2014/12/31  8:43

大同有毒スラグ問題を斬る!…大同スラグ問題の根源を分かり易くまとめた12月30日付毎日新聞記事  スラグ不法投棄問題


■とうとう年を越すことになった大同有毒スラグ問題ですが、この事件に積極的に取り組んできた毎日新聞が、年末の12月30日に、この問題の根源を分かり易くまとめた記事を掲載しました。↓
http://mainichi.jp/shimen/news/20141230ddm003040044000c.html


**********毎日新聞 2014年12月30日 東京朝刊
クローズアップ2014:広がる有害スラグ 根深いリサイクル偽装
 八ッ場(やんば)ダム(群馬県長野原町)の移転代替地の整備工事などで有害物質を含む建設資材「鉄鋼スラグ」が使われていた。国土交通省が26日に公表した分析結果では、スラグ使用の疑いがある国発注の56工事のうち27工事で環境基準を超える六価クロムなどが検出された。スラグを巡っては過去にもトラブルが繰り返されており、その背景に本来は産業廃棄物であるスラグの再利用を巡る「リサイクル偽装」とも言える構造的な問題が浮かぶ。【杉本修作】

◇「手数料」付け販売
 問題となったスラグは、大手鉄鋼メーカー・大同特殊鋼(名古屋市)の渋川工場(群馬県渋川市)から排出され、その大半を渋川市の建設会社が販売または自社の工事に利用したとみられる。スラグは本来、環境基準を下回っていることを前提に道路の路盤材などに許可を得て使用できる。だが今回は、群馬県内の公園や駐車場で使われたスラグから基準を超える有害物質が次々と検出され、本来使用が認められていない宅地にも使われていた。
 スラグは鉄精製時に出る副産物で、石や砂利の形状をしている。さまざまな化学物質が残存することがあり、そのままでは廃棄物処理法上の産業廃棄物となる。一方で、建設資材などとして以前から再利用され、1991年施行の「再生資源の利用の促進に関する法律」(リサイクル法)でも指定対象となった。
 大同の渋川工場も90年代半ばからスラグの製品化を始め、最盛期で年間2万トンを建設資材として出荷した。だが、毎日新聞が入手した2009年の売買契約書によると、大同側は渋川市の建設会社に1トン当たり100円で販売しながら「販売管理費」として1トン当たり250円以上(出荷量に応じて変動)を支払っていた。製品を売る側が販売額以上の費用を別の名目で支払うこうした取引は「逆有償取引」と呼ばれる。
 スラグを廃棄物として処分するには遮水などの管理が必要で、1トン当たり2万〜3万円の費用がかかるとされるが、逆有償取引なら輸送費などを負担しても同数千円程度とみられ、格段に安価だ。一方、買い取る側は購入した分だけ逆に収入が増えるため、適正な使途のあてがないのに取引を続けることになりかねない。渋川市の建設会社OBは「大同から『スラグを取りに来い』と言われれば全て引き受けた。使い道がないから許可されていない工事にも使わざるを得なかった」と証言する。
 逆有償取引は07年、山陽特殊製鋼(兵庫県姫路市)でも発覚し、リサイクル販売とされた約10万トンのスラグが淡路島で野積みのまま放置されていた。山陽は買い取り業者に運搬費など1億数千万円を支払ったとみられるが、仮に全量を廃棄物として処分していれば20億〜30億円の費用がかかった計算だ。
 スラグは原材料の3〜4割、年間約4000万トン生成されているが、鉄鋼スラグ協会(東京都中央区)のまとめによると、99%が再利用され、廃棄物などの埋め立て処分はほとんどないとしている。再利用の約半分を占めるセメント製造は100年以上の実績がある一方、近年は路盤材などの「逆有償取引」が繰り返されている。ある製鉄関係者は「スラグを廃棄物処分すれば鉄鋼価格に反映され国際競争力は保てない」と打ち明け、「リサイクル偽装」の根深さを示唆した。

◇格安、行政にもメリット
 有害スラグの拡散を生んだ別の理由として、建設業界からは行政の不作為を指摘する声も少なくない。
 スラグを使った建設資材は元手があまりかからず、競合する別の資材と比べて価格が3〜4割ほど安いとされ、費用を抑えたい自治体にとっては「渡りに船」という。群馬県では10年6月に県内工事での使用が認められたのを機に、市町村や国の出先機関で利用が広まった。だが、行政による資材の検査は行われず、安全管理は業者任せだった。
 スラグ以外の資材を扱う業者は「あれだけ安く売られたら勝負にならない。行政もそのことを知りながら(有害物質拡散の懸念を)放置していた」と憤る。
 26日に国交省が公表した調査結果に対しては、八ッ場ダム移転代替地の住民に国への不信感ものぞく。今回調査された無許可の56工事の大半は国の管理地で、住民に分譲された土地については「調査に地権者の同意が必要」だとして、一部しか行われなかった。
 ある住民は毎日新聞が八ッ場ダムの問題を報じた8月以降、国交省八ッ場ダム工事事務所の担当者が住民説明会で「住宅地にスラグは使われていない」と強調していたと証言。宅地の下にスラグが使用されていれば土壌や住民の健康に影響を及ぼす可能性もある上、撤去も困難だ。26日の国交省関東地方整備局による記者会見でも担当者は「使われたのは家の下ではなく敷地内。庭の一部」と強調し、影響を最小限に抑えたいとの思惑が垣間見える。長野原町の70代男性は「国が調査結果を公表しても、それだけでスラグの使用がとどまるとは思えない。調査で幕引きしようとしている」と危機感を募らせる。
 一方、スラグを取り扱った渋川市の建設会社は、群馬県以外に長野県などで工事を受注しており、そうした工事に有害スラグが利用された可能性も否定できない。環境問題に詳しい粕谷志郎・岐阜大名誉教授(環境生態学)は「行政は安全管理を業者任せにせず、汚染防止に主体的に取り組むべきで、スラグについても問題がある以上、使用されている資材を徹底して調査すべきだ」と話している。
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◇鉄鋼スラグを巡る主な事件やトラブル
2005年
 7月 「神鋼スラグ製品」(神戸市)が親会社の神戸製鋼からスラグを買い取った価格が通常より高く、親会社に所得を移転したとして大阪国税局が所得隠しと認定していたことが発覚
10月 JFEスチール東日本製鉄所千葉地区(千葉市)で、スラグの堆積(たいせき)場から汚染水が海に流出しながら水質測定データを改ざんしたとして社員3人を水質汚濁防止法違反で略式起訴
2007年
 8月 山陽特殊製鋼(兵庫県姫路市)がスラグをリサイクル販売した形を取りながら引き取った業者に販売額以上の運搬費などを支払う「逆有償取引」を行っていたことが判明。スラグは野積みされ健康被害を訴える苦情が相次ぎ、山陽が自社で撤去
2010年
 2月 新日鉄名古屋製鉄所(愛知県東海市)でスラグを積んだ敷地内から高アルカリ水が名古屋港に流出していたことが発覚
2014年
 1月 大同特殊鋼(名古屋市)の渋川工場(群馬県渋川市)でスラグの逆有償取引が判明。群馬県が同社を立ち入り検査
 8月 八ッ場ダム(同県長野原町)の移転代替地でも大同渋川工場から出たとみられる有害スラグが使用されたことを毎日新聞が報じる
10月 名古屋市上下水道局が発注した水道管の取り換え工事で特定の数社が請け負った約220カ所で道路が盛り上がるなどのトラブルが生じていたことが判明。埋め戻し材にスラグが使われ、水を吸って膨らんだためとみられる
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■この記事には重要な指摘が含まれています。市民オンブズマン群馬では、2014年3月の例会でこの事件の問題点について、会員から報告を受けた後、さまざまな角度からこの事件の実態解明に取り組んできました。その分析結果に照らしても、この記事の指摘した問題点があらためて浮き彫りになっています。

その1:逆有償取引
 この事件では、2014年1月27日の群馬県環境森林部廃棄物リサイクル課による大同特殊鋼渋川工場の立入検査時に逆有償取引の実態が把握されていました。この時点で、大同有毒スラグはリサイクル法対象品ではなく、産業廃棄物(サンパイ)であることは明らかでした。
 にもかかわらず、群馬県県土整備部では、有毒スラグが天然砕石と混合された状態では環境基準を下回っているとして、勝手に安全宣言をしてサンパイ不法投棄を合法化しようとやっきになっていました。
 さらには農政部農村整備課も、本来、安全な営農環境が優先される圃場整備で有毒スラグが使用されていても、急遽簡易舗装で杜撰に蓋をするだけで済まそうとしました。
 これは明らかに環境森林部よりも県土整備部のほうが、群馬県行政において権勢をふるっている証拠です。つまり群馬県は、県民の安全より特定業者の利益を優先する体質であることがわかります。
 一方、逆有償取引の相手先である佐藤建設工業は、大同有毒スラグを引き取れば引き取るほど大同特殊鋼から手数料がもらえるため、いったん有毒スラグの逆有償取引の味を覚えると、麻薬患者のようにやめられなくなりました。そして、“麻薬”を提供する大同特殊鋼側も、佐藤建設工業が麻薬漬けになるのを止めるどころか、麻薬患者の要求を幸いとして、どんどん有毒スラグを与えていたのです。
 このように行政と企業のモラル欠如が、この大同有毒スラグ問題をこれほどまでに拡大させてきた要因のひとつであることは明らかです。

その2:鉄鋼業界ぐるみの体質
 当会のブログには、大同有毒スラグ問題の記事に、日本鉄鋼協会をはじめ、全国のほとんどの鉄鋼メーカーがアクセスしてきています。この問題に対する業界関係者の関心の高さを示しています。とくに山陽特殊鋼は熱心にこの事件の経緯をチェックしています。

 なぜなら、毎日新聞記事にある通り、山陽特殊鋼が2006年に兵庫県内の業者に販売した「鉄鋼スラグ」約10万トンが1年近く、同県の淡路島の山間部2カ所に野積みされていることがわかり、周辺住民の苦情を受けた兵庫県が指導し、同製鋼は2007年からスラグの回収を始めた経緯があるからです。

 この事件では、山陽特殊鋼は、鉄鋼スラグを「製品として販売した」と主張ましたが、販売先の業者に売値を上回る運搬費を支払っていた疑いもあり、兵庫県は「産業廃棄物」の可能性もあるとして調査しました。

 このほか、山陽特殊製鋼では2012年9月5日に金属くずの不法投棄事件による廃棄物処理法違反容疑で、兵庫県警と姫路警察署の家宅捜査を受けた経緯があるからです。また、家宅捜査に先立ち、成臨興行が運営する宮ヶ谷処分場を運営する成臨興業と前社長が同年8月13日に刑事告発されました。↓
http://pink.ap.teacup.com/ogawaken/851.html
 こうした事件が後を絶たないのは、業界のまとめ役である鉄鋼スラグ協会が、きちんと再発防止策をとらないことも大きな原因と言えます。オンブズマンの公開質問状に対して、鉄鋼スラグ協会は「機密保持のためノーコメント」という回答を寄せているからです。↓
http://pink.ap.teacup.com/ogawaken/1351.html

 毎日新聞記事でも、鉄鋼スラグ協会の「鉄鋼スラグの99%が再利用され、廃棄物などの埋め立て処分はほとんどない」というコメントと、「スラグを廃棄物処分すれば鉄鋼価格に反映され国際競争力は保てない」とする製鉄業界関係者の話を引用しています。国際競争力を保つには、有害物質を出さない製鉄技術を磨くのが本来の姿ですが、そうした技術開発に投じる資金を出し渋るのでは、すでに国際競争力を失っていることになります。

その3 格安資材で公共事業から不当利益
 毎日新聞記事の指摘の中で、特に秀逸なのは、有害スラグの拡散を生んだ別の理由として、行政の不作為を挙げていることです。

 不思議なのは、群馬県行政が、有毒スラグの利用をなし崩し的に実績として認め、本来のリサイクル品である再生砕石と同等品の扱いを認めて文書で県内の行政関係者に通達を出していたことです。他の都道府県ではこれほどまでに特定の業者を優遇する通達は出せないでしょう。群馬県ならではの異常な行為です。しかも、本来コストのかかるリサイクル品の調達にもかかわらず、サンパイである有毒スラグの利活用を率先して群馬県行政が宣言してくれるのですから、これを調達して公共事業に使用すれば、特定業者にはベラボーな利益が転がり込むことになります。

 こうした違法な資材がお墨付きを得て、堂々と公共事業で使用されていたのですから、排出者の大同特殊鋼・大同エコメット・丸太運輸はもとより、独占取引相手の佐藤建設工業、そして佐藤建設工業から有毒スラグ購入資材を大量に調達していた池原工業など、八ッ場ダム工事や上部国道建設工事関連銘柄の土建業者には莫大なメリットがあったはずです。

 その結果、この恩恵に浴した業者らから、地元の保守系政治家らに対して政治献金が行われ、行政による有毒スラグの使用をさらに後押し結果となり、政・官・業の癒着が一層ひどくなってしまい、有害物質の県土拡散に拍車がかかりました。

■こうした違法不当な公金搾取にもかかわらず、群馬県や国交省、渋川市など行政関係者が、真相解明をするどころか、問題を矮小化して幕引きをしようと躍起になってきた現状を見るにつけ、この国の役人の本質が、住民の安全、安心な生活を重視する立場ではなく、特定業者の利益重視にあることを痛感させられます。

 来る2015年早々には、群馬県行政が汚名挽回として、環境森林部廃棄物リサイクル課がこの事件の関係者を対象に、きちんと廃棄物処理法に基づき群馬県警に告発しなければなりません。さもないと、群馬県の環境行政の本質も、県土整備部や農政課と同じ穴のムジナであることを証明する結果になってしまいます。

【市民オンブズマン群馬・大同有毒スラグ不法投棄調査チーム・この項続く】


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