「もうすでにある廃棄物やらプルトニウムやら???」
感想
小泉元総理が原発メーカーなどのを含む財界メンバーとフィンランドの核廃棄物最終処分場オンカロやドイツを訪問し、「10万年だよ。300年後に考える(見直す)っていうんだけど、みんな死んでるよ。日本の場合、そもそも捨て場所がない。原発ゼロしかないよ」と述べたという。
http://mainichi.jp/opinion/news/20130826ddm003070155000c.html
正論である。ついでに言うと、国鉄民営化などを進めたことで有名な慶応大学の加藤寛名誉教授も亡くなる寸前に脱原発が日本経済を再生させるという内容の本を出した。この本は小泉氏や竹中平蔵氏が推薦の言葉を寄せている。
実は3.11のすぐあとから、小泉氏は脱原発の持論を述べていた。まあ、だから先の記事を書いた毎日新聞記者も、小泉氏の動向を追っていて、記事にしたのだろう。
脱原発運動シンパの人の中には、「じゃあなぜ現役の首相の時に言わなかったのか」とか「なにかウラがある」とか言う人もいるが、別にウラもなにもないだろう。事実上の地域独占で総括原価方式の電力事業がそもそも市場原理に反しているのは誰でもわかることで、市場原理主義をホントに単純に正しいとすれば原発は成り立たないことは当たり前の話である。
まあ、ただレーガンさんもサッチャーさんも市場原理主義と言われながら、結構「国家主義」だった。要するに市場原理主義を最後まで貫徹するわけではない。だいたい彼らは、自分で自分のことを市場原理主義とは言わなかっただろうから、人間どこかに逃げ道を作ってある。
もちろん、小泉氏ももう国会議員でもないことの気楽さでそういっているわけではあるだろうし、原発を温存しようと躍起になっている財界人にむかって刺激的なことを言ってみたくなったのかもしれない。なにせ、現役の首相のころに中国との関係悪化を懸念して靖国参拝を控えてくれないかと頼んだ財界人に向かって「商売人は政治に口を出すな」と一喝したという話が残っているから。
小泉氏が「今ゼロという方針を打ち出さないと将来ゼロにするのは難しい」というのは正しい。さすがに市場原理主義だ。
しかし問題がある。もうこれ以上放射性廃棄物を作らないというのは正しいにしても、いまもうすでにある放射性廃棄物やらプルトニウムやらはどうするのか。
最近は何事も悪く言われるあの民主党政権の野田内閣でさえ、一応は2030年代には脱原発を実現しようかなという方針を閣議決定しようとした。しかし、アメリカ政府から「じゃあお前のところにあるプルトニウムはどうするんだ」と言われ、青森県知事からは「内を最終処分地にしないという約束だったじゃないか。それならいまある放射性廃棄物は全国の各原発に返還する」と言われて、閣議決定は頓挫した。
あれは民主党政権が無能だったからとか、野田氏が実はハラのそこでは原発を容認していたからだとか言う人がいるが、もし小泉サンが首相だったとしても全く同じだっただろう。
もうすでにある放射性廃棄物をどうするかは、市場原理では解決不能だものね。

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