13年前の51億円横領事件、知られざる発覚前夜(その3)  安中市土地開発公社事件クロニクル

<平成7年5月1日〜28日>


■平成7年5月18日に安中市土地開発公社内部で密かに発覚した史上空前の巨額横領詐欺事件。13年前のこの事件をたどるために、これまで平成7年3月と4月にかけて、市、公社、群銀そしてタゴの身辺に何が起きたのか、時系列的に見て来ました。今回はいよいよ、平成7年5月に公社内部で事件がどのように発覚し、関係者はどのように対応したのか、その様子を皆さんと共に検証してみたいと思います。

▼5月2日(火)
 タゴが、2時間休みをとり午後3時頃早退した。

▼5月8日(月)
 タゴが騙したカネの一部を払い戻しに群銀安中支店に行った。
 既に公社から異動した後なので、群銀が応じてくれるか心配しながら、タゴは12時25分に群銀を訪れたが、奥の応接室で、支店長Mと次長Sはいつものように対応した。
 タゴは払い戻したカネの使途を聞かれるのが一番嫌だったが、群銀からは市長選の話しなどが出ただけだった。タゴが払い戻したカネについて、支店長らは事業資金だと思い「新駅はいよいよ始まるのですか」などと言った。
 タゴは12時30分に現金1485万円を払戻した。機械からの出金時間は12時37分で1485万円のうち、機械からバラで一万円札85枚、更に機械が百万円の群銀の帯封もしくは日本銀行の帯封つきの札束4束(400万円)を出した。そして機械とは別に百万円の札束10束を更に束ねた大束1束(1000万円)を群銀が機械を使わず手で出した。
 この払戻しはタゴが直筆窓口に行き、公社理事印の押された払戻請求書を窓口にいた行員に出して請求したもので、S次長はこの様子を見ていて、タゴが公社のカネを引出しに来たものと思い、声をかけて応接室に通しお茶を出した。
 この時タゴは急いでいた様子で、ゆっくりとはせず、払戻しができたという連絡があるとすぐ窓口に行った。
タゴは、予め現金を入れるように行員に渡しておいた黒色で布製に見えるチェック付きのスポーツバッグ風の手提げを受け取り帰った。この時タゴは現金を数えて確認はしなかった。タゴが帰ったのは12時45分だった。
 この黒色の布製手提げは、タゴが現金を引き出すときいつも持参するものだった。なお、公社の預金ということで、払戻手数料は無料、また利息は非課税。

▼5月11日(木)又は12日(金)
 公社のSHとTKが県信の預金残高証明を取りに行ったら「普通の会社なら借入残高も必要だよ」と言われたが、公社定款になかったので、その場はそのまま帰った。

▼5月15日(金)
 群銀に行き、公社の預金残高証明をもらった際、借入金残高証明ももらえることを確認できた。

▼5月16日(火)
 群銀のY次長が、公社のTH係長に「公社の決算理事会があるから」ということで、貸出金の残高証明を頼まれた。5月24日の公社監査、30日の公社役員会に備えるための依頼だった。なお、TH係長は親戚に不幸があり、午後3時に早退した。

▼5月17日(水)
 群銀のYが借入残高証明を公社に持参した。借入残高は46億6596万円。この日公社のTH係長は忌引で休み、SHはカゼで午後早退、TKもTDも不在だったので、TAがこの書類を受け取り金庫に入れておいた。夕方、TKが戻り残高内容を知った。

▼5月18日(木)
 10時50分頃、公社TKがTH係長に借入残高証明の金額を打ち明ける。THは「コンピュータの打ち間違いだろうから、二人して銀行へ行ってくるべえ」とすぐに群銀に行った。この時T‘H係長は上司に報告せず、TKと二人で行った。
 11時10分頃、二人は安中支店の借入関係書類を持参し、群銀の応接室でS、Y、Kの3人に会い残高証明を出した。
 一方、群銀安中支店では、公社のTH係長から、次長Sが電話を受け、「銀行からもらった借入総額の残高証明と公社で把握している借入残高とが全く合わない」と連絡が入った。暫くして公社からTHとTKが支店に来たので次長のSとYが応対した。
 最初、公社TH係長が「銀行の残高証明が間違っているのではないか。明細があったら見せてほしい」と言ったので、支店S次長が借入明細を見せて、間違いないと説明した。TH係長が「金銭消費貸借契約証書を見せてほしい」というと、群銀は「このとおりある」と言って、袋の中に入っていた金証を見せた。「本人の字かどうかも分からない。いかにも付け加えているのではないか」とTH係長が言ったところ、支店長(?)が「本部の監査でも(タゴ)本人の筆跡に間違いない、ということで検査は済んでいる」と答えた。
 半期に1回利息を払う点について、公社が「総額が異なるのであれば平成7年3月31日に支払った利息では足りないのではないか」と質したところ、支店長(?)は「間違い無く頂いている。もうひとつ安中市土地開発公社理事長湯浅正次・特別会計口座番号058-969という口座がある」と答えた。
 公社TH(?)は「そんなはずはない」と言ったら、「平成2年4月16日開設の特別会計がある」と群銀が口座開設時に記入した普通預金印鑑票を見せてきた。「誰がつくったのか」と質問するとSが「タゴさんが作っております」と答えた。普通預金印鑑票はタゴの筆跡だった。公社が「特別会計口座にいくらあるのか」と聞くと、2億7500万円あった。「引き出し出来ないようにしてくれ」と頼み、過去の資料を(群銀)本部から取り寄せるなどして全部見せてほしいと群銀に依頼した公社の二人は、12時40分に市役所に戻った。群銀S次長がくれた借入明細書は、公社TH係長が「詳しく調べてみる」と言って、この時持ち帰った。
 午後1時近く、公社TH係長がK局長(都慨計画課長併任)のところに来て「課長、群銀の公社の借入残高証明書を取ったら、47億円もの借入をしていることになっていたので、コンピュータの打ち間違いと思い確認したら間違い無かった。どうもタゴがやったらしい」というような報告をした。
 とりあえず市長にも報告することにして、KとTH、TKは市長室に行ったが、外出中だった。その後外出から戻った市長に、THはKとTKと3人でこれまでに分かっている事を報告した(注:K局長はこの時同席せず「THが市長に連絡したらしい」と言っている)。
 市長の指示を受けて、とりあえず銀行にもう一度行って、それが事実かどうか確認してみようということになり、銀行に連絡して午後6時に行く事になった。TH係長は「市長も後から銀行に行く」とK局長に話し、先にTKと出かけ、K局長は遅れて行った。
 安中支店の応接室で、公社の3人は、群銀の支店長Mと次長SとYに会い、事の事実を聞いた。市長は安中市商工会青年部通常総会終了後、午後7時頃に姿を見せた。
 群銀は、預金取引履歴明細票の2枚だけを出してきた。払い出し伝票の原本を群銀が見せたので、公社の借入金台帳と照合した。公社は群銀にある金証も見た。この時、公社は(金証の)狭いスペースに書き込みがなされているので、明かにおかしい、と詳銀に指摘した。
 公社は、借入が31本あり、金額欄の数字の頭についているものが12本(注:本当は13本のはず)あったことを知り、その(特別会計口座開設)前の金証も原本が存在したことがわかった。群銀から「タゴの指示により、特別会計に振り分けた」と説明があったので、公社は「それはおかしい」と指摘。安中市
からの(そうした特別会計口座への振り分け)依頼書はないことも判明した。
 市長が到着して、支店長に説明を求めたところ「湯浅市長の特命で特別会計口座を作った」と支店長が説明した。「特命など聞いていない。特命の依頼書など無いはず。4月に派出所のTに公社の残高を書いた書類を渡したのに、なぜおかしいと言わなかったのか」と公社が群銀に言った。群銀側の資料は明細書が2枚、伝票も1組だったので19日昼までに、群銀は本部の資料も全部調査すると、言った。
 なお、社会教育係にいたタゴはこの日午後、3時間休みをとり、午後2時に早退していた。

▼5月19日(金)
 午後1時に、群銀(S次長?)から「全部(資料が)揃った」という連絡があったので公社は群銀に午後4時頃来庁するよう依頼した。
 午後4時頃、群銀のSとYの両次長が市役所を訪れ、小川市長、須藤助役、青木収入役、K、THが市役所第一応接室で応対した。「支店長は支店会議で来られない」と群銀が言うと、市長が「こんな重大な事件で支店長が来ないのはどう言う事だ」と怒ったりしていた。
 市長が「タゴが特別会計口座を作ったのはどんな理由からか」と聞くと、群銀(S次長?)は「タゴさんから『市長の特命を受けている』ということを言われたので作った」と話した。市長は「口座を作った時の市長は湯浅さんだが、そんなことはさせていないだろうし、引継ぎも受けていない。第一、オレだってそんなことは指示した覚えはない。特命したことを確認しているのか」という話をすると、両次長は「確認は取らなかったが、ちゃんとした印が押してあるし、正規な書類と判断して貸出をしている」と主張していた。
 尚、群銀S次長は、この日小川市長やK局長、TH係長が安中支店に来て、公社や市で把握している回議書と群銀の把握している借入明細書と比べて、群銀が受け取った金証の金額と、市や公社が保管している回議書に付いた金証の控えの金額とが違っていることが分かったと言っている。
 また、S次長は、この日安中支店に小川市長、K局長、TH係長が来た時に、「今後のことは、まず市側で詳しく調査して、タゴ本人も調べてみる」ということだったので、当初は市の調査に任せることにして、群銀はその対応を見守ることになったと言っている。
 また、この日の昼休みに、公社TH係長がカゼで休んでいた公社職員で4月にタゴの後任として異動してきたSHに、初めてタゴの不正の話をした。この後TH係長は、タゴの不正に関して、TK、TDだけと対処し、SHを加えることはしなかった。

▼5月19日(金)又は20日(土)
 タゴが帰宅後、妻に帯封のついたままの100万円1束を渡した。それまでタゴは妻に給料日の20日頃に毎月50万円〜100万円を渡していた。今回は、初めて生活費として帯封のついたままの札束を妻にやったと言う。

▼5月22日(月)
 市が公社調査。

▼5月23日(火)
 市が公社調査、この頃タゴが5月8日に1485万円を現金で特別会計口座から引出したことが市において判明した。

▼5月24日(水)
 午前中、公社の監査。午後3時頃(2時から3時という話もある)、公社TH係長が小川市長の指示で本庁舎2階の第一応接室にタゴを呼び、TH、TK、TDの3人で事情聴取をした。(注:タゴは勤務時間終了間際の午後5時頃と言っている)
 係長らが「残高は何だ」と聞くと、タゴは「これは違う。オレがやったのではない。不正の事実はあるが、こんなに多くない」と答えた。更に群銀のIが主犯というニュアンスで「当時、群銀の融資係長をしていたIさんとの関わりがあった。Iさんと話をしたいので二日間待って下さい」と言った。
 I係長の他にも関与していた人がいるのかについても追求されたタゴは「I係長の他にも一人群銀にいたがその人の名前はカンベンして下さい」などと弁解していた。このためTH係長らは二日間待つことにして、タゴに「その間に話をつけて、その結果を26日の夕方までに報告するように」と言っておいた。
(注:この時タゴは「群銀のIさんともう一人に頼まれてやった。この金額は違う、Iさんと話をしてくるので時間がほしい」と答え、自らIの他にも関与者がいると話したと言う。タゴ自身の供述によると「(この日、公社の)監査の日にTH係長に呼ばれて話をした。突然言われたので、咄嵯的にIさんと親しくしていたもんだから、ついIさんの名前を出してしまった。具体的には『Iさんがよく承知している話なんだ』と言った。『群銀のIさんが関係しているので、少し時間を下さい』と。しかし、この問題については銀行側にも関与者がいて、共犯者がいるとは言っていない。『私はよく内容を知っている人がいるから』というふうに話した」と平成8年2月の第8回刑事公判で、弁解がましく言っている。)
 タゴは、この日の事情聴取に先立ち「私は幾日か前から(公社の)TH、TK、TDの態度がよそよそしいなと感じていた」と後日供述している。
 尚、公社K局長は「THらが24日、26日にタゴを呼んで問い詰めたことを聞いているが、タゴがどんなことを言ったのか詳しいことは聞いていないので分からない」と言っている。

▼5月25日(木)
 タゴは、「25日も都市計画課のTH、TK、TDから事情聴取を受けた」と供述しているが、市作成の時系列表には、25日の出来事には何も言及していない。

▼5月26日(金)
 午後4時30分頃、公社のTH、TK、TDがタゴを第一応接室に呼んで話しの結果を問い詰めたところ「Iとは電話連絡が取れたが、相手も本店調査部の役職で電話では話をできず、Iも誰かに相談すると言っていた。Iが忙しいので会うことができなかった。(28日の)日曜日に会うアポイントが取れたので必ず話をつけて、月曜日の朝一番に報告します」とタゴが言った。市長の指示により、公社THらはタゴに「リミットは29日」と通告した。また群銀次長にIの件を話し、調査を依頼した。

▼5月27日(土)
 夕方6時頃、タゴが特別会計口座の積金通帳と払戻請求書を自宅の焼却炉で燃やした。この日は市役所
の閉庁日だった。タゴはいつものように、妻の喫茶店の開店時間午前10時〜午後3時迄、店に出て客の対応をしていた。
 (注:タゴの初期の自供によると、タゴは24〜25日頃、今回のサギ事件がバレそうだと感じたので、「いつも持ち歩いていた黒色手提げバッグの中に入れておいた特別会計口座の普通預金通帳1冊と公社理事長印が押されていた払戻請求書を自宅の焼却炉で燃やして処分した」という)
 タゴは、通帳と払戻書を燃やしたことについて、「これは証拠隠滅の時間稼ぎというよりは、私が自分自身で自分のカタをつけるつもりだったから、全てのものを燃やして妻や子供に迷惑がかからないようにしよう、という事だけだった。気が動転していたものだから、自分でもハッキリ云々という気持は無かった。その時はそこまで頭が回っていなかった。私が死ぬことでそれが明確になると思っていた」と、後に第8回公判で言い逃れをしている。

▼5月28日(日)
 この日もタゴは、昼間、店に出て普通に過ごした。午後9時過ぎに息子を車で高崎駅に送り、自宅に戻った。夜中に自殺を図った。遺書は30日にゴミと一緒に捨てた。

【ひらく会情報部・続く】

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