会社のエアコンの室外機を置いてある台は金属の四角い筒だ。
その中にスズメが巣を作った。会社の向かいの田んぼから藁を運び、卵を産んだのだ。藁を運んでるな、と思っていたらピイピイと小さな鳴き声がし始めた。這いつくばって頭をベランダの床にくっつけて覗いてみたら、薄暗い中に黄色と茶色の合わさったくちばしがみっつ開いて、さかんにさえずっていた。
うおお!かわええ。
スズメの巣の脇っちょには、クーラーから出た水の排出口があって小さな小さな水たまりができており、親鳥がそこで水浴びをしていた。スゲー。スズメのお宿は温泉付き住宅!こないだ見たら一羽しか見えなかったから他のは死んじゃったのかもしれない。残った一羽はかなりでっかくなっていた。もう少ししたら飛ぶかも。
鳥の話もうひとつ。いとうせいこうの植物本の中で、知り合いにアヤメとツユクサをもらう話があって、それらは鳥が運んできた種から育ったのだという。素敵だと思いませんか?他に、いとうせいこうがヒルガオ欲しがってたら勝手に生えてきて鳥が運んでくれたんだ!でかした!という話もあり、これを読んでからわたしは鳥植物にロマンを感じていた。
そんな折、家の庭の比較的鬱蒼としたエリアで見馴れぬ花が咲いているのを発見した。いや、その花自体はよく見るんだけど庭にはなかったよな、と。アジサイの仲間であろう白い花だ。花の房が長く、葉はゆるいカエデ型をしている。うっすら緑がかった白が楚々しい。わあ!これたぶん鳥植物じゃない?よくこの辺に鳥のフン落ちてるし。でかした、鳥!我が家にも来たよ鳥植物!
次はうちにもヒルガオが欲しいです、鳥よ。
そしてニヒル牛マガジンで電車から見た風景をもとにふくらました妄想について書いた後で風呂本として選んだいとうせいこうの「ノーライフキング」という小説が、書いた妄想の元ネタのひとつだと気付いた。空前のいとうせいこうブームだ。調べたらまだまだ読んでない著者があった。またアマゾンの世話にならなければ。
こないだ隣駅で、黒い服を着た横広がりのパーマの婆さんに話かけられた。「すみません、100円持ってますか?」わたしは「どうしたんですか?」と訊いた。公衆電話でもかけたいのかと思ったのだ。しかし婆さんの応えは衝撃的だった。
「何かもらえたらと思って」
びっくり物乞いチャレンジショー出た。
一見きちんとした身なりの人に見えたから、そう来るとはひとかけらも思わなかった。
あまりのことに、「ないです」と答えて逃げ去ったが、100円あげてなんか面白い話引き出せばマガジンのネタになったろうか。でも何かに勧誘とかされたら怖いしな。
買い物を終えて駅に戻ったら、婆さんはまだ佇んでいた。遠巻きに見た後ろ姿は、もうきちんとした身なりには見えなかった。