2009/9/12  21:25

民主党政権誕生が迫り、断末魔のあがきの八ッ場ダム推進派関係者  八ッ場ダム問題

■いよいよ来週に迫った鳩山民主党政権誕生を間近にして、八ッ場ダム推進派関係者の最後のあがきが目に付きます。

 8月30日の衆院選の衝撃的な選挙結果を受けて、国土交通省の谷口博昭事務次官は、9月3日(木)に記者会見をし、民主党がマニフェスト(政権公約)で建設中止を掲げた八ッ場ダム本体孝治の入札について、工事発注者の関東地方整備局に延期を指示したことを明らかにしました。

 入札延期の理由について、同次官は「新しい大臣が決まる日程と入札の実施時期が重なり、見切り発車のように思われても困る」と述べ、駆け込み的に入札手続を進めることは適切でないというコメントを出しました。国交省は、入札を9月11日から18日まで受付け、10月から本体工事に着手する予定でいたからです。

 そのうえで、同次官は、「新大臣には、ダムの治水、利水面での必要性、これまでの事業経緯、関係する都県知事や地元首長らの考えを説明して、適切に判断していただきたい。できれば現場も見ていただきたい」と要望しました。

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平成19年9月26日、地元買収交渉委員長の萩原昭朗の誕生日を祝う「丸岩会」が、伊香保温泉ひびき野(前年はホテル白雲閣)で開催され、土建業者ら70名あまりの前で、県知事と一緒に雛壇に座った国交省の八ッ場ダム工事事務所の当時の所長の安田吾郎が、工事説明をした際に、出席者に配布した資料の表ページ。

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同じく、資料の裏ページ。詳しくは続きをどうぞ

■八ッ場ダムは、国が利根川支流の吾妻川に計画している総貯水量約1億850万トンの多目的ダムで、総事業費約4600億円の半分以上を茨城、栃木、群馬、埼玉、千葉、東京の6都県が負担することになっています。

 旧建設省が、1952年に現地調査を開始し、水没予定地の住民が激しい反対運動を繰り広げたり、草津温泉等から出る強酸性水による鉄構造物やコンクリート構造物の劣化問題などで、一時は頓挫するかと思われていましたが、前者に対しては、各種の補助金というアメにより、後者に対しては、中和システム(中和工場・品木ダム・ダム付随の処分場)の建設により解決したとする国や群馬県のウソのPRにより、再び計画が浮上し、ダム湖畔の代替地に集落ごと移転する案が提示され、地元が受け入れさせられたことから、1994年に着工、国土交通省は、09年10月にもダム本体の建設に着手、2015年度に完成させて運用を始める計画だったのです。

■これまで、自民党長期政権下で、官僚と自民党政治家の間で、できレースで進められてきたこの世紀の大ムダ公共事業の象徴も、ようやく目覚めた国民の審判による選挙で、官僚主導の無駄な公共事業を止めさせるという民主党のマニフェストに対して、絶大な支持が寄せられたため、急転直下、八ッ場ダムは風前の灯となっています。

 このため、自民党の下で胡坐をかいて、黙っていても利権の裾分けに預かれていた連中が、慌てて猛反発を初めています。

 特に必死なのが、水没地区の住民組織を自称する「八ッ場ダム水没関係五地区連合対策委員会」の萩原昭朗委員長です。なにしろ、八ッ場ダムの補償金を一手に扱うことにより、地元のかみつけ信用金庫の理事長にのし上がり、地元では大地主として、また、神社や寺の総代役として、地元住民はもとより、国交省や群馬県から一目置かれる事をよいことに、やりたい放題やってきて、巨額の利権にありつけたのに、来週に迫った民主党政権誕生で、そうした利権がいっぺんに吹き飛びかねないためです。

■この利権の権化のような御仁は、八ッ場ダムを評して、「治水で東京を守るダム。建設を受け入れた地元を無視している。今後は民主党の鳩山代表に、ダム建設を陳情する運動を起さなければ」と、利権擁護に必死です。群馬県の川滝弘之・県土整備部長が「この件については、国交省から話を聞いていないので、答えられない」と文書でコメントをマスコミに出し、坂井賢一・特定ダム対策課長も「延期に至った経緯などの詳しい説明を早急に求めるしかない」とオロオロするばかりでした。

■その後、さらに危機感を深めた推進派は、9月10日に、地元県議らに声をかけて、事業継続を求める「八ッ場ダム推進吾妻住民協議会」の設立総会を同県長野原町で開きました。報道によれば、約300人が参加し、町長や住民代表らがダムの必要性を訴え、中止撤回を強く求めたとされています。

 無駄な事業を見直すとの公約を掲げて当選したはずの、大沢正明知事は総会での挨拶で、利権目当ての推進派の前で、「関連都県や市町村へ相談がないまま、ダム本体工事の入札が延期されたことは言語道断」と国土交通省の対応を批判する有様です。同じく、推進派の長野原町の高山欣也町長は「中止はダム完成を前提とした住民生活を脅かす」となどと強調しました。そして、呆れたことに、その総会の席上で、あろうことか、同協議会長に選ばれた77歳になる八ッ場ダム水没関係五地区連合対策委員長の荻原昭朗が、「住民との約束を一方的に破ることは許されない」と憤りをあらわにしたのでした。この御仁がいかに、巨額の公金を貪ってきたのかは、当会のブログでも詳細に報告していますが、まさか、民主党がこれほど大勝するとは思っていなかったことでしょう。そのうろたえぶりが、手に取るようにわかります。

■さらに、国交省は、「中止したほうが余計にコストがかかる」などと、狡猾な説明をまたもや始めました。

 国交省によると、既存の藤原ダム、相俣ダム、藤原ダム、矢木沢ダム、奈良俣ダム、下久保ダムについて、03〜07年度までの5年で、年間の維持管理費を平均すると、8億3600百万円だったとして、工法などが異なるダムもあるが、八ッ場ダム(貯水量1億750万トン)の維持管理費を試算してみると、同じタイプで貯水量が丁度2倍の下久保ダムの維持管理費(年平均9億1700万円)をやや下回るという資産を出しました。相変わらず、でっち上げ数字を平然と出していますが、国交省は、「建設か中止かについては、新しい国交大臣の判断に従う」といいつつも、幹部役人は「建設中止で治水、利水効果を放棄しても、建設費と数十年分の維持管理日の合計を上回る中止コストが新たに生じかねない。その問題をどう乗り越えるのか」と、論理を無視した見解を表明しています。

 国交省の説明によると、「八ッ場ダム建設を中止すると、ダム本体関連約620億円は不要になるが、多目的ダム法で約1460億円を利水関係5都県に返還する義務があり、差し引き840億円の新たな負担が国に生じる。これに加え、6都県から治水関連の直轄事業負担金最大約525億円の返還を求められたり、ダムを前提に建設する付替え道など生活再建関連事業に最大770億円の負担を求められたりする可能性もある」などと、これまた不安を駆り立てようと、必死に説明をしています。

 吾妻川に建設中の八ッ場ダムは、水道用水供給や治水などのための多目的ダムで、09年10月に本体工事に着手し、15年完成予定で、総事業費は約4600億円となっていて、残るのはダム本体工事と住民向けの生活再建関連事業の計約1390億円です。
 ダム下流都県は、08年度までに執行された事業費約3210億円のうち、治水関連で直轄事業負担金約525億円と、利水関連で約1460億円を既に負担していることについて、下流自治体の知事らは「建設中止なら負担金の返還が必要」「中止のほうが継続よりコストが高い」と必死で強調しています。

■「八ッ場ダム水没関係五地区連合対策委員会」の萩原昭朗委員長が、平成17年9月26日の自分の誕生日に、「丸岩会」と称する誕生会を開きました。当時は、八ッ場ダム工事関係の土建業者が70人ほど集まり、昼間は美ノ原カントリークラブでゴルフをしたあと、夜は、伊香保温泉のひびき野(前年は白雲閣)で、大宴会をやりました。(詳しくはhttp://pink.ap.teacup.com/ogawaken/199.html#readmore を参照ください)

 大宴会には、八ッ場ダム工事事務所の当時の安田吾郎所長や、群馬県の小寺弘之知事も主賓席に座り、参加した土建業者らの面前で挨拶をしました。とりわけ、安田吾郎所長は、自作の資料まで用意して、土建業者らに配布しました。その内容は、次のとおりです。

**********
【配布チラシ(表)】
平成17年9月26日
八ッ場ダム事業に関する最近の状況
1.事業の進捗状況
1)用地取得
・長野原町内では、全体455haの内、204ha(全体の約45%取得済)
・吾妻町内では、昨年11月に補償基準調印。全体15haの内、1ha取得。
・代替地分譲基準を今年9月7日に調印。代替地の提供及び取得に関する意向調査を今月中旬までに実施し、現在補足作業中。
・その結果に基づき、代替地の整備範囲の変更、補足意向調査、区画割、地目区分、分譲者確定等に関する調整を今後実施。
2)工事関係
・水没者の移住用の代替地の造成を、平成17年度には一部地区で完了させ、平成19年度末には全地区で移住を可能にすることを目指して工事や用地の調整を鋭意実施中。
・国道、県道、鉄道の付け替えエ事について、長大トンネル等を中心に進捗促進を図っているところ。国県道は、H19年度に概成目指し整備。鉄道は、H20末完成目指し整備。
・平成19年度ダム本体工事着手を目指して、本体概略設計を実施中。本年度下期には、実施設計実施予定。
2.当面のトピックス
1)代替地の整備・利用調整、まちづくりの本格化
・現在実施中の意向調査結果を踏まえ、代替地の整備範囲や居住計画の調整を実施。合わせて、具体エ的なまちづくり検討を重点実施。これらに連動して、下流都県の負担を得て行なう水特・基金事業についても、今後のニーズに照らして必要なものへと修正していくことも要検討。
2)「八ッ場ダム未来遺産形成プロジェクト」の実施
・八ッ場ダムの周辺地域について、住む人からも、訪れる人からも、愛され楽しまれるような場所にしていくための具体的な提案を公募(10月に新聞等で募集、1月初頭締切)
3.その他の重要課題
1)用地取得の円滑化
2)事業の実情をよくご理解頂くための活動
3)コスト縮減、事業執行の早期化

【配布チラシ(裏)】
生活再建は行ない八ッ場ダム本体は造らなければ良いという意見は?
・治水面の便益だけでも、ダム本体関連事業費よりも圧倒的に大きい状況
・これに加え、利根川流域の渇水に対する安全度を大き<高める等の効果も有り
・さらに、ダムが無ければ湖畔の環境を利用した新たな生活への地域の期待にも対応不能
・以上のような点を考慮すると、ダム本体を造らないという選択は大きな損失を招来
A.平成17年度までの執行分(約2200億円)
B.生活再建関連事業費(約1400億円)
C.本体関連事業費(約1000億円)
A+C:残事業費(約2400億円)
A+B+C:総事業費(約4600億円)
注)残事業費の内、営繕費、宿舎費、船舶及び機械機器費は全て本休関連工事費とみなし、測量及び試験費は半分が本体関連工事費であると見なして計算した。
D.治水分の便益(約9141億円)
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■「治水分の便益」約9141億円とありますが、何も根拠が示されていません。まもなく、9月26日の萩原昭朗委員長の78回目の誕生日が到来しますが、上記の平成17年の誕生会から4年が経過します。

 今年3月末の時点で、八ッ場ダム事業の進捗状況は次のとおりでした。
・用地取得:全体456haのうち357ha(78%)
・家屋移転:全体470世帯のうち357世帯(76%)
・代替地造成:5地区で整備中。うち移転済み16世帯
・鉄道付け替え:全体10.4kmのうち9.0km(87%)
・国道・県道付替え:全体22.8kmのうち16.0km(70%)

 一見すると、かなり工事が進んでいる感じを与える数字ですが、八ツ場ダムの進捗率7割という宣伝は、工事は鉄道の付替えが70%ほどですが、国道は26%、県道はわずか6%しか完成せず、代替地の造成もはるかに遅れています(平成21年6月9日付け、政府答弁書の数値)。

■また、4600億円の総事業費の内訳は、平成20年後前の執行分が、3210億円で、内訳は国1225億円(70%)、自治体525億円(30%)、利水者(自治体)1460億円となっています。平成21年度以降の残事業費は1390億円で、生活再建関連が770億円、ダム本体工事関連が620億円となっています。

 わずか4年間で、1010億円が使われ、生活再建関連が約630億円、ダム本体工事関連に380億円が投じられたことになります。しかし、ダム本体工事は、これからのはずなのに、既にダム本体関連に、巨額投資が行われ、肝心のダム本体工事は、きわめて小額です。いかに、この八ッ場ダム計画が、訳のわからないところに巨額の税金が消えていっているかがわかります。

 ダム推進派は、既にカネを使ったから、途中で止めるのはもったいない、という論理です。そもそも、無駄なところにカネを投じてきたのですから、即刻中止するのが、正しい対応だと思います。また、ダム計画に翻弄されてきた地元住民の生活重視が謳われていますが、既に補償を受けた人は、返す必要もないわけですから、推進派がなぜ、中止について心配するのか、意味がわかりません。おそらく推進派と称する方々の多くは、もっとカネがもらえるような気がして、中止になると損をすると考えているのかもしれません。

■市民オンブズマン群馬のメンバーは、原告19名で構成する「八ッ場ダムをストップさせる群馬の会」(浦野稔代表)に多数参加して、八ッ場ダムの公金支出差止めを求めた住民訴訟を続けてきましたが、平成21年6月26日に、前橋地裁(松丸伸一郎裁判長)で敗訴判決が下されてしまいました。そこで、7月8日に東京高裁に控訴中ですが、市民オンブズマン群馬では、敗訴した6月26日に、いち早く、八ッ場ダム事業をめぐる国交省の汚職事件について、刑事記録の閲覧申請をしました。

 巨額公金を投入している八ツ場ダム事業では、ズサンな公金の管理や、事業の主体である国や県と、土建業者や買収交渉委員長などとの癒着が指摘されていますが、なかでも、平成16年11月から平成18年4月にかけて、ダムの工事にかかわる測量業務をめぐり、入札情報を業者に漏らし、見返りに710万円の金を受け取ったとして平成18年7月5日に逮捕され、平成18年10月25日に、東京地裁で懲役2年6月、執行猶予4年、追徴金710万円(求刑懲役2年6月、追徴金710万円)の判決を言い渡された八ッ場ダム工事事務所(群馬県長野原町)の用地1課長だった斉藤烈容疑者が起した刑事犯罪は、八ッ場ダムを象徴する事件でした。

■斉藤烈が起したこの事件は、まさに平成17年9月26日の萩原昭朗・買収交渉委員長の誕生会である「丸岩会」の開催時期のころには、汚職の佳境にありました。しかし、つかまったのは、買収担当の課長だけでした。だから、この事件の裁判記録を見ても、周辺の関係者のことについては、書かれていないかもしれません。しかし、どのような手口で、国交省が用地買収をやっていたのか、関係者の供述調書を見れば、ある程度、わかるはずです。

 民主党政権が誕生する来週9月16日以降、早い時期に東京地検の記録係が、刑事保管記録の閲覧を認めてくれるかどうか、注目したいと思います。

【ひらく会情報部】
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