文芸評論家の福田恒存さんは、戦前に東大の英文科を卒業して、静岡の旧制・掛川中学(現在の掛川西高校)の英語教師になったのだが、野球部の投手だった学生のテストを零点と採点したら、校長に呼び出された。
授業中はずっと寝ているし、テストは白紙で出すし、だから零点は当然じゃないかというと、その選手は野球の特待生で入った選手だから、その辺は「配慮」すべきだという校長と口論になって、結局辞職したとか。
当時、掛川中学は、甲子園出場が狙える野球の強豪校だったという。
選抜高校野球大会で向陽高校(和歌山)に敗れた開星高校(島根)の野々村直通監督(58)が「21世紀枠に負けたことは末代までの恥」などと発言した問題で、野々村監督は25日、監督職を辞任した。
「21世紀枠」というのは、春の選抜高校野球に独特の出場校で、前年の秋の地方大会の結果に関係なく、「他校の模範となるような学校」が選ばれるのだという。
向陽高校は、戦前は「海草中学」という名前で知られ甲子園大会で優勝したこともあるのだが、近年は甲子園出場から遠ざかっている。おそらく、少ない部員で「名門復活」のために努力しているから、という理由で選ばれたのであろうと推測される。
開星高校の校長と野球部長の教頭、当の野々村監督は同校で記者会見をして、校長から「今日の午前、監督から『辞任させてもらいたい』と申し出があり、受け入れた」と語ったそうである。
22日の監督の発言以降、同校には抗議の電話が相次いでいたらしい。
野々村監督は「日本高校野球連盟や向陽高校をはじめ、各方面に多大なご迷惑をおかけし、おわびしたい。私の言動で、島根が悪く言われることに一番心を痛めた。辞任は昨夜、冷静になって考え、決意した」と述べた。(朝日新聞 「開星高野球部の野々村監督が辞任 『末代までの恥』発言」03月25日)
私立学校のみならず、公立の学校までもが、いまや少子化で学校の「経営努力」が問われる時代だが、なに、早稲田や慶応だって、戦争前は「早慶戦」がプロ野球以上の人気を誇ったからこそ、学校の知名度が向上し、その後の学校経営の安定に結びついたわけである。
まして、生徒集めにも苦労する学校の野球部ともなれば、ついつい力みすぎになったっていうことなんでしょう。たかが野球じゃないの、とはいかない。学校の命運がかかっているっていう感じなのか?
だけどもっと分からないのは、わざわざ抗議の電話を学校にかけてくる人が大勢いたということ。ヒマな人が多いんですね。アンタに何の関係があるの?
そういえば、大学時代に学生証番号がワタシのひとつ前の学生が野球部の選手だった。ふだん授業には出てこない。学年末の試験のときに現れて、試験の時間中、ずっと寝ていた。もちろん白紙で提出していた。しかし、卒業生名簿に名前は載っていたし、たしか就職先は日立製作所って書いてあった。

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