1960年代、アメリカと中国は激しく敵対していた。
一方ソビエト連邦は、フルシチョフ時代になって以降、アメリカと和解しようとしていた。
中国は、ソ連との友好関係を断絶し、米帝国主義を打倒すると宣言して、われわれはソ連のような「張り子の虎」ではないと核実験、ミサイル実験を繰り返した。
当時の中国は貧しかった。だが、文化大革命の大混乱のなかでも核開発は止めなかった。
当然ながら、核実験とミサイルを繰り返していた中国を、日米両政府は強く批判していた。
しかしながら、アメリカは台湾を捨て、日本への連絡も一切なしに中国との対話に走ってしまった。そして、アメリカが中国への敵対視を突然止めると、日本政府も日中国交正常化を進め、国交を回復した。
当時の中国は貧しかった。ちょうど今の北朝鮮と同じである。どうも、北朝鮮は第二の中国をねらっているようにも思えてくる。
北朝鮮は米国との直接対話、国交締結が進むまで、ミサイル、核実験を続けるだろう。
しかし核兵器を別にすれば、北朝鮮には通常の戦争を継続させるだけの戦力に乏しい。
ひたすら核による脅しでアメリカとの平和条約締結を狙い、それができれば日本は、日中国交回復の時のように、後からついてくると見ているようだ。
米政府内部は、イラクやアフガニスタン戦争後、財政再建のために軍事費を大幅削減を行おうとする大統領側と、それに反発する軍産複合体との間の利害が衝突している。
後者の側からすれば、緊張が高まることが利益になり、軍事産業を潤し、雇用も増やすことにつながるという現実がある。
「原子力の平和利用」政策とは、NPT体制によって核兵器の保有は現在の保有国に制限し、その代りに原発などを各国に提供しようというアメリカの戦略の一部だった。
ところが、インド、パキスタン、イスラエルなどに核兵器は拡散しつつある。アメリカは自分の戦略を相手側に真似され、自ら火消しに躍起になっている。
もし米国が核武装した北朝鮮と直接対話を始めれば、果たしてホントに日本も後からついてくるだろうか?
日本国内に、「それならわれわれも核武装を」と主張する勢力が力を持つという展開もあり得るかもしれない。
現に、1960年代には佐藤栄作首相の下、日本政府は秘かに核武装を検討したという事実が明らかになった。
あのときはアメリカが一転して中国との対話を始めたから、日本もそれに追随した。しかし、アメリカが北朝鮮と直接対話を始めたからといって、今回も日本政府が北朝鮮と対話を始めるとは限らないのではないか?
あのときは政府の中でコッソリと検討された。しかし、今度は白昼堂々の「世論の暴走」に火がつかないとは限らない。

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