「日本野鳥の会」の会報4月号に、「スズメは減っている?」という三上修さん(立教大学理学部・特別研究員)の文章が出ている。
スズメの数が減っているという話題は、最近新聞などでも取り上げられる話題だが、そのとき必ず参照されるのが三上さんの「日本におけるスズメの個体数減少の実態」という論文である。(日本鳥類学会誌58号)
スズメの数が減っているといっても、人口調査と違うから、スズメの数の推移が一目で分かる統計があるわけではない。だから、スズメの数が減っているということを印象論や、一部の地域の出来事としてではなく、日本全体のレベルで証明するのは難しい。
スズメの数が減っていることを証明するためには、別の統計から検討しなければならないわけだが、そのひとつは「スズメによってどれくらいの農業被害があったのか」を全国集計した数値である。もうひとつは、「どれくらいの数のスズメが駆除・捕獲されたのか」という調査結果がある。
全国でスズメによって食害を被った農作物面積のグラフを見ると、1997年くらいまでは4~6万ヘクタールの間を上下していたのが、その後大きく減少を始め、2007年では1万ヘクタール弱になっている。
また、全国で駆除・捕獲されたスズメの個体数のグラフでは、1982年には約300万羽だったのが1993年に100万羽を割りこみ、2005年あたりでは1万羽以下になったようである。
これらの間接的な証拠を積み上げて、スズメの数が確かに減少していることはほぼ確かであると考えられているわけである。
ではどのくらい減ったのだろうかというと、「いろいろな情報をもとに考えあわせてみると、どうやら1990年当時と比べて半減はしたようです」と三上さんは書いている。
ではなぜスズメの数は減ったのか。三上さんは「スズメが巣をつくるようなすき間のある家(たとえば瓦屋根のある家)が減ったこと」、「スズメがエサをとれる田畑や緑地が減ったこと」の影響が強いのではないかと推測する。
三上さんの文章は、スズメが減ったことを通じて、昆虫の減少やスズメ以外の、あまり馴染みのない鳥類の減少と言う生物の多様性の危機について注意を喚起したものである。
しかしながら、私が勝手にこの文章から推測するところでは、そもそも日本の農業の衰退という要因がそもそもスズメのエサを減少させたということも考えられるのではないかと思うのである。
そもそも、スズメという鳥は人間の住む場所の周辺に生息し、人間の生活から生まれるものからエサを得ている傾向がある。
ただし、カラスのように直接にゴミをあさるという面は少ない。(もっとも、農村や山村でエサが得られなくなったカラスが都会に出没して、あたかもカラスの個体数が増えたという錯覚を生んであるとも考えられる。)
そう考えると、1990年代初めの日本経済の衰退の始まりに伴ってスズメの数が現在までに半減したということも考えられるのではないか?もちろんこれは勝手な推測だけど。

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