今回も昨年書いた私の自分史「追憶」の追記です
「追憶」 というのは私の幼少期の事を書いた自分史で
まだ読まれていない方はぜひ読んで下さいね
カテゴリの記事は1話〜21話までの長いお話ですが
お時間のある時にでも読んでいただけると嬉しいです。
私が小学校4年生、ヨシ坊(弟)が5才くらいの頃
おじいちゃんとおばあちゃんは私達を連れて引越し
堺市三国が丘で下宿屋を始めた事は「追憶」にも
書きました。
その頃にも一度お父ちゃんは会いにきました
お父ちゃんは私の手を引いて黙って歩き始めました
後ろの方でヨシ坊が「おねぇーちゃん!」と言って
泣いていましたが、お父ちゃんは私の手をきつく
握りどんどん歩いて行きました
お父ちゃんの手が温かだったのだけを覚えています
どこへ行くのか不安でしたが、お父ちゃんは私を
ときどき見ながら笑っていました。
バス停4っつくらい歩くと南海電車「堺東」駅の
そばに商店街がありました
そこの真ん中くらいにある映画館へ入りました
お父ちゃんは私を席に座らせました
映画館なんて初めてだったので大きな音量に
驚きました
するとお父ちゃんがパンフレットを出して私に
見せました
そこには「アカプルコの海」と大きく書いてあって
映画が始まりました
主演はエルビスプレスリーと書いてありました
4年生の私には字幕が早過ぎて読めなかったけど
お父ちゃんが時々耳元で筋書を説明してくれました
筋書なんてどうでもよかったけど、とにかく主演の
プレスリーのハンサムな顔と甘ったるい声が魅力的で
食い入るように見つめました
お父ちゃんは一緒に住んでいた頃は進駐軍の通訳を
やっていたので英語は字幕がなくても分かるようです。
私が覚えているお父ちゃんは会話にはいつも横文字が
入るくらい外人さんのような発音でした。
映画が終わるとお父ちゃんはまた私の手を握って
外へ出て商店街を歩きました
会話はほとんどなかったように思います。
ある雑貨屋さんに入りました
お店の中央に木彫りの小さな箱みたいなものが
置いてあり、お父ちゃんが裏側のネジを巻いて
「箱を開けてみぃー」と言うので開けると
中からバレリーナの人形が出て来て綺麗な音楽が
流れ始め、それに合わせて人形がクルクルと回り
踊り始めたのでびっくりしました
音楽が終わって私が木彫りの箱を裏返すと底に
「エリーゼのために」と書かれてありました
(オルゴールの曲名ですね)
私はまたネジを巻きました
ずっと見てるとお父ちゃんがそれをお店の人に渡し
包んでもらいました。
それといつの間に買ったのか「アカプルコの海」の
プレスリーの写真集も買っていて紙袋に二つ入れて
私に笑いながら持たせました。
それがお父ちゃんの私へのたぶん初めての贈り物
だったように思います。
帰りも私の手を強く握り下宿屋さんまで歩きました。
ヨシ坊だけを突然連れて行ったのはそれから半年後
くらいだったと思います。
映画館に行ったりオルゴールを買ってくれたのは
きっと私との長い別れがわかっていたのでしょうね・・・
そのオルゴールがクローゼットから出て来たので
お父ちゃんと別れてしまってもずっと宝物にして
いたことも思い出しました
もうネジも潰れて鳴りませんが・・・。
大人になってから何度も思いました
お父ちゃんはなぜ私じゃなくヨシ坊を連れて
いったのか?
父親って女の子は可愛いものだ、と世間ではよく
言うのに・・・。
おじいちゃんとおばあちゃんは私とヨシ坊を
引き取らなければ、あのままお饅頭屋(明治屋)で
それぞれの仕事をしながらヨシツグおじちゃん家族と
暮らしていたと思います
大人の事情が分かりませんが、私達二人を育てる
のが重荷になっていて、叔父さん達夫婦にも
遠慮があったのかも知れません。
ヨシ坊を連れて行ってしまった頃、おじいちゃんは
あまり具合がよくなさそうでした
ずっと咳をしていましたし、おばあちゃんも足も
弱くなって腰をさすりながら台所で下宿人さんたちの
食事を作っていたようだから、きっと父や母に早く
引き取るようにと催促したのでは?と思っています
(祖父母はその時70代前半だったと思います)
父の兄弟姉妹たちが祖父母の家に集まってみんなで
話をしていたことがありました
私は外へ出てなさい、と言われたのでヨシ坊を
おんぶして家の前にいました
そして途中で玄関に入るとみんなの話声が聞こえ
「二人を一緒に面倒見るのは無理やから別々に
預かったらどうや?」
父の姉と妹は結婚していて赤ちゃんがそれぞれいます
「ノリちゃんは子守り出来るから私が引き取るわ
ヨシ坊はなぁ・・・」
そんな会話を聞いて私はヨシ坊をおんぶしたまま
畦道をずっと歩き続けました
泣きそうになるのをこらえていました
歩き続けているとお母ちゃんが来た時に送って
行った南海電車の崖のところにつきました
ここからヨシ坊と飛び降りたらどうなるんやろぅ
そんな事をチラッと考えてしまいました。
次に母が私たちに会いに来た時に隣の部屋から
大きな声が聞こえていたことがありました
おばあちゃんが母に
「はよぅ引き取りなはれ!いつまで面倒見させる
気ぃやぁ!」
その声がまだ耳に残っています・・・。
でもおばあちゃんはお母ちゃんが引き取りに迎えに
きて私と別れるときには泣きながら手を振って
いました、そして何度も
「ごめんやでぇーノリちゃん」って聞こえました・・・。
みんなそれぞれ辛い思いをしたでしょうが、どうして
こんなことになってしまったのか?と母に手を
引かれて電車に乗る時に思いました
それからこれから自分はどうなるのだろうか・・とも。
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