コイズミさんが、定額給付金関連法案が衆議院で三分の二の賛成で再議決するときには自分は欠席すると発言して、いよいよ麻生下ろしが始まると色めきたったマスコミ報道もあったが、結局尻つぼみに終わったようだ。
ここで造反したら、次の選挙で公認されないことは分かっているから、小泉チルドレンだって「はいそうですか」と行動する人はいない。
アソーさんは、自分を下ろしたければ下ろせばいいでしょ。でも誰が代わりになるんですか、と言わんばかりに居直っているように見える。
党内から小泉批判も噴き出して、元首相の人気もさすがに陰りが見えるという声もあるし、これだけ小泉改革の歪みが言われているのだからそれも当然という声もあるだろう。
小泉サンの個人的な人気はともかくとして、あまりその発言に政治的力がなくなった背景には、いまや世界中の政府が、政府による財政出動で景気対策を打ち始めたことがある。言ってみれば、世界中の政府が反小泉的な政策を取り始めたことを意味する。
小泉総理の時代、彼は自分の内閣において消費税増税などはしないと明言していた。その代り、聖域なき構造改革で医療費や社会福祉などの予算を削減する。もう我慢できないと国民が言い出すまで、消費税の増税はしませんよというのが彼なりの理屈であった。
小泉さんは究極の大蔵族であり、消費税増税がなければ福祉予算は削らざるを得ないよ、という路線を邁進した。民間にできることは民間にということで、その象徴が郵政民営化だと言われたが、彼は別に国民年金や国民健康保険を民営化して、保険会社に全部任せようなどとは言わなかった。
彼自身の個人的な怨念もあって、庶民の公務員に対する「あいつら仕事が楽なのに、結構いい給料をもらっている」という妬みの気持ちを掻き立てて総選挙で自民党を大勝させた。
郵便貯金や簡易保険という政府の抱えているお金があるから、それにたかる政府系組織の天下り先ができるという理屈はあるものの、時代は逆転して産油国の政府系ファンドじゃないが、どの国も今や政府系金融の臨時のお財布があって、適宜市場介入ができる方が良いという考え方が国際的に浸透し始めた。
とどめを刺したのが昨年9月以来の国際金融危機で、どの国もこの不景気に増税なんてするのは論外ということになってきた。
増税が嫌なら小さな政府だという小泉論法はもはや使えなくなった。景気が回復したときの消費税増税を議論するのはいいとしても、それを今実行したら、税収全体を減らしてしまうというのが今の常識になった。
かくして小泉さんのマジックが力をなくしたのも当然であろう。明らかに潮目がかわったということだ。

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