オバマ政権は3月に金融システム回復のため、1兆ドル規模の不良資産買い取り計画を発表しました。以降、金融危機は落ち着きを見せています。
しかし、これは単に危機以前と同じ金融システムに戻すということを意味しています。忘れてならないのは、米国ではカードローンやペイデイローンなどを通じて、長期金利が20-30%、短期金利は200-300%というすさまじい高金利が合法になっているということです。
金融業のこのような高利率に比べて、製造業への投資は利益率5%がせいぜいです。こうした歴然とした利益率の差から、投資家が製造業への投資をやめて金融に投資するようになるのは、当然でしょう。
資本が実体経済から金融セクターへとなだれをうって流出し、人々からカネを吸い上げる寄生的な金融経済が登場している。そのことをもはや経済を知るひとたちは当たり前と思っています。
日本でもリーマンショック後の金融収縮で、自動車、電機などの有力企業が政府に資金繰り支援を要請しました。政府系の日本政策投資銀行の「危機対応融資制度」の10兆円枠に、大企業が次々と駆け込みました。
自動車販売は、前年比で半減しました。危機対応融資で一時は凌げても、やがて危機はやってくる。政府は08年、09年度補正予算で政策投資銀行による企業への出資を可能にする「産業活力再生法」改正に動きました。
09年4月22日に改正産業再生法が成立しました。6月30日、エルピーダ・メモリーという会社が認定第1号になり、政策投資銀行から300億円の出資がきまりました。
エルピーダは半導体メモリー、DRAMの大手メーカーです。DRAMはパソコンや携帯電話に不可欠なもので、かつて日本はこの分野で世界を席巻していたそうですが、韓国や台湾の企業が生産に乗り出して以来、今では日立製作所やNECの事業を統合したエルピーダ1社になってしまいました。
経済産業省は、エルピーダは潰せない、救済は国策だと息巻いています。そして次の支援企業としてささやかれているのが、日本航空。7月初めに国土交通省の仲立ちで、日航は政策投資銀行と民間銀行から計1000億円の一部政府保証付き借り入れ契約を結びました。
しかしながら、日航はこの資金の大半を支払いにあてて、来年の夏にはまた1000億円以上の資金が必要になるということです。
国土交通省は、日航は潰せないと主張しますが、民主党のいう農家の戸別所得補償を「ばらまき」と批判するマスコミは、どうしてエルピーダや日航への「国策」融資を「ばらまき」と呼ばないのか、不思議です。

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