民主党が、政治家の世襲制限を検討しはじめたところ、世襲政治家が多い自民党から文句が出たと新聞は報じている。以下は朝日新聞から。
自民、民主両党から国会議員の世襲を制限する動きが出ていることについて、24日の閣議後の記者会見で、閣僚から異論が相次いだ。親などの選挙区を引き継いでいる世襲議員は閣僚17人中10人。
「ハマコー」で知られる浜田幸一・元衆院議員を親にもつ浜田防衛相は「二世だったら何でも投票してくれるのかと言ったら、そういうことではない。自分の努力がなければ当選はできない。(親と自分は)決して同じ人間ではない。やり方も違えば考え方も違う」と反論した。
故鳩山一郎元首相を祖父にもつ鳩山総務相は「自分たちまではいいけど、あとはダメだというのは愚の骨頂だ」と批判。父親が中曽根康弘元首相(元衆院議員)の中曽根外相(参院議員)は衆参の選挙区の違いを挙げ、「僕は自分で世襲だとは思ってないし、悪いとは思っていない」。父親が故石破二朗・元自治相の石破農水相は「憲法論がクリアできるかどうか、自分の乏しい法律知識から言えばなかなか難しいと思っている」。
祖父が故野田卯一元建設相の野田消費者行政担当相は「最近何か一つのことにワーッと行ってしまう風潮があって、今は国会議員でもとりわけ世襲は悪いイメージ。本当に健全なのか疑問を感じている」、父親が故小渕恵三元首相の小渕少子化担当相は「世襲というだけでいい悪いと決めていただくのは、ちょっと乱暴かなと思っている」と述べた。
舛添厚生労働相は「看板や地盤が意味を持たない時代になってきている。そんなに日本の有権者を馬鹿にしちゃいけない。きちんと政治家の質をみて、判断してくれると思っている」と述べた。(以上、朝日新聞4月17日)
確かに世襲議員といっても、麻生首相は父親が確かに国会議員だったが、彼が初めて立候補したのは父親の麻生太賀吉が引退してから20年以上たっていたので、これを世襲議員としてひとくくりにはできないだろう。(吉田茂の選挙区は高知県だった。)
民主党の鳩山幹事長は、お祖父さんの選挙区だった東京ではなく北海道で立候補している。小沢代表の方は、父親の小沢佐重喜が死去してすぐに父親の後を継いで当選したから、典型的な二世議員である。
政治家の世襲問題で重要な問題は、上杉隆さんが指摘しているように、親の政治資金管理団体を事実上、無税で「相続」できる点である。
法律で立候補を制限することは、そもそもできるはずがない。イギリスやアメリカで世襲がないのは、有力な二大政党の候補者が党組織の予備選挙で決まるからであり、日本の民主・自民の二大政党は党の組織が貧弱で、実は議員の後援会中心だから、後援会がセンセイの息子や娘ムコ、または娘を後継者にしたがるからである。
政治家が死んだり、引退したりすると、その資金管理団体は相続税も贈与税も払わないで後継者(息子や娘)に受け継がれる仕組みになっている。また、親から資金管理団体を引き継ぐだけでなく、新たに世襲することが決まった候補者が管理団体をつくって、そこへ親が作った資金団体からの寄付という形で資金を流すこともできる。そして、それに関して、課税はされない。
中には相続財産をここに紛れ込ませている人もいるらしい。ビックリするような金額を「政治資金」として、ほぼ無税で引き継いでいるケースもあるという。政治家だけが、政治資金の名の下に1円も相続税も贈与税も払わないで、多額のお金を親から子に受け渡せるとすれば、これこそ制度上、問題である。
子供のときはお金を受け渡すが、秘書が後継者になるときは、この特権はあまり使われないのだそうです。
これは確かに選挙を戦う上で、不公平である。競争する上での不公正を是正するという意味で、法律により規制するべきことは、政治団体を通じた政治資金の親から子への無税での「受け渡し」なのではないかと思う。しかしながら、どうしてそこを指摘する報道が少ないのであろうか?

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