113番元素の名前の案が、ニホニウムに決まったというニュースがあった。
日本の研究グループのリーダーである九州大学の森田浩介教授が記者会見をして、元素の周期表を指さし、113番元素を発見したことを発表した。森田教授は理化学研究所のグループのリーダーを努めている。
ニホニウムという名前を提案した理由について、自分たちの研究というのは国民に支えられているということを名前にして表したかった。「日本」という名前をそこに付けたかったとのことだった。
メディアでは、科学の基礎研究の大切さが強調されて報道されていた。
森田教授は、日常生活に役に立つという意味合いに捉えるのであれば「役に立たない」ものではある。というのも、寿命が千分の二秒と非常に短く、約600日を掛けて3個の原子しか作れない。これから何百年かは多分、この元素が何かに応用されることはないだろう。
だから名前ぐらいはお役に立ちたいということか。
だが、この新元素の合成・発見のニュースは、本当にすぐには日常生活に役立たない「基礎研究」と言えるかどうかは疑問であるという見方もある。
現に森田教授は福島第一原発事故にインタビューでも言及している。
新元素発見の研究と核開発は実は表裏一体のものであったりもすることをなぜか伝えないメディアも多い。
まあしかし、そもそも科学の基礎研究に従事している人を捕まえて、お前のやってる研究は「日常生活に役に立つのか?」なんていきなり質問すること自体、かなり日本的に特殊なお話しではないか。はっきりいえば、研究者という仕事をしている人にかなり失礼なお話しである。
東京新聞の6月9日付け電子版は、共同通信の記者の取材に森田浩介九州大学教授が答えたとして、こんなことを伝えている。
「(教授は)「新元素の合成は原爆開発と共にあり、その歴史を背負っている」と述べ、新元素ニホニウムの発表に当たり、東京電力福島第一原発事故に触れた理由を説明した。」
「森田氏は「(歴史的に)ウランより重い元素を作ろうとして核分裂を発見し、その後、爆弾の開発に駆り立てられた。核の災害によって生命を失い、不自由を被った人と関連がないわけではない」と硬い表情で自らの思いを明かした。国際学会の発表はニホニウムの命名理由の中で、福島第一原発の事故に言及。信頼を取り戻したいとするチームの望みを紹介している。」
新元素合成の研究は、「核融合」を用いる研究なのである。
「核融合」によって出現したニホニウムは、500分の1秒という短い時間の中で次々と「核分裂」を起こし、違う物質に分かれていく。
ウランやプルトニウムの核分裂の際に生ずる膨大なエネルギーを兵器に利用したのが原爆であり、その原爆のエネルギーを使って、今度は重水素などを核融合させ、さらに巨大なエネルギーを放出させるのが水爆ということを考えれば、新元素合成の研究は、核兵器開発といわば背中合わせになったものであろう。
学術会議が軍事研究容認に舵を切り、現政権が軍学協同に熱心なことも、このニホニウム発見のニュースと無関係ではない、とまで言ってもいいかどうかはアタシにはよくわからないが、その辺はちょっと疑ってみてもいいのではないか?
参照:<uttiiのTVウォッチ>Vol.0010より

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