2014/12/30  22:23

隣りの大国インドに比べ、格段に居心地の良い島国スリランカ(その3)  国内外からのトピックス

■スリランカの現在の大統領はマヒンダ・ラジャパクサで2005年11月19日に第6代目の大統領に就任し、現在2期目ですが、突然、スリランカの選挙管理委員会は2014年11月21日、大統領選を来年1月8日に行うと発表しました。ラジャパクサ大統領の与党、スリランカ自由党(SLFP)の事務局長で保健相のマイトリパラ・シリセナは同日11月21日、3選を目指すラジャパクサの対立候補として出馬することを表明し、大統領は与党内の離反に遭う形となりました。
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仏教国だが旧宗主国が英国だけにクリスマスも盛大に祝う。


 ロイター通信によると、シリセナ候補は保健相を辞任し、「1つの家族が経済、権力、政党を支配してきた」、「この国は独裁政治に向かっている」と、ラジャパクサを批判しました。ラジャパクサは、兄弟を閣僚や国防次官、議会議長に据えるなど親類で権力を固める縁故主義を批判されていたのです。シリセナ候補に対しては、自由党前党首のクマラトゥンガ前大統領が支持を表明しています。

 この伏線として、スリランカ議会は2010年、大統領の3選禁止条項を撤廃する憲法改正案を可決しました。ラジャパクサ大統領の任期を2016年11月まで、2年間残していましたが、権力基盤が強固な今のうちに3選を目指したとみられています。なにやら、どこかの国で先月行われた国政選挙のような経緯です。

■26年間に亘った内戦を2009年に終結させ、和平をもたらしたマヒンダ・ラジャパクサ大統領は、その功績が支持され2010年に大統領に再選されていました。それまでスリランカの憲法では、「大統領は3期以上連続してその職を務めることができない」旨定められていましたが、再選後ラジャパクサ自身が憲法に修正を加え、3期目の出馬を可能にしたのです。

 内戦は確かに終結しましたが、ラジャパクサ大統領が再選当時、人々に期待された民族間対立の解決は、期待どおりには進んでいません。ラジャパクサは内戦の終結宣言の際に、シンハラ語に加えてタミル語でも演説をし、両民族の融和を呼びかけましたが、現時点では、依然としてタミル人の要求を抑圧する形で、表面上の平和が維持されているというのが現況です。

 事実、北部の広大な平地は、高度警戒地域として、政府軍の監視下にあり、現在も北部地域には10万人の兵士が駐屯しているといわれています。また、政府軍、LTTE軍が行った、戦争犯罪に関する外部調査実施を求める国連人権委員会の採択に対して、スリランカ政府は再三にわたり協力を拒否しており、いまだにスリランカ国内への調査団の派遣は実現していません。

 こうした欧米側の論理に対して反発するスリランカ政府に対して、援助の手を差し伸べたのが中国でした。特に、内戦の最終章でLTTEに勝利した現大統領のラジャパクサにとって、中国等からの武器の提供は、渡りに船であり、中国に対して大きく外交の軸足を移しており、わずか数年で、出身地であるスリランカ南部のハンバントータに、巨大な商業港と国際空港を中国の借款で建設中です。

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完成予想図。現在第2期工事中。最終的に第3期工事まで続く。

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現在の地形に計画図を重ねた地図。中国語がこの計画者が誰かを示している。

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第1期工事が完成した2012年6月から運用を開始したハンバントータ港のRORO埠頭。2014年1月から12月までに埠頭に接岸した自動車運搬船は254隻(前年137台)で荷揚げされた自動車は188,791台(前年64,524台)と急増。

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第2期工事中のハンバントータ港。

■前述のような経緯により、スリランカでは2015年1月8日に、大統領選挙が行われます。現時点では、現職のラジャパクサが勝利するのか、それとも対立候補のシリセナ候補が勝利するのか、全く予断を許さない状況にあります。

 このため、スリランカ国中で、大統領選挙に向けて至る所で、現職大統領のラジャパクサの広報ポスターが張り出されています。一方、対立候補のシリセナ候補のポスターは、それにくらべるとほとんど目にしません。

 とくに、政府系の機関の施設の前には、堂々と現職大統領のポスターがデカデカと張り出されており、現職の権限を十分に行使して、選挙戦を有利に展開しようとする現職の思惑を強く感じさせられます。
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首都コロンボの国家エンジニアリング会社の前の現職大統領の選挙ポスター。

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日本のポスターとは比較にならないほど、サイズも数も多い選挙ポスター。

■ラジャパクサが大統領に就任してから約10年が経過しました。その間に、ラジャパクサ一族への財力と権力の集中が目立ち、他方、物価上昇による暮らしへの圧迫で、大統領の人気に陰りが見え始めていました。そこで、ラジャパクサ大統領は、自らの支持母体である農村部のシンハラ人達の支持率が落ちないうちに、選挙を行って三選を確保しようとする動きが見られるようになりました。そのため、2014年半ばから、2015年初頭に選挙を実施するのではないか、という噂が立ちはじめました。

 この背景として、2014年9月20日に行われたセイロン山脈東部のウバ州議会選挙の結果が、与党スリランカ自由党(SLFP)の辛勝(バトゥッラ県:SLFP47.99%=9議席、UNO45.38%=8議席、JVP1.16%=1議席、モノラーガナ県:SLFP58.68%=8議席、UNP32.11%=5議席JV6.63%=1議席)だったことも、大統領選挙実施の動きを促したと見られています。

■3期目を狙うラジャパクサに対し、当初、最大野党の統一国民党(UNP)には対抗できる候補がおらず、誰を対立候補として擁立するか、水面下の模索が続けられていました。そして、2014年11月21日に選挙日程が決定され、大統領が自らの出馬を表明した直後に、SLFPの幹事長で現政権の保健大臣だったシリセナが、UNPの支持を得て対立候補として立候補を表明したのです。

 この突然の出馬表明の背景には、ラジャパクサに政権を譲って依頼、現政権批判の立場をとっていた前大統領(女性)のチャンドリカ・クマラトゥンガが、シリセナの決断を促したと見られています。シリセナの立候補表明は大統領にも事前連絡がなく、与党連合側には衝撃が走りました。

 シリセナをはじめとする数人の大臣、議員たちは、大統領に過度の権力が集中し、3期目の出馬をはじめ、様々な決定が大統領の独断で決められるシステムになっていること、政権の要職がラジャパクサ一族に占められており、誰も彼らの判断に意見できないことを厳しく批判しています。

 現地NPOによれば、ラジャパクサが3選出馬を表明した11月末以降、1週間で既に10人の与党連合所属の現職大臣、国会議員が対立候補側に付いており、州議会、村落議会のレベルでも鞍替えをする議員が出ています。これまで与党連合に加わっていた、強硬なシンハラナショナリズムで知られる仏教政党、国民遺産党(JHU)も対立候補の支持を表明する一方、UNPから鞍替えをして大統領支持に回る議員も出るなど、混沌とした情勢になっています。

 事実、現地の役人の本音を聞くと、どっちが大統領になってもよいように、双方の陣営に支援を申し出ているのだそうです。

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各地の沿道で見かけた対立候補の集会。

 このため、大統領選が行われる2015年1月8日と9日は、現地在住の日本人は外出を控えるよう日本大使館官から通達が出されています。

■ラジャパクサ大統領は2014年9月頃から、選挙対策と分かるキャンペーンを全国各地で始めています。10月には、24年ぶりのコロンボ−ジャフナ間の鉄道運転再開が大統領の参加の下、新ジャフナ駅で盛大に行われました。

 この北部訪問中に、大統領は、北部州に住む2万世帯への土地所有権の分配や、内戦中にLTTE銀行に質として預け入れられ、戦後は政府が管理していた貴金属の一部返還などを人びとに約束したりしました。

 また、政府職員へのバイクの割引販売、公共バスの新しい車体の導入なども各地で実施され、大統領は現政権が行っている開発面、生活面での社会の改善を強調しています。選挙日程決定後に国会を通過した2015年度予算は、政府職員の俸給増額、民間の最低賃金増額、付加価値税の減額、水道・電気料金の減額などが盛り込まれており、票を取るための「ばらまき」とも指摘されています。

 こうした動きの中にあって、タミル人代表のタミル国民同盟(TNA)は、どちらの候補を支持するか、立場を正式表明していません。TNAが支持条件として提示しているのは、内戦中の1987年に定められた第13次憲法修正に基づき、北部州、東部州への警察権と土地の管理権を移譲することや、民族対立の解決、北部における政府軍の規模縮小、自らの土地に戻れない人々の帰還保証などが含まれています。

 これらの条件は、2013年9月にTNA率いる北部州議会が誕生した際にも、TNAが人々に実現を約束したものの、ラジャパクサ政権は結局権限の移譲を拒否し、いまだに実現されていないものです。人口の5%にのぼり約100万票の支持基盤を持つといわれるTNAの動向は、選挙の勝敗を左右するため見過ごすことのできない要素ですが、どちらの候補にとっても、この条件を承諾することは、シンハラ人支持層からの反発が必至で非常に難しい選択となるため、ためらわざるを得ないようです。

■このように来る1月8日のスリランカ大統領選挙は波乱含みの中、実施されますので注視していきたいと思います。

【ひらく会・海外取材班・この項続く】
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