「私は、歴史の勉強、インテリジェンスの経験の双方を踏まえた上で、『国際政治のかなりの部分が謀略によって動いている』という孫崎さんの認識に同意しません。国際政治は複雑系なので、その全体を制御できるような謀略工学は存在しません。謀略史観は、政策判断を歪めるので危険です。」(佐藤優「イスラエルとユダヤ人に関するノート」p216〜7 ミルトス刊)
この点に関しては、アタクシも孫崎享氏の「戦後史の正体」を読んで同じような感じを持った。しかしあれは、話を面白くするための「講談」めいたところがある本だとアタシはおもっているので、それにしては佐藤氏は何をムキになっているんだろうという感じがする。
佐藤氏も言っているように、孫崎氏は外務省と防衛大学に在職中、「現在のように米国からの自立を説くようなことは一度もなかった」ようなので、別に「戦後史の正体」に書いてあるような考えに基づいて政策判断したのかどうか。まあ、イランのハタミ大統領時代にかなりイランとの関係を深めようとしたことがそれにあたるといえばいえなくもないが。
要するに佐藤氏は外務省ののなかに親アラブの路線が強かったので、自分は親イスラエルの工作をしたということのようなので、孫崎氏もその「一味」だと言いたいようである。
お二人とも、外務省からは干されて(?)、今は文筆家になっているという共通点はあるものの、どうも水と油の関係であるようだ。
余計なことだが、佐藤氏は高校生時代は社青同の活動家で今でもキリスト教神学とともに宇野派のマルクス経済学の思想のバックボーンにしているから、かつての社会党左派に近い。つまり労農派。孫崎氏は、共産党の党員がかなり多い9条の会の支部などでよく講演をしているし、彼の歴史認識はどうも講座派マルクス主義の臭いがする。つまり、ふたりの対立はかなりイデオロギー的なものじゃないか。
そういえば、社民党に肩入れして共産党は毛嫌いしている佐高信サンは、佐藤さんとは親しいけど孫崎さんに関しては虫が好かないとか言っていたなあ。旧社会党と共産党の間の溝は、ソトの人間がうかがい知れないほどに深いようだ。

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