いわゆる「ガイドライン」が、安保条約5条に違反していないかということを言う人がいる。これを考えるのに、憲法優位説か条約優位説かという論争があるようで、憲法98条がこれについての条文になる。
以下、ウィキペディアなどからとりあえずノートしておくと・・・。
1)この憲法は、国の最高法規であつて、その条規に反する法律、命令、詔勅及び国務に関するその他の行為の全部又は一部は、その効力を有しない。
2)日本国が締結した条約及び確立された国際法規は、これを誠実に遵守することを必要とする。
憲法98条1項は、現行憲法施行の際に存在していた旧憲法下での法律等で憲法の条項に反しないものは引き続き効力を有するものであることを規定した、経過規定的意義を有していると通説では解している。判例も同様(最高裁判例昭23.6.23)。
国際法規とは、条約と国際慣習法と解されている。
日本国憲法は日本国の最高法規であることが確認されている。だが、第2項で国際法規の遵守が規定されており、憲法と国際法規のどちらの効力が上位であるかが問題となった。
しかし、厳格な改正手続を要する憲法が条約によって容易に改廃できるのは背理であるから、憲法優位説が通説となっている。砂川事件判決でも、そのことを前提として判断している。
ただし、日本国憲法の制定過程を考えてか、降伏条約などのように国の存廃に関わる条約については、条約が優位するというのが政府の採用している解釈。
これとは反対に、憲法は「国の最高法規」に過ぎず、このため、「外国」との条約の上位に立つものではないという考え方もある。
憲法98条は違憲の場合無効となるものとして、「法律、命令、詔勅及び国務に関するその他の行為」を列挙しており、条約が入っていない。だから、条約は違憲でも無効とならない、憲法が条約の上位に立つ訳ではないという考え方もある。
条約は他の主権国家との取り決めであり、一方の国の憲法がその条約の上位に立つということは、相手国の主権の最高性と両立しない、と考え、違憲な条約を締結する内閣の行為は無効なので、違憲な条約を承認する国会の行為は無効。よって「違憲な条約は無効」という考え方もあるが、それは一方の国の内部的瑕疵である。だからそれをもって相手国との関係で当然に条約の無効を主張できるものではない、と考える。
さらに言えば、もし「違憲な条約は無効」と憲法に明記されていたとしても、それだけでは相手国との関係で当然に違憲な条約が無効となる訳ではない、という考えもある。
「条約法に関するウィーン条約」(日本は1981年に加入)においては、国内法と条約の関係は次のように定めている。
第27条 当事国は、国内法を、条約の義務を行わない理由としてはならない。ただし第46条の適用を妨げない。
第46条 当事国は、条約を承認する行為が、条約を承認する能力に関する国内法に違反するとの主張を、当該違反が明白でかつ国の最も重要な法に違反する場合でなければ主張してはならない。「違反が明白」とは、通常の慣行と善良さに合致して活動するどのような国家にとっても客観的に明らかであることを言う。
第53条 条約は、その締結の時に、国際法規の絶対的規範に反する場合は、無効である。国際法規の絶対的規範とは、国際社会の国々全体によって、そこから劣化することが許されないと承認され認識されている規範であり、同じ性格を持つ国際法規によってのみ修正しうるものである。
つまり条約が違憲であっても、違憲であることが明白であることがどの国から見ても言える場合以外は、憲法を理由に条約を無効と主張できないことになる。
もっとも、条約法条約自体を日本国憲法に反して違憲だから無効であり、憲法が条約の上位にあるとは考え得る。
憲法以外の国内法と国際法規のどちらの効力が上位であるかという点も論争となっているが、一般的には、この日本国憲法第98条第2項によって慣習法を含める国際法・条約の効力は国内法として受容され、それよりも上位であると定められている、と解されている。

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