ニュージーランドでは、一昨年にそれまで9年間続いた労働党政権から、国民党中心の保守系連合政権になった。ジョン・キー首相は、公約を守って「減税宣言」を実行する模様である。
ニュージーランドの所得税率は、$38,000NZ・ドル以下なら19.5%、38,001〜$60,000ドルまでは33%、60,001ドル以上だと39%だが、この最後の39%の「富裕税」を廃止して、33%に統一するということらしい。
当然ながら、富裕層には歓迎される。
しかし、この減税で生じる税収減を消費税で補わなければならなくなりそうである。現在12.5%のGST(Goods and Services Tax つまり「消費税」)が15%に引き上げられそう、というわけである。
富裕税が廃止されて、消費税が増税になるといえば、当然貧困層の負担率は高くなるわけであるから批判は高まる筈であるが、キー首相の支持率は上がっているとのことである。
野党は、選挙期間中に首相は減税だけを言って、消費税の値上げに言及しなかったと批判しているが、「いつ何%上げるかという詳細は言わなかった」と答えて切りぬけたらしい。
キー首相は、カンタベリー大学卒業(専攻は会計学)。地元の服飾会社に2年間勤務した後、ウェリントンの金融会社で為替取引人になった。その後、オークランドでバンカーズ・トラストに7年間勤務し、1995年にメリルリンチへ移籍。
メリルリンチのロンドン支社、シンガポール支社、シドニー支社等に勤務し、連邦準備制度理事会外国為替委員会委員、メリルリンチ外国為替部長になった。
外国為替取引で巨額の利益を得たが、1998年のロシア財政危機でメリルリンチが巨額の損失を発生さたとき、従業員を大量解雇したとのこと。個人資産は5000万NZドル(約35億円、当時レート)と言われる。
つまり相当の「やり手」である。
増税しても、人気が落ちないのは、首相と言う公職から多額の給与を得る気はない、と言って首相の給与を大幅に引き下げたことが大きい、ということである。
ここから考えるに、我が国の鳩山サンが支持率を回復する奇策は、「首相の給与は返上します」と宣言するしかないという気がする。しかし、これは奇策だろうか。お金持ちなんだから、可能だと思うけど。
ただし、世界的にどの先進国も不況だとはいえ、日本以外のどの国も年間2〜3%の緩い物価上昇が続いている。ニュージーランドもそうである。だから消費税が上げられるのである。
日本の民主党政権は次の総選挙まで消費税は上げないで、ムダ削減と予算組み替えで「コンクリートから人へ」の政策を推進する、と宣言してしまったことが重しになっている。
私個人は、消費税を増税しても社会保障や年金などのセーフティーネットを整備したほうが良いとは思っている。そういう考えに傾いている人も、結構増えてはいる。
だが、デフレスパイラルに陥った現状では、消費税率を今上げることができたとしても、むしろ税収が下がってしまうだろう。それが一番の問題だと思う。

0