田崎史朗サンという時事通信の政治部の人が書いた記事の中に興味深い一節がありました。(
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/5774)
「@日本の原子炉は電気事業法および施行規則で13カ月を超えない時期ごとに運転を停止させて定期検査を実施することが義務付けられている
A再起動させる際は電力会社と地元自治体との安全協定に基づき、地元自治体の同意を取り付けなければならない
この2つの決まり事によって、商業用原子炉54基のうち7基が停止状態になっている。このままの状態が続けば来年前半にすべての原子炉が停止となる。」
実は官邸と経産省は、4月ごろから浜岡原発だけを停止することで、「最も危険な浜岡を全面停止したのだから、ほかは大丈夫」という、もっともらしい理屈をつくり、他の原発の再起動を自治体に促そうという考えだったということです。
なるほど、原子力推進派の人も浜岡原発停止には賛成している人が多いという話は、ホントだったということのようです。
ところが、菅総理は枝野官房長官などごく限られた人たちとの相談のみで突然に「文部科学省の地震調査研究推進本部の評価によれば、これから30年以内にマグニチュード8程度の想定東海地震が発生する可能性は87%と極めて切迫をしている」(菅、6日の記者会見)という理由で、中部電力に運転停止を要請しました。
つまり、各省に根回しし、関係閣僚会議に諮って総合的エネルギー政策らしきものを作成した後に、浜岡原発停止に踏み切ろうという手順を飛び越えて、首相の「決断」で中部電力に運転停止を要請するということになったのだといいます。
これは、首相の「決断」を演出することで内閣支持率上昇を狙ったパフォーマンスだということになり、事実、その目的はある程度成功したということになりそうです。
ところが、田崎サンによれば、閣僚の多くさえも話を聞かされる前に突然の「決断」がなされたことで、閣内や民主党内に不協和音が起こり、「政局」になりつつあるというのがいまの現状だと言います。
さらに、原発を抱える自治体の関係者たちも、「福島第1原発の確率は0.0%だった。そこで巨大地震と津波が起きたのに、ほかの地域は大丈夫なのか」という不安を表明し始め、関西電力の原発がある福井県などはかえって運転再開に厳しい態度をとるようになったといいます。
原発賛成派にしてみれば、新たな対策を打ち出さなければ、関電、九州電力などでも原発の再起動ができず、今夏、電力不足に陥りかねないという懸念が広がっているということです。
確かに、東京をはじめとする東京電力の管内では、フツウの人々もそれなりに覚悟をしていますから、案外に「節電」が成功して大停電は回避される可能性は高いでしょう。しかし、関電、九州電力の管内はかえって盲点になる可能性はあるかもしれません。
しかし、このままいけば来年あたりに図らずも「脱原発」が実現してしまうかもしれないとは、ちょっと興味深い話ではあります。もちろん、「止める、冷やす、閉じ込める」の原則からいえば、原子炉を止めただけでは、まだまだ危険なことには変わりありませんけど・・・。

0