トマ・ピケティ「21世紀の資本論」はまだ邦訳が出ていない。
「ピケティ説によると、不平等の拡大は資本主義社会につきものである。18世紀以後の300年の長期データを取ると、所得の不平等は一貫して大きかったことが分かる。特に19世紀は、資産階級の富の集中度は、今とは比較にならないほど大きかった。格差が縮小に向かったのは、戦後のごく限られた期間(1940年代から70年代まで)に過ぎない。」
「戦後はどの国も平等化が進み、日本でも「一億総中流」などと言われたが、これは資本主義の長い歴史では、本当に例外的だった。」
マルクスは不平等の原因を資本家による労働者の搾取に求めた。ピケティは、資本の収益率が国民の国民所得の成長率を上回るために、不平等は拡大すると述べる。「例えば、金持ちの金融資産が5%ペースで増えていくのに、労働者の賃金が1%ずつしか増えないとすれば、格差は累積的に拡大する。つまり金融資産の成長率が、実体経済の成長率を上回るがゆえに所得の不平等が大きくなる」という。
では戦後はなぜ格差が縮小したのか。「まず、戦争によって資産が破壊されたこと。次に、戦後は高度成長で実体経済の成長率が上昇し、資産収益率との差が縮まったこと。そして相続税など富裕層への課税が強力だったこと。これらの偶然的な事情が重なって、戦後の平等化が実現した。」
しかし、今は高度成長は終わり、富裕層への課税率も引き下げられた。「この状況で、不平等が拡大するのは避けがたい。このままだと21世紀は、19世紀に匹敵するかそれ以上の不平等社会になるだろう」。
不平等解消は、富裕層への課税を強化することこだが、言うは易く、行うは難し。アメリカではピケティ説には反論続出になっている。
引用
現代のことば 21世紀の資本論 柴山桂太 京都新聞夕刊 6月26日から

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