2012/2/16  0:53

フリマ中止を巡る未来塾側と安中市・岡田市長とのバトル・・・逆転劇となった東京高裁での攻防(その3)  安中フリマ中止騒動

■ところが、何らかの不都合が生じた為か、当初平成22年9月6日(月)午前11時から東京高裁5階の511号法廷で行われる第1回口頭弁論期日が、1ヶ月以上延期となり、平成22年10月18日(月)午後1時50分となりました。

 控訴人の未来塾側から、平成22年7月22日付で控訴理由書が東京高裁に提出されていたのを受けて、被控訴人の安中市側は、平成22年9月29日付で準備書面及び証拠説明書とそれに係る乙22、23及び24号証を高裁に提出しました。


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【被控訴人安中市からの準備書面】
平成22年(ネ)第4137号 横脊賠償等請求控訴事件
控訴人   松本 立家 外1名
被控訴人  岡田 義弘 外1名
             準 備 書 面
                            平成22年9月29日
東京高等裁判所第5民事部 御中
                 被控訴人安中市
                 訴訟代理人弁護士  渡 辺 明 男
第1 控訴理由書に対する認否反論
T 控訴理由書I(はじめに)に対し
 否認する。
 原判決は,きわめて正当である。
U 同U(名誉毀損を認めながったことの誤り@一社会的評価の低下の有無−)に対し
1 第1(原判決の判示)について
 認める。
2 第2(社会的評価の低下の有無についての原判決の誤り)について
 否認する。
 原判決は,きわめて正当である。
3 第3(一審被告岡田自身の供述を看過した誤り)について
 否認する。
 原判決は,きわめて正当である。
 控訴人らは,一審被告岡田自身が本件談話によって社会的評価が低下することを認めているとしているが,あまりに曲解した主張。
 被控訴人岡田にとっては,怒鳴られた際の声の大きさから,そのショックを受けた心境を表すのに「信じられない」言動と陳述又は証言したまでのことであって,それを相手の社会的評価が低下させる認識があったとするのは無理がある。
 控訴人らは,「信じられない」という意識は,読者である安中市民全体を代表する立場にある市長自身が実感し認識していることとしているが,明らかに誤りであって,市長の立場からではなく,怒鳴られた本人としての実感又は認識である。
 怒鳴られた本人とそれを読んだ市民とで感想が違うことは言うまでもなく,被控訴人岡田本人の「信じられない」という評価が,直ちに読者の社会的評価が低下させる認識があったことに結びつくものではない。
 言い換えると,怒鳴らたという事実だけでは,その場で怒鳴られた本人にとって信じられない出来事と感じても,それを記事として読んだ市民の認識とは一致しないことは当然である。
 新聞等でお互いに激しく対立していたことを知っていた市民は,目を見て話をしない市長に対して,業を煮やした控訴人らが怒鳴ったとしか思っていない。
 しかも,その後の話し合いでは冷静に対応している事実が明らかにされているため,控訴人らの社会的評価を低下させるものにはなっていない。
 以上に加えて,何度も主張するように,控訴人松本を含めて誰が怒鳴ったかは談話のなかでは全く明らかにしていない。
 控訴人未来塾は多くの会員を有するが,そのなかに目を見て話さないことに怒った人間がいたことを摘示した程度で,その団体の社会的評価が低下するとは到底考えられない。
 また,仮りに被控訴人岡田に相手の社会的評価を低下させるかもしれないという未必の故意(認識)があったとしても,結果と.してはそうなっておらず,しかも公共の利害に関する事実に係り,市民に事実を伝えるという目的の公益性及び事実の真実性があるため,違法性は阻却される。
4 第4(提示事実が「客観的」「精読」により決せられるのではなく「読過」した「印象」により決せられるべきこと)について
 否認する。
 控訴人らは,原判決は,.記事の客観的内容を榜示事実としたり/「精読」すればそのように把握することもありうるという程度の事実を榜示事実として認定したり,「読過」すれば把握するであろうことが必然である事実を摘示事実として認定しないなどの誤りを犯し,昭和31年の最高裁判所の趣旨に違背している旨主張する。
 しかし,原判決は,本件談話を一般読者の普通の注意と読み方を基準としたうえで、読過した場合の印象として,その記事が名誉を毀損するものと認められないとしており,精読して得られた別個の意味で解釈した部分等は一つもない。
 むしろ,控訴人らの方が精読すれば別個の意味に解されるように本件談話を強引に解釈したり,一般読者ではなく,記事を書かれた当事者しか持たない知識と被害者感情を基準としだ読み方をしている。
 例を挙げれば,目を見て話さないことに怒鳴ったという事実の摘示だけで,精読して得られる別個の意味である市民が行政対象暴力と認識するとしたり,市長として市政を行う銘を,別個の意味で塀釈して控訴人らが理不尽に責めたり罵ったりした事実を襖示していると主張している。
 このように,控訴人らの方が明らかに昭和31年の最高裁判決の解釈を誤っていると言わざるを得ない。
5 第5(摘示事実が「全体の印象」により決せられるべきこと)について
 否認する。
 控訴人らは,平成15年の最高裁判決を基に摘示事実が「全体の印象」により決せられるべきことであるとしているが,当該判決は,音声及び映像により次々と提供される情報を瞬時に理解することを余儀なくされるというテレビジョンによる報道の特徴を前提としており,提供された情報の意味や内容を十分に検討したり,再確認することができる,本件談話のような新聞報道等とは異なる。
 また,控訴人らは,原判決は平成15年の最高裁判決を意識して書いたとしているが,それ以前に,御庁における平成14年2月6日判決(事件番号平13(ネ)4193号)においても,「出版物に掲載された記事による名誉毀損の成否は,記事の一部だけを取り出して個別に判断すべきではなく,一般の読者の普通の注意と読み方を基準にして,記事全体から受ける印象に従って判断すべきである。」と既に判示している。
 原判決は「記事のうち特定の部分の記述のみを独立して取り上げて評価の対象とするのではなく,当該記事全体を読み,それから受ける印象及び認識」からきちんと判断しており,本件談話全体の印象として,社会的評価を低下させるものではないとしたことは,正当な結論であった。
 「目を見て話をしろ(冒頭から怒鳴る)」については,これだけを読めば,表現に穏当さを欠ける部分が全くないとは言えないが,意見交換会の当日冒頭から,険悪な状況にあったことは事実であり,新聞報道等でも安中市と未来塾がフリーマーケットの開催をめぐって激しく意見が対立していたことは,市民も了知していた。
 そうした背景事情を考慮すれば,開催された意見交換会の冒頭で,未来塾の関係者が,日を見て話さない市長に対して,真摯な態度に欠けるとして怒ったとしても,市民はその程度のことで未来塾の社会的評価を下げることはしないし,むしろ談話に書かれたその後の控訴人らの冷静な対応を読むことにより,逆に全体として市長が言いがかりをつけている印象さえも受ける。
 募金に開しても,通常,公園使用許可を受けることがない一般市民は,公園を使用するときに募金が許可を要する行為であるとは知らないため,談話全体の印象からは,控訴人らが慈善行為である募金活動を行っていたことを市長が非難しているように読めるものである。
6 第6(「市の広報」という媒体の特殊性等を看過していることの誤り)について
 否認する。
 控訴人らは,「市の広報」という媒体の特殊性,「市長」という表現行為者の特殊性を名誉毀損の成否の判断の際に考盧しなければならないとしている。
 しかし,本件談話は広報紙の一部ではあるが,その内容は,市長の個人的な意見が「談話」として自由に述べられているものであって,高度め信頼性が求められる一般の広報紙の記事とは一線を画すものである。
 控訴人らが引用している東京高裁平成21年7月30日判決(控訴理由書P59)においても,名誉毀損の対象となった記事が広報であったことは,特段触れていない。
 本件における原判決も同様に,表現の媒体が何であったかという以前の問題として,名誉毀損とは認められないとしているのである。
 また,市長が,市政において信念とすることや市民に直接伝えたい事実を自分の言葉で自分が感じたままに表現するごとに何の問題はないはずであり,むしろ,市長も政治家であるため「高度な注意義務」で発言を制約するより、相手方の権利を侵害しない程度で,市民には率直に自分の意見を発表できてしかるべきである(都知事や大阪府知事がかなり権力的意見を述べているのがその例)。
7 第7(当該媒体の表面上の記載内容だけでなく背景事情も考慮すべきこと)について
 否認する。
 上記のとおり,原判決は,一般読者である安中市民が市と未来塾の意見がフリーマーケットの開催をめぐって激しく対立していたことを新聞報道等で知っていたという背景事情を考慮したうえで,意見交換会が険悪な状況にあったという判断をしているため,控訴人らの主張は失当である。
 加えて控訴人らは,自らすすんで新聞等のマスコミを積極的に利用して経過や意見を公表しているため,市民が控訴人松本が未来塾の代表であることを知っていたからといって,被控訴人安中市の責に帰することは何もない。
8 第8(摘示事実の判断と社会的評価の低下の有無の判断とを峻別していないことの誤り)について
 否認する。
 控訴人らは,原判決は,摘示事実が何であるかという問題と,その事実をもとにすると社会的評価が低下するかという問題を峻別せず,漫然と判示した旨主張するが,本件談話を@からFまで区切ったうえで,それぞれの摘示事実を明らかにし,それに対して社会的評価が低下させるものかの判断を各項目ごと的確に行っているため,控訴人らの主張は失当である。
9 第9(本件談話「全体」を「読過」した場合の「印象」として一審原告らの社会的評価が低下すること)について
 否認する。
 控訴人らの主張は,いずれも一般読者である安中市民の受ける印象ではなく,被害者感情に基づく控訴人ら個人の受けた印象に基づくものであって、精読すればそのような意味にも解釈することができるといった読み方をしている。一般聴音の全体から受ける印象は,フリーマーケット開催への熱意から意見交換会冒頭に怒鳴るようなことがあったが,その後は、市長の質問事項にも冷静に回答している,しかし,市長としてはまだ納得がいっていないというものであって,この印象から控訴人らの社会的評価を低下させるようなことはない。
10 第10(本件談話の各記載とー吝原告らの社会的評価の低下)について否認する。
(1)本件談話@
 原判決が示すとおり,本件談話@の摘示事実は「本件意見交換会開催の形式的概要並びに本件フリーマーケット開催予定日及び本件意見交換会から本件フリーマーケット開催予定日までの期間を摘示したものである。
 そのうち控訴人らが問題とする「誠意をもって許可する旨回答ナる」及び「市の回答から44日間もあるjとの記載事項は,お互いに意見の対立はあったが,市長としては誠意をもって許可したということ,及び同期間はフリーマーケット.開催の準備期間として決して短いものではないという被控訴人岡田の意見又は主鎮も含んでいることは事実である。
 しかし,その主観にしても過去における,市の許可からフリーマーケット開催までの期間と比較考量して開催できないほど短いものではなく,しかも意見交換会のなかで,控訴人松本が「一週間以上ってことになると開催ができない」,「一週間から向こうに行くと開催できない」といった発言を行い,その他にも「一週間」という言葉が何度も綴り返されており,許可の回答が意見交換会から2日しか経っていない事実から,被控訴人岡田において,開催までには十分期間があり,誠意をもって回答したと考えるのは,当然のことである。(甲40号証,反訳書P58〜60))
 また,当該意見は,控訴人らが平成19年10月12日付けで発行した未来塾ニュース(乙10号証)において,市側から意見交換会後も未だ使用許可の回答をもらっていない旨の記載があったため,これに対する反論の意味もあったと考えられる。
 そもそも本件談話は,前記のとおり,一般の広報記事とは追って,市長の意見を表明する揚であり,この意見に対して,読者である市民がどのような感想を持つかは,市民の判断に委ねられるべき事項であって,逆に,44日問ではあれだけのイベントを開催する期間としては短すぎるというふうに考える市民がいることも決して否定できない。
 以上のとおり,本件談話@は,その内容からしても断じて控訴人らの社会的評価を低下させるものでないことは明らかである。
(2)本件談話A
 控訴人らは,原判決が「その場の緊迫した険悪な雰囲気」が摘示事実であるかのように判示したとするが,そのようなことはなく,原判決の摘示事実は「本件意見交換会の冒順に,原告未来塾側の出席者が,被告市側の出席者が,目を見て話していないものと考え,同人に対し,目を見て諏をしろと怒鳴った事実」としている。
 そのうえで,「怒鳴る」という表現が,場合によっては穏当さを欠くものであるかもしれないが,それ以外においては平静に回答している様子が読み取れるため,本件談話全体から判断すると,その場の緊迫した険悪な雰囲気を示したに過ぎないと正当な判断をしているのである。
 上述したとおり,一般読者である市民は,新聞等のマスコミでフリーマーケットの開催をめぐって市と未来塾が激しく意見が対立していたことは承知しており/当日の意見交換会が緊迫した険悪な状況のなかで行われたことは十分予想し得たことである。
 そのような状況下において,これを読んだ市民は,フリーマーケットに理解を示さない市長に対して反感を抱いていた未来塾の出席者が,誠意をもって話し合いをすべき場においても,日を見て話さない市長の態度に怒ったという感想を持ったに過ぎず,控訴人らが行政対象暴力に当たるような不当な態度をとったなどとは考えない,
 また,日を見て話をするように言った本人は,怒鳴ったという認識はなくとも,大声で強い口調により言われた被控訴人岡田にとっては,怒鳴られたと感じることがあることは,これまで主張したとおりである。
 しかも,事実として同席した3人の部長が,未来塾の出席者が日を見て話をするように大声を出したことを陳述又は証言しており,さらには,意見交換会が行われた市長座に隣接する秘書行放課に残っていた職員全員がこの声を聞いているため,全くの真実であり,「怒鳴る」という表現方法自体にも問題があったとは考えられない。
(証人長澤和雄証言P9)
 「交換会で目を見て話をしろという声があったということが書いてありますね。」
 「はい。」
 「これは事実ですか。」
 「はい。非常に厳しい会合になっちゃって,確かにこういう発言はありました。j
(乙5号証堀越久男陳述書)
 「未来塾側が,強い口調で『話をする時は目を見て・・・』その数分後には同席の■■から『市長さん話をする時は目を見て‥・』と叫んだことが,強く脳裏に焼き付いています。」
(乙6号証 佐藤伸太郎陳述書)
 「松本立家氏と■■o氏の両氏から,相手の目を見て話をするようにという趣旨の指摘が大きな声であったと記憶しています」
(丙2号証)・
 議会の一般質問終了後,市長の答弁だけではなく堀越久男総務部長からも答弁した方が良かったと,長澤和雄建設部長から言われたことに対し,総務部長は,「私が答弁すれば未来塾関係者が怒鳴った声を市長室の隣室の秘書行政課の職員がドア越しに怒鳴り声を聞いていることを答弁したよ」と話した。
 さらに,控訴人らは(意見交換会の)冒頭から威嚇的な発言がなされることはない,又は冒頭から緊迫した険悪な雰囲気になること自体が,極めて異常と主張しているが,これには伏線があり,本件意見交換会の面前に,意見交換会の議題をめぐって意見の対立があり,冷静かつ和やかな状況のなかで開始されたわけではなかった。
(証人長渾和雄証言P12)
 「意見交換会の雰囲気は,全般的にどうだったんでしょうか。」
 「市長室に入っていただきまして座ったんですけども,座った段階から,自由に意見を言うという雰囲気よりは非常に厳しいといいますか,そんな雰囲気がありました。」
 なお,本件談話には,未来塾3‘名としか書かれておらず,控訴人松本を含めて誰が怒鳴ったかは明らかにされていない。
 このため,瑳不尽に怒鳴ったのではなく,一つの大きな団体のなかで,相手の目を見て話さない不誠実な態度に怒った人間がいた事実を摘示したとしても,そのことによりその団体の社会的評価が低下することなどあり得ない。
(3)本件談話B
 一般的に,「地震被害に対する募金活動は,慈善事業であるjと考える人が大多数であり,本件談話Bについて「一般読者の通常の注意と読み方」を基準にすれば,「フリーマーケットにおいて募金活動をすることがおかしい=不正活動」との印象を受けるはずがない,
 控訴人らこそが,「精読」というよりも,むしろ被害妄想的に曲解した読み方をしている。
 控訴理由香(P45)において控訴人らは「実際,一審被告らは本法廷において,フリーマーケットにおける募金活動が不正行為である旨の主張を繰り返している」と主張しているが,被控訴人らが問題としたのは,募金活動そのものではなく,条例(甲12号証の1及び2)に規定する,募金活動を行ううえで必要とされる市長の許可がなかったことである。
 このため,せめて事後報告でも良かったので,内容を聞かせてもらえれば市民に説明できたという市長の苦言を摘示しているのであって,そのことでは一般読者は控訴人らが不正行為を行っていたとは考えない,
 地震被害者のために募会話勁を行っていたという好印象に比較すれば,原判決が判示するように,募金の報告義務違反は単なる「軽微な手続違背」に過ぎず不正行為とは考えないのが,一般読者である市民の印象であり,そのことにより,慈善活動を行っていた控訴人らの社会的評価が低下するわけがない。
 新聞等マスコミにおける報道でも‥フリーマーケットの問題は,出店者からの参加料をめぐる意見の対立であったことは大きく報道されており,募金活動の報告義務違反がフリーマーケット会場の使用許可がされなかった重要な理由の―つとまで,勘ぐるとは思えない。
 仮りに,たとえそのように考えたとしても,それが控訴人らの社会的評価の低下に結びつくはずがなく,控訴人らの主張は理解できない。
(4)本件談話C
 本件談話に先立って発行された未来塾ニュース(乙10号証)では,控訴人らの駐車場管理体制として「非常に努力してガードマン,シルバー人材を増やしたり,カラーコーンで区切ったり,約束事を守り,体育館との話し合いによって,午前10時以降は全て駐車しても良いことになっており,現在スムーズに行われています。Jと意見交換会で回答した旨が記載されており,控訴人らとしても十分努力していたことが新聞折込みで市民に知らされていた。
 また,本件談話Eの部分でも出席者への配付資料に,注意事項として西の中央駐車場を空けておくことについて明記していた事実を明らかにしている。
 そして,そもそも駐車場を直接利用するのは,控訴人らではないため,そうした努力にかかわらず,一部のフリーマーケジトの出店者及び来場考には,駐車場のルールが守られなかった事実が摘示されていると考えるべきである,
 このため,本件談話Cは,控訴人らの責任を問うような発言内容となっているが,主催者側としては努力をしていた事実を市民は知っているため,一般市民は諾に市長の「言いがかり」的発言という印象に近く,社会的評価を低下させるものとは言えない。
(5)本件談話D
 本件談話Dについて,控訴人らは「一審原告未来塾の構成員が,一審被告安中市に来庁して一審被告安中市が同土地を買収ナるように繰り返し要求した事実」を摘示しているとしている耽 これはもはや「精読」という範囲を超えて荒唐無稽な解釈としか認められない。
 本件談話Bで市長室へ何回も来た補足説明として,※を付けて注意喚起のうえ,意見交換命の内容とは区別して記載している。
 これを一般読者が普通の注意と読み方を基準にして,記事全体から受ける印象とすれば,「控訴人らがサワイ産業の土地の関係で,前年,市に3回来庁しているが,そのときにフリーマーケットにおける募金の報告がなかった」ということになり,控訴人らの社会的評価を低下させるものではないことは明らかである。
(6)本件談話D
 本件談話Dは,控訴人らがフリーマブケット出店者に配布した資料の抜粋に過ぎず,これが,控訴人らの社会的評価を低下させるとする理由が全く理解できない。
 意見交換会の内容の補足として,フリーマーケットの参加養を徴収していた事実,活動のための募金を集めていた事実,出店者に駐車場の注意をしていた事実が摘示されているだけで何ら控訴人らの社会的評価を低下させる内容は含まれていない。
(7)本件談話F
 本件談話Fは,原判決が示すとおり,被控訴人らの心構えを記載したものであり,この表現から何か別な意図を読み取れるとしても,控訴人らが責めたり,罵ったりした事実を読み取ることは一般読者の普通の注意と読み方からは困難である。
 争いごとは避け,責められても人を責めず,罵られても人を罵らないというのは,「寛容の精神を持つ人」の例示であって,通常の読み方として,控訴人らが責めたり,罵ったりした事実を摘示しているとは考えない。
 そして,最後の「性急に過ぎる相違を克服しながら粘り強く合意を目指す」から,フリーマーケットもお互いに意見の相違はあるが,急がずにそれを乗り越えて粘り強く合堂を自指したいという心構えが示されているものであるという意図にしか読み取れない。
11 第11(社会的評価の低下ヽ小括)について
 否認する。
 控訴人らは,本件談話によって,実際に控訴人らの社会的評価が低下した事実を説明しているが,これは控訴人らの意見・感想に過ぎない。
 例えば,控訴人松木の普段の行動乃至言動を熟知している周囲の人が,同情はしても面と向かって控訴人らを非難するような発言をするとは考えられない。
 また,誤解に基づく抗議や脅しの電話もあったとしているが,市との意見交換会の内容や証人長渾和雄との会話を無断録音している慎重な控訴人らが,そうした電話の録音を全くしていないというのは,不自然である。
 学校のPTA会長になるにあたって控訴人未来塾のメンバーであることを理由に斯られたとか,ボクンティアスタッフを務めた児童・生徒を学校が高く評価してきたが,それも行われなくなったなどと主張しているが,学校という教育の現場でそうした理不尽なことが行われる理由がなく,明らかに事実に反している。
 平成22年4月22日に安中市長選挙が行われたが,立候補したのは,被控訴人岡田と控訴人未来塾の運営役員である訴外高橋由信である。
 高橋由信候補者の選対本部長は,控訴人松本であり,フジーマーケットの問題が契機となって,市議会議員を辞職して立候補に至ったことは,市民周知の事実でもあった(乙22・23号証)。
 高橋由信候補者も同年1月に発行された議会報告(乙19号証の2)のなかでも「フジーマーケットinあんなか」が出来るようになる為に,今後も努力することを明言している。
 そうして行われた選挙結果は,高橋由信候補者が大幅に出遅れていたにもかかわらず,大方の予想に反して,非常に接戦となった(乙23・24号証)。
 この事実から明らかになることは,本件談話により,控訴人らの社会的評価は全く低下していないばかりか,控訴人らを支持する多くの市民がいる事実である。
 市に対して不当な要求をする団体からの立候補者との認識があれば,1万を超える善良なる多くの安中市民が支持し,票を投じるわけがない。
 市民は,民事訴訟で希っている当事者双方に対して大変冷静な判断をしており,本件談話が控訴人らに与えた影響はなかったことが本選挙結果からも推知できる。
V: 「名誉毀損を認めなかったことの誤りA−その余の論点−」に対し
1 第12(一審原告松本個人の社会的評価の低下を認めなかったことの誤り)について
 否認する。
 控訴人未来塾は,集団として比較的小さくはなく,「出席者 未来塾3名」の記載により,役員(運営委員)だけで23名もいる未来塾のうち,誰かを特定できるわけがない。
 確かに控訴人松本は,未来塾代表者として本件に関し自ら積極的に新聞等のマスコミを利用して,意見等を公表していたため,控訴人松本が意見交換会に出席していたことは,一般読者である市民は推測していたかもしれないが,本件談話が主に対話形式で書かれており,未来塾の誰がその発言をしたか,誰に向かって発言したかは全く明らかにされていない。
 つまり,控訴人らが名誉を毀損されたとする内容について,その当事者の名前が特定されていないため,控訴人松本を指しているとは限らず,他の参加者に向けられた司尨性も十分ある以上,個人としての社会的評価の低下が認められるはずがない。
 例を挙げて説明すると,「未来塾:目を見て話をしろ(冒頭から怒鳴る)」の部分については,控訴人未来塾側の出席者が,意見交換会の冒頭で「目を見て話をしろ」と怒鳴った事実を摘示しているとしても,仮りに社会的評価を低下させる可能性があるのは,「目を見て話をしろ」と怒鳴る行為そのものであるから,その行為を行った人間が特定されていなければならない。
 しかるに,本件談話においては,たとえ控訴人未来塾側の出席者のなかに控訴人松本が含まれていることは推知できても,怒鳴った人間が同人であるとまで推認することはできない。
 控訴人らは,平成21年7月30日に御庁から言渡しのあった損害賠償請求・各同反訴請求控訴,同附帯控訴事件(平成19年(ネ9)第3687号,第5303号)の判決を取り上げているが(控訴理由香P59),これも誤った解釈をしている。
 本判決の意味するところを要約すると,広報記事における「政治的意図を持った者」,「地元一部過激住民」,「地元の一部過激な住民」及び「一部扇動者」との表現は,被控訴人らを指すものとして用いられたものであったことが認められるが,控訴人の広報誌の読者は広く控訴人市民一般であるところ,本件記事の記述自体には被控訴人らの氏名その他これを端的に特定する情報は含まれないから,具体的に報道されるなどして,市民に被控訴人らにほかならないとの認識が広まっていなかったとすればその表現から直ちに被控訴人らの全員又は一部の者を具体的に想起することはできないとしているものである。
 これを本件に読み聾えて解釈した場合,上記で例に挙げた「目を見て話をしろ(冒頭から怒鳴る)」との表現は,本件談話記述自体には誰がこの発言をしたか特定する情報は含まれないから,怒鳴った事実が具体的に報道されるなどして,控訴人松本にほかならないとの認識が広まっていないかぎり,一般市民は控訴人松本であることを具体的に想起できないということになる。
 つまり,控訴人松本が意見交換会に出席していたことは,一部の新聞により報道されているが,具体的に名誉殺損に当たるとしている本件談話の表現自体が出席者3人のうち誰を対象とするものかは明らかになっていないため,控訴人松本に特別に向けられたものとは言えない。
 また,本件談斯においては,「出席者 未来塾3名」としか記載せず,出席者が誰であったかを伏せ,控訴人松本はもとより,誰の発言であることが分からないように配慮しているため,裁判例の傾向(神戸地裁平成7年9月29日判決判時1570号95頁等)からも,特定性は十分否定できる。
 そもそも自己の社会的評価が低下したと自覚している者が,市長選単において選挙結果に大きな影響を与える選対本部長という重要なポストで,選挙運動において陣頭指揮を執ること自体あり得ないことである。
2 第13(真実性・真実相当性の判断を行わなかったごとの誤り)について
 否認する。
 控訴人らは,本件談話の内容が真実に反しているにもかかわらず,その事実に対して全く判断を示さなかったとしているが,控訴人らが真実として主張する録音記録(甲39・40号証)は,被控訴人が提出を促すまで,なかなか証拠として提出されず,鑑定書(丙17号証)の内容からも編集加工されている事実は明らかとなった。
 そうしたなか,本件談話が社会的評価を低下させる内容とはなっていないことが明白であり,そこに記載された内容もおおむね真実であるという印象があれば,あえて本件談話の内容が真実であるか否かを詳細に検討して判断する必要はないと考える。
 なお,たとえ多少事実と反する記事を記載しても,それが社会的評価を低下させる内容となっていなければ,名誉毀損には該当しないことは,原審でも主張したとおりである(乙12・13号証)。
 また,原判決は真実性の判断を避けたとあるが,本件談話の表現は真実性を判断するまでもなく,それ以前の問題として本件談話には俯ら社会的評価を低下させるような事実摘示はないと判断したものである。
 おそらく原審においては真実であるかどうかも提出された証拠等により心証形成されていたと思われるが,上述したとおり,重要な証拠となるべき意見交換脅の録音記録をはじめから提出しなかったり,準備手続での裁判官の指示を守らず,証人尋問の当日に証拠(甲54・55号証)を提出するなど,真実性が疑われるようなことを控訴人らは行っている。
W「名誉感情侵害・人格権侵害を認めなかったことの誤り」に対し
1 第14(名誉感情の侵害を認めなかったことの誤り)について
 否認する。
 名誉感情の侵害については,被控訴人安中市が原審の準備書面(2)で民法710条及び723条の名誉とはF社会的名誉」を意味し,人の内心に存する「名誉感情」は含まないとの主張から,控訴人らがそれに反論する形で主張が始まっているが,本件において控訴人らの当初の主張にはなかった。
 訴訟進行から名誉毀損の主張が認められないことが推知されてきたため,急速,乙13号証を参考として主張に加えてきたと思われるが,本件談話の内容が社会通念上許される限度を超える侮辱行為又は表現態様であるとする主張には,あまりにも無理がある。
 自分が怒鳴ったつもりはないのに怒鳴ったとされたり,自分の発言内容が正確に記載されていない,意に沿わないと感じれば,確かに不快な感情を持つことは否めない耽その感情は控訴人らの主観的な評価の域を出ないものである。
 しかも本件談話が市長の意見及び論評を発表する場で書かれた記事であることを合わせれば,ある程度,執筆者である市長の主張に沿った内容となることは,やむを得ないことであると考える。
2 第15(人格権の侵害を認めなかったことの誤り)について
 否認する。
 自分の発言内容等が正確に発表される利益が,直ちに人格権として不法行為法上保護される利益とはならない。
 本件に関して言えば,大きく誤った発言内容等を公表したわけではなく,談話という記事の特殊性やスペース上の理由から,市長の主張が中心となって,相手が回答した情報の記載が足りなかったと言うに過ぎない程度であるため,控訴人らの法的利益を侵害するものではないことは明らかである。
 謝罪広告等請求事件(乙13号証)は,出版会社の祀者が本人への取材を行っていないばかりか,記事の真実性についての主張,立証にも応じず,記事の主たる内容の記載だけでなく,その他の記載も含めて相当部分が事実に反すると認められたものである,
 本件では,これまでも主張してきたとおり談話に香かれた内容は,全て真実であって,このことに関し,意見交換会に出席した3人の部長から事実確認を行ったうえで,発行している。
 したがって,本件は,個人情報に関して大きく事実と異なる内容の記事を公表された謝罪広告等請求事件とは全く比較にならない。
V (おわりに)に対し
 否認する。
第2 被控訴人の主張の補充
1 陳述書及び証言の真実性について
 控訴人らが証拠として提出した意見交換会の録音記録(甲39・40号証)は,本来であれば,訴状とともに提出されてしかるべきものと思われるが,なぜか,被控訴人が平成21年2月26日付準備書面(1)で促すまで提出がなされなかった。
 また,意見交換会に出席した3人のうち2人の部長は,訴状が提出されたときには,既に定年退職を迎えており,偽りの陳述をする理由も必要性もない。
 もう一入の建設部長であった証人長澤和雄は,本件の一連の騒動が原因と思われるが,退職後は農業を営むかたわら,大学の聴講生となって,安中市行政とは距離を置く生活をしており,証人になることを依頼するときも,相手側から証人の申出がなされていることを理由に,無理に依頼して証人尋問に応じてもらっている。証人長澤本人にとっては,もう2度とこの件に関わり合いになりたくないというのが本心であった。
(甲55号証反訳書P17)
長澤 もう一年間,本当に勉強になりましたんで,うちの方,役所の中では私が一番の被害者なもんですから。うーんともう,被害者というのは変なんだけども。
■■■■ でも,被害者ですよね。
長澤 信頼無くしました,私も。ええ。38年間,もう,積み重ねたことが・・・。
松本 ぶっとんじゃうもんね。
長澤 「部長らしからぬことをするな」って言われる。
松本 ひどい組み合わせになっちゃったもんだね。長澤さん,まだでも,あるでしょ。
  長滞 いや,3月いっぱいで辞めたいですよ。
松本 辞めりゃあ,つらなくても首つらなくてもいいけどね(笑い)
 承認人長澤は,本件以前から,控訴人松本とは面識もあって,公園使用許可に関して意見が対立していたときも,双方の窓口となって誠実に折衝に当たっていた。
 また,控訴人らが主催するフリーマーケットに対しては,安中を発信する地域振興,地域の活性化,更には環境のボランティアとして,評価をしている(証人長澤和雄証言P4)。
 こうした事情から,本件記事を発行するとき,被控訴人岡田から原稿内容を確認するよう指示された際に,市の広報として出すには文章が強すぎると意見し,その代替案を作成した経緯もある。
 当時の役職も建設部長であって,広報発行には責任を有していなかったため,国家賠償法第1条第2項をもってしても公務員個人として賠償責任を追及されるおそれもなく,偽証罪のことを勘案すれば,虚偽の陳述をしたり,証言をするわけがなく,真実性は高い。
2 本件控訴に理由がないことについて
(1)控訴人松本の訴えに理由がないことについて
 名誉毀損が成立するためには,その社会的評価を低下させる内容が誰に向けられた表現行為であるか,誰の名誉を毀損したものであるかが特定されなければならない。
 本件談話は,控訴人未来塾側出席者の意見交換会での発言や被控訴人岡田の発言,意見等が書かれているが,控訴人松本を特定して書かれた部分は,一切無い,
 したがって,仮りに,控訴人松本が意見交換会に出席していたことを一般読者が推知し得る状況にあったとしても,本件談話の内容は控訴人未来塾に向けられた表現行為であることは明白であって,控訴人松本個人を対象とはしていないため,控訴人松本の訴えは不適法である。
 なお,法人に対する名誉毀損行為がその法人の代表の名誉を毀損したことになるかについては,最高裁昭和38年4月16日第三小法廷判決において,「法人に対する名誉毀損の攻撃が同時に代表者に対する名誉毀損を構成するとの評価をなすためには,その加害行為が実質的には代表者に対して向けられているとの事実認定を前提としなければならない。加害行為が法人に対してのみ向けられているに過ぎない場合には,いかに代表者の勢力が強くその法人に対する支配力が大であっても,代表者に対する名誉毀損を云々することはできない。」と述べている。
(2)控訴人未来塾の名誉毀損について
 たとえ法人格のない団体であってもその団体に名誉が認められることについては,異存はない。
 名誉毀損が成立するためには,憲法で認められる表現の自由との調整のために確立している違法性阻却判断により,私人であっても選挙で選出される公人など一定の社会的地位にある者に対しては,名誉侵害の成立が限定的となっている。
 これと同様に,法人や団体についても,その種類,社会的又は経済的な地位が考慮されたうえ,報道などの表現行為が公共の利害に関する事実に係るものについては,違法性が阻却されることが多い。
 つまり,法人や団体の組織や活動は,公共の利害に関する事実に係る傾向が強いため,侵害行為があっても,その違法性は阻却され,違法な名誉侵害が成立する範囲が限定される。
 控訴人未来塾は、組織内役員に市議会議員や県議会議員を有するなど,一定の社会的地位を有する団体であって,しかも本件については,公共の利害に関する事実に係ることについては,争いはない。
 控訴人未来塾のような団体において,その名前で社会的信用の保護が問題となる場合は,当該団体が相応の社会的関心の下にあることは疑いがなく,そうした団体は,常に社会的評価又は批判にさらされるべき立場にあると言えるため,その名誉保護の範囲は,一般私人よりはるかに限定されたものになるべきである。
 このため,本件談話にたとえ穏当さに欠けるなど問題となる表現が含まれていたとしても,この程度の内容では,一定の批判を受けるべき立場にある団体にとって,名誉保護の範囲は制約されるため,その違法性が阻却されることは当然である。
 また,控訴人未来塾は,団体として慰謝料も請求しているが,法人や団体には精神的苦痛があるとは認められない。
 民法709粂により損害賠償責任を負う者は,「財産以外の損害jに対しても損害賠償責任が生じるが,「財産以外の損害」に対する責任とは精神的苦痛に対する損害賠償であることは,言うまでもない。
 これに関して,最高裁判決(最判昭和39年1月28日民集18-1-136「財団法人代々木病院事件」)は,民法710条によって慰謝料が認められる場合を精神的苦痛以外に無形の損害が発生した場合にまで広げ,法人や団体の慰謝料を肯定している。
 しかし,無形の損害とは何かについてはF慰謝料の支払いをもって,無形の損害以外に,いったい,どのような無形な損害があるのかという難問に逢着するのであるが,それはあくまで純法律的概念であって」と述べ,無形の損害とは何かについて定義することなく,金銭評価が可能で,しかもその評価の金銭を支払うことが至当と認められるところの損害に帰するといった転倒した説明になっていたため,現在でも曖昧なまま慰謝料請求が容認されてきている。
 このため,学説のなかには,法人や団体には,損害賠償法上の救済手段としては,謝罪広告のような原状回復請求のみを認めればよく,慰謝料を認める必要はないとするものもある。
 また,ドイツにおいては,法人や団体の名誉毀損は人格権侵害の一つとして不法行為たり得るが,判例は法人格のない人的会社について,会社自体の慰謝料請求を認めていない。
 このように,救済手段として慰謝料を認めることには議論があり,判例や多くの学説も,慰謝料は否定しないものの,自然人の精神的損害に対する賠償と同質とは見ていないことは疑いがない。
 つまり,法人や団体に慰謝料に相当する金銭賠償を行うには,自然人に対するよりも相当商いハードルがあり,本件談話に書かれた内容では,仮に控訴人未来塾の社会的評価を低下させたとしても,金銭を支払うことが至当とは到底認められない。
(3)控訴人未来塾の人格権侵害について
 法人や団体には感情はないため,名誉侵害ではなく,名誉感情侵害が認められるはずがないことは言うまでもないが,控訴人来爽塾に人格権侵害があったと主張する。
 しかし,控訴人らの主張は,団体等の人格権を全く理解していない。
 人格権(人格権を「人についての社会的評価」を内容とする名誉権とを区別することもあるが、ここでは名誉権を含む。)とは,個人の人格的利益を保護するための権利のことであって,基本的人権の一つであるとすれば,本来私法上の権利であって私人間に:適用されるべきものである。
 したがって,法人や団体にも一定の基本的人権の享有が認められるとしても,自ずから限りがあって,自然人とは異なって,特別な制約や限定を受けるとされており,それは当然,人格権においても同様である。
 法人や団体にも人格権としての名誉権が認められ,それが侵害されれば,原状回復を求める権利を有するが,自然人に認められた個人情報やプライバシーの保護といった人格権まで,法人や団体に認められるはずがない。
 控訴理由書には団体であっても人格権が認められるとして,控訴人らの人格的生存・存立基盤である地域づくり活動に関して誤った情報が流されたため,活動の正当性を疑わせることになりかねず,法的利益の侵害があった主張している。それが事実であったと仮定して,確かに誤った情報により団体の活動に大きな支障が生じれば,名誉侵害として法的保護の対象ともなろうが,本件談話のように名誉侵害があったとまでは言えない程度のものであれば,自然人よりも享受できる人格権の範囲は限定されるのだから,その人格的利益の侵害が認められないことは明らかである。

 以上のとおり,控訴稗由書の主張はいずれも失当であって,本件控訴にその理由が認められない。
                            以上
         証 拠 方 法
1 乙22号証 上毛新聞記事
2 乙23号証 安中市長選挙結果報告
3 乙24号証 東京新聞記事

【被控訴人の証拠説明書】
平成22年(ネ)第4137号 損害賠償等請求控訴事件
控訴人   松 本 立 家 外1名
被控訴人  岡 田 義 弘 1名
          証拠説明書
                      平成22年9月29日
東京高等裁判所 第5民事部 御中
              被控訴人安中市
              訴訟代理人弁護士  渡 辺 明 男
号証/標目(原本・写しの別)/作成年月日/作成者/立証趣旨/備考
乙22/新聞記事・写し/22.4.4/上毛新聞社/控訴人松本が市長選挙の高橋由信陣営の選対本部長であったこと。
乙23/安中市長選挙結果報告・写し/22.4.16/安中市選挙管理委員会/安中市長選挙が接戦であったこと。
乙24/新聞記事・写し/22.4.13/東京新聞社/フリーマーケットをめぐる対立が市長選挙に持ち込まれた経緯を市民が知っていたこと。

【乙第22号証】
平成22年4月4日付上毛新聞
<各陣営こう戦う>安中市長選
岡田義弘陣営:油断せず組織固め
 白石旭・選対本部長
  経験を生かして市を発展させてほしいと、多くの市民が期待しており、その声にこたえなければならない。不安はないが、油断することなく、市内全域の後援会組織を堅実にまとめていきたい。
高橋由信陣営:製作の新党に全力
 松本立家・選対本部長
  出馬表明から1ヶ月、訴えてきた政策を市民に浸透させることに全力を注ぐ。多くの市民に「市政を変えたい」という意識が芽生えるよう、街頭演説やチラシ配布により、地道に働きかけてゆく。

【乙第23号証】
安中市長選挙結果報告             安中市
選挙執行事由:任期満了 平成22年4月22日、選挙執行 平成22年4月11日
選挙すべき人員:1
投票日及び告示日:告示 平成22年4月4日、投票 平成22年4月11日
開票及び選挙会期日:選挙会 平成22年4月11日 午後7時30分開始 午後8時42分終了
投票区数:49
開票区数:1
投票結果:
 名簿登録者数:  男 25.350 女 27,057 計 52,407
 選挙当日有権者数:男 25,023 女 26,766 計 51,789
 投票者数:    男 13,233 女 14,392 計 27,625
 差引数:     男 11,790 女 12,374 計 24,164
 投票率(%):    男 52.88  女 53.77  計 53.34
開票結果:
 投票総数:  27,625
 有効投票数: 27,074
 無効投票数: 551
 無効投票率: 1.99
 法定得票数: 6,768.500
 没収点:   2,707.400
候補者に関する事項:
 当落の別: 当
 候補者氏名:岡田義弘
 ふりがな: おかだよしひろ
 性別:   男
 住所:   ■■■■■■■■■■■■■
 生年月日: ■■■■■ ■■■■
 職業:   農業
 党派:   無所属
 得票数:  14,673
 当落の別: 落
 候補者氏名:高橋由信
 ふりがな: たかはしよしのぶ
 性別:   男
 住所:   ■■■■■■■■■■■■■
 生年月日: ■■■■■ ■■■■
 職業:   会社員
 党派:   無所属
 得票数:  12,401

【乙第24号証】
平成22年4月13日付東京新聞
安中 岡田氏、接戦制して再選
 安中市長選は無所属現職の岡田義弘氏(71)が、無所属新人で元市議の高橋由信氏(53)を約二千二百票差で破り、再選を果たした。投票率は53.34%(前回60.66%)で過去最低だった。
 岡田氏は十一日夜、市内の事務所で「四年間の実績を冷静に評価いただいた結果」と勝利の弁。市土地開発公社の巨額負債問題には「群馬銀行と話し合いの場を持ち、解決の糸口を見いだしたい」と明言した。
 岡田氏は、地元の野殿地区を中心に市議、県議時代を通じた後援会組織に加え、「草の根選挙」を展開。高橋氏陣営が無党派層の取り込みを図るのを意識し、支持層の自民党色を出さない戦略で支持を広げた。一方、高橋氏は出馬表明が二月下旬と出遅れ、期待した岩井均県議の支持層からも票が集まらなかった。(菅原洋、中根政人)
<解説>市民冷ややか 最低の投票率
 現職の岡田氏が再選したが、投票率が低迷した点が重要だ。過去最低となった背景には、新人の高橋氏陣営の中心にある市民団体「未来塾」と岡田氏らとの間で民事訴訟が争われ、市民が冷ややかな見方を示した実態があるとみられる。
 未来塾は二〇〇八年、主催するフリーマーケットをめぐり、市の広報紙に載った記事で名誉を傷つけられたとして、岡田氏と市に損害賠償などを請求。ただ、訴訟は市政の大きな課題ではなく、対立関係が市長選に持ち込まれた経緯を多くの市民が分かっている。
 一方、再選した岡田氏は市民の期待が高い旧信越線横川―軽井沢駅間の復活に慎重な姿勢を続けている。しかし、一帯の「碓氷峠鉄道施設」が世界遺産の登録を目指す上、旧松井田町との合併成果を示すためにも、事業は進めるべきだとする意見は根強い。
 さらに、市が参画する県営増田川ダムの建設計画について、岡田氏は工業団地計画に水需要が期待できると説明するが、不況の中では説得力に乏しい。岡田氏は行政手法が「独裁的」と指摘される点に耳を傾け、柔軟に市政を運営する必要がある。(菅原洋)
**********

■こうして、1ヵ月半ちかく延期となった平成22年10月18 日の第1回口頭弁論を迎える準備が整ったのでした。

【ひらく会情報部・この項つづく】

※参考資料
【控訴人未来塾・代表者の控訴理由書その3】
**********
V おわりに
 本件の原判決は,市長が市の広報で「目を見て話をしろ(冒頭から怒鳴る)」などと,地域づくり活動について多数受賞している一審原告らの言動について,全く虚偽の内容を記載したことにつき,一審原告らの社会的評価を低下させないなどと全く特異な判示を行い,一審被告らの主張の虚偽性・悪質性から目を逸らした。
 高裁判決の中には,「自分の考えに合わないことかあると,職場で何日も膨れっ面をしている」との事実を摘示したことに対し,社会的評価の低下と名誉感情の侵害を認めたものも存する(広島高裁平成21年1月21日判決・LLI登載)。しかし,本件の原判決は,市長に対して「目を見て話をしろ」と冒頭から怒鳴ったとの事実を摘示しても,社会的評価の低下も,名誉感情の侵害も認めない。
 また,別の高裁判決では,個人のダイエットに関して週刊誌が誤った情報を流布したことに対し人格権の侵害を認めている(東京高裁平成21年5月13日判決,乙13)。しかし,本件の原判決は,一審原告らの人格的生存,存立基盤として重要な地域づくり活動に関して,市の広報で市長が誤った情報を流布しても,人格権の侵害を認めない。
 原判決のこのバランス感覚の欠如は,名誉毀損法理と人格権に関するこれまでの判例の積み重ねを顧みることなく,全く表面的な検討しか行おうとしなかった態度に起因している。これまでの判例の積み重ねの背景に存する重要な諸問題――正常な民主政過程の基礎となりそれを維持するための「言論の自由市場」が如何にあるべきか,表現の自由と人格権との調和がいかにあるべきか,権力と影響力を有する公人が市の広報で行う表現行為がいかにあるべきか,そしてその「言論の自由市場」で公人が私人に対する悪質な表現行為を行った場合に司法が如何に介入すべきかについて,原判決が想起した形跡は全くないのである。
 一審被告岡田は,原判決後,自身の後援会会報において,ICレコーダーが偽造であるとする鑑定言を提出したとの新聞記事と,原判決の結論を報じる新聞記事を掲載し(甲59),より一層,一審原告らの名誉を毀損する行為に出ている。判例の積み重ねが目指してきた「正常な民主政過程」からはほど遠いこのような不正常な状態を,本件の原判決が助長しているといっても過言ではない。
 一審被告らは,訴訟においても,一審原告らが不正な活動に従事し,不誠実な態度を取る団体・個人であるかのような主張を繰り返し,後日作成した虚偽の「要点筆記」(丙17)を平然と提出したり,自己の作成した答弁書について作成を否認したり,和解に関しても本心と全く異なった意見を陳述言に記したりし,信用性のない「鑑定言」(丙22)を地区懇談会や自身の後援会会報で振りかざすなどしている。このような不正義を,法が赦しては断じてならない。
 控訴審裁判所においては,原審の不当判決を連々かに取り消し,一審原告らの請求を認容する判決を速やかに下されたい。
                                  以上

【証拠説明書】
平成22年(ネ)第4137号 損書賠償等請求控訴事件
控訴人(一審原告)  松本立家 外1名
被控訴人(一審被告) 岡田義弘 外1名
          控 訴 理 由 書
                       平成22年7月22日
東京高等裁判所 第5民事部 御中
        控訴人(一審原告)ら訴訟代理人
                  弁護士  山 下 敏 雅  外
考証/標目/作成年月日/作成者/立証趣旨
甲57/最高裁判例解説(最高裁昭和31年7月20日判決)・写し/昭和32年11月25日/土井王明/昭和31年最高裁判決(三多摩のシャンハイ事件)の最高裁判例解説の内容
甲58/最高裁判例解説(最高裁平成15年10月16日判決)・写し/平成18年9月10日/松並重雄/平成15年最高裁判決(所沢ダイオキシン事件)の最高裁判例解説の内容
甲59/後援会報・写し/平成22年7月4日/岡田義弘後援会季刊誌編集部/一審被告岡田が,自身の後援会会報において,ICレコーダーが偽造であるとする鑑定書を提出したとの新聞記事と,原判決の結論を報じる新聞記事を掲載している事実等

【甲第57号証】
・・・ものは、昭和七・五・一七(民集一一・九八四頁)である。
 なお、第二目録記載の建物につき被告のためになされた所有権移転登記の抹消を求める原告の請求を容認するにっぎ原判決は、同一の建物につき既にAのため有効な保存登記がなされた後更に別の登記用紙にBのため所有権保存登記をしたときは後の保存登記は勿論これに基く其の後の登記もすべて無効であって、被告の登記は無効である旨を判示し、論旨はこの点の違法もこれを主張するが、本判決は、「第一目録記載の建物について被上告人(原告)が所有権取得の登記をしたことは原審の認定するところである。かような場合に右建物がその後の移築改造等によって構造坪数等に変更を生じたためその登記簿上の表示と吻合しなくなった場合においても、右移築改造後の建物が登記簿上の地番と同一の地番に存し且つ右従前の建物との同一性が認められ、従って又、前記登記簿上の表示が移築改造後の建物の表示と認め得る以上、この建物について有効な登記が存する場合であるというを妨げない。さればこれと同趣旨に出でたと解せられる所論原判示は相当である」と判示して、右の論旨をも排斥する。この点につき参照すべき大審院判例は次のものである。昭和四・四・六(民集八・三八四頁)、昭和五・一〇・一六(新開三一九八・一二頁)、昭和一〇・一〇・、一 (民集一四・一六七七頁)。(大場)
61 一、法人に対する民法第四四条に基く請求と同法第七一五条に基く請求との訴訟物の異同
  二、新聞記事が名誉を毀損すべき内容の意味かどうかの判断基準
  三、新聞記事によリ過失に基き名誉を毀損した場合と正当業務行為の主張の許否
   (昭和二九年(オ)第六三四号、同三一年七月二〇日第二小法判決、棄却。第一審 東京地裁、第二審 東京高裁 民集第一〇巻第八号一〇五九頁)
〔判決要旨〕
一、法人に対する、民法第四四条に基く損害賠償の請求と同法第七一五条に基く損害賠償の請求とは、訴訟物を異にする。
二、一定の新聞記事の内容が事実に反し名誉を毀損すべき意味のものかどうかは、一般読者の普通の注意と読み方とを基準として判断すべきである。
三、新聞に事実に反する記事を掲載頒布し、これにより他人の名誉を毀損することは、単なる過失に基く場合でも、これを正当業務行為ということはできない。
〔参照条文〕
一、民法第四四条、第七一五条、民訴第二二四条第一項
二、三、民法第七〇九条
〔解  説〕
 上告人(被告)は、日刊新聞を発行する社団法人であり、被上告人(原告)は、某土地に居住する在日華僑百数十名を構成員とする一個の地域団体(法人格なき社団)およびこれに所属する世帯主五一名である。ところで原審は、右新聞の某日附社会面に掲載された「深夜、警官三百が包囲。“多摩の上海”手入れ、台湾人の麻薬団を検挙」という見出しの記事中、事実と相違する部分があり、これにより被上告人等の名誉が毀損されたこと、並びに右誤報について同新聞社の取材記者および整理部等に過失があったことを認定判示の上、結局、民法七二三条により、上告人に対し、右記事の一部取消を命じたのが本件である。
 一、「要旨: 上告論旨は「民法四四条による法人の責任と同七一五条による法人の責任とは法律上性質を異にするに拘らず、原判決は、そのいずれの責任を認めたのか明かでないから、審理不尽、理由不備だ」と主張したが、最高裁は次の理由でこれを排斥した。
 「民法四四条による法人の責任と同七一五条による法人の責任とは、発生要件を異にし、法律上別個のものと解すべきことは所論のとおりである。ところで、原判決の認めた上貴人の責任が、そのいずれによるものであるかの点につき原判文は明確でない憾みはあるが、判示全趣旨に敗すれば、民法七一五条の請求を認容した趣旨に出たものであることが5かがい知られるから、論旨は理由がない。」
 民法四四条と同七一五条とを比較するに、前者は自己の行為(法人の機関の行為)による責任であり、後者は他人の行為による責任であって、両者の発生原因が全く別個であることが明白であるから、要旨一は当然と思われる(而して本判決では、原判文の趣旨は結局七一五条に基く請求、つまり上告入の被用者たる記者等0過失を原因とする請求を認容したのだと認めたのである。ちなみに、本件被上告人の請求原因は、民法四四条、七一五条のいずれに基く請求か必ずしも明白でないが、被上告人の意思は、どちらの請求でも認容されさえすれば宜しい趣旨と認められるから、本件は民法四四条に基く請求と七一五条に基く請求とが選択的に併合されているものと解するのが相当であろう)。
 二、「要旨二」原審は、本件記事中に、被上告人の団体を「大掛りな麻薬団の本拠」として扱った部分があり、これは誤報であると認定した上、もっとも右記事を精読すれば、前記麻薬団の本拠という文字は、被上告人の団体を指すのでなく、単に右本拠が被上告人団体の所在する疸物の内にあるとい5意味の記事と解されないこともない(もしその意味だとすれば右部分は必ずしも誤報とはいえない)が、新聞の報道記事は一般に精読されるというよりは、むしろ表面の文字どおりに読過されることが経験則上明かであるから、右記事は誤報と認むべきである旨判示した。これに対し上告論旨は「精読すれば他の意味に解され、それが誤報でない以上、名誉毀損にならない」と主張したが、最高裁は次の如く判示し論旨を排斥した。
 「名誉を毀損するとは、人の社会的評価を傷つけることに外ならない。それ故、所論新聞記事がたとえ精読すれば別個の意味に解されないことはないとしても、いやしくも一般読者の普通の注意と読み方を基準として解釈した意味内容に従う場合、そり記事が事実に反し名誉を毀損するもりと認められる以上、これをもって名誉毀損の記事と目すべきことは当然である。」
 右の点については上告審の先例は見当らないが、学説としては夙に同旨の見解が出ている(宗宮・名答権論二七七頁以下、ウイツテンバーグ、小西訳・危険な言葉一六頁以下)。元来、名誉は社会心理的な現象であるから、新聞記事が名誉を毀損するかどうかは、平均的な一般読者の印象を基準とすぺきことはもちろんであり、本判旨も当然というべきである。
 三、「要旨三」上告理由は「事実に反する記事が名誉毀損の結果を生じても、新聞に故意または重過失なきかぎり、正当業務行為として免責さるべきである。もし、しからずとすれば新聞の使命を無視し、モ0編輯発行を不可能ならしめる」と主張したが、排斥されたもの。おもうに新聞の誤報に当然違法性があるかどうかについては問題があり(注)、要は、記事の内容・性質(公共の問題が単なる私行か等)、誤報の経緯・程度(真実と償ずべき正当の根拠があったかどうか、また誤りは些細の部分か重要な部分か)、並びにその表現の方法如何等、諸般の事情を勘案して慎重に決すべきものと思われるが、本件では、誤報の記事により被上告人の名誉が毀損され、右誤報について過失がある以上、これを新聞の正当業務行為と回し得ないと判断されたものである。
(注)この問題に関する学説は、大体左のとおりである。
 宗宮・前掲三六四頁「虚偽り事実り報道は、新聞雑誌の社会的使命に反すること勿論なるを以て、其り事実を誤り掲載したるときは、違法性を阻却せず、但し事実に多少の誤りあるty、其の記事の誤りが、報這の迅速を曾ぶ新聞紙り使命にかんがみ、過失なしと認め得べきときは、主観的違法なきが為に免責せらる。」
 小野良二・法令または正当な業肪による行為(綜合判例研究叢書刑法(1))四二頁「新聞の報道記事が入り名誉を毀損する結果を生じたとしても、それが報道記事として正当なものと認められる限り、必ずしも事実の証明をまたないで、正当な業務による行為として違法性を阻却する。その限界は困難な問題であるが、小野博士は次のように規定している(小野・刑法における名誉の保護三三八頁以下)(一)事項的には政治上または社会上の出来事にっいては一般に報遠の自由を有するが、人の私生活については同様の自由を有すべきでない。………(二)内容的には、報道として正確であることを要する。その真実を立証し得ることは必ずしも必要でないが、相当な根拠に基くものであることを要する。」
 なお小野・名誉と法律(法学理論篇所収)七四頁、蝋山・小野他編・新聞の責任三一頁、四宮・判例不法行為法二九頁、ウイッテンバーグ前掲小西訳六九頁以下等参照。(土井)
62生命を害された責任無能力の子に過失があった場合に父母のなす慰謝料請求と民法弟七二二条第二項の適用の有無・・・

最高裁判例解説民事篇(昭和31年度)   書籍番号・判解民31
昭和32年11月25日 第1版第1刷発行
昭和51年4月20日 第1版第11刷発行
         編 者 財団法人法曹会
         発行人 井 口 牧 郎
     発行所 社団法人 法 曹 会
         〒100 東京都千代田区霞が関1−1−1
         振替東京2-15670番・電話〈03〉581-2146
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【甲第58号証】
テレビジョン放送をされた報道番組の内容が人の社会的評価を低下させるか、否かついての判断基準 テレビジaン放送をされた報道番祖によって摘示された事実がどのようなものであるかについての判断基準 その他
〔21〕
 1 テレビジョン放送をされた報道番組の内容が人の社会的評価を低下させるか否かについての判断基準
 2 テレビジョン放送をされた報道番組によって摘示された事実がどのようなものであるかについての判断基準
 3 テレビジョン放送をされた報道番組によって摘示された特定産地の野菜のダイオキシン類汚染に関する事実についてその重要な部分が真実であることの証明があるとはいえないとされた事例
(平成14年閲第846号 同15年10月16日第一小法廷判決 破棄差戻し (第1審さいたま地裁 第2審東京高裁 民集57巻9号1075頁)
〔判決要旨〕
1 テレビジョン放送をされた報道番組の内容が人の社会的評価を低下させるか否かについては,一般の視聴者の普通の注意と視聴の仕方とを基準として判断すべきである。
2 テレビジョン放送をされた報道番組によって摘示された事実がどのようなものであるかについては,一般の視聴者の普通の注意と視聴の仕方とを基準とし,その番組の全体的な構成,これに登場した者の発言の内容,画面に表示された文字情報の内容を重視し,映像及び音声に係る情報の内容並びに放送内容全体から受ける印象等を総合的に考慮して判断すべきである。
3 テレビジョン放送をされた報道番組において,A市産の野菜のダイオキシン類汚染に関し,B研究所の調査結果によればA市産の野菜のダイオキシン類濃度が1g当たり0.64〜3.80ピコグラムである旨記載されたフリップが示され,モの野菜がほうれん草をメインとするA市産の葉っぱ物であるとの説明がされたなど判示の事実関係0下では,その番組により摘示された事実の重要な部分は,ほうれん草を中心とするA市産の葉物野菜が全般的にダイオキシン類による高濃度の汚染状態にあり,その測定値が上記数値で示される高い水準にあることとみるべきであり,別の調査結果においてA市産のラベルが付けられた白菜1機体から上記最高値に比較的近似した
測定値が得られたことなどをもって,上記摘示された事実の重要な部分について真実であることの証明があるとはいえない。
(3につき,補足意見がある。)
〔参照条文〕
(1〜3につき)民法709条,710条
(2,3につき)刑法230条の2第1項
〔解  説〕
第1 事案の概要
1 本件は,埼玉県所沢市内でほうれん草等を生産する農家であるX(上告人)ら29名が,放送事業を営むY社(被上告人)のテレビ報道(テレビジョン放送をされた報道番組)により,所沢産の野菜の安全性に対する信頼が傷つけられ,Xらの社会的評価が低下して精神的損害を彼り,また,野菜価格の暴落等により財産的損害を披ったなどと主張して,Y社に対し,名誉毀損の不法行為に基づき,謝罪広告と総額約2600万円の損害賠償を求めた事案で(注1)ある。
2 本件の事実関係の概要は,次のとおりである。
(1) 当事者等
 Xらは,いずれも所沢市内において良薬を営む者であり,ほうれん草,にんじん,小松菜等の野菜等を生産,販売して生計を立てている。
 Y社は,テレビジョン放送等の放送事業を行う会社であり,ニュース番組である「ニュースステーション」(本件番祖)を制作し,これを毎週月曜日から金曜日までの午後10時ころから午後11時20分ころまでの約80分間,全国の放送網を通じて,全国同時にテレビジョン放送をしていた。
 B研究所は,官公庁,民間企業,団体等からの委託調査,研究業務を主たる目的とする株式会社である。
(2) ダイオキシン類
ア ダイオキシンは,塩素系化合物の一種であるポリ塩化ジベンゾ‐パラ‐ジオキシン(polychlorinated dibenzoやdioxins,PCDD)の通称であり,これに物理化学的性質や毒性作用が類似するものとして,ポリ塩化ジベンゾフラン(polyehlorinated dibenzofrans、PCDF)及びコプラナーポリ塩化ビフェニル(coplanar polychlorinated biphenyls, Co-PCB。以下「コプラナーPCB」という。)があり,これら3種類の化合物群が「ダイオキシン類」と総称されている(注2)。我が国においては,従来,コプラナーPCBはダイオキシン類に含めない取扱いであったが,平成11年7月に公布されたダイオキシン類対策特別措置法(注3)(平成11年法律第105号。平成12年1月15日施行)が規制の対象とした「ダイオキシン類」には,コプラナーPCBも含むものとされ(同法2条1項),以来,これもダイオキシン類に含められている。ダイオキシン類に含まれる上記3種類の化合物群は,各異性体ごとに毒性の強弱が異なっているため,ダイオキシン類の濃度の測定結果については,毒性等価係数(注4)(toxicity equivalency facto, TEF)を乗じて換算した値である毒性等価量(toxicity equivalency quantity, TEQ)により表記されている(なお,同法8条2項1号,同法施行規則3条参照)。
 ダイオキシン類は,人の活動に伴って発生する化学物質であって本来環境中には存在しないものであり(注5)(ダイオキシン類対策特別措置法6条1項参照),一般毒性のほか,遅延性の発癌性,生殖毒性,免疫毒性,催奇形性,肝臓障害,骨髄障害等の原因となる毒性を有するとされ,また,食物及び環境から人体に摂取されるとそのまま体内に蓄積され,体外に排出されにくいため,人体への影響が懸念されている。(注7)(注8)
イ 世界保健機関(WHO)は,平成10年5月に開かれた専門家会合において,耐容1日摂取量(注9)(tolerable daily intake, TDI)を体重1kg当たり1〜4pg(注10)(ピコグラム)と定めた。
 我が国におけるダイオキシン類の体重1kg当たりの耐容1日摂取量の基準は,ダイオキシン類対策特別措置法6条1項及び同法施行令2条の規定により,4pgと定められている(注11)。
(3) 所沢市周辺におけるダイオキシン類問題
ア 所沢市においては,平成4年ころから,同市三富地区に集中して廃棄物焼却施設等が設置されたため,その周辺地域のダイオキシン類汚染が問題となり,環視汚染等についての調査,研究が行われるようになった。
 ダイオキシン類による環境汚染等について調査,研究している摂南大学薬学部の宮田秀明教授らが,平成7年及び平成8年の2回にわたり,所沢市周辺の土壌調査を行ったところ,1g当たり90〜300 pgTEq (平成7年),65〜448 pg TEQ (平成8年)のダイオキシン類が検出された。
 また,埼玉県が,平成8年11月,所沢市三富地区周辺のダイオキシン類の調査を行った結果,地表から0〜5cmの範囲の上策からは1g当たり11〜100 pg TEQ,平均42 pgTEQ,地表から0〜2cmの範囲の土壌からは1g当たり13〜130 pgTEQ,平均54pgTEQのダイオキシン類が検出された。
 さらに,環境庁が,平成9年度,所沢市を含む埼玉県内の5地域を対象に,大気,土壌,植物等のダイオキシン類の濃度を測定した結果,所沢市周辺の土壌から1g当たり62〜140 pgTEQのダイオキシン類が検出された。
イ A市農協は,財団法人日本食品分析センターに依頼して,所沢産のほうれん草及び里芋に含まれるダイオキシン類の濃度の調査を行い,平成9年8月20日,同センターから調査結果の報告を受けたが,これを公表せず,同農協の組合員は,平成10年2月9日,調査結果が出ていない旨の発言をした。このため,所沢市議会や衆議院予算委員会において,A市長協がダイオキシン類の調査結果を公表しないことが問題とされた。
ウ B研究所は,平成4年度に所沢市の委託を受けて大気汚染の調査を行い,平成5年3月,その調査結果を同市に提出したが,その後.同市周辺のダイオキシン類汚染が社会問題化していることもあって,同汚染の自主調査に取り組むようになった。
 B研究所は,自主調査の一環として,所沢産の農作物に含まれるダイオキシン類の濃度調査を行うことを計画し,平成10年11月及び同年12月に所沢産の煎茶(同年夏に採取した茶葉を加工したもの)及びほうれん草並びに所沢市に隣接する三芳町産の大根の提供を受け,煎茶を100 gずつの2検体とし,ほうれん草を4検体,大根の葉と根を各1接伴として,B研究所が技術提携をしているカナダの会社に分析を依頼した。‘
 その分析の結果によれば,各接伴1g当たりのダィオキシン類(コプラナーPCBを除く。)の測定値は,煎茶が3.60pgTEQ及び3.81pgTEqであり,ほうれん草が0.635 pgTEQ,0.681pgTEQ,0.746 pgTEQ 及び0.750 pgTEqであり,大根の葉が0.753pgTEQであった(注12)。
エ 宮田教授らは,平成10年3月,「所沢産」のラペルが付けられた白菜(マスコミ関係者が所沢市内の食料品販売店で購入したもので,四つ切りされてラップに包まれていたもの。1検体)の提供を受けて調査したところ,1g当たり3.4pgTEqのダイオキシン類(コプラナーPCBを除く。)が検出された。また,同教授らは,同年7月,所沢市内(廃棄物焼却施設密集地から1km以内の地点)で採取したほうれん草(1検体)を調査したところ,1g当たり0.859 pg TEQのダイオキシン類が検出された(注13)。
オ 厚生省が,平成8年度及び平成9年度に,全国のほりれん草その他の野菜を調査した結果,ほうれん草から,平成8年度は1g当たり0.106〜0.308pgTEq,平均0.188pgTEqの,平成9年度は1g当たり0.044〜0.430 pg TEq, 平均0.187pgTEQのダィオキシン類が検出された。
(4) 本件放送に至る経緯
ア Y社は,平成7年10月から平成9年11月まで,「ザ・スクープ」という報道特集番組で7回にわたり,ダイオキシン類問題を特集して放送し,その中で,ダイオキシン類の危険性とダイオキシン類汚染が全国に広がっていることを指摘し,この問題に対する日本の行政の取組が諸外国よりも遅れていることについての問題提起をし,また,平成10年1月以降下記(5)の本件放送に至るまで,本件番組においてもダイオキシン類問題を取り上げていた。
イ Y社は,所沢産の農産物のダイオキシン類汚染に焦点を当てた特集番組の制作を企画し,B研究所の代表者であるC所長に出演を依頼するとともに,前記の自主調査の結果の公表を求めた。
 B研究所は,この要請に応じ,C所長の出演を承諾し,自主調査の結果である煎茶の測定値(3.60pgTEq及び3.81pgTEQ)とほうれん草の測定値(0.635pgTEQ,0.681pgTEQ及び0.750pgTEQ)をY社側の担当者に伝えた。その際,B研究所は,Y社側の担当者に対し,上記の者測定値を,検体提供
者への配慮から,それぞれの検体の具体的な品目を明らかにしないで,単に所沢産の農作物から検出された測定値であるとして伝えた。
 Y社側の担当者は,B研究所から示された上記の各測定値が,いずれも所沢産の野菜についての測定値であると誤解して,放送の際に用いる本件フリップに「野菜のダイオキシン濃度度」「金岡(厚生省調べ)0〜0.43ピコg/g所沢(B研究所調べ)0.64〜3.80ピコg/g」と表示した。
 また,C所長は,本件番組のニュースキャスターであるDキャスターや,その他のスタッフとの打合せのための時間が十分ではなかったため,Dキャスターらに対し,上記各測定値の検体の具体的な品目を伝えることができず,Y社側の上記の誤解を解かないまま,本件放送に出演した。
***********資料編につづく
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