけれども、それを曖昧にするから、いろんな方が何をやっても責任がないんだというふうに考えてやっておられるんじゃないかと思います。それは言えるはずですよね。権限を持っておられる方は誰でしょう。
【議長】 ちょっとその責任論というよりは、計画決定権者は国土交通大臣ということですね。事業主体も国土交通大臣ということでよろしいんでしょうか。
【起業者(小宮)】 国土交通省が事業主体でございます。
【議長】 国土交通省が事業主体になる。
【公述人(冨永)】 国土交通省が事業主体って、それは大変優等生の答えなんですけれども、誰かが権限持ってるはずですよね、決めた。誰かが決めてるわけなんです。国土交通省なんていう抽象的なものじゃなくて、どういう役職の方がこれを最終的に決めたんですか。つまり、そうしないと、責任、明らかにならないんですよ。だからいろんなことがいいかげんなことになる。ほんとうに責任を持って、権限を持って、これは国民のために必要だと、何か起こったら俺が責任をとるよということでやる事業なら、それは国民、納得いたします。おお、それはすごい、よくやってくれた。だけど、そうじゃないから、非常にいろんなところで違和感を感じるんです。 もう一度お答えいただきたく質問いたしますが、どなたか、どの役職なんでしょう。
【議長】 行政機関の話をされているのと行政庁の話をされているの等がいろいろありますけれども……。
【公述人(冨永)】 個人の話、つまり、権限を持っている個人はどなたなんでしょう。
【議長】 権限が必ずしも個人に帰着しているかどうかというのはまたあると思いますので、それは必ずしも個人じゃない、要するに大臣なら大臣でなくて、国土交通省というのもあるかもしれませんけれども、それについて、どこが主体なのかということをお答えいただくと。
【公述人(冨永)】 わかりました。時間もありませんので。はい。大体。
 それでは、2番目ですね。2番目、先ほども言いましたとおり、地盤の強度が問題であると国会で答弁したまさにその場所につくるということに対して、国土交通省はどういう見解を持っておられますか。
【議長】 2番目の質問だと思います。ご回答いただければと思います。国会答弁でした場所に建設するということについて。
【起業者(藤原)】 では、ご質問についてお答えいたします。ご質問の地盤の強度に問題があるとの国会答弁のあった1970年当時は、限られた技術的知見をもとに、お尋ねのような懸念がありました。これまで行った現地踏査、ボーリング、横坑などによる調査によって、過去の想定よりも変質部の分布が上流からダムサイトに向かって次第に範囲が狭くなり、ダムサイト付近には分布が見られないことが確認されております。
 河床を横断する岩の断層の存在については地質境界ということが判明し、ダムサイト周辺にダム基礎地盤として問題となる脆弱な断層破砕帯の存在はないことが確認されています。
【公述人(冨永)】 わかりました、はい、大体わかりました。
【議長】 すいません、こちらが指示しますので。
【公述人(冨永)】 ごめんなさい。
【起業者(藤原)】 続けさせていただいていいですか。
【議長】 はい。では、答弁が途中でしたので、答弁してください。
【公述人(冨永)】 簡潔にお願いいたします。まだ質問、ありますので。
【起業者(藤原)】 では、簡単に。
【公述人(冨永)】 簡潔に。
【起業者(藤原)】 全般的に、ダムの基礎岩盤として求められる強度を有しているとの科学的根拠が得られていることから、ダムの基礎地盤としては問題ないというふうに評価しております。
【議長】 公述を続けてください。
【公述人(冨永)】 じゃあ、その判断がもし間違っていたとしたら、どなたが責任を持ちますか。つまり、そういう判断をされたわけですね。だけど、その判断は間違っているかもしれません。その間違ったときに、どなたが責任を持ちますでしょうか。
【議長】 とりあえず、まず、起業者側は答えてください。
【起業者(小宮)】 今、お答えしましたけれども、基礎岩盤としては問題ないというふうに評価しておりまして……。
【公述人(冨永)】 だから、それは……。
【議長】 仮定の話にはお答えできないということですか。
【起業者(小宮)】 はい。
【議長】 公述を続けてください。
【公述人(冨永)】 問題ないという判断されたんですが、その判断は間違っているかもしれません。その間違っていた判断が明るみになったときは、どなたが責任とります?
【議長】 起業者側、回答願います。
【起業者(小宮)】 今ご指摘ありましたけど、これもちょっと仮定のことになってしまいます。現在、今日はお答えはできないということでございます。
【公述人(冨永)】 わかりました。時間がないので、次へ進みます。基本高水について、もういろんなところから出ておりますけれども、基本高水2万2,000㎥/sというのは実測値ですか。
【議長】 基本高水が実測値かというご質問ですね。
【起業者(小宮)】 実測かどうかというご質問ですね。
【公述人(冨永)】 はい。
【起業者(小宮)】 計算から出していると。
【公述人(冨永)】 計算ですね。
【起業者(小宮)】 はい。
【公述人(冨永)】 どういう計算を使われました?
【議長】 公述人、続けてください。どうぞ。
【公述人(冨永)】 どんな計算でやられました? 貯留関数法を使われました?
【議長】 もともとの計算手法については要旨に明示はしていませんけれども、お答えできますか。
【公述人(冨永)】 はい。基本高水のことですけれども、使われた、先ほど、高橋さんの質問によると、貯留関数法を使われたということらしいんですけれども。
【議長】 回答願います。
【起業者(小宮)】 お答えさせていただきます。八斗島地点上流の時間データが入手できた昭和11年以降のデータを用いて、八斗島地点において、年最大流量標本による流量把握についての試算を行うというようなことから、推算をしております。
【公述人(冨永)】 その推算……。
【議長】 続けてください。
【公述人(冨永)】 貯留関数法だと思いますけれども、1つだけ質問します。その貯留関数法には2つパラメータがあります。その2つのパラメータが相関しているということを認識されていますか。それとも、そんなことは全く初めて聞かれました?
【議長】 もともと質問の要旨にない事項でございますので、今お答えできますか。
【起業者(小宮)】 今、質問はお答えできません。
【議長】 公述を続けてください。
【公述人(冨永)】 貯留関数法というのはパラメータに次元があることをご存じですか。
【議長】 先ほどの関連の……。
【公述人(冨永)】 質問です。はい、はい。
【議長】 続けての質問ですので、今のもともとを把握してないということですので、多分お答えできないんじゃないかと思いますけど。
【公述人(冨永)】 基本高水を計算した非常に基本になることで、皆さん、知っていなきゃいけないことだと思うんですけれども。いいです。はい。あと何分ありますか。
【議長】 5分で。
【公述人(冨永)】 そうですか。 この先ほど質問にありましたけど、200分の1というのは200年に一度という意味 で理解しているんで、素人が考えるとそんなふうに考えるんですが、そうなんですか。2 00分の1の確率というのはどういう意味なんでしょうかね。200年に一度……。
【議長】 回答願います。
【起業者(小宮)】 200分の1確率とは、200年に、今、200年に1回発生するというふうにご指摘になりましたけれども、発生するとか、今後発生しないとかというものではなく、超過確率200分の1の洪水とは。
【公述人(冨永)】 なるほど。200年という意味ではないんですね。
【議長】 すいません、途中で遮るのはやめてください。どうぞ。
【起業者(小宮)】 毎年、1年間にその規模を超える洪水が発生する確率が200分の1であるということでございます。
【議長】 公述を続けてください。
【公述人(冨永)】 わかりました。
 それでは、最初の質問に戻りますけれども、国交省も認めて、僕はこれ、一番違和感を感じているんですけれども、国交省はカスリーン台風と言いながら、カスリーン台風が同じように来ても、八ッ場ダムはほとんど役に立たないと、高橋さんの話にもありましたし、国交省もこれは認めているという新聞報道がありましたけれども、にもかかわらず八ッ場ダムをつくるという、その感覚が全くわからないんですが、お答えください。
【議長】 治水上のメリットがあるのかということですかね。
【公述人(冨永)】 はい。もう一遍補います。
【議長】 はい。
【公述人(冨永)】 国交省は、カスリーン台風がもう一度来たとしても、八ッ場ダムはほとんど役に立たないということを認めておられる、認めておられるんですか、認めておられないんですか。まずそれからお聞きいたします。
【議長】 回答願います。
【起業者(小宮)】 八ッ場、カスリーン台風がもう一度来るというちょっと仮定のことになってきますので、お答えは難しいと思いますがね。
【公述人(冨永)】 それはもう……。
【議長】 続けてください。
【公述人(冨永)】 それはもうシミュレーションされているはずなんで、結果はもう出ているはずなんですが、それをご存じないということですか。それとも、知らないということですか。ご存じないということなら、またそれは話は別なんですけれども、知っているけれども答えたくないということでしょうか。
【議長】 回答願います。
【起業者(小宮)】 知っているけれども答えたくないということではございませんが、カスリーン台風、利根川の治水計画につきましては、カスリーン台風時の降雨パターンだけに限定しているものではなく、吾妻川上流域に集中して降った雨のパターン、そういったものを多く含むものを考慮して策定しているものでございます。
【公述人(冨永)】 それが……。
【議長】 公述を続けてください。
【公述人(冨永)】 それがどれぐらいの確率で来るというふうに考えておられます?50年に一度、100年に一度、1000年に一度、そういうことは議論されたこと、ありますか。
【議長】 回答願います。
【起業者(小宮)】 今言ったのを、カスリーン台風のパターンを限定しているということではないので、それが……。
【議長】 今の全体のご説明いただいたのは、200分の1とか、整備計画だと70か ら80分の1とか、そういうものでなっているんじゃなかったでしたっけ。
【起業者(小宮)】 そのとおりです。つまりそういう……。
【議長】 お答えください。
【起業者(小宮)】 整備計画では70分の1から80分の1というような確率ですので。
【議長】 続けてください。
【公述人(冨永)】 それがよくわからないんですが、それをわかりやすく我々に言うと、 何年に一度ぐらいというふうに理解すればいいんでしょうか。
【議長】 回答願います。
【起業者(小宮)】 今、何年に一度とかいうことを、ちょっと200分の1と重複いたしますけれども、毎年、その規模を超える発生確率が、例えば今言ったみたいに、70分の1とか80分の1であるというようなことを示しているというものでございます。
【議長】 公述を続けてください。
【公述人(冨永)】 ダムの寿命って50年もたないですよね。その間、50年のうちに起こらないならいいじゃないかという、ごく普通の市民の考えですよね。50年、あるいは、100年ももたないですよね。そういうものに対して、過大な、何ていうのかな、危険率をかけるというのは、やはりどうしてもダムをつくりたいがための方便でしかないように、普通の庶民はそういうふうに考えますけれども、どうなんでしょう。ダムの寿命はどれぐらいだと思っておられます?
【議長】 回答願います。
【起業者(小宮)】 一般、特段、ダムの寿命というもの、そういったものは特段お示ししているものはないと存じております。今、ダムの寿命と超過確率の関係というご質問がありましたので、今申しましたように、超過確率がその1年間に超える発生確率とダムの寿命、それが確率によってそれを比較しながら、ダムの、それを比較するという議論という、論じるということは違うというふうに思っております。
【議長】 続けてください。
【公述人(冨永)】 できればわかりやすく、庶民にわかりやすく、それが何年に1回ぐらいというふうに翻訳できるかという、翻訳していただけるとありがたいんですが、それぐらいのことは予想されていると思うんですよね。人に説明するときに、そんな20分の1とか何分の1と言われてもぴんとこないんですよ。これは100年に1回ぐらい来るから危ないんだよと、200年1回が危ないんだよ、50年に1回が危ないんだよという、そういうレベルで言うと、どういうふうに考えればいいでしょうか、今の八ッ場ダムの計算上。
【議長】 ご回答ください。
【起業者(小宮)】 利根川の整備計画では70分の1から80分の1、そういうふうになっておりますけれども。
【公述人(冨永)】 わかりました。わかりました、結構です。はい。 最後、まとめま。
【議長】 まとめてください。
【公述人(冨永)】 先ほど言いましたとおり、八ッ場ダムの計画というのは国交省がなさるわけですから、決して違法だということはなさっていないと思います。これはそう信じています。ただ、著しく不当であるということは間違いないですね。著しく不当であるということは、これは違法であると紙一重なんです。ですから、ぜひともその著しく不当であるということを、いろんな方がいろんな形で表現されたと思うんですけれども、著しく不当であるということをしっかりかみしめてください。
 それと、この八ッ場ダム事業に対する責任者というのをはっきりさせてください。責任者がいないから話が混乱するんですよね。ほんとに決断をして決める責任者がいれば、その責任者がきちんと説明を、自分の職をかけて説明すると思うんです。ところが、今、そのおっしゃったとおり、責任者を何もおっしゃってくださらなかった。ですから、自分の職をかけて説明する方がいらっしゃらない。それがおそらく皆さんの持っている最大の不満だと思います。
 ですから、そのあたり、ぜひともかみしめていただきたい。著しく不当な計画ですので、 できるだけ早くやめていただきたいというのが私の結論です。
 ありがとうございました。
【議長】 ありがとうございました。
 降壇してください。
          (公述人・起業者降壇)
【議長】 次は、土屋信行さんから公述をしていただきます。
 土屋さんは、壇上に上がり、公述人席に着いてください。
         (公述人登壇)
【議長】 準備はよろしいでしょうか。
【公述人(土屋)】 はい。
【議長】 現在の時刻は4時33分です。ただいまから公述を開始し、30分間で終了するようお願いいたします。また、終了の10分前、5分前、1分前に呼び鈴で合図をするとともに、表示によりお知らせしますので、目安にしてください。
 なお、終了時間までに終了しない場合には、公述の中止を命ずることとなります。
 プロジェクターを使用しますので、少し照明を落とします。
 それでは、公述を開始してください。
【公述人(土屋)】 私はこの吾妻川の再下流になります千葉県の松戸市に住んでおります、土屋信行と申します。再下流の洪水の考え方をお話しをして、皆様にダムの建設を一日も早く進めていただきたいという立場でお話をさせていただきます。
 この写真はカスリーン台風の決壊の写真ですが、実はこの決壊現場で私は生まれました。ここに少し高台地が見えますが、わずかに高台になったところに私の両親の家がありまして、6畳に4畳半ぐらいの台所のついたちっちゃな家でございました。洪水は夜中に起こったそうです。昭和22年、決壊したときには私の母は1人でその小さな家におりました。すさまじい音が聞こえた後、すごいにおいがしたそうです。何のにおいなのというふうに母に聞きましたが、何のにおいかわかんないって言っております。私の母は今、95歳ですが、今でもしっかりしております。昔はため池やいわゆる人ぷんがあちこちに置いてあったから、肥だめのにおいじゃないのと言ったら、いや、肥だめとも違うよっていうふうに言っておりました。
 洪水のあった後、みんなで村で保管していた米が全部ぬれてしまって、それを早く干さないと、食べられなくなっちゃうということで、一生懸命食糧の確保にみんなで協力したそうです。私の両親の家は、先ほど申しましたように、6畳一間に4畳半の台所、もちろん今のようなガスや水道はありません。へっついの脇にかまどがあって、まきでご飯を炊いているという状況で、みんな家を流された人たちは堤防の上に逃げてバラックをつくったそうです。
 何といっても、洪水になると、一番高い場所が堤防になってしまいます。堤防以外のところは泥だらけで何も使えないという状態であったそうです。ですから、堤防自身は川の大事な施設ですが、そこに住まざるを得ないということで、私の母には、母の家のところには、長い方で3カ月ぐらい、結局いわゆる避難所がありませんでしたので、残った家に暖まるための暖を求め、そしてまた、食糧を求めてみんなで肩を寄せ合って暮らしていました。
 今、私がいるのは千葉県の松戸というところで、大変ここから見れば最下流になります。当時、カスリーン台風はその最下流の葛飾、江戸川区も襲いました。その襲ったときの水位はやはりみな胸につかるぐらいの水がやってきたということです。
 下のほうというか、下流のほうでもその影響は長く続きました。私たちのいる地域では、1カ月ぐらい水が引かずに、結局水が引いてから、泥を排除して、それで、住まいを確保する。一番困ったのは水がないということなんです。周りの水は、言ってみれば、うんこもおしっこも一緒になって、肥だめが全部あふれ返って流れてきております。あらゆる、土砂ばかりではなくて、そういう人々の生活から出てくる汚染物質というか、そういうものもたくさん流れてきてしまいました。結局、長い時間かかって、そういうリカバリーといいますか、生活の場を確保するという闘いが長く長く続いているというのが最下流の洪水の実態です。
 今、私たちのいる最下流では、この写真は昭和24年のキティ台風という台風ですが、この台風は今度、海から高潮といって潮水が上げてくる洪水です。最下流の地域は上流からの洪水と、それから、海からやってくる洪水の危険にいつもさらされています。そして、また、ここに映っている江戸川区は、地盤沈下のために、一番深いところでは4メートルも沈んでしまいましたので、堤防がないと、どんどん海の水が押し寄せてくる、無尽蔵の海の水が堤防によってかろうじてとめられている状況で、それがやってきてしまうということで、洪水の危険性は、雨が降る時期だけではなくて、1年365日が洪水の危険にさられている地域だと言ってもいいのではないかというふうに感じております。
 そして、そんなところにやってくる、これはカスリーン台風ですが、台風は、結局3日も4日もかかって最下流のほうにやってきました。これは鉄道の上を逃げている人たちの写真ですが、この鉄道全部、当時は堤防の上にいわゆる土手を築いて電車が、汽車が走っていました。その軌道も全部水没してしまいましたので、鉄橋を渡ってこの江戸川区の人たちは市川まで逃げたそうです。
 そして、話を、八ッ場ダムの上流のこのダムのことにお話をいたしますと、私たち最下流の人間は上流のダムができることを非常に期待しています。なぜかというと、昭和22年のカスリーン台風のときに、それまでなかった流域全体で洪水調節をするということから、この赤い印がついているのがダム群でございますが、上流のほうで降った雨についてはダムでためてくださるという計画になって、中流で降った雨は途中にあるこういう遊水池、青いのが遊水池群ですが、渡良瀬遊水池とか荒川の遊水池とか、たくさんの遊水池があって、それでとめてくださる。そして、最下流のほうでは放水路をつくったり、河川そのものを改修したりという役割分担で流域全体でやれることをやって、肩寄せ合ってみんなで協力して流域全体の洪水の安全性を図ろうというふうに決まったのが、昭和22年のカスリーン台風が契機になったというふうに聞いております。
 それ以来、営々とそれぞれの地域でそれぞれの努力がなされてきて、それぞれ分担しなきゃいけない水量というのを決めて、治水事業が進められております。私たちがいる千葉県松戸も江戸川の脇におりますが、江戸川のところには上流から来る水はこういうふうに数字で役割分担を決めていただいた上で治水対策をしてきました。
 治水対策をしてきたという意味は、私たちの父や母の時代は堤防を築くのは地域の人たちでした。農閑期に地域のお百姓さんたちが直接、建設省の事業に、いわゆる出稼ぎという格好になるのかもしれませんが、雇用されて、自分たちで自分たちの堤防をつくりました。ですから、もう壊れちゃいけないということで、一生懸命、土を盛ってそういう堤防をつくってきたんです。
 八ッ場ダムがあるということを前提にこの役割分担の水量が決まっていますが、今、八ッ場ダムが突然なくなってしまうと、当然、とめてくださる水が下流に流れていきます。ですので、下流のほうはそれに合わせて、いわゆる堤防の補強ですとか、堤防がそれを受けとめられるだけの対策をとらなければなりません。
 その対策が現実にどんなふうになるかというと、江戸川の最下流の例ですが、堤防をおおむね60メートルぐらい広げないと、八ッ場ダムの水量が下流にやってきたときに受けとめられないというふうに考えられます。この60メートルの幅というのはもう現代ではほとんどたくさんの方が暮らしていらっしゃいます。その暮らしている方々に移転を求めて全部出ていってくださいということになると、大変な方々が移転をしなければならないということになってしまいます。
 下流では、明治以来、いろいろな対策をそれなりにやってきました。八ッ場ダムが決まる以前の話ですが、江戸川はこういう幅で流れておりました。私たちの地域はそこに引き堤ということで、昭和22年にカスリーン台風があって以来、この堤防を広げる努力をしてきました。この堤防をもう一度広げるというのは大変な事業になってしまいます。これは私の概算ですが、この広げる用地費と移転の補償費と、それから、その堤防の工事費だけで、全体で見ると、利根川の本川では1兆3,000億円、江戸川では7,500億円もかかる大事業になってしまいます。大変のたくさんの方々にさらなる協力を求めていかなければならないという事業になると思います。
 私は、先ほど、このカスリーン台風のあった現場で生まれたというふうに申し上げました。ここでカスリーン台風のときに亡くなった方々は約2,000人の方になります。それ から長い時間かかって、その犠牲を取り戻してきたわけですが、実は私の祖父は新潟の信 濃川の大洪水のときに、大河津分水の水防工事で命をなくしました。35歳でした。残さ れた私の母と祖母は、必死の思いで、父のないいわゆる母子家庭になった母たちはしゃに むに頑張りましたが、その無理がたたって、祖母は祖父の後を追うように亡くなってしま いました。私の母はわずか6歳で孤児になってしまいました。川は違いますが、洪水がこ ういうふうに私の母の人生を大きく変えてしまったわけです。
 命をつなぐことを必死の思いで母は頑張ってきましたが、昭和22年、再びその洪水の 現場で決壊の現場にいたという、そういう悲惨な思いを後世に絶対に次の世代にさせたくないと私の母は言っております。
 私が今現在暮らしている樋之口という場所なんですけど、これは最後に見ていただきました江戸川の引き堤という川の幅を広げる工事の際に、部落の真ん中を分断するように川が引き堤をなされました。部落は埼玉県の三郷市と江戸川区、ごめんなさい、千葉県の松戸市に結局二分されてしまいました。故郷を失った村の人たちは、しかし、これで洪水がなくなるならば、子や孫の世代に安心して米づくりができると村で話し合って、部落が2つに分かれることを承諾したそうです。治水事業とは、現在の私たちのためではなくて、まさに次の世代に対する、今を生きている私たちの責務だというふうに思います。
 洪水は全国でこれまでもたびたび繰り返されてきました。伊勢湾台風では5,000人の命が失われ、昨年の大豪雨でも広島でも74人の方々が土砂崩れの犠牲になりました。結局、私たちの住んでいる日本は大変この雨に弱い、山も急峻で平野も小さい、そういうところに肩寄せ合ってみんなで協力して安全に暮らしていかなきゃいけない、そういう場所です。特にこの吾妻川の最下流にある関東地方は全国でも有数の人口密集地帯でもありますし、また、日本の首都東京を抱える経済の大事な場所でもあります。
 もちろん、上流に住む方々が犠牲になれば、下流が安全になるというものではありません。しかし、流域全体で、上流では上流の役目としてのダム、中流では中流としての遊水池、下流では下流として、それぞれ今まで努力した成果として、この地域全体の安全性を高めなければならないのだというふうに思います。
 なぜかというと、地球温暖化はどんどん進み、気候変動はますます極端化が加速しています。前回、3月に世界防災会議という会議が国連の主催でありました。私の知っているオランダの方がその会議に参加されて、帰るときに私に話をしてくださいました。オランダではもう既に地球温暖化による海面上昇を取り入れた治水対策始めたよ、日本も早くやらないと間に合わないよというふうに言って、皆さんにそれを伝えてほしいというふうに言ってお帰りになりました。
 流域という考え方では、洪水に加えて、利水といういわゆる飲み水の確保も流域全体で調整し合っています。また、かんがい用水も今まさに荒川水系ではかんがい用水が足りない分を利根川水系から融通して、今、埼玉県の田植えが進められているという状況です。
 この昭和22年のカスリーン台風のたくさんの犠牲の命を無駄にしないためにも、もう50年もかかっているからやめちゃえということではなくて、地域全体の治水事業の完成をしていただきたいというふうに思います。この事業はほんとうに次の世代のため、今私たちが生きているために、今楽になるためにということではなくて、次の世代が安心して暮らせる地域をつくり、それを手渡しすることが私たちの責任だというふうに思います。それでなければ、私たちがここに来ている意義がないのではないかというふうに思います。
 また、土地収用ということでございますが、私はもう間もなく私自身、鬼籍に入らんという年になってしまいました。そのときに石の帽子をかぶる際に、我がしかばねと一緒に持っていけるもの以外はこれは全て共有のもの、世代を超えて不動のものであるというふうに考えます。地球全体で見れば、私たちが今いる日本というのは、諸外国との合意の上で日本という場所を使わせていただいているわけで、それが今を住む人々が争うことを防ぐための知恵として、土地収用というルールをつくったというふうに考えます。
 土地の収用は大変残念なことではありますが、土地は個人で持てるものではありません。土地は世代を超えて、地球というものが続く限り、そのときに相互に使い合うウイン・ウインの関係をつくれるルールとして、所有があったり、共産主義の国では共有というものがあったり、我が日本でも墾田永世私有法と、土地の所有形式はさまざまなことがありましたが、こういうルールは今を住む人々が争うことを防ぐ、そのための安定して土地を使い合うための知恵だというふうに思います。
 ここ、土地収用という形に至ったことは大変残念なことではありますが、地域を超え、世代を超えて安全に人々が暮らせるようにするために、残念なことではありますが、やむを得ないことだというふうに考えます
 また、この土地で暮らしてきた方々にとっての土地に対するお気持ちを考えるとき、それは大いに共感できることでもあります。大変申しわけない気持ちとあわせ、大変下流域に住む私たちとしては感謝を申し上げたいというふうに思います。ですから、手続に当た-181- っては十分なご配慮と補償をお願いするものでもあります。
 最後になりますけれども、関東地方は古くから上流域と下流域の相互の交流と助け合いが盛んな地域でありました。秩父の三峯神社というところには江戸の町々の方の感謝の石碑がたくさん建っています。こういうふうに残念な形ではありますが、収用によって犠牲になる方、土地を離れる方については十分な補償をした上で、手続については速やかに進めていただき、一日も早い流域全体の治水の安全が確保されることを希望いたします。
 本日はありがとうございました。
【議長】 ありがとうございました。
 降壇してください。
          (公述人降壇)
【議長】 これで本日予定しておりました公述は全て終了しました。
 これにて、一級河川利根川水系八ッ場ダム建設工事に関する事業認定申請に係る公聴会を終了いたします。
 公聴会の円滑な進行にご協力いただき、ありがとうございました。会場の皆様はご退場ください。
                    ―― 了 ――
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【市民オンブズマン群馬・この項終わり】
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