元検察官で、裏金を告発して逆に告発された三井環さんによれば、厚生労働省の郵便不正事件はもともと政治家の口利きを検挙しようという政治案件なのだから、事前に大阪地検特捜部のみならず、上級庁である高検や最高検のトップに至るまでを含めた会議をと意見交換を少なくとも3回は経ているはずであるという。
従って、民主党の石井一さんにかけられた嫌疑にはアリバイがあるということが分かったその時点でストップをかけなかったとすれば、そのことが検察全体の責任ということになる。
ところが今回、どうやら前田検事のフロッピーディスク改竄というところにニュースの焦点が当てられている所を見ると、検察幹部は、トカゲのしっぽ切りの結末を狙っているということのようである。
菅政権では、これを機に検察制度そのものに手を入れて、取り調べの可視化や、検事総長の民間人登用などの大改革を進める方向に向かうなどということは、期待できないのであろう。
本来なら、かつて薬害エイズ問題で名を知られるようになった菅総理大臣が指揮を取って、検察組織そのものを外部の目から大改革するべきなんでありましょう。
それから、今回の日本政府の尖閣列島に関する処理についても、あまりにも不可解なことが多い。
法的手続きを重視するだの、日本は法治国家だのと言いながら、実はかなり重大な外交問題の処理を、検察当局に処理をさせてしまう結果になった。
民主党政権が「親中派」だから弱腰外交だと言いたがる向きは当然多くなるだろうが、親中派とか親台派とか言う前に、中国との関わり方に関して無知であるがゆえにおきた顛末なのではないだろうか。
もともと尖閣諸島あたりで、日本の海上保安庁と台湾や中国の漁船がいろいろとにらみ合い、おいかけっこしたりしていることは常識だった。しかし、自民党政権ではそんなことをあえて司法が絡む問題にしてこなかった。
今回、検察当局という一行政機関かつ、国家権力を発動する役所の中の役所に、外交問題をやらせてしまった。柳田法相は、指揮権など発動していないと釈明したそうだが、むしろこういう外交問題こそ、素早く指揮権を発動すべき問題であったんだろう。
これが今後先例になって、検察は外交問題に絡んだ案件についても、勝手に判断してよいんだという先例になるかもしれない。
日本は中国と違って法治国家だとやたらと強調するが、代用監獄制度や死刑制度など、国際的にみればむしろ悪名が高いのが日本の警察、検察の制度である。それを逆手に取って、日本の警察に容疑者を委ねられないとゴネているのが在日米軍であったりする。
せめて今回のような場合、20日間の拘留期限を過ぎれば、裁判所に拘留延長の手続きをしない限り拘束する理由がなくなるから、そこを利用して処理する方法もあったのではないか。
「政治主導」を高らかに主張していた政権が、肝心なところで行政権に処理を丸投げしたというべきである。
政治主導といいながら、政治家が出るべきところで行政に仕事を丸投げする。責任をとるべき地位の人間が責任をとらず、事務方に処理を押しつける。
これでまた、官僚たちの冷笑を買うことになったということかもしれない。

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