アタクシはバートランド・ラッセルの「哲学入門」(角川文庫 生松敬三訳)を10代の頃から何回か読んでいる。しかし、数学とか物理学の知識はないから、ラッセルの哲学の全体像はよく分からない。以下は聞きかじりの知識である。
ラッセルは分析哲学者のなかの一人であった。哲学的手法は分析的・論理的であり。ヴィトゲンシュタインが最終的に日常言語分析を哲学の中に取り入れたのに対し、ラッセルは日常言語を信頼しなかった。これは、彼が人間の本能と直感に信を置かなかったことを意味する。
彼が反戦運動家でもあったのは、戦争を人間の闘争本能の露呈と考えたからだという。ラッセルにとっては、戦争をもたらすような人間の原始的な本能や直感から構成されたものが日常言語である。原始的な本能や直感のシッポを持つ日常言語を批判し、数学と科学の知見を尊重し、分析と論理による認識を重んじた。
しかしながら、戦争を人間の闘争本能の発露と考えるのは正しいのだろうか?
アタクシは、人間には闘争本能があり、ほっておけば残虐なことをしたがるから、理性によってそれにフタをしなければならないという考え方に疑問がある。ただしもちろん、人間の本能は善であり、本能と直感が自然に発露すれば、人は相手を殺傷することはないという性善説もまた極端だと思う。

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