2008/10/11  23:15

大甘の行政処分で浮かぶ多胡運輸を取り巻くバリヤーの存在  首都高炎上とタゴ運輸

■10月10日(金)の午後9時過ぎから深夜にかけて、多胡運輸に行政処分が出たというニュースがネット上に報じられ、翌11日の新聞の群馬版でも掲載されました。各紙が報じた内容は次のとおりです。(記事内容は東京新聞記事をもとに、各紙の報道内容を一部加味してあります)


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多胡運輸に行政処分 国交省関東運輸局 首都高炎上事故で

 国土交通省関東運輸局は10月10日、東京都板橋区の首都高速道路で8月、タンクローリーが横転・炎上した事故で、運転手の男性(45)が勤める運送会社「多胡運輸」(群馬県高崎市、多胡茂美社長)に貨物自動車運送事業法違反などに基づく行政処分を出した。本社営業所の車両5台を55日間使用停止とし、運行管理者の一人である多胡社長に資格者証の返納を命じた。
 事故を端緒として運輸局が特別監査を行った結果、運転手への指導・監督不足や過労運転の防止義務違反、初任者に対する指導教育が実施されていないなど計8件の違反が分かった。
 事業免許の取り消しや停止などの処分に至らなかった理由について、同運輸局は「事故の死亡者はおらず、運転者に飲酒などの悪質行為がなかったため」としている。
 同社をめぐっては、8月3日午前3時50分ごろ、同社員が運転する大型タンクリーリートレーラーが、東京都板橋区の首都高池袋線の下りと中央環状線外回りの合流地点付近で横転。漏れ出したガソリンや軽油が炎上し、道路が熱で変形し一部区間が通行止めとなる事故が起きていた。10月14日全面復旧の予定で、運転手は腰の骨を折る重傷を負い、入院中。
 同社は「下された処分は厳粛に受け止め、再発防止に努めたい。異議申し立てなどは考えていない」としている。
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■そこで、関東運輸局が多胡運輸に行政処分を出した根拠とされた「貨物自動車運送事業法」なる法律をチェックしてみました。

●貨物自動車運送事業法とは、道路運送事業法からトラックの事業規制を切り離し、1989年に施行された道路運送事業法のことです。トラック事業について、事業の免許制を許可制に改めるなど、経済的な規制が緩和され、輸送の安全確保を目的に社会的規制を強化し、事業の自己責任を明確としました。従来の路線トラックと、区域トラックの事業区分を廃止するとともに、区域トラックでの貨物積合せが可能となりました。
●貨物自動車運送事業を始めるには、経営許可を取得する必要があります。会社や個人の方から貨物の運送の依頼を受け、自動車を使用して運送し、その対価として運賃や料金を受け取る仕事がこの事業にあたります。
●運送に使用するトラックは小型貨物車(4ナンバーのトラック)、普通貨物車(1ナンバーのトラック)、冷凍食品、石油類などの運送に使用する特種車(8ナンバーのトラック)、またいわゆる軽トラックと呼ばれている軽自動車(40ナンバーのトラック)などを使用して貨物を運送します。
●貨物自動車運送事業に使用する車両のナンバープレート(自動車登録番号標)の色は、軽自動車であれば黒地に黄色の文字、これ以外は緑色地に白文字になっています。通常これらは総称して「営業ナンバー」または、「青ナンバー」と呼ばれ、自家用自動車と区別されています。
●一般貨物自動車運送事業を経営しようとする者は、国土交通大臣の許可を受ける必要があります。実際の書類の提出先は、営業所を管轄する運輸支局に提出します。
●許可の基準は、「事業計画が過労運転の防止その他輸送の安全確保に適切」「事業遂行上適切な計画を有する」「事業を自ら適確に遂行するに足る能力を有する」こととされています。さらに、これに加えて、一般貨物自動車運送事業の許可を受けるためには、貨物自動車運送事業法及び運輸局長が定め公示した基準に適合しなければなりません。この基準は大きくわけて次の項目から構成され、項目毎に細かな基準が定められています。@営業所 A車両数 B事業用自動車 C車庫 D休憩睡眠施設 E運行管理体制 F資金計画 G法令遵守 H損害賠償能力
●この場合、欠格要件は次のとおりです。
・1年以上の懲役または禁錮の刑に処せられ、その執行を終わり、または執行を受けることがなくなった日から2年を経過しない者
・一般貨物自動車運送事業又は特定貨物自動車運送事業の許可の取消しを受け、その取消しの日から2年を経過しない者(当該許可を取り消された者が法人である場合においては、当該取消しに係る聴聞の通知が到達した日前60日以内にその法人の役員であった者で当該取消しの日から2年を経過しないものを含む)。
・営業に関し成年者と同一の能力を有しない未成年者又は成年被後見人であって、その法定代理人が上記2つのいずれかに該当するもの。
・法人であって、その役員のうちに上記3つのいずれかに該当する者のあるもの。

ここで、安中市民としては、当然、次の疑問が生じます。

【疑問その1】
安中市土地開発公社51億円事件で、安中市元職員の多胡邦夫から、多額の横領金を受け取った親族らが設立した運送会社に、なぜ一般貨物自動車運送事業法による許可が出されたのでしょうか?

●貨物自動車運送事業法では、輸送の安全性を確保するため、同法第16条で、「事業の運営方針」「事業の管理体制」「事業の管理方法」「安全統括管理者の選任」からなる安全管理規程等を定めています。

【疑問その2】
今回の処分では、「運行管理者」が処分対象となっていますが、「安全統括管理者」に対しては何も処分がなかったようです。多胡運輸では誰がこの安全統括管理者だったのでしょうか?

【疑問その3】
国土交通大臣は、安全管理規程が前項の規定に適合しないと認めるときは、当該一般貨物自動車運送事業者に対し、これを変更すべきことを命ずることができる(第16条第3項)はずですが、「運行管理者」の一人に過ぎない多胡茂美社長の資格証を返納させただけで、安全管理規定の変更は命じたのでしょうか?

【疑問その4】
国土交通大臣は、安全統括管理者がその職務を怠った場合であって、当該安全統括管理者が引き続きその職務を行うことが輸送の安全の確保に著しく支障を及ぼすおそれがあると認めるときは、一般貨物自動車運送事業者に対し、当該安全統括管理者を解任すべきことを命ずることができる(第16条第7項)はずですが、なぜ「安全統括管理者」については、おとがめがないのでしょうか?

【疑問その5】
多胡社長は、「安全統括管理者」の資格をもっていなかったのでしょうか?

●同法第17条第1項では「一般貨物自動車運送事業者は、事業用自動車の数、荷役その他の事業用自動車の運転に附帯する作業の状況等に応じて必要となる員数の運転者及びその他の従業員の確保、事業用自動車の運転者がその休憩又は睡眠のために利用することができる施設の整備、事業用自動車の運転者の適切な勤務時間及び乗務時間の設定その他事業用自動車の運転者の過労運転を防止するために必要な措置を講じなければならない」、また、第2項では「過積載指示」の禁止について定めてあります。

【疑問その6】
報道によれば「事故を端緒として運輸局が特別監査を行った結果、運転手への指導・監督不足や過労運転の防止義務違反、初任者に対する指導教育が実施されていないなど計8件の違反が分かった」とあります。どうやら過労運転による運転(居眠り運転?)が、横転炎上事故の直接原因であることを示唆していますが、その他の7件と、事故との関係は一体なんだったのでしょうか?
例えば、初任者に対する指導教育不足として、過積載、速度超過、わき見運転などが背景にあったのでしょうか? となると、初心者を運転手として雇用していたのでしょうか?

●同法第18条は「一般貨物自動車運送事業者は、事業用自動車の運行の安全の確保に関する業務を行わせるため、国土交通省令で定めるところにより、運行管理者資格者証の交付を受けている者のうちから、運行管理者を選任しなければならない」と定めています。この運行管理者資格者証は、「運行管理者試験の合格者」で「運行の安全確保に関する業務について国土交通省令で定める一定の実務の経験その他の要件を備える者」に交付されています。また、同条第2項では、「運行管理者資格者証」は返納を命ぜられて2年以内の者や、この法律に違反したり、この法律の規定により罰金以上の刑に処せられ、その執行を終わり、又はその執行を受けることがなくなった日から2年以内の者には交付しないとあります。

【疑問その7】
となると、多胡社長は、平成22年10月11日に、運航管理者資格証を再交付されることになります。あれだけの事故を起こしておきながら、運行管理者の一人の多胡社長だけが、2年間、運行管理者になれないだけで、事がすまされるのでしょうか?

●同法第20条は「国土交通大臣は、運行管理者資格者証の交付を受けている者がこの法律若しくはこの法律に基づく命令又はこれらに基づく処分に違反したときは、その運行管理者資格者証の返納を命ずることができる」と定めています。同法第22条第3項では「一般貨物自動車運送事業者は、運行管理者がその業務として行う助言を尊重しなければならず、事業用自動車の運転者その他の従業員は、運行管理者がその業務として行う指導に従わなければならない」とあります。

【疑問その8】
運送事業者の多胡社長は、運行管理者である自分に対して、必要な権限を与えていたにもかかわらず、このような大事故を引き起こしたわけだから、運送事業者としての責任は重大だと考えられる。しかし、多胡社長は、単なる「運行管理者」としての資格剥奪だけで処分が済まされたのはなぜでしょうか?

【疑問その9】
また、運送事業者(=多胡運輸)としては、多胡社長の運行管理者資格者証を取上げられても、この資格を持っている従業員の中から管理者を選任すれば、従来どおり営業が可能ということになるのでしょうか?

●同法第24条では「事故の報告」として、「一般貨物自動車運送事業者は、その事業用自動車が転覆し、火災を起こし、その他国土交通省令で定める重大な事故を引き起こしたときは、遅滞なく、事故の種類、原因その他国土交通省令で定める事項を国土交通大臣に届け出なければならない。」と定めています。

【疑問その10】
多胡運輸がこの法律を守っているすれば(国交省はこの件では多胡運輸を処分していない模様)、いつ、どのような原因で事故が発生したのか、国交省はきちんと把握しているものと見られます。いまになっても未公表なのはなぜでしょうか?

●同法第24条の2では「国土交通大臣は、毎年度、第23条の規定による命令に係る事項、前条の規定による届出に係る事項その他の国土交通省令で定める輸送の安全にかかわる情報を整理し、これを公表するものとする。」とあります。また同法第24条の3では「一般貨物自動車運送事業者は、国土交通省令で定めるところにより、輸送の安全を確保するために講じた措置及び講じようとする措置その他の国土交通省令で定める輸送の安全にかかわる情報を公表しなければならない」とあります。

【疑問その11】
国交省に聞いてみたいのですが、これまでに多胡運輸は、輸送の安全について何か公表した形跡があるのでしょうか?

●同法第26条は「国土交通大臣は、一般貨物自動車運送事業の適正かつ合理的な運営を確保するため必要があると認めるときは、一般貨物自動車運送事業者に対し、次に掲げる事項を命ずることができる。
 1.事業計画を変更すること。
 2.運送約款を変更すること。
 3.自動車その他の輸送施設に関し改善措置を講ずること。
 4.貨物の運送に関し生じた損害を賠償するために必要な金額を担保することができる保険契約を締結すること。
 5.運賃又は料金が利用者の利便その他公共の利益を阻害している事実があると認められる場合において、当該運賃又は料金を変更すること。
 6.前各号に掲げるもののほか、荷主の利便を害している事実がある場合その他事業の適正な運営が著しく阻害されていると認められる場合において、事業の運営を改善するために必要な措置を執ること。」と定めています。

【疑問その12】
今回の大事故を踏まえて、国交省は多胡運輸にどんな改善命令を出したのでしょうか? その内容は公表されるのでしょうか?

●同法第33条は資格の取消について定めています。「国土交通大臣は、一般貨物自動車運送事業者がこの法律若しくはこの法律に基づく命令等、若しくは道路運送法の規定による処分又は許可若しくは認可に付した条件に違反のいずれかに該当するときは、6月以内において期間を定めて自動車その他の輸送施設の当該事業のための使用の停止若しくは事業の全部若しくは一部の停止を命じ、又は第3条の許可を取り消すことができる。」

【疑問その13】
事業免許の取り消しや停止などの処分に至らなかった理由について、同運輸局は「事故の死亡者はおらず、運転者に飲酒などの悪質行為がなかったため」としています。ということは、大事故であっても経済・社会・生活等に及ぼす影響は考慮の対象外、ということになり、今後、これが前例となるのでしょうか?

■このように、事故発生直後の8月5日に、無通告で行なわれた多胡運輸への特別立入監査の結果、仰天するほど甘い行政処分が出されました。この状況は、13年前の安中市土地開発公社51億円事件で、長期間、多数の関係者が関与したにもかかわらず、結局、元職員ただ一人だけが逮捕起訴されたときの、安中市役所周辺に渦巻いた安堵の声を想起させます。
10月14日に迫った首都高の完全復旧を目前にした現時点で、多胡関係者としての次なる最大の関門は、巨額の損害賠償請求をどうやって乗り切るか、今回の行政処分が「想定内」だったことから、次の関門に向けて、大いに自信を深めていることでしょう。
ちなみに、当会が9月28日付けで首都高速道路会社に出した「多胡運輸への請求金額」に関する保有情報開示請求の回答は、まだ来ていません。

■この処分が出た翌日の10月11日(土)、多胡運輸の事務所には照明が輝き、整備庫では点検清掃作業らしく、圧縮エアの音が響いていました。いつもは敷地内にすき間なく駐車してあるローリーやトラックも、何台か稼動中らしく、空きスペースが見られました。行政処分を難なくクリアした多胡運輸の目下の関心事は、巨額と目される損害賠償請求への対応ですが、国交省が事業停止や免許取消処分を出さなかったことは、我々の知らないところで、多胡運輸存続に関する何らかの措置がなされていることをうかがわせます。
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また、出光興産やその関連会社の業務を多胡運輸に孫請けさせていた元請会社も、事務所内には煌々と照明が灯り、関係者の出入りが頻繁に行なわれていました。
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【ひらく会特別調査班】
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