恐るべし多胡運輸・・・ローリー炎上事故の痕跡を首都高に払拭させた21年度決算報告  首都高炎上とタゴ運輸

■株主総会ラッシュだった先月6月26日(金)に、首都高速道路株式会社でも第4回定時株主総会が開催されました。ただし、株主といっても、国土交通大臣(49.99%)、東京都(26.72%)、神奈川県(8.28%)、埼玉県(5.90%)、横浜市(4.45)、川崎市(3.82%)、千葉県(0.80%)の持分ですから、ホテルの大会議場を借り切って、と言うわけではなく、霞ヶ関の本社の小さな会議室でこじんまりと開かれたことでしょう。

 そこでの報告事項は、前年同様、首都高にとって第4期目となる平成21年度の事業報告、連結決算書類及び計算書類の内容報告、会計監査人及び監査役会の連結決算書類監査結果報告でした。また、決議事項は第1号議案「剰余金の処分」、第2号議案「取締役選任」、第3号議案「退任取締役に対する退職慰労金贈呈」の件でした。

■首都高では、株主総会の前に、6月11日に決算説明会を開いており、ここで平成21年3月期の連結業績を発表しました。

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多胡運輸で勢揃いする出光の石油タンクローリーと、出光系のアストモスLPG運搬車。首都高からの45億円の請求圧力も跳ね返す多胡運輸のバリアーの底知れぬ不気味さは、やはり政治圧力からか。

 これを見ますと、連結決算の概要は次のとおりです。(単位:億円)
項  目 / 20年3月期/21年3月期(増減)/平成22年3月期の見通し(増減)
営業収益      / 4,449 / 3,069(▲1,379) / 5,708(+2,638)
 料金収入等    / 2,558 / 2,469(▲  89) / 2,584(+114)
 道路資産完成高  / 1,828 /  435(▲1,392) / 3,025(+2,589)
 その他      /   63 /  167(+ 104)  /  98(▲69)
営業費用      / 4,423 / 3,029(▲1,394) / 5,691(+2,661)
 内:道路資産賃借料/ 1,934 / 1,834(▲ 100) / 1,939(+104)
営業利益      /   25 /   40(+ 15) /  16(▲24)
経常利益      /   31 /   46(+ 14) /  6(▲40)
当期純利益     /   20 /   32(+ 12) /  3(▲29)

 また、高速道路事業だけで見ますと、次のとおりです。(単位:億円)
項  目     / 20年3月期 / 21年3月期(増減)
営業収益      / 4,386 / 2,904 (▲1,481)
 料金収入等    / 2,558 / 2,469 (▲89)
 道路資産完成高  / 1,828 /  435 (▲1,392)
営業費用       / 4,368 / 2,874 (▲1,494)
 内:道路資産賃借料/ 1,934 / 1,834 (▲100)
営業利益      /  17 /  30 (+12)

 首都高では、概要を次のようにまとめています。
◆料金収入等は2469億円(対前期比89億円の減収)
◆当期に完成した道路資産の気候への引渡し435億円
◆協定に基づく機構への賃借料1834億円の支払い

 首都高の決算説明には、利用交通量及び渋滞損失時間の推移の統計データも含まれています。それによると、1日あたり首都高速道路通行台数は、平成18年度115万台、平成19年度が115万台、そして平成20年度は111万台となっています。このうち、大型車の割合は、平成18年度12万台、平成19年度12万台、平成20年度11万台で、いずれも10%となっています。平成20年度が減少したのは、多胡運輸の事故が影響していると思われますが、あっと驚いたのは、1年間の渋滞損失時間です。首都高によれば、平成18年度が2000万台・時、平成19年度が2600万台・時、そして平成20年度が1900万台・時となっています。どういう計算根拠なのか分かりませんが、多胡運輸の大渋滞は、トータルで見ると、全く渋滞時間には影響しなかったばかりか、通年では3割近く渋滞損失が減少しているというのです。???

■上記を見る限り、多胡運輸のタンクローリー横転炎上事故による45億円余の影響は微塵も感じられません。その理由は分かりませんが、高速道路事業だけでみると、道路資産賃貸料が100億円減少しており、料金収入の落込み分89億円を完全にカバーして11億円の余剰を生み出した上に、営業収益で、料金収入等以外の収入が104億円も増えたため、結果的には、前年度より利益が12億円改善しています。

 しかし、平成22年3月期の見通しを増減率で見ると、21年度プラスだった項目は全てマイナスとなり、21年度マイナスだった項目がすべてプラスになっています。これはいったい何を意味しているのでしょうか。民営化の途上にある首都高だけに、初めに、純利益ありきの決算が重要だと思われますが、昨年の経常利益31億円からすれば、多胡運輸のローリー横転炎上事故による損害は、その1.5倍になり、完全に利益が吹き飛ぶほどの損害規模です。しかし、民営化途上である首都高では、赤字決算は許されない状況にあります。ほどほどの数字にするには、次年度の業績が多少犠牲になってもやむをえないと考えたのかもしれません。

■では、首都高の平成21年度の事業報告を次に見てみましょう。なお、文中、【赤字】で示した数値は平成20年度の決算です。

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【事 業 報 告】平成20年4月1日から平成21年3月31日まで
1.当社グループの現況に関する事項
(1)事業の経過及びその成果
 当連結会計年度におけるわが国経済は、前半は、世界的な金融危機・世界経済減速により弱含みで推移しましたが、後半は、金融危機の深刻化や為替相場の変動等により、輸出・生産や企業収益が大幅に減少するなど急速に悪化し、極めて厳しい状況となりました。
 このような経済状況の下、当社においては、平成21年2月11日に晴海線(東雲ジャンクション〜豊洲出入口間1.5km)を新たに開通させるとともに、神奈川1号横羽維大師出入口(横浜方向)を同年3月29日に完成させるなどの事業を展開してまいりました。
 これらの関連等により、首都高速道路ネットワークの利便性の向上、アクセス強化が図られております。
 利用交通量は、普通車は対前期比2.7%減【昨年0.1%減】、大型車は6.4%減【1.3%増】となり、全体としては前期より3.0%減【ほぼ横ばい】の407百万台【420百万台】(110万台/日【115万台/日】)となっております。
 また、高速道路事業以外の事業として、5箇所の都市計画駐車場等の駐車場事業、首都高速道路上の20箇所のパーキングエリアの運営及び管理等を展開してまいりました。
 グループ経営においては、料金収受業務に係る連結子会社8社を3社に再編するとともに、高速道路事業における維持修繕業務(構造物点検)に係る連結子会社1社及び交通管理業務(車両の運転及び故障車、事故車の救援等)に係る連結子会社1社を設立しました。これにより当社グループ会社は、高速道路におけるサービスの提供等を行う料金収受子会社3社【8社】、交通管理子会社2社【1社】及び維持修繕子会社7社【6社】並びに駐車場、パーキングエリアにおけるサービスの提供等を行う子会社3社の計15社【18社】となっております。
 この結果、当連結会計年度の営業収益は306,973百万円【449,915百万円】(前年同期比31%減【52%増】)、営業利益は4,052百万円【2,544百万円】(同59%増)【37%減】、当期純利益は3,252百万円【2,037百万円】(同59%増【24%減】)となりました。事業の部門別の営業収益の状況については、次のとおりです。

[高速道路事業]
 当社グループは、首都高速道路のネットワーク整備の推進と営業路線の清掃・点検等の適正な管理を24時間365日体制で実施しており、営業路線延長は295.0km【昨年度293.5km】となっております。
 料金所周辺での渋滞緩和やお客様のキャッシュレス化による利便性の向上等を図るために普及に努めているETCについては、従来から実施しているパーキングエリア等におけるワンストップサービスや曜日別時間格別割引等を実施してまいりました。
 その結果、ETCの利用率は、平成21年3月第4週の週間平均が83.3%【平成20年度4月第3週の平均80.0%】となり、前期比で3.0%の増となっております。
 また、お客様サービスの一層の向上のため、ホームページに設けたグリーンポストやお客様満足度調査等を通じて得られたお客様の要望や意見を各種改善に反映し、サービス向上に努めてまいりました。
 さらに、お客様に、より安全・快適に首都高速道路をご利用いただくため、走行環境の改善やパーキングエリアのリニューアル等を行ってまいりました。
 このような状況の中で、営業収益のうち、料金収入等は景気後退やタンクローリー火災事故に伴う通行止めの影響等により、246,907百万円(昨年同期比3%減)【255,858百百万円(前年費±0)】。
 高速道路の新設については、首都高速道路の最大の課題である渋滞を解消すべく、中央環状新宿線(3号渋谷線〜4号新宿線間4.3km)の平成21年度中の開通、中央環状線の最終区間である中央環状品川線(3号渋谷線〜湾岸線間9.4km)の平成25年庚申の開通に向け事業推進に努めるなど、5路線29.0kmの整備を行ってまいりました。
 このうち晴海線(東雲ジャンクション〜豊洲出入口間1.5km)を平成21年2月11日に、神奈川1号横羽線大師出入ロ(横浜方向)を同年3月29日に完成させました。
 また、高速道路の改築等については、出入口増設等事業として王子南出入口の整備等、地震災害時の安全強化のため支承・連結装置の耐震性向上対策等の防災安全対策を継続して行うとともに、舗装の打ち替え等営業中路線において必要となる構造物等の更新を行ってまいりました。
 当連結会計年度の高速道路事業営業収益のうち、独立行政法人日本高速道路保有・債務返済機構(以下「機構」といいます。)への債務引渡しに伴う道路資産完成高は、晴海線(東雲ジャンクション〜豊洲出入ロ)及び神奈川1号横羽線大師出入口の開通等があったものの、前期の中央環状線新宿線(4号新宿線〜5号池袋線間)の開通等による道路資産完成高を下回ることから43,588万円(同76%減)【182,814百万円(同1%減)】となりました。
 この結果、当連結会計年度の高速道路事業営業収益は290,496百万円(同33%減)【438,672百万円(55%増)】。

[駐車場事業]
 都市計画駐車場及び高架下等駐車場において、長期安定的な定期顧客の獲得とお客様にご利用しやすい料金の設定等の取組を行いました。また、新規駐車場の開設を行ってまいりました。
 この結果、当連結会計年度の同事業営業収益は2,802百万円(同1%減)【2,857百万円(同54%増)】となりました。

[受託事業]
 横浜環状北線建設事業と圓事業に関連する都市計画道路事業の用地取得等をはじめ、国、地方公共団体等の委託に基づく道路の新設、改築、維持、修繕等を実施してまいりました。
 この結果、当連結会計年度の同事業営業収益は12,843百万円(同397%増)【2,580百万円(同53%減)】となりました。

[その他の事業]
 休憩所等事業として、首都高速道路上の20箇所のパーキングエリアにおいて、お客様が気軽に立ち寄れる都市型パーキングエリアの実現を目指し、代々木パーキングエリアや川ロパーキングエリアのリニューアル、夏季繁忙期の販売促進イベントの実施、営業時間の延長等お客様のご要望に合致した施策を行ってまいりました。
 また、高架下賃貸施設の運営及び管理等を行ってまいりました。
 この結果、当連結会計年度の同事業営業収益は1,077百万円(同16%増)【923百万円(同60%増)】となりました。
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■決算報告書の文面の構成は、昨年度と同じで、文章もかなり類似しています。この中で、多胡運輸のタンクローリー横転炎上事故に一言だけ触れていますが、新日本有限責任監査法人の監査報告書には、この多胡運輸の事故による業績への影響については何のコメントもありません。

 この理由としては、多胡運輸に損害賠償請求をすると、損益への影響が確定することになるため、まだ損害額が確定しないという理由なのか、あるいは多胡運輸等に請求しても確かに回収できる保証がないという理由なのか、定かではありませんが、記載しないほうがよいと、監査法人も判断したようです。決算書を見る限り、施設の損壊のみならず、長期間大渋滞を招いて述べ何百万人もの利用者にも多大な損害を与えた首都高史上最大の多胡運輸ローリー横転炎上事故は、首都高の経営に影響になんら影響を与えることはなく、渋滞損失時間への影響も全くなかったという内容になっています。

 こうして、45億円以上もの損害を首都高に与えておきながら、首都高の決算報告さえ書き変えることのできる多胡運輸の底知れぬパワーはいったいどこから来るのか、その秘密を探って行きたいと思います。

【ひらく会情報部】
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