2013/10/29  23:42

椿本興業の中日本営業本部で今年3月に発覚した横領事件を巡るその後の動きと安中市タゴ51億円事件  土地開発公社51億円横領事件

■今年3月13日に、産業用チェーンのトップメーカーである椿本興業の中日本営業本部のナンバー2である東海東部SD長が、約10年前から架空取引を行っていた旨の自白をして、同社内で直ちに調査が開始された結果、本人により、架空売上と架空仕入を伴う不正行為が行われていたことが判明しました。


 この不正行為で、椿本興業では、過去の業績の見直しを余儀なくされ、その結果、毎年度の純利益について、平成19年度2.44億円、平成20年度2.08億円、平成21年度1.50億円、平成22年度2.08億円、平成23年度1.68億円、平成24年度3.04億円、それぞれ減額しました。そして、平成25年度の利益予想を当初の10億円から5億円下方修正して、5億円としたのでした。

 さらにこの横領事件により、今後、取引先からの損害賠償請求訴訟の提起に備えて損失負担見込額を偶発損失引当金として特別損失6.05億円を計上しました。

 平成19年度から24年度までの減額を余儀なくされた金額を合計すると12億8200万円になりますが、安中市土地開発公社の巨額横領事件の51億円に比べれば、4分の1の規模に過ぎません。いかに安中タゴ事件の規模が凄いかを実感させられます。

 椿本興業では、まだ横領容疑の職員を告訴していないようですが、安中タゴ事件の実行犯だったタゴは既に平成21年9月に刑期を終えており、シャバに戻ってから4年が経過しています。当初は藤岡市に在住していたようですが、次第に安中市に近づき、現在は高崎市の烏川西岸地区に住んでいるという情報もあります。

■話を椿本興業の横領事件に戻しましょう。平成25年度の業績予想として利益の半減となる5億円ほど下方修正した同社では、さらに損害賠償請求訴訟を見越して約6億円の偶発損失引当金を計上していました。しかし、先週、不正な循環取引に協力させられた為、損失を被ったとして、椿本興業の取引先が10億円の損害賠償請求訴訟を名古屋地裁に提起したと報じられました。

**********時事通信2013/10/24-20:53
「不正協力で損失」椿本興業を提訴=取引先が10億円請求―名古屋地裁
 不正な取引に協力させられて損失を被ったとして、岐阜県土岐市の機械メーカーが東証1部上場の機械商社「椿本興業」(本店大阪市)と元同社社員を相手に、総額約10億7200万円の損害賠償を求める訴訟を名古屋地裁に起こしたことが24日、分かった。
 訴状によると、元社員は機械メーカーが設立された1998年以降、支払った代金の一部を自身に還流させていた。2005年からは経営難に陥った同社に対し、他の取引先を経由した架空発注を繰り返して一時的に資金を融通する一方、それ以上の額を回収して損失を与えたという。提訴は21日付。
 機械メーカーの社長は取材に「下請けの立場では協力せざるを得なかった。発覚後は取引を中止され、使い捨てにされた」と話した。
 椿本興業は3月、元社員による不正取引があったと発表している。同社コンプライアンス室は「訴状が届いておらず、コメントできない」と話している。

**********日本経済新聞電子販2013/10/24 2:00
岐阜のメーカー「循環取引で損失」機械商社大手を提訴
 企業間で帳簿上の取引を繰り返す「循環取引」で損失を被ったとして、岐阜県土岐市の省力機器メーカーが、大阪市に本社を置く機械商社人手「椿本興業」と元社員を相手取り、計約10億7千万円の損害賠償を求めて名古屋地裁に提訴したことが23日までに分かった。

**********毎日新聞 2013年10月24日 中部夕刊
提訴:循環取引で損害 岐阜のメーカー、大阪の商社を
 帳簿上での取引を繰り返し、売り上げがあったように見せかける「循環取引」に関与させられ、損害が出たとして、岐阜県土岐市の搬送機器メーカー「川端エンジニアリング」が、機械商社「椿本興業」(本社・大阪市)と同社名古屋支店の元男性社員に対し、計約10億7000万円の損害賠償を求めて名古屋地裁に提訴した。椿本興業は「訴状を見ていないのでコメントできない」としている。
 提訴は21日付。訴状によると、元社員は1998年から取引先の川端の社長(当時)に架空発注への協力を要求。椿本興業からの支払いをキックバックさせるなどして遊興費に使った。その後、川端の資金繰りが悪化し、「倒産すると不正が発覚する」と恐れた元社員は、川端の帳簿上の売り上げを増やすため2005年ごろから別の複数の取引先を介在させる循環取引を行い、架空取引を繰り返した。元社員は工事発注で埋め合わせると約束したが、補填(ほてん)されなかった。
 椿本興業によると、同社の損害は約13億円、元社員は5月に懲戒解雇された。同社は横領や背任などの容疑で元社員を刑事告訴する方針。【稲垣衆史】
**********

 こうして上記の毎日新聞記事から椿本興業を提訴した企業は「株式会社 川端エンジニアリング」であることが判明しました。同社のホームページによれば、代表者:川端孝男、所在地:〒509-5312岐阜県土岐市鶴里町柿野広畑2340、TEL:0572-52-3781、FAX:0572-52-3782、設立年月日:平成10年4月3日、資本金:1000万円、従業員数:15人、事業内容:省力機器・専用装置・環境関連機器、設計・製作・メンテナンス他、取引先:椿本興業梶Eダイドー梶E大江電機梶A取引銀行:三菱東京UFJ銀行星ケ丘支店・瀬戸信用金庫西山支店・愛知銀行高針支店とあります。資本金1000万円の企業としては余りにも損害金額が多いことに驚かされます。

■このマスコミ報道を受けて、早速、椿本興業も次の内容でニュースリリースをしました。

**********
             平成25年10月24日
各位
             会 社 名 椿本興業株式会社
             代表者名 取締役社長 椿本 哲也
             (コード番号 8052 東証第1部)
             問合せ先 取締役執行役員 大河原 治
             (TEL.06−4795−8805)
       本日の一部報道について
本日、一部報道機関より、岐阜県のメーカーが当社に対する損害賠償請求訴訟を提起した旨の報道がありましたが、当社は当該訴状を受け取っておらず、提訴の内容は明らかではありません。
なお、本報道に関連した事項につきましては、当社はすでにその旨を開示済であります。また、過年度決算も修正済でありますので、あわせてご参照ください。
@ 平成25年3月18日付 開示当社従業員による不正行為について
A 平成25年3月25日付 開示第三者委員会設置に関するお知らせ
B 平成25年5月 8日付 開示第三者委員会の報告書受領と当社の対応方針について
C 平成25年5月 8日付 開示当社元従業員による不正行為にかかる決算訂正について
D 平成25年5月10日付 開示過年度の有価証券報告書等の訂正報告書の提出に関するお知らせ
             以上
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 この横領事件の真相究明のために組織された第三者委員会の調査報告書を見ても分かるように、川端エンジニアリング社は、椿本興業との取引に関する情報を積極的に提供していました。もともと、横領実行者のSD長は、同社に直接取引を持ち掛け、主要取引先として重用し、密接な関係と
なり、次第に遊興費等のプールなど不正関与をさせており、同社も積極的に応じていました。

 そして、ついに平成17年3月頃から、川端エンジニアリング社の資金繰りが悪化した為、SD長は、同社の資金繰りの手段として、同社社長とともに、SD長の発案による架空循環取引を開始して、不正行為はますますエスカレートしたのでした。

■このあたりのことを第三者委員会の報告書から抜粋してみました。
http://www.tsubaki.co.jp/ir/pdf/release/13/13050801.pdf

**********
第三者委員会の報告
本件不正行為に関与したKE(川端エンジニアリング)社からも資料の提供を受け、これらについて調査を行った。
 取引先関係者
  @KE社前社長F
  A同現社長G
  B同システム部部長H
  C架空循環取引の取引先企業である下記7社の担当者(8名)
 架空循環取引の取引先企業である下記7社の担当者(8名)
  ・NC(日本コンベヤ)社
  ・KK社
  ・DD(ダイドー)社
  ・HT社
  ・SS社
  ・OD(大江電機)社
  ・TE社
  DI(KT)社
(1) 本件不正行為の経緯
ア KE(川端エンジニアリング)社の現社長であるGは、平成2年2月からKR社の社内外注設計として、個人で主に自動搬送クレーンの設計に従事していたところ、当社がKR社に発注したDT(DOWAサーモテック)社向け電極接続(継足)装置の取引を通じて、その発注担当者(当時課長)であるA(SD長)と知り合った。
 その後、GはAから当社との直接取引を持ちかけられたこと等から、KR社より独立し、叔父であるF等の出資も得て、平成10年4月3日、KE社を設立した。それまで金融機関に勤務していたFが代表取締役社長に就任して主に経理関係を担当し、Gは専務に就任して主に設計業務等の実務を担当することとなった。このような経緯で、KE社設立当初から、当社は同社の主要取引先となり、Aは当社営業担当者としてKE社との密接な関係が始まった。
イ 平成10年10月頃から、AとE(当時、当社名古屋支店装置部の課長)が、共同で担当した案件を通じてFに対し、遊興費等を捻出する方法としてKE(川端エンジニアリング)社に対する水増し発注又は架空発注をもちかけ、Fとの間でかかる不正行為を開始した(Aはこれを「現金化」と呼んでいた。)。なお、Eは、平成14年に大阪本社に異動するまで、Aとは別個にFとの間で上記不正行為を継続した(但し、内容の詳細は不明である。)。
ウ 平成14年春頃から、Gも上記不正行為による資金捻出に関与し始めた。
エ 平成15年5月頃から、AがF及びGとともに、KE社に対する水増し発注又は架空発注によるプール金取引を開始した。
オ 平成17年3月頃から、Aが、KE社の資金繰りの手段として、Gとともに、Aの発案による架空循環取引を開始した(Fも了承していた。)。
力平成17年5月頃から、AがF及びGとともに、架空循環取引の一部を利用した架空発
注による現金化を開始した。
キ 平成18年8月にKE社に税務調査(第2回税務調査)が入り、架空発注や水増し発注による同社ないしF・GやAへの現金還流が指摘されたため、同社に対する水増し発注や架空発注ができなくなった(なお、Aは当社に反面調査が及ぶことを防ぐため、Gを通じて調査官に「使途秘匿金扱い」とすることを依頼した。)。
ク 平成18年11月頃より、Aは、KE社を利用した不正取引による現金化が困難となったことから、Gの弟であるHとともに、同人の妻の個人事業である「TM社」に対する架空発注による現金化を開始した(なお、TM社はHが立ち上げた事業で、同人が平成18年5月にKE社に入社するまでは、同人が経営していた。)。
ケ 平成18年12月頃から、Aは、装置営業部の部下(J、K及びL)とともに、個人的に費消した遊興費や物品購入代等の領収証をKE社宛で取得して、その金額をKE社に支払わせ、事後に新規案件を水増し発注して穴埋めするという不正行為を開始した。
コ 平成19年4月、KE社の社長がFからGに交代した。
サ 平成21年8月、KE社に税務調査(第3回税務調査)が入り、TM社を利用した架空発注ができなくなった(このときも、Aは当社に反面調査が及ぶことを防ぐため、Gを通じて調査官に「使途秘匿金扱い」とすることを依頼した。)。
シ 平成21年8月、Aがカラ出張による出張旅費の水増し精算を開始した。
ス 平成23年3月、AがKT社に対する架空発注を行った。
**********

■このように、もともとは、A(SD長)を中心に、平成10年10月頃から、遊興費(クラブやスナック等での飲食代)等に充てるために椿本興業から金員を詐取すべく、「実在取引を用いた水増し発注」を行ったのが最初でした。

 その後、平成15年5月頃から、Aの自由裁量が効く金員を川端エンジニアリング社に溜めておく(プールする)ために、「プール金取引」を開始しました。

 そして、川端エンジニアリング社の資金繰りが悪化した平成17年3月頃からは、同社が倒産すると、それまでの不正行為の継続が不可能となり、またこれまでの不正行為が露見することをおそれたSD長が、同社の資金繰りを維持する目的にて「架空循環取引」を開始したのでした。

 他方、架空循環取引を行いながらも、これと並行して、遊興費等に充てるために椿本興業から金員を詐取する不正行為は連綿と継続されました。すなわち、平成17年5月頃から開始した「架空循環取引の一部を用いた架空発注」、平成18年11月頃から開始した「TM社を用いた架空発注」、平成18年12月頃から開始した「私費の領収証を付け替えるための水増し発注」が行われてきました。

 また、以上の不正行為のほかに、平成21年8月頃から開始した「出張旅費の水増し精算」、平成23年3月頃に「KT社を用いた架空発注」も判明したのでした。

 それぞれの不正行為の詳細は椿本興業の第三者委員会の報告書に載っています。

■架空循環取引については別途後日解析したいと思いますが、椿本興業としては、せっかく約6億円の偶発損失引当金を計上して、過去の業績数値を見直して修正していたのに、ここにきて取引先から想定の2倍近い10億7200万円の損害賠償請求訴訟を提起されたことで、今後、再びコンプライアンスの観点から、裁判の進行に伴って、株主や社会に対する情報開示をしていかなければならなくなりました。さもないと、株主や社会の信頼をつなぎとめることができないからです。

 それにくらべると、安中市はどうでしょうか。史上最大級の横領事件を起こした自治体であるにもかかわらず、誰も責任をとらず、しかも事件の真相は未だに明らかにされていません。事件の真髄を知る立場に会った関係者らも、誰一人として事件のことを語ろうとしません。

 やはり、公務員というものは、いろいろな特権に守られており、責任というものを取らなくても済むという特殊な組織のようです。

■話を再び椿本興業に戻すと、横領を主導した元幹部社員は、今年3月13日に不正行為を自白してから、自分の犯行について社内調査で詳しく供述させられた後、今年の5月に懲戒解雇されました。

 ところが、椿本興業は横領や背任容疑で、現時点ではまだ刑事告発していません。

 おそらく事件にかかわっていた関係者がたくさんおり、事件の全容を把握し切れていないためか、あるいは、同社の中日本営業本部のナンバー2という幹部社員が起こした事件であることから、不正行為に協力せざるを得なかった他の会社にたいする責任をどこまで問えるのか、など、複雑な問題が山積しているため、刑事告発することにためらいがあるのかもしれません。

 不正発覚から既に6ヶ月が経過しており、通常であれば刑事告発に踏み切るところですが、椿本興業はこの事件による損害額13億円と見ているものの、実際にはもっと得体の知れないところで損害を被っていることを薄々感じ取っているのかもしれません。

■一方、安中市の場合には、事件発覚が平成7年5月18日でしたが、5月31日には早くも横領にかかわった職員を懲戒免職にしています。しかも安中市は、事件の真相を明らかにするつもりはなく、弁護士を起用して、内部情報のコントロールに腐心すると共に、関係する証拠書類のうち、平成2年4月以前の公文書を主体に大量に焼却処分し、証拠隠滅に努めたのでした。

 そのため、事件の真相はいまだに闇に包まれたまま、事件に関与した関係者も、口をつぐみっぱなしです。このまま墓場までもってゆくつもりなのでしょう。

 また、元職員に騙されたことになっている群馬銀行側も、真相解明をするつもりははじめからなく、この点では安中市とスタンスが共通しているため、3年間民事裁判をしても真相は明らかになりませんでした。結局和解と言う事で事件の責任を曖昧にしたまま、群馬銀行は51億円あまりの犯行額のうち半分以上を減額してやったかわりに、安中市に対して残りの24億5千万円を103年間で返済することを承諾させてこの異常な事件の幕引きを図ったのでした。

■椿本興業を舞台にした今回の横領事件では、企業統治や法令順守という民間企業の社会的信頼にかかわることから、損害額が13億円といっても、今後、犯行に加担した川端エンジニアリングとの間で決着までには相当長い時間がかかるものと思われます。

 ところが、安中市のタゴ51億円事件の場合には、その4倍もの損害を出しても、犯行に加担した群馬銀行との間で民事裁判が3年間続いただけで幕引きとなってしまいました。しかも、安中市も群馬銀行も、どっちも責任をとらず、元職員とそのとりまき連中が横領した巨額公金の尻拭いのしわ寄せだけが、事件とは全く無関係の一般市民に押し付けられ、あと89年間にわたりこの状態が続く可能性があるのです。

 引き続き、椿本興業の横領事件の今後の推移について、役所を舞台にした犯罪と民間企業の場合と、比較検討を加えながら見守って行きたいと思います。

【ひらく会・タゴ51億円事件18周年調査班】
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