6月10日に開示された大同スラグ施工工事27件中6か所のみ測定した県土整備部の事無かれレポート内容  スラグ不法投棄問題

■大同特殊鋼渋川工場から排出される鉄鋼スラグに環境基準を大幅に超える有毒物質が含まれているにもかかわらず、本来ならサンパイとして処分されなければならない有毒物質を、「鉄鋼スラグ混入砕石」という呼び方で、あたかも再生材のように偽装して、群馬県内各地に大量に不法投棄していた問題で、市民オンブズマン群馬では、平成26年5月9日に、群馬県が「この鉄鋼スラグ混入砕石を使った県の工事現場27カ所のうち、調査した6か所はいずれも有害物質の含有量が基準値以下だった」と発表したことから、その調査方法を詳しくチェックするため、5月27日付で公文書開示請求を行っていたところ、6月10日午前9時から、県庁2階で県土整備部建設企画課技術調査係より開示を受けました。開示に際して、県民センターから2名の職員のほか、県土整備部から2名の職員(下田、奥澤両氏)が立ち会いました。
※6月10日付公文書部分開示決定通知書→noticeletter.pdf


 開示されたのは、群馬県から調査業務を委託された伊勢崎市にあるプロファ設計鰍ェ作成した「単独公共 公共事業調整費(プラットフォーム) 鉄鋼スラグ混入砕石を用いた工事に関する環境調査業務」報告書(平成26年5月)で、本文25ページ、「添付資料」として、試験報告書6通、思料採取状況及びコア写真19ページの文書でした。職員に、この調査業務に要した費用を訪ねたところ、約300万円とのことでした。

 全文は次のPDFコピーを参照下さい。
●報告書の本文→
testresultreport1.pdf
testresultreport2.pdf
testresultreport3.pdf
testresultreport4.pdf
testresultreport5a.pdf
testresultreport5b.pdf
testresultreport6.pdf

●報告書の添付資料:試験報告書→
testanalysis.pdf
          試料採取状況及びコア写真→
testanalysis1.pdf
testanalysis2.pdf
testanalysis3.pdf
testanalysis4.pdf
testanalysis5.pdf

■開示された資料の内容についてざっとコメントしてみます。 

 まず冒頭に「1.調査目的」とあり、「本業務は、再生材『鉄鋼スラグ混入砕石』を用いた道路工事について、有害物質の含有・溶出の実態、土壌への影響等を把握することを目的として、有害物質の検査を行う」と述べています。

 「再生材(鉄鋼スラグ混入砕石)」という言葉がここにも出て来ますが、再生材とは本来、回収した使用済みの製品を原料として利用した材料のことです。コンクリート構造物を解体した際に出た材料を破砕したり、調整したりして再び骨材として利用することです。ところが、大同特殊鋼渋川工場の場合、有毒物質を含有した鉄鋼スラグを、本来であればサンパイとして処理しなければならないのに、バージン砕石と混ぜて、有毒成分を見掛け上薄めればよいと考えて、今回の不法投棄を思いついたようです。

 県の委託を受けた調査会社の報告書の冒頭に「再生材『鉄鋼スラグ混入砕石』」と書かれていること自体、極めて象徴的だと言えます。

 6か所の調査は、平成26年4月19、21、22日にかけて次の場所で実施されました。
@(主)大間々白井線 渋川市赤城町溝呂木地内
A(一)下久屋渋川線 渋川市赤城町津久田地内
B(国)353号・祖母島箱島BP 渋川市祖母島地内
C(主)中之条東吾妻線 吾妻郡東吾妻町大字大戸地内
D(国)291号・小川工事工区 利根郡みなかみ町小川地内
E 県営萩生川西地内 ほ場整備 東吾妻町大字萩生地内

 調査地点における試料採取はそれぞれ5地点採取としてあり、平均的に採取するよう間隔をあけて採取しています。

 そして試料採取の深さは表層厚3〜12pのアスファルト若しくはコンクリート舗装の下面を起点に1mとし、表層の舗装の下の上部路盤部(厚さ約0〜20cm)のさらに下部にある、「鉄鋼スラグ混入砕石RC40」が投入されたとする厚さ10〜22cm程度の下層路盤(A)と、その下に接する路床部(厚さ5cm)の部分(B)及び、更にその下部(厚さ65〜85cm)の部分(C)まで、ボーリングマシンで掘り抜き、下層路盤(A)の試料を全量分析して、有害物質が基準値を超えた場合に、その下部の(B)と(C)の部分の分析を行う方針を立てたようです。

 分析試験方法は、それぞれJIS基準で実施したとあります。(水銀だけは環境庁告示第59号付表1(昭和46年)となっています)

■分析調査の結果、報告書では「採取した全試料で、溶出量試験及び含有量試験に定める全ての項目について、基準値を超過した個所は認められなかった」と結論付けられています。

 項目別では、カドミウム、鉛、六価クロム、水銀、ひ素、セレンは溶出量試験及び含有量試験とも、「全地点で定量下限値未満」だったとしています。

 ただし、フッ素については、溶出用試験及び含有量試験とも全地点で検出され、その値は溶出量試験で0.13〜0.76mg/L、含有量試験で78〜3700mg/kgだったとしています。

■そして、他の調査事例として、平成26年3月の国交省の調査では溶出量試験0.10〜4.4mg/L、含有量試験64〜3800mg/kgであり、平成26年3月の水資源機構の調査では溶出量試験0.90〜2.5mg/L、含有量試験13000〜19000mg/kgだったとしており、水資源機構の場合は、使用材料が鉄鋼スラグ100%だったため、このような高い値が検出されたと結論付けています。

 つまり、大同特殊鋼の鉄鋼スラグの本質は、高濃度の有毒物質を含んでいることが、ここでも確認されていることになります。

 しかし報告書ではその問題についてはなぜか触れずに、「路盤材の調査結果として基準値を下回ったことから、路盤材下の路床土壌については調査の必要性が無かった」と一気に幕引きを狙っています。

 更に最後に「以上の結果より、スラグ混入砕石(路盤材)では環境安全品質基準に定める有害物質による汚染は無いと評価される」と、強引に結論を導いています。

■今回の分析試験では、5か所のサンプルを全部混ぜて、破砕して篩にかけ、粉状になったものを試料として使っています。これによれば、大同特殊鋼と佐藤建設工業が編み出し、群馬県が御墨付きを与えた「鉄鋼スラグ混入砕石」と称するバージン砕石を有害スラグに大量に加えることで(言い換えると、バージン砕石のなかに有害スラグを混ぜてやることで)、“分母”の量が増えるため、相対的に“分子”の有害物質の溶出量や含有量が見掛け上、減ることになり、大同特殊鋼と佐藤建設工業の思惑通りの分析結果が出たことになります。

 しかしこの論理は、例えば、つい最近問題になっている神戸市の埋め立て地に、高島市がダイオキシンを基準値以上に含んだゴミ焼却炉のばい塵を、掃除後に計測してダイオキシン量の少ない数字が出た文書にすり替えて、基準値以下だとして長年にわたり持ち込んでいた事件を彷彿とさせます。つまり、鉄鋼スラグ本体は有毒物質を含みサンパイ処理をしなければならないのに、バージン砕石と混ぜてから計測することで、見掛け上は基準値以下だと主張するわけです。

 100% の大同スラグのフッ素の分析結果が、溶出量試験で0.90〜2.5mg/L、含有量試験で13000〜19000mg/kgだったことから、これを環境基準値(溶出量0.8mg/L、含有量4000mg/kg)以下に収めるためには、5倍に薄める(バージン砕石で増量する)必要があると大同特殊鋼と佐藤建設工業が考えたのでしょうか。

■先日当会が現地で調査した東吾妻町萩生地区における群馬県の試料採取場所は、当会が報告した場所とは少し離れていますが、やはり、フッ素の溶出量は0.76で含有量は2800ということで、おそらく中山間地の現場なので人目につきにくいと考えて、鉄鋼スラグの配合比率をいつもより多くした可能性があります。

 また、5か所で採取したサンプルをまぜこぜにして測定しても、6か所それぞれの分析試験結果の値には大きなばらつきがあります。これは明らかに、大同と佐藤が、鉄鋼スラグとバージン砕石の配合比率を全く管理しておらず、現場でダンプから下ろしたスラグ採石と、山から運んできたバージン砕石をそれぞれ現場で、バックホウで適当に現場で混ぜ合わせた可能性が考えられます。

■群馬県の県土整備部の職員には、「萩生地区の農道でむき出しになった鉄鋼スラグを覆い隠す為に、農政部農村整備課が舗装するようだが、決してそれは許されない行為だから、やめさせてほしい」とお願いしたところ、職員らは「農村整備課に聞いたら、このあと舗装をするつもりだった、と言っている」と答えました。

 しかし、今回の報告書のページ25「県営萩生川西地区 ほ場整備 東吾妻町大字萩生地内」にも示されているように、黄色で示した農道の箇所では最初から舗装は計画されていなかった可能性があります。
※萩生地区の区画整理方式によるほ場整備事業の対象地のGoogle Map参照:
https://www.google.co.jp/maps/place/%E7%BE%A4%E9%A6%AC%E7%9C%8C%E5%90%BE%E5%A6%BB%E9%83%A1%E6%9D%B1%E5%90%BE%E5%A6%BB%E7%94%BA%E8%90%A9%E7%94%9F/@36.4862601,138.7633468,2734m/data=!3m1!1e3!4m2!3m1!1s0x601e797435eb66c1:0x7b679d7c7c5642d3 

 なぜ、群馬県は、今回の大同スラグを使って施工した工事現場の有害物質分析検査において、萩生地区では未舗装の箇所を選定しなかったのか、不思議です。なにしろ、地表にゴロゴロと有毒な鉄鋼スラグが散乱しているのですから、当然その個所を計測箇所として含めるのが自然です。

【6月14日追記】
当会が入手した情報によれば、東吾妻町萩生地区を対象にした舗装工事で、6月11日に入札が行われ、池原工業鰍ェ490万円で落札しました。市民オンブズマン群馬が予測したように、本来、敷砂利のみで舗装する仕様ではなかった農道を対象に、急遽、舗装工事を施工するものと見られます。オンブズマンとしては、農村整備課に、「舗装で大同の有毒スラグを覆い隠すのではなく、有毒スラグを全部撤去することが肝要です」と強く申し入れておきましたが、どうやら反故にされたようです。施工がいつ、どのような形で行われるのか、監視していきます。


■ところで、今回の大同特殊鋼の有害スラグの分析調査業務の工事名称は「単独公共 公共事業調整費(プラットフォーム) 鉄鋼スラグ混入砕石を用いた工事に関する環境調査業務」となっています。

 約300万円かけたというこの調査業務の予算は「公共事業調整費」「プラットフォーム」という名目で支出されていることがうかがえます。そこで、県土整備部のホームページから、これらのキーワードで検索すると、次の部署が管轄する事業であることが判明しました。

【公共事業調整費】
 これは県土整備部の管理課が所掌しています。それによれば、「公共事業調整費」は「他部局との協調による事業、県民・市町村との連携、年度途中に発生した緊急的課題への迅速な対応等のために、横断的に機動的に対応できる予算として計上しています。」となっています。
これまでの公共事業調整費の歴年の予算額は次のとおりです。(単位:千円)
 平成20年度  1,753,738  概要:部局間連携、県民参加、緊急事業・災害対応
 平成21年度  1,814,503  概要:部局間連携、県民参加、緊急事業・災害対応
 平成22年度  1,639,334  概要:部局間連携、県民参加、緊急事業・災害対応
 平成23年度  1,655,082  概要:部局間連携、県民参加
 平成24年度  1,654,819  概要:部局間連携、県民参加、緊急事業・災害対応
 平成25年度  1,517,474  概要:部局間連携、県民参加緊急事業・災害対応
 平成26年度  1,517,474  概要:部局間連携、県民参加緊急事業・災害対応

【プラットフォーム】
 これは、平成22年度までは建設政策室が所掌していました。その後、平成23年度から部署名が変わり、建設企画課が所掌しています。
 建設政策室→建設企画課の業務内容の筆頭に「県民への説明責任機能強化」とあります。これは「県土整備行政を取り巻く環境が大きく変わる中、総合的・横断的な施策の展開により、効率的な公共事業を執行するとともに、県民への説明責任の向上を目指します。」とあり、業務内容として次の6項目が挙げられていました。
・「はばたけ群馬・県土整備 地域プラン」の推進
・「はばたけ群馬・県土整備プラン」に掲げる施策を具体化するための「県土づくりプラットフォーム構築事業」の実施
・各年度の政策方針の決定
・部内の公共事業の事前・事後・再評価及び施策評価の実施
・ぐんま県土づくり県民参画ガイドラインに基づく県民参画型事業の実施
・県土整備部ポータルサイトの管理運営
平成23年度から建設企画課に部署名が変わりましたが、同じく「県民への説明責任機能強化」として、「県土整備行政を取り巻く環境の変化を見極め、県土整備部における総合的・横断的な施策の展開により、計画的な社会資本整備の充実を図るとともに、県民への説明責任の向上を目指します。」とあり、業務内容として、次の5項目が挙げられています。
・「はばたけ群馬・県土整備プラン2013-2022」の推進及びフォローアップ
・県土整備部政策方針の決定
・部内公共事業の事前・事後・再評価及び施策評価の実施
・設計VE導入による県民本位の質の高い公共事業の推進
・「ぐんま県土づくり県民参画ガイドライン」に基づく県民参画型公共事業の実施
 これまでの「県土づくりプラットフォーム構築事業」の歴年の予算額は次のとおりです。(単位:千円)
 平成20年度  200,000  概要:
 平成21年度  100,000  概要:
 平成22年度   50,000 → 90,000  概要:
 平成23年度   30,000  概要:
 平成24年度   30,000  概要:
 平成25年度   30,000  概要:
 平成26年度   30,000  概要:

■おそらく、群馬県県土整備部では、今回の大同特殊鋼が排出する有害スラグの分析調査の実施を緊急に迫られたため、農村整備部が施工した公共事業も含まれるため、他部局との連携に使える「監理課」の「公共事業調整費」と、「建設企画課」の「ぐんま県土づくりプラットフォーム構築事業」の両方から予算約300万円を充当したと考えられます。

 もっとも、県土整備部の平成26年度予算は次のURLで見ると総額約1104億円に上ります。今回の300万円程度の公金など、役所にとっては取るに足らないのかもしれません。
http://www.pref.gunma.jp/06/h0100319.html

 しかし、この公金の原資は我々県民の血税です。たとえ約300万円とは言え、きちんと原因者に負担させることが県民の県行政に対する信頼にこたえるためにも不可欠です。もし、このまま原因者を特定しないまま、うやむやにされるようであれば、住民監査請求も視野に入れなければなりません。

■最後に、廃棄物リサイクル課に立ち寄りました。次長がいたので、「(安中市の市民団体が先日)東邦亜鉛サンパイ処分場関連の公文書変造で皆さんを警察に告発したようだけど、もう立ち入り調査はありましたか?」と尋ねると、次長は難しい顔をして「いや、そういうことは起きていない」とのことでした。まだ、県警は公文書変造の容疑について裏付け捜査中なのかもしれません。今回の有害スラグ=サンパイの不法投棄問題を追及するためには、まず、廃棄物リサイクル課自身が、きちんと法令順守=コンプライアンスの体質を取り戻すことが先決です。襟を正したうえで、この問題に取り組んでほしいものです。

 また、次長曰く、「大同スラグの件で、先日の新聞に、県がスラグ製造停止命令を出したと報じているが、実際には今年1月28日に大同に立ち入り検査に入った時に、県として、大同特殊鋼に対して既にスラグ製造停止指示を出していたので、特段目新しい情報ではない。大同はそれ以来、スラグは外部に出していないはずだ」ということでした。それならそうと、なぜもっと早い時点できちんと県のホームページに公表しなかったのか、非常に疑問です。

【市民オンブズマン群馬事務局からの報告】

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