日本の農業は保護されすぎだというのは、ウソである。
関税によって保護されているといえるのは、米やサトウキビくらいだろう。リンゴだってみかんだって、とっくの昔にほぼ自由化されているのが多いということくらい、農業のことをちょっと歴史的に知っているヒトなら知っているはずだ。
アタシはニュージーランドにいたから知っているが、かの国の乳製品や肉類をいちばん輸入制限しているのはアメリカである。アメリカはきちんと国内農業を保護しているし、EUもそうである。
アメリカがオーストラリアの砂糖を輸入制限していることは、良く知られている。
EUは、輸入を受け入れてもいわゆる所得補償制度があって、家族経営農家に生き残る道を与えているし、田園の景観を守るための補助金を出している国もある。
それにくらべれば、日本の農家は保護され方が少ないくらいだ。
高齢化が進んでいて、このままいけばいずれ潰れてしまうから、ということも言われるが、そうではあるまい。それは、数が多い兼業農家を含めた数字を強調しすぎだ。
実は専業農家や、農事法人でやっているところを取り出せば、今でももうかっている農業者はけっこういる。ただ、農家にかぎらないけど、もうかっている人たちは、ヒトの嫉妬を買わないように、できるだけ目立たないようにふるまっていることが多い。
まあそれに、もうかっているといっても、そもそも莫大な利益が一夜で生まれるようなものじゃないし、売り上げはあっても、純粋な利益はどうかという話もあるから、ますます本人たちの口は固くなりやすい。
そんなこといえば、同じような家族経営の「駅前商店街」の衰退ぶりはどうだ。子供が後を継がないために廃業する中小企業は、結構な数になる。
なぜ農業だけがことさらに言われるのか。
目立たなくふるまっている農家の信用を得るために、地道に取材を続けている新聞記者が少ないだけだろう。

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