80年代ぐらいまでは、大手出版社から出るハードカバーの単行本の初版は最低1万部、2万部は刷ったものだったらしい。それが今では、3000〜5000部が当たり前になった。
もちろん、今でも出せば売る有名作家はいるけど、この20年来の出版不況のせいで、初版の部数は確実に落ち込んでいるようだ。
いや、有名作家といえども話は違わない。かつては初版を数万単位で発行していた有名推理作家なども、ピーク時の半数に落ち込んでいる。
初版の数を抑えるのは、印税が関係している。著者印税は10%という。
1500円の本なら1冊150円になる。初版1万部だったら、増刷なしで150万円を出版社は支払わなければならない。売れなければ、そのリスクは出版社が負うことになる。
著者にしても、1年に何冊も出せればいいけれど、そんなに次から次に出せる人はいないだろう。
小説家で、書くだけで食べられている人は、あまり多くない。
主たる収入は、大学教授とかの月給、という人は珍しくなくなった。欧米だってそうで、大学にクリエーティブ・ライティング(創作学科?)というのがあって、小説家はそこの教授になっている。作家もしだいに『伝統芸能』になりつつある。
昔は日大の芸術学部とか早稲田にしかなかった文芸学科が、ほかの大学にもできるようになった。
講演をやりまくる人もいるし、「この人、タレント?え?作家だったの?」という人もいる。本を売るためには、テレビに出るのがいちばんのようだ。
芥川賞を取っても食えるようにはならないとは、もうだいぶ前から言われていた。なるほど、芥川賞受賞作家の一覧を見ると、「こんな作家いたの?」っていう人がかなりいる。原稿料で食えるのは、受賞後1年くらいかもしれない。

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