広島と長崎に落とされた原爆で約20万人の人が殺傷された。
原爆投下後に被曝しながら生き残った人々約8万9000人を、アメリカ政府が派遣した原爆影響調査団が、データを収集した。このデータが現在の国際放射線防護委員会(ICRP)の勧告している放射線の安全値の基礎データになっている。
ただしこのデータは分子生物学による遺伝子の仕組みが解明される前の話である。
したがって、原爆などの直接の被曝をしていない被爆者の子どもなどが、体内に取り込まれた放射性物質により「内部被曝」することは徹底的に無視されている。
ICRPの安全基準と、それを絶対視する日本政府の打ち出す安全基準に対する不信感は、すなわちICRPが内部被曝の影響を考慮していないことによっている。
外から浴びる被曝と、身体の内部に放射性物質を取り込む内部被曝の二つの被曝が存在するらしい、ということが福島における原発事故において、ようやく日本でも認識されるようになった。
しかし、なぜ内部被曝は長い間無視され、それが放射線科学に関する常識として私たちに教育されてこなかったかといえば、それはおそらく、内部被曝の影響を全面的に認めてしまえば、核兵器の開発そのものがもはや不可能になってしまうし、原発に対する放射性物質の管理も、さらに厳しいものにならざるを得ないからなのであろう。
日本政府は唯一の被爆国を自称しながら、放射性物質の科学においては、むしろ内部被曝の事実を隠蔽して、核開発を推進することにお墨付きを与えてきたのがこの60年の歴史であると言うことができそうだ。

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