2012年と13年の新聞協会賞に、朝日新聞の連載「プロメテウスの罠」や「手抜き除染」報道が受賞した。どちらも特別報道部(特報部)の仕事であった。
朝日新聞内部では、社会部と特報部の確執が深刻であったという。特報部は、調査報道に専念する部署で、各部署から選ばれた記者や、他紙からの途中入社組から成っている。記者クラブ内で警察や検察とつきあいつつネタを取っている社会部は、特報部を快く思っていなかった。
そこへ今回の「吉田調書」をめぐる「誤報」問題が発生した。5月20日の記事「所長命令に違反、原発撤退」を取り消し、社長が謝罪することになった。
不可思議なのは、政府が非公開としていた「吉田調書」を、8月になって産経新聞が入手し、続いてNHK、読売新聞、共同通信に朝日報道を打ち消す記事が出始め、政府も調書の公開に踏み切ったことである。
週刊金曜日の9月26日号にこのような記事が出ていた。
「本誌はまた、「吉田調書」を取材していた「朝日」特報部の記者に公安関係者が身元を隠して接触していたという情報も、複数から得ている。」
また、ジャーナリストの井上久男氏からの、次のような話を書いている。
「今回のことで東電は表だって「朝日」を批判はしていませんが、裏では、「朝日」への批判をもっと書いてほしいと他社の記者・編集者に持ちかけ、ネタも提供しているようです。」
「自民党にしたら、東電をはじめ電力会社には原発を再稼働して収益を出してもらい、献金してほしいわけです。そのためには「朝日」の「プロメテウスの罠」や「吉田調書」報道は邪魔になるのです。」
ふーん。つまり朝日サンてのも、自分の組織に手を突っ込まれるようなことをされて、ちょっとお人好しだったっていうことかなあ。それにしても、原子力はやはり国家権力そのものなんだね。

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