「「悪者」だからうまくやってくれるはずだった???」
開発
小熊英二さんは、震災で何が変わったのかといえば、一番変わったのは秩序に対する信頼感だと思う、と言っている。
http://synodos.livedoor.biz/archives/1885788.html
「最近、高橋源一郎さんと内田樹さんがある雑誌で対談をしていて、面白いなと思ったことがあります。彼らによると、戦後は『金がすべて』でやってきたという。自分たちは68年に、『平和国家なんて嘘だ、金がすべてなんていやだ』と反抗をした。でもその後、なんとなく成功したりお金が入ったりすると、『なんとなく居心地悪いけど金がすべてでもいいかな』という気分になったという。
「そこで前提になっていたのは、『原発推進派は悪者だから事故は起こさない』と思っていたことだというんです。原発推進派を『政府』や『官僚』や『自民党』や『経済界』と入れ替えても同じだけれども、大丈夫だと思っていたと。ところが今回の震災で、意外と彼らが無能だということがわかってしまった。その信頼が崩れたというのは、もしかしたら大きな変化かもしれないと私は思いました。」
「悪者」だから事故は起こさない、という言い方が分からない人が多いかもしれない。
その昔、京極純一さんという東大の政治学者が55年体制下の日本人の政治意識についてこんなようなことを書いていたと記憶する。野党(社会党など)はカネにはきれいだが、それではこの汚い世の中を渡ってはいけない。自民党は、カネに汚いところがあるのが困ったものだが、うまいことずる賢く世間を生き抜く術は知っていそうだ、というもの。
確か「日本の政治」とかいう東大出版から出た本の中にそんなことが書いてあった。今その本が見つからないので、言い方が正確ではない。しかし、そういう印象がワタクシの記憶に残っている。
古市憲寿さんは小熊さんの発言に応えてこう言う。「自民党支持者でない人も、自民党という悪者に任せておけば、なんとかなるだろうとみんな思っていたということですね。そのような一種の信頼が、60代のおじさんたちの間でも崩れはじめている、と。」
小熊さんはさらにこういう。「そうです。私の知り合いのある不動産屋は、政治意識は高くないですが、『日本政府があんなに情報を隠すとは思わなかった。あんな中国政府みたいなことをやるなんて』といっていました。こういう秩序への信頼の崩壊感覚が、これからどう出てくるかわからない。」
「もちろんこの20年間、なんかおかしい、日本はだんだん崩れはじめている、とみんな薄々感じてはいた。けれども、まあ服も電気製品も買えるし、なんとかなるだろうという感じだった。ところが、本当に大丈夫だろうかという密かな不安のレベルが、ある水域を越えた。原発問題で、『政府のいうことは信用できない』という感覚は一般的なものになった。それが世論の7割が脱原発を支持するといったところに現れてきていると思います。」
しかしながら、この震災と原発事故が民主党政権下で起こったということがこれまた皮肉である。
原子力ムラ(というか原子力マフィア)を育てたのは自民党政権下であるにもかかわらず、現在の政府に対する信頼感の失墜のすべての原因が民主党の統治能力のなさに還元されるような言説が、次期総選挙までの間に大量に流されるに違いない。
実際、民主党は自民党以上に原発輸出に入れ込んだり、電力総連を通じて原発推進をいまだに画策したりもしている。自民党にいて原発・核燃料サイクル反対の河野太郎さんを過大評価するつもりはないけど、「自民党には河野太郎がいるが、民主党には河野太郎はいない」のである。
まあ民主党って、ホントにおマヌケな政党なのでありますね。
しかし、ワタクシなんかは「チェルノブイリ事故でソ連が崩壊したように、日本も・・・」なのかなあということをよく考えるんですね。

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