2007年11月より、「テロ対策」を名目にして、16歳以上のすべての外国人から、入国・再入国に際して指紋と顔画像の生体情報を提供させ、ブラックリストと照合させてヒットしたものの退去を命じる入国管理が行われている。
だが、現在まで、このシステムによってテロリストが摘発されたという話はない。2000年から外国人登録法の指紋採取制度は廃止されたが、7年にして出入国管理及び難民認定法(入管法)で指紋採取が復活した。
今、世界的にテロ対策の名の下に、各国で入国管理が厳格化されつつあるが、それにつれて人権侵害が発生する割合も高まってくる。「外国人」に対する入国管理政策の動向は、やがて自国民への管理・監視にもつながる問題に発展する可能性があるので、その動向に注意が必要である。
現在、さらに1)現在の外国人登録法を廃止し、2)入管法の中に「在留カード」を柱とする「新たな在留管理制度」を新設し、3)日本国民を対象とする住民基本台帳法とは別に「外国人台帳法」を制定する、という趣旨の外国人管理に関する法改正を行うべく、法務省は準備を始めている。
これまでの在留管理は、法務省による入国時や在留更新時の審査と、市町村による外国人登録との二元的なものになっていた。
「新たな在留管理制度」は、在留管理情報を法務省・入管局に一元化して継続的に外国人の個人情報を把握しようとしている。
具体的には、上陸許可、在留期間の更新、在留資格の変更の許可申請に各種事項を記録され、「在留カード」の交付を受け、登録事項の変更があればすみやかに在留期間の途中でも届け出をしなければならなくなる。
また、留学・就学先や研修先などの所属機関から情報提供させる制度を創設するとともに、外国人に関する情報を関係行政機関と相互に照会・提供できるようにするという狙いがある。
新たな在留管理制度の下に作られるとされる外国人台帳制度は、市町村が「法定受託事務」として外国人が法務省に居住地を届け出る窓口となる。
ただし、市町村は「自治事務」として、特別永住権を含む中長期在留外国人が届け出た居住地・世帯情報と、法務省から提供される外国人の在留情報(身分事項、在留更新許可・不許可、処分、出国などの情報)をもとに外国人台帳を整備する。
日本で生活する16歳以上の中長期滞在の外国人は、ICチップ登載のカードを受領し、常時携帯することが、刑事罰によって義務付けられる。
問題点は、在留カードによって個人情報が集中されることにより、それだけセンシティブな情報が流出する危険もある。
また、国連の自由権規約委員会は現行の外国人登録証明書について、永住外国人に対して刑事罰をもって義務付けることは自由権規約26条に違反する差別的な制度であると勧告されている。新しいICチップ登載の在留カードは、この「差別的扱い」をさらに強化することになる。
これまでは、オーバーステイになっている非正規滞在者や難民申請中の外国籍住民にも自治体が外国人登録証を出すことが可能であり、子供の教育を受ける権利や、住民としてのサービスのかなりの部分を受けることが可能であった。
しかし、新しい在留カードや外国人台帳の導入によって、住民としての把握が困難になり、「透明人間」化する結果になる可能性がある。
むしろ住民基本台帳法を改正して、外国籍住民も日本国籍者も同等に扱うほうが妥当ではないのかと思われる。

0