2014/6/28  0:05

大同特殊鋼の製造過程で出る鉄鋼スラグに基準値を超えるフッ素や六価クロムが含まれる理由についての考察  スラグ不法投棄問題

■平成26年6月24日付の日本農業新聞に、和歌山県果樹試験場が、新日鉄住金の鉄鋼スラグを使って簡易舗装を試験的に実施したところ、鳥獣害対策と除草対策で効用が確認できたという記事が掲載されました。
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**********日本農業新聞2014年6月24日
http://www.agrinews.co.jp/modules/pico/index.php?content_id=28391
[鳥獣害と闘う] 和歌山県果試
電気柵の防草対策 鉄鋼スラグで簡易舗装 通電性維持
 和歌山県果樹試験場は電気柵下部の防草に、鉄鋼スラグを使った簡易舗装の効果を確認した。コンクリートやアスファルト舗装は通電性が低いため、電気柵に害獣が触れてもショックを与えられないが、鉄鋼スラグは十分な通電性があった。試験では電気柵内に害獣が侵入した痕跡が無く、効果を確認。しかも完全に抑草し、草刈り作業が省力できた。
●草刈り不要 費用も安価に
 電気柵は侵入防止効果が高く、各地で普及しているが、下草が柵に触れると漏電し電圧が低下する。電気ショックが無くなるため除草が必要で、この管理作業が負担になっている。草を生やさないためにコンクリートやアスファルトで舗装をすると、通電性が低く、動物にショックを与えられない。
 ショックの効果を確保しつつ防草対策にもなる舗装資材として、鉄鋼スラグでの簡易舗装を試験。通電性と防草性を明らかにした。
 鉄鋼スラグは同県産品にも登録されている新日鉄住金製「Gカタマ」を使った。この鉄鋼スラグは転炉スラグ、高炉水砕スラグ、高炉セメントの混合物で、土の上に材料を均一に散布し散水、ローラーで転圧して固める。コンクリート同様、施工後1週間程度養生すると硬く締まる。
 舗装の厚さを10センチと15センチの2種類とし、幅1メートル、長さ13メートル施工して試験した。施工費用は材料費込みで1平方メートル当たり約850円。1立方メートル約2トンと重く搬入路がないと施工は難しいが、費用はコンクリート施工の約4分の1だった。
 電気柵接触時の通電圧は10センチ厚の鉄鋼スラグが平均4067ボルト。土壌の5578ボルトを下回ったが、コンクリートの940ボルト、アスファルトの955ボルトを上回り、県のマニュアルで示している3500ボルト以上という基準を上回った。15センチ厚でも3500ボルトを上回ることもあったが、平均では2863ボルトになり、10センチ厚を下回った。
**********

■新日鉄住金のホームページには、スラグに関する資料が掲載されています。
http://www.nssmc.com/product/catalog_download/pdf/L001.pdf

 今回、日本農業新聞の記事に取り上げられた製品名「Gカタマ」も同社HPに載っています。http://www.nssmc.com/product/slag/katamasp.html

■鉄鋼スラグ協会のHPによると、鉄鋼スラグは、鉄鋼製造工程において鉄とともに溶融状態で生成される副産物であり、高炉スラグと製鋼スラグに大別されます。

 高炉スラグは、鉄鉱石とコークス、石灰石等を溶融して銑鉄を分離した溶融スラグを冷却することにより製造されるスラグで、冷却方法によって高炉水砕スラグと高炉徐冷スラグに大別されます。

 一方、製鋼スラグは、銑鉄やスクラップから成分調整を行って「鋼」を製造する製鋼工程で製造されるスラグで、溶銑を主原料として鋼を製造する転炉にて生成される「転炉系製鋼スラグ」およびスクラップを主原料として鋼を製造する電気炉にて生成される「電気炉スラグ」に大別されます。

 2008 年度の鉄鋼スラグの生成量は約3,800万tにおよび、我が国最大量の産業副産物となっています。

 高炉水砕スラグは、微粉砕しコンクリート用高炉スラグ微粉末(JIS R 6206)にした後、コンクリート混和材または、普通ポルトランドセメントと混合して高炉セメント(JIS R 5211)として利用される他、コンクリート用高炉スラグ細骨材(JIS A 5011-1)、裏込め材、盛土材、路床材、覆土材、サンドマット材などの土木材料、肥料、ロックウール、セメントクリンカー原料などに利用されています。

 高炉徐冷スラグは、主に道路用鉄鋼スラグ(JIS A 5015)の他、コンクリート用高炉スラグ粗骨材(JIS A 5011-1)、土木材料、肥料、ロックウール、セメントクリンカー原料などに利用されています。

 製鋼スラグは、土木用と、道路用鉄鋼スラグ(JIS A 5015)の他、土木材料、肥料、セメントクリンカー原料などに利用されています。

 鉄鋼スラグの化学成分はセメントと天然砂とのほぼ中間的な化学成分であり、カルシウム、ケイ素を多く含有することから、水と反応して硬化する性質(水硬性)を有しています。

■鉄鋼スラグの道路用材への適用は、早い時期から研究されてきました。アスファルト舗装の構造断面を例にとると、原地盤である路床(舗装構造としては路床上面から1mの厚さ)上に、砕石などを締固めて築造した路盤、さらにその上に車両走行時の摩耗、すり減り抵抗性のあるアスファルトからなる表層が施工され、下層から上層に向かって強度、耐久性の高い舗装構成にして、交通荷重を円滑に分散しながら路床に伝達することが一般的です。

 鉄鋼スラグの路盤材、アスファルト骨材への利用は昭和40年代から始まり、昭和54 年に道路用鉄鋼スラグ(JIS A5015)として基準化されました。

 基準化当初は、製鋼スラグの適用が認められていませんでしたが、昭和54 年より、建設省土木研究所、(財)土木研究センター、鐵鋼スラグ協会の3 者により体系的な調査研究が実施されました。

 その結果、エージング期間3 ヶ月以上、80℃水浸膨張比2%以下であれば、利用できることが確認されるとともに、蒸気エージングなどによる膨張品質安定化の技術開発が進み、平成4年10月のJIS 改正により、製鋼スラグも基準化されました。

 2008年度には全国で約7百万トンの鉄鋼スラグが道路用材へ利用されています。

 水硬性粒度調整鉄鋼スラグHMS25(Hydraulic Mechanically Stabilized Slag)は、鉄鋼スラグの特性である水硬性を保証した材料であり、これにより高い材料強度(等値換算係数)が設定され、断面の薄肉化により経済的な道路構造が実現できます。ちなみに欧州では年間約1,560万t(全体の約37%)の鉄鋼スラグが道路用材として利用されており、EN13242-2002(Aggregates for bound and unbound mixtures)をはじめとする欧州規格が整備されています。

 また、路床の支持力比CBR(California Bearing Ratio)が3%未満の場合には、良質な砂や砕石に置き換えるかセメント、石灰などを混合して改良するのが一般的であり、これらにも鉄鋼スラグが利用されています。

■このように、高炉スラグに較べると製鋼スラグの路盤材への使用は、まだ22年ほどの歴史です。しかし、きちんと製品の管理がしてあれば、安全性に問題は出ないはずでした。

 にもかかわらず、なぜ大同特殊鋼渋川工場から排出された製鋼スラグが、このような環境汚染を引き起こしたのでしょうか。

 鉄鋼スラグ協会では、平成26年2月5日に次の内容の発表をHPで掲載しています。

**********2014年2月5日鉄鋼スラグ協会HP
http://www.slg.jp/news/140205.html
大同特殊鋼株式会社渋川工場の新聞報道について
 1月28日(火)、当協会の団体会員である大同特殊鋼株式会社渋川工場が出荷している鉄鋼スラグに関する報道がありました。
 当協会では、鉄鋼スラグ製品の信頼性向上を目的に、「鉄鋼スラグ製品の管理に関するガイドライン」(以下ガイドラインという)を策定し、会員各社のガイドライン遵守状況を確認する為に、第三者機関の審査に基づく審査・証明制度を運用しているところであり、このような事態に至ったことは誠に遺憾に存じます。
 大同特殊鋼株式会社より、同社渋川工場が昨年取得した審査証明の返上と管理体制の見直し改善後に再度、第三者による審査を受けたい旨の申し入れがありました。当協会としてはこれを受け、同社渋川工場が取得している審査証明を取消すこととし、管理体制の見直し改善後に行われる第三者による審査内容を踏まえ、審査証明の発行を改めて検討してまいります。
 また当協会では、会員各社にガイドラインに則った運用が実行されているかの緊急点検を実施中です。
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 なぜ、大同特殊鋼が1月28日の新聞報道のあと、直ぐに鉄鋼スラグ協会に審査証明の返上を申し出たのでしょうか。また、なぜ、このようなズサンな鉄鋼スラグ製品の管理をしながら、大同特殊鋼に対して鉄鋼スラグ協会が審査証明を5回連続で交付し続けることができたのでしょうか。これらの疑問について、オンブズマンでは、現在、鉄鋼スラグ協会に質問状を提出しています。

■大同特殊鋼のHPを見ると、同社全体では、2012年実績で、原料として、鉄スクラップ123.7万トン(原料全体の92%相当)、合金類8.1万トン、社内鉄スクラップ(PRIME含む)33.9万トン(←当会注:PRIMEに関する同社記事参照http://www.daido.co.jp/frontier/d58/58.html )を使用し、副原料として生石灰6.5万トン、蛍石0.5万トン、還元剤(C、Al、Si)3.8万トン、その他資材として、レンガ類3.1万トン、電極0.万トン、社内リサイクル煉瓦0.8万トンを消費しています。

 工場のプロセスとしては、アーク式電気炉を使った溶解工程、同じくアーク式の精錬工程、連続鋳造工程、加熱工程、分塊圧延工程、加熱工程、製品圧延工程から構成されており、特殊鋼鋼材、電子部品、産業機械部品など127.5万トンを製造しています。

 またリサイクル製品としてスラグ路盤材18.0万トン、亜鉛原料0.5万トンを出荷し、最終処分場には6.2万トンを搬入しています。

 渋川工場では、2010年度に製鋼工場で全面的に重油から都市ガスに燃料を切替えて、201ン年度には鍛造工場でも都市ガスに切り替えたため、重油タンクを撤去しています。

 さらに、2012年度届出化学物質としてクロム及び化合物については、年間の大気放出0.10トン、公共水域0.05トン、所外リサイクル/所外最終埋立処分787.54トン、フッ素及び化合物については、年間の大気放出0トン、公共水域69.27トン、所外リサイクル/所外最終埋立処分0.03トンとしています。

 しかし、フッ素については、有害スラグ中には0.8mg/L以上含まれている可能性もあり、もし、そのようなスラグが年間2万トン以上排出されているとなると、2万トン×0.8r/L×0.5L/kg=80トンということになり、実際には公共水域ではなく、公共事業等で県内各地にばらまかれていたかもしれません。

■また、大同特殊鋼のISO14001の認証機関である日本検査キューエイ鰍フHPによれば、大同特殊鋼の今回の有害スラグを巡る一連の事件発生に関連して、当初平成26年1月29日には「環境マネジメントシステム上の観点から適切な対応が取られているかどうか確認中」としながらも、その後、3月7日になって「大同は現行の環境基準に基づいて適切に処理し、スラグ混合再生路盤材として出荷していたことを確認した」と発表しています。

**********情報掲載日:2014年01月29日
ISO審査登録関連のお知らせ
大同特殊鋼株式会社 渋川工場の鉄鋼スラグに関する件
 1月28日(火)、弊社のISO14001(環境マネジメントシステム)の登録組織である大同特殊鋼株式会社渋川工場(群馬県渋川市)が出荷している鉄鋼スラグに関してのマスコミ報道がありました。現在、群馬県による調査が実施されています。
 弊社は、環境マネジメントシステム上の観点から、適切な対応がとられているかについて確認をしております。

**********情報掲載日:2014年03月07日
http://www.jicqa.co.jp/09info/01iso/2014/topics_iso_140129.html
ISO審査登録関連のお知らせ
大同特殊鋼株式会社 渋川工場の鉄鋼スラグに関する件
 本件について弊社は、環境マネジメントシステム上の観点から登録組織を訪問し、調査を行いました。
 登録組織は過去、鉄鋼スラグを当時の環境基準に従って処理し、再生スラグ製品として出荷していました。その後は、現行の環境基準に基づいて適切に処理し、スラグ混合再生路盤材として出荷していたことを確認しました。
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 これほど、ズサンなスラグの管理が判明しているにもかかわらず、なぜ日本検査キューエイは、ISO14001の見地から「問題ない」と結論付けることができたのでしょうか。このことについても、オンブズマンとして、確認をしたいと考えています。

■前置きが長くなりましたが、日本農業新聞の掲載記事で取り上げられている新日鉄住金和歌山製鉄所から出る鉄鋼スラグを主体にした製品「Gカタマ」について、調べてみました。

 このGカタマは、転炉スラグ(大まかな分類では鉄鋼スラグと呼称されます)のほか、高炉水砕スラグ(高炉と呼ばれる溶鉱炉で鉄鉱石、石灰コークスを入れて高温で溶かし、銑鉄を作る際に出た高炉スラグと呼ばれるスラグに高圧水を吹きかけて急冷して非結晶質化した製品)と高炉セメント(ポルトランドセメントに高炉スラグ微粉末を所定量混合して製造されたセメント。この高炉スラグ微粉末は高炉水砕スラグを微粉砕したもの)を混ぜたものです。

 一般に、新日鉄住金やJFE、神戸製鋼など高炉メーカーとよばれる製鉄所から出る高炉スラグ(高炉から出る鉱滓)や製鋼スラグ(転炉から出る鉱滓)は、銑鉄や炭素鋼などを製造しており、クロムなどの合金鋼製造のために混入させる合金類はほとんど使用していません。

 ところが、大同特殊鋼や山陽特殊製鋼など特殊な合金鋼を製造する製鋼メーカーは、原料として主にスクラップを使用し、それを電気アーク炉や誘導加熱炉などで溶融し、その際、石灰や成分調整のための合金類を添加しますが、製品に不純物が入るのを嫌うため、表面に浮かんだスラグ(高温の溶融物が空気に触れて酸化物等となって分離したもの)が、溶融した合金鋼に交じらないようにするため、スラグの粘度を低下させて流動性を高め再び溶融した合金鋼に交じらないようにする必要があり、フッ素を高濃度に含んだ蛍石を一緒に投入して、製品の品質を向上させます。

 そのため、大同特殊鋼渋川工場から出る電気炉スラグ(これも大まかな分類では、高炉スラグとは別に鉄鋼スラグと呼ばれています)には基準値を大幅に超えるフッ素や六価クロムが含まれています。

 今回、問題となったのは、渋川工場から出る鉄鋼スラグ製品そのものの分析検査を行わず(行えば環境基準値をはるかに超える含有量が検出されるのは明白です)、それを鉄鋼スラグのリサイクルに便乗して、佐藤建設工業と組んで、佐藤建設工業が渋川市小野上に所有する村上砕石場から切り出した天然砕石(バージン砕石とか山砕などとも呼ばれます)を一緒に混ぜて、その混合比率を、15:85(つまり、7倍近くに薄めたものを計測して、環境基準値をクリアしていると偽装し、少なくともこの4年間に有害な鉄鋼スラグ10万トン(混合砕石ベースだとこの数倍の60万トン以上となりますが、はっきりした数字は現時点で未詳です)を県内各地の公共事業の路盤材や盛土材として使用していたことです。

 国レベルでは、国交省の関東整備局、水資源機構が少なくとも混合砕石ベースで3万トン以上使用している可能性があります。

 県レベルでは、県土整備部道路管理課で21件・大同スラグ混合砕石使用量4,700.7㎥、農政部農村整備課が4件・同使用量788.3㎥、環境森林部森林保全課で2件・同使用量7.9㎥、合計27件・大同スラグ混合砕石総使用量5,496.9㎥(重量ベースで約1万トン)となっています。

 また、渋川市でも市内各所に1990年代後半から無数の工事現場で、最近まで100%の大同有害スラグを路盤材や埋土・盛土材としていたるところで使用してきました。

■驚くべきことに、国も県も渋川市も、大同スラグ混入後の混合砕石を分析して、環境基準値を超えていないから大丈夫だと、マスコミを使って、恣意的な情報を流しています。大同特殊鋼も、これに便乗して、安全だとホームページに記事を掲載する始末です。(ただし水資源機構と渋川市の場合、大同スラグ100%のスラグ砕石を使った場所があり、高濃度のフッ素や六価クロムが検出され新聞沙汰になりました)

 このことは、大同特殊鋼と、行政側の国や県、渋川市が、今後どのようにこの問題を終息させるかという方向性を示しているのではないか、という疑念を生じさせます。

 自ら確認したわけではありませんが、日本農業新聞に掲載された鉄鋼スラグは鉄分17%なので、導電率もよく、セメント材料も含まれていて、簡易舗装工事適していると思われます。そして、なによりも、有害なフッ素や六価クロムについては、事前に、環境省に認定された機関により、分析結果が環境基準値を下回っていると確認済みだと思われます。

 したがって、もし、大同スラグが渋川工場から出た時点で成分含有量や溶出量の分析試験をして、フッ素や六価クロムが環境基準値以下であれば、まったく問題ありません。鉄分が新日鉄住金など高炉メーカーが製品介している鉄鋼スラグと同様に多く含まれていれば、セメント成分を加えて簡易舗装材料として安全に使用できるかもしれません。

 大同スラグ問題では、今後、八ッ場ダム工事現場でも使用されていることが国会答弁でも明らかになっており、オンブズマンとしても慎重に成り行きを見守っておりますが、一方で、この問題をもみ消す圧力がすでに群馬県庁の中でうごめきつつあることを感じさせています。

 引き続き、本件についても、オンブズマン活動に注目願います。

【市民オンブズマン群馬事務局からの報告】
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