2010/9/18  23:38

長野県建設業厚生年金基金22億円横領事件の発覚後1週間の様子  他の自治体等の横領事件とタゴ51億円事件

■9月12日に公表された長野県建設業厚生年金基金をめぐる約21億9千万円にのぼる横領事件から1週間が経過しました。その後の報道内容から事件の様子を見てみましょう。


 事件が明るみに出た経緯について、長野県建設業協会長でもある佐々木力同基金理事長らは、9月12日の長野市での記者会見で、「不明金は2006年7月から2010年9月までの4年余で約21億9千万円に上る」「資金管理を担当していた事務長(52)と連絡が取れなくなっている」「9月12日までに長野中央署に状況を報告した」と発表しました。

■事件発覚に至るまでの経緯について、基金側の説明では、今年8月19日に運用委託先の生命保険会社から「掛け金の入金額が不自然に少ない」との指摘があったので、事務長は8月23日に、佐々木理事長に対して「06年に南信地方の加入事業所から掛け金の返還を求められ、県建設業協会飯田支部の口座へ振り込んでいた」と説明。そこで、佐々木理事長は「(返還は)厚生年金保険法に触れる可能性がある」と考え、8月25日に事務長と2人で監督官庁の厚生労働省関東信越厚生局(さいたま市)に赴き事情を報告。同基金は9月2、7、10日に同局から特別監査を受け、調査委員会の設置などを求められました。

 9月2日の監査の際、事務長は、南信の一部の企業から「自分たちで資金を運用したい」と申し出があったとし、現金は県建設業協会飯田支部の口座に振り込んでいる、と説明しました。

 事務長は、9月7日の監査で、飯田支部口座に06年6月から9月7日まで計21億9千万円を振り込んだことを示す銀行の「振込受付書」38枚を提出しました。しかし同局は9月7日、送金した金を基金に戻すことと、振込先の入金記録を基金側に求めました。このため、事務長が提出した金融機関の「振込受付書」を、佐々木理事長ら役員が9月9日に金融機関に持参したところ、偽造書類と発覚。支部口座への振り込みの事実はなかったことが9月9日に判明しました。

 事務長は同9日午前に事務所(長野市南石堂町)に姿を見せたのを最後に、連絡が途絶えました。自宅を協会職員が訪れると妻が応対しましたが、「いつ帰ってくるかは分からない」と話しており、事務長の行方は不明となっていました。

 同基金は、企業年金の一種で、集めた掛け金の運用を生命保険会社などに委託し、その収益などを国の厚生年金に上乗せして給付する仕組みで、建設業界では県ごとに一つの基金があるのが通例だそうです。

 佐々木理事長によると、「理事長職は加入企業の社長らが交代で就くが、基金の事務所に来るのは年に2〜4回」だそうです。さらに2003年ごろから常勤の常務理事を置かなくなり、それ以降は。事務の女性らを除くと、事務長がほぼ1人で経理などを担当しており、月1回の内部監査でも問題を見抜けませんでした。佐々木理事長は「事務長を過信した」と話し、顧問弁護士は「私の考えとしては、(事務長の)業務上横領に当たると思う」と述べました。

 記者会見で基金側は、事務長は基金口座に入金された掛け金を保険会社に送金する際は、いったん現金で引き出していたと説明。同席した顧問弁護士によると、偽造されたという受付書と基金口座の記録との詳しい照合はこれから作業する予定だと話しました。

 今回の不明金は同基金が1年間に集める掛け金(16億6800万円)を上回り、総資産約206億円の1割以上に相当します。それでなくとも世界経済の低迷で、年金運用による収益状況は厳しい状況にあります。このため年給付への影響について、佐々木理事長は会見で、「分からない。今後調査したい」として、今後の加入者への給付の確保を「最大の課題」に挙げました。

 同基金は監査役に聞き取り調査なども行う方針ですが、同基金に加入している北信地方のある建設会社の幹部は「今後もきちんと年金が給付されるのか不安はある。基金の管理態勢も含め、抜本的に見直してほしい」とマスコミの取材に対して、今後の年金給付への不安について語りました。

■以上が、9月12日の記者会見の内容でした。9月13日には、地元の信濃毎日新聞が関係者らからの取材で分かったとして、事務長がここ数年、毎月のように海外渡航をしていたことを報じています。

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頻繁に海外渡航 連絡取れない県建設業年金基金事務長
 県建設業厚生年金基金(長野市)で多額の不明金が出ている問題で、同基金の資金管理を担当し、連絡が取れなくなっている事務長(52)=長野市=が、ここ数年、毎月のように海外渡航を繰り返していたことが9月13日、複数の関係者らへの取材で分かった。県警も渡航歴などについて情報を把握しているもようだ。
 同基金から21億9千万円に上る不明金の相談を受けている長野中央署は、事務長が事情を知っているとみて、行方を捜して事情を聴く方針だ。
 同基金などによると、事務長は9月9日午前、「東京に行く」と言って長野市の同基金事務所を出た後、連絡が取れなくなっている。家人は9月13日、「連絡を入れているが、返事がない」などとして、捜索願を同署に出した。
 家人は取材に対し、「旅行か何だか分からないが、香港などに行ってはいた。仕事だと思っていた。(1回の旅行の期間は)そんなに長くはなく、土日を入れて3日間ぐらいだ」と説明。1人ではなく、知人らと渡航していたようだと話している。
 関係者によると、事務長は著名な元プロサッカー選手とも知り合いで、海外で顔を合わせることもあったという。
 基金関係者は「出張が多く、ふだんから事務所にはあまりいなかった」と説明。事務長が業務として出張するのは「原則として県内」としている。
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■どうやら、アニータ事件と同じく、事務長は海外とのコネクションがあるのと、安中市のタゴ51億円事件と同じく、共犯者がいる可能性が浮かんできています。

 9月14日時点でのネット情報では、この事件が総合型厚生年金基金にかかる相次ぐ不祥事としては過去最大だということを伝えています。

 また、地元マスコミの取材に対して、2006年当時、同基金の理事長を務めていた中沢英・前会長は、「そのような話は一度も聞いたことがなかった」とコメントし、現理事長の佐々木力・県建設業協会会長氏も「詳しいことは調査中」とコメントしていることも分かりました。

 総合型厚生年金基金の理事長職は名誉職のようなもので、理事長らが自ら帳簿類や通帳類を検認することはなく、「そのような話は一度も聞いたことがなかった」というのも嘘ではなく、おそらく、毎月、厚生年金基金に来て常務理事に言われたままに理事長印を押していたか、理事長印を預けたままにしていたか、どちらかであった可能性もあります。

■このことは、安中タゴ51億円事件と同じで、同一職員の長期配置と、代表者印のずさんな取り扱いが今回の事件の要因の一つとなっていることが分かります。

■また、同基金の内部統制に問題があると指摘する向きもあります。本来、このような組織には事務長職の上には乗務理事や専務理事が配備されており、具体的な事務方の仕事は事務長が行いますが、すべて上司である理事からの指示で行われることになっているからです。また、処理についても報告は理事にされているはずです。

 ところが12日の記者会見では、役員らは「事務長一人が云々」というように歯切れの悪い言い訳に終始していました。

 内部統制の目的は、@業務の有効性、効率性の確保、A財務報告の信頼性の確保、B法令等の遵守、C資産の保全であり、同基金においてもそれなりのルールは存在していたはずですが、問題は、ルールはそれなりに存在していても、ルール通りの運用がされていたかどうかということです。

 このことは、安中土地開発公社のタゴ51億円事件でも、公社理事・監事に言えることですが、結局、なんの反省も弁償もなく、現在に至っていることは、いつまた再発するか、安中市民としては不安です。

■さて、その後、9月16日になって警察が動きだしたことを、9月17日付で地元の信濃毎日新聞が報じています。

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不明金分析を本格化 長野中央署 県建設業厚生年金基金問題
 県建設業厚生年金基金(長野市)で多額の不明金が出ている問題で、長野中央署は9月16日、同基金の経理関係の書類を入手し、基金会計の把握や不明金の発生状況の分析を本格化させた。
 同基金は不明金について21億9千万円と発表している。ただ、連絡が取れなくなっている男性事務長(52)=長野市=が資金管理を実質的に一人で担ってきたため、詳しい資金の流れについては基金側もつかめていない。
 同署は、経緯を知っているとみられる事務長の所在確認を急ぐ一方、長野市内の基金事務所に残されている関係書類から、不明金の規模や流れを分析している。
 同日、基金側から任意で関係書類の提出を受けた。捜査員数人が事務所が入るビルを訪れ、段ボール数箱に詰めて運び出した。
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■9月18日付の地元紙では、9月17日に同基金の調査委員会の第2回会合の様子を報じています。

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県建設業年金基金の使途不明金:生保会社から聞き取り調査−−調査委 掛け金収入の不自然さ生保「指摘」も伝わらず? 年金不明
 長野県建設業厚生年金基金(長野市)に多額の不明金が生じている問題で、同基金の調査委員会は9月17日、2回目の会合を長野市内で開き、資金運用の窓口となっている大手生命保険会社の担当者から聞き取り調査を行うなどした。委員会は「早ければ10月上旬にも全体の事実関係を確認したい」としている。

 生保は08年から掛け金収入の不自然な少なさを男性事務長(52)に指摘してきたが、基金役員らには伝わっていなかったとみられる。会合では委員から「もっと早く知らせてほしかった」との声が出たという。
 調査委の会合は非公開で、委員9人と弁護士の計10人が出席し、約2時間半行われた。生保側から社員3人が出席。この日は8月19日に生命保険会社が「入金額がすくない」と指摘して問題が発覚した後、9月2、7、10日に実施された国の特別監査の結果など、一連の経緯を確認。終了後に記者会見した中川信幸委員長によると、生保側は委員会に対し「(掛け金の不自然な減少を基金に知らせる)契約上の責務はない」と説明したという。詳細なやりとりについては明らかにしていない。
 これまでの取材に生保側は、2008年8月と09年8月に担当者が決算取りまとめを補助した際、「数字がおかしい」と事務長に指摘した−と説明している。
 今年8月19日にも、担当者が基金事務所で09年度決算の取りまとめを補助した際、同様の指摘をしたという。「一部を県建設業協会飯田支部の口座に返還している」と説明した事務長に対し、担当者は「不適正な運用で、厚生労働省に相談すべきだ」と助言したという。
 事務長は8月25日、基金理事長とともに厚労省関東信越厚生局に赴いて報告したが、その後の調査で、飯田支部口座に入金した事実はなかったことが判明。事務長とは連絡がとれなくなり、基金は今月12日、21億9千万円の不明金が生じていると発表した。
 調査委は今後、発覚の経緯や資金の流れなどを整理し、来月上旬にも報告書をまとめる方針。9月24日の次回は、関係者から監査の状況について話を聞く。
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■長野県では、この他にも、9月16日付けで、今度は同県上田市でも桁が2ケタ少ないが2200万円の横領事件が地元の信濃毎日新聞に報じられました。

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上田で2200万円着服 車販売会社元社員を告訴
トヨタ系の自動車販売会社「長野トヨペット」(長野市)の上田店(上田市常入)に勤務していた男性(46)が、自分が販売したハイブリッド車の新型「プリウス」など乗用車8種類、15台の売上金から2200万円余を着服したとして、同社が上田署に刑事告訴したことが15日、分かった。同署は告訴状を受理。業務上横領容疑などでの立件を視野に捜査を始めた。
 同社は今春、男性を懲戒解雇。着服分のうち24万円の返済を受けた、という。男性は信濃毎日新聞の取材に、着服の事実を認めた。
 同社などによると、告訴の対象は2009年12月から今年3月までの販売分。男性は、プリウスのほか「マークX」「ラクティス」などの新車購入を検討していた顧客に対し、「納車前に現金で前払いしてもらえれば、(当初の説明よりも)さらに値引きする」と言い、自宅などを訪問。自分で作成した正規ではない領収書と引き換えに、14人と1法人から1台ずつ計4100万円余の代金を受け取り、このうち半額余を同店に入金しなかった−という。
 また、男性が同社に無断で値引きした分は15台で計約530万円で、8人にはスタッドレスタイヤなど付属品計約75万円分も断りなく無償提供した、としている。
 男性は取材に対し、「借金の返済期限が迫っていたため、着服してしまった。特に人気のあるプリウスは注文から納車までの期間が長いため、発覚しないうちに(着服分を)穴埋めできると思った」と話した。車の納期が迫ると、発覚しないよう、着服した代金の一部を会社へ入金していたという。
 長野トヨペットによると、決算をまとめる今年3月末に着服の疑いが浮上。同社は15台の購入者に経過を説明し、契約時に男性が示した価格通りに納車した。同社は15日、取材に対し「まだコメントする時期ではない」とした。
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■いずれにしても、青森県住宅供給公社を舞台にしたアニータ事件にような展開になるのかどうかは予断を許しません。

 なお、当会では近日中にこの事件の現地調査を行う予定です。

【ひらく会情報部】

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