クーデターで軍に追われたエジプトのモルシ大統領は、言うまでもなくムスリム同胞団が出身母体であるから、最初から若者層からは警戒の目で見られていた。また、労働組合運動家などもそのように見ていたと思われる。
組合活動家から見れば、エジプトでは労働組合の自由を定めた法律がずっと実現されなかったし、組合員は今も抑圧され続けている。事態はムバラク時代とさして変わらないし、ある意味、最近はもっとひどくなっているかもしれない。賃金はカットされ、抗議活動は許されず、物価は上がる。り続けた。
新憲法の下で行われた選挙で労働者を代表するとされた議員は、議会においては無力である。その中で、抗議の座り込みをしていた労働者は警察犬に追い立てられて噛みつかれ、賃金不払いが8ヶ月も続いた労働者もいた。
石油会社で行われた大量の解雇。賃金不払いは頻発している。水道の民営化をムスリム同胞団の政府は推進した。さらに2012年にストライキに反対する多くの法律が政府によってつくられた。それらはムバラク時代につくられていたものだった。
http://www.labornetjp.org/news/2013/0708egypt
しかしながら、別にムスリム同法団やモルシをかばうつもりはないが、どうも「エジプトのモルシ政権を行き詰まらせたのは、IMFだ」という天木直人の言っていることが正しいような気がする。
「IMFは、米国主導の新自由主義の権化である。経済援助の前提として自助努力を求め、開発途上国に対しても援助の条件として、数々の構造改革を求めるのが常であった」。
「その結果多くの開発途上国は、援助欲しさのために構造改革を強いられ、それが国民生活を苦しめ、結果的に政権交代に見舞われる国が多かった」。
「ある国の首相は、IMFの条件に従うことを援助の前提とした日本に対し、それは政権を崩壊させることと同じだと言って泣きついてきた事もあった。私はいまその事を思い出した。モルシ政権を崩壊させた原因の一つはIMFに違いない」。
http://www.amakiblog.com/blog/
いずれにせよ、軍のクーデターをエジプト民衆の意思の勝利だとすることはやはりできないだろう。日本の一部メディアがはっきりとこの事態をクーデターだと言わない背景には、アメリカ政府のこの事態に対する戸惑いがあるに違いない。
なぜなら、アメリカ政府はクーデターによって成立した政権におおっぴらに援助をすることが難しいからだ。
アメリカ政府は、毎年エジプト軍に約1300億円を支援している。
エジプト軍とアメリカは極めて密接である。しかしアメリカには軍事政権への支援を禁じている法律がある。だからこの事態がクーデターだと言い切ることができないのである。実態は、まちがいなくクーデターであるにもかかわらず。

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