岩波書店の定期採用の条件の中に、「岩波書店著者の紹介状あるいは岩波書店社員の紹介があること」ということがあるのが、「コネがなければ応募を認めないということか!」と一部で大騒ぎになっているらしい。
この大騒ぎに対して岩波書店側は、誤解に基づく報道・論評が多いとして、次のような見解を発表した。
「小社は、いわゆる「縁故採用・コネ採用」は行っておりません。「著者の紹介、社員の紹介」という条件は、あくまで応募の際の条件であり、採用の判断基準ではありません。ご応募いただいたあと、厳正な筆記試験、面接試験を行っております。」
つまり若干名の募集のところに千人以上の応募が殺到するような状況では、一人一人の選考に時間がかけられないので、応募者をあらかじめ絞ろうという意図だということのようだ。
確かに、紹介状を持っていけばほぼ必ず就職できるというわけじゃないんだから、「コネ」とか「縁故」採用というわけではないだろう。
よくよく応募資格をよく読んでみるとこう書いてある。
「A: 4年制大学卒業者(2013年3月卒業見込者を含む)
1982年4月2日以降生まれ(雇用対策法施行規則第1条の3第1項[例外事由3号イ]による)
B: 出版関連業務(編集/製作/校正/販売/宣伝/経理/総務等)経験者=学歴は問わない」
Aは、大卒で1982年4月2日以降生まれ。すなわち30歳の人までということになる。Bは出版業務の経験者ということになるのだが、Aの応募資格も、必ずしも「新卒者」が対象ではないというところがミソではないか?
つまりそのココロは、出版業務以外でも、社会経験がある人が対象ということで、新卒者の場合は、社会経験のなさを補って余りあるほどの能力が求められるという意味ではないか?
最近の新卒者の就職難は単に不況であるとか、非正規雇用が増えたとかいうだけではなく、かつては新入社員を入社後数年間会社が独自に教育するシステムがあったものが、とてもそんな余裕がなくなり、新卒で採用する枠を小さくしたということが原因だと聞いたことがある。
つまり、岩波書店ほどの有名な出版社も、新人を一から教育する余裕はないということを宣言したということなんでありましょう。
そういえば、大阪市の橋下市長も府知事時代に、公務員は30歳以上を応募資格にして、民間で経験を積んだ人を雇用するようにしたい、などと口走ったことがあった。みんな、社会経験のない新人を教育する余裕がないということのようである。
しかし、多く会社が「経験者求む」のはいいけれど、それでは誰が若い人に経験を積ませる場を提供するのだろうか、とワタクシなどは思うのだが???
一企業からすればやむにやまれぬ合理的な行動でも、社会全体からすればそれだけ職業技能を身に着けた人材を少なくしてしまう効果をもたらすのではないかなあ。

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