カフカの「流刑地にて」は、ある学術調査の旅行家が流刑地での処刑に立会うというのが話の設定である。
この地では処刑のために特別な拷問用機械があり、旅行家は処刑される予定の囚人のそばで、将校からその機械の説明を聞かされる。
その機械は二つの棺を組み合わせたような形をしている。
下のほうの「ベッド」と呼ばれる部分に囚人を腹ばいに固定する。
上部の「製図屋」の中で組み合わされた歯車によって、「製図屋」の下に付けられた「馬鍬」と呼ばれる鋼鉄製の針が動き、囚人の体にその罪に対する判決文を時間をかけて刻む。
処刑には十二時間かかり、最後に囚人は死体となって片付けられる。
この機械は前任の司令官によって作られた。
将校は前任の司令官を崇拝しており、この処刑機械には特別な思い入れがある。
しかし現在、この機械による処刑はおそらく国の内外から批判にさらされ、現在の司令官はこの機械を廃止しようと考えている。
将校は旅行家に機械の説明をしながら、この機械の存続のために協力を求める。
しかし旅行家は、その頼みを断る。
すると将校は縛り付けられていた囚人を突然放免する。
そして「製図屋」の中身を新たに入れ替え、自分が裸になってその機械に横たわって機械を作動させる。
だが機械は鈍い音を立てて壊れ始め、「製図屋」からは歯車が次々と飛び出し、「馬鍬」はわずかな時間の間に将校を刺して殺してしまう。
なぜ将校は最後に囚人を放免し、自ら裸になって機械に身をゆだねたのか。
自ら信じた処刑機械が軍の方針転換によって時代錯誤で残忍なものとして放逐されることに身を以て抗議し、自殺したようにも考えられる。

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