2014年4月の安中市長選のなりすまし投票事件の被疑者らが不起訴処分となった経緯と背景に関する一考察  安中市長選挙

■あと1か月余りで統一地方選が始まりますが、安中市では昨年4月14日に市長選挙が行われました。当会は選挙違反撲滅を目指して尽力しましたが、残念ながら投開票日の午後5時過ぎになって、なりすまし投票事件が発生してしまいました。この事件については、当会の次のブログでも報告済みですが、当時の地元紙の報道記事を見てみましょう。
※参考情報
安中市長選挙・・・戦い終わって夜が明けて(その1)・・・なりすまし投票事件(平成26年4月15日)↓
http://pink.ap.teacup.com/ogawaken/1268.html
なりすまし投票が発覚したのに告訴しようとしない安中市選管に代わり当会が告発状を安中署に提出(平成26年4月24日)↓
http://pink.ap.teacup.com/ogawaken/1278.html


**********毎日新聞 2014年04月15日 地方版
詐欺投票:安中市長選 他人の入場券でなりすまし投票 市選管が署に情報提供 /群馬
 安中市選管は14日、市長選で他人の投票所入場券を使って詐偽投票(なりすまし投票)した疑いが2人あり、安中署に情報提供したと発表した。
 市選管によると、市内の投票所で13日、投票した男女各1人について、投票後に立会人が本人でないことに気づいて指摘。14日に調査したところ本人でないことが確認されたという。
 この結果、13日に発表した投票者数を2人減らし、投票率を55・26%から55・25%に訂正。投じられた票は有効となり、候補者2人の得票は変わらない。不受理・持ち帰りを「マイナス2」として投票者数との差を調整した。
 詐偽投票は公職選挙法で禁じられ、最高刑は2年以下の禁錮または30万円以下の罰金。安中署が同法違反容疑で捜査している。【増田勝彦】
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 当会の事務局長は安中市北野殿地区に在住していますが、選挙後に地元住民が集う席で、前市長を支援する住民らと、現市長を支援する住民らから、公選法違反のこのなりすまし事件について、真相を調査してほしいと依頼されました。なぜなら、昨年の市長選に立候補した現職(当時)の岡田義弘候補も、新人の茂木英子候補もともに北野殿地区在住だからです。

 おそらく、このなりすまし投票事件は、両候補の支援者ともに、相手側陣営が絡んでいると見ていたに違いありません。また、こうした事件の調査については、行政関係の不祥事を長年追及してきた市民団体として、当会が最も頼りになると判断したのかもしれません。

 それぞれの支援者らからの強い要請を受けて、当会はさっそく安中市選挙管理委員会を訪れて、選挙違反行為について、きちんと警察に「容疑者を厳罰に処してほしい」とする告訴状あるいは告発状を提出したのか、訊ねました。すると、選管幹部は「安中署に通報しただけ」であることがわかりました。これでは、不十分なので、当会では告発状をさっそく作成して、安中署の刑事課に持参し、告発の意義を説明したのち、告発状を受理するように高柳課長にお願いしました。

 すると課長は「既に安中市選管から連絡を受けて捜査をしている」として、あらためて告発をしてもらわなくても、実質的に捜査が進んでいるので、当会の告発状を「参考までにコピーをとらせてほしい」というだけで、正式に受理しようとはしませんでした。

 そのため当会では「選管は公選法違反の情報を警察に提供しただけであり、容疑者を厳罰に処してほしいと警察に申し入れていないため、きちんとけじめをつけるべく、こうして告発状として提出しますのでぜひ受理を検討してください」と強く何度もお願いしました。しかし、警察では、受理をすると、捜査に着手して結果を出さなければならない、という“義務”が生じることを嫌気して、いつものように当会の告発状を受取ろうとしませんでした。

■その後何の音沙汰もないことから、当会では平成26年8月12日に安中市役所を訪れて、安中市選管の幹部に「警察の捜査の進展状況や結果について、何か連絡は来ていますか?」と尋ねたところ、「何にも連絡がない」とのことでした。そのため、当会では再度直接話を聞くために安中署の2階にある刑事課を訪れて、刑事課長から話を聞こうとしました。

 高柳課長に捜査の様子と結果について尋ねたところ、捜査情報に関する守秘義務を慮っているのか、極めて口が重い様子が見て取れました。そこで、当会は「今回のなりすまし投票では、容疑者は、全く公選法を知らずに違反行為をしてしまっただけなのか、それとも、故意に公選法違反をしたのか、せめて、前者なのか後者なのかだけでも教えてください」と強くお願いをしました。

 「もし、口に出してお答えしにくいのであれば、この指をこちら側に倒したら前者が理由ということでウインクを、反対側に倒したら後者が理由だということで片目をつぶってくださいませんか?」と持ち掛けましたが、やはり応じてもらえませんでした。それでも執拗に刑事課長に質問し続けたところ、さすがに根をあげたらしく、「既に地検の方に結果を伝えてあるので、そちらに聞いてほしい」と答えました。

■そこで、さっそく前橋地検に赴き、1階の受付で事情を説明したところ、「今担当官に連絡するから、控室で待機してほしい」と言われました。

 そして待つこと約20分。現れたのは若手の検事と思しき男女2名でした。

 開口一番、彼らが発した言葉に思わず絶句してしまいました。彼らは次のように述べたからです。

 「大変お待たせしました。今回の来訪の目的は今年の4月に行われた安中市長選の投票日に起きたなりすまし投票についてですね。ところで、小川さんは告発状を提出しようとされたらしいが、警察に受理されていないとお聞きしている。告発者でない者に対して、捜査情報は伝える義務も責務もありません」

 驚きました。安中市選管が告発しないので、当会が市選管に代わって告発状をしたためて、安中署に提出しようとしたのに、安中署は「既に捜査を実施しているから、事実上告発状を受けたようなものだ」として、のらりくらりとした挙句に、コピーだけとって、原本を戻してきたのですが、検察はその一連の流れについて「(当会からの)告発状は安中署に受理されないので、告発者には捜査情報を伝えなくても問題ない」という解釈で幕引きを図ったのです。これでは、誰も選挙違反行為を目にしても、告発するものはいなくなってしまうでしょう。

 あまりのショックで、当会では「告発状で容疑者を厳罰に処してほしいと願ったが、捜査状況について、進捗状況も結果についても何も教えてもらえないとなると、事件のことについて当方の憶測を交えて分析せざるを得ません。それでもいいですね」と念押しをしました。それに対しても確たる返事がなかったので、今回のなりすまし投票の経緯について、両方の候補者を支援するかたがたに、当会の推測に基づいて報告せざるを得ない状況に陥りました。

■その後、しばらくこの件から遠ざかっていたところ、平成26年12月6日に、地元の新聞に次の記事が報じられました。

**********上毛新聞2014年12月6日(土) AM 09:00
なりすまし投票容疑 男女3人を書類送検 安中市長選
◎地検は不起訴処分に
 ことし4月の安中市長選で、投票所入場券が不正に使われた問題で、他人になりすまして投票したなどとして、群馬県警が公選法違反の疑いで、同市などの若い男女3人を前橋地検に書類送検していたことが5日、捜査関係者への取材で分かった。地検は同日までに不起訴処分にしたが、内容は明らかにしていない
 市長選を巡っては、投開票日の4月13日午後5時ごろ、市内の投票所が「本人と面識がある立会人から『違う人が投票していた』と報告があった」と、市選管に連絡した。選管はその後、入場券の持ち主2人が投票に行っていなかったことを確認した。
 選管は、他人の入場券で男女2人が投票していたと公表するとともに、なりすまし投票の可能性が高いとして安中署に通報。同署が捜査を進めていた。
 県内では2001年、前橋市議選で他人の氏名をかたって不在者投票を行って逮捕されたケースがある。
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■この記事を見てあらためて驚きました。警察がきちんと容疑者らを取り調べて送検したのに、前橋地検は嫌疑不十分?で不起訴にしたのです。しかも、当会に対して平成26年8月に「(なりすまし投票事件の捜査状況については一切)ノーコメント」と言ったのと同様に、マスコミにも不起訴の内容を明かしませんでした。

 今から思えば、昨年8月12日までに、前橋地検は既にこの事件の容疑者らについて、不起訴処分を決定していたのかもしれません。

 たしかに検察官には、被疑者を起訴するか不起訴にするかを決める権限があります。捜査の結果に基づいて、場合によっては、不起訴処分となり、身体拘束を受けている場合は、釈放されることになります。 この際、@「嫌疑なし」は、被疑者が罪を犯したとの疑いがないこと、あるいはA「嫌疑不十分」は、被疑者が罪を犯したとの疑いが十分でないこと、と判断する場合には、起訴しません。また、嫌疑が十分あっても、犯人の性格、年齢及び境遇、犯罪の軽重及び情状、犯罪後の情況といったさまざまな事情に照らして、あえて起訴する必要はないと考えるときには「起訴猶予」にすることができます。

 被疑者を起訴するか、不起訴にするかを決める権限は検察官だけが持っています。「起訴」とは、検察官が特定の刑事事件について、裁判所の審判を求める意思表示のことです。検察官に起訴されると、捜査段階から裁判手続きに移行し、被疑者は被告人の立場となります。

 一方、検察官が、裁判所の審判を求める必要がない、と判断した場合には、「不起訴」となり、身体拘束を受けている場合は、釈放されます。

■「不起訴」は,その理由に応じて、@「嫌疑なし」、A「嫌疑不十分」、B「起訴猶予」の3種類に分類されます。

@「嫌疑なし」:捜査の結果、被疑者に対する犯罪の疑いが晴れた場合。
A「嫌疑不十分」:捜査の結果、犯罪の疑いは完全には晴れないものの、裁判において有罪の証明をするのが困難と考えられる場合。
B「起訴猶予」:有罪の証明が可能な場合であっても、被疑者の正確、年齢及び境遇、犯罪の軽重、犯罪後の情況(示談がまとまったかどうか等)といったさまざまな事情を鑑みて、検察官の裁量によって、あえて起訴する必要はないと考える場合。

 この他にも、被疑者死亡、告訴の取り下げ、確定判決の存在、公訴時効の完成などでも不起訴処分となる場合があり、行為者が刑事未成年者や心神喪失者であることが明らかである場合も不起訴処分となります。但し、心神喪失を理由とする不起訴処分の場合には、検察は関係する自治体に対して心神喪失者等医療観察法による申立を行います。

■今回のなりすまし投票事件について、前橋地検がなぜ不起訴処分にしたのか、その理由を考えてみましょう。

 被疑者が不起訴処分を得るためには、捜査機関の持っている証拠の精査や被疑者に有利な証拠の収集(真犯人の存在やアリバイ等)、被害者との示談などを行い、検察官に対して嫌疑が不十分である旨の主張や不起訴が妥当である旨の主張を行っていくことが必要になります。

 これらの活動を全て一般人が行うのは困難です。今回、不起訴処分が出された背景としては、法律の専門家である弁護人等の関与などが推測されますが、当会では、前橋地検自ら、嫌疑十分であっても不起訴処分にしたものと思っています。おそらく、政治的な圧力があったと考えています。

■検察官は、被疑者、告訴・告発人から請求のあった事件について、速やかにその理由を告知することになっています。
(1)被疑者に対する不起訴処分の告知(刑訴259条、事件事務規定73条1項)
(2)告訴人等に対する不起訴理由の告知(刑訴261条、事件事務規定73条2項)

 今回、警察が当会の告発状を受理しなかった背景としては、もし、当会の告発状を受理した形にしてしまうと、上記(2)の刑事訴訟法第261条に該当するため、不起訴処分の理由を当会に対して明かさなければならなくなるため、最初から告発状を受理しないようにしたのです。

 なぜなら、当会では別件の相談事で昨年7月に群馬県警捜査二課を訪れた際に、担当官と雑談をしていたときに、「安中市のなりすまし事件について、安中署から報告がきており、(当会からの)告発状が出されていることも聞いている」と担当官が語っていたからです。

 つまり、安中署の刑事課長がいうとおり、警察では捜査をした結果に基づいて、被疑者を検察に書類送検しましたが、捜査の過程で、なんらかの政治的な背景があったことを認識しており、そのため、検察での判断結果に柔軟性を持たせるために、当会の告発状について受理をせずに、コピーだけとって「預かり」の形にしたのです。そして、書類送検先の前橋地検で、案の定、不起訴処分にせざるを得ない事情が浮上したため、当会に対して、「捜査の状況や結果について、説明する義務も責務もない」として、口頭で「ノーコメントを言い渡したのです。

■不起訴処分となると被疑者に前科は付きませんので、前科が付くことに起因する前科調書への記録や特定の資格や職業への制約といった不利益の心配がなくなり、被疑者にとってのメリットは非常に大きいといえます。

 また、不起訴処分となれば、刑事手続は終了し身体拘束からも解放されますので、晴れて元の日常生活に復帰することができます。

■今回の事件で注目されるのは、「群馬県警が公選法違反の疑いで、同市などの若い男女3人を前橋地検に書類送検していた」と報道されたことです。この事件では、投票所で立ち合いをしていた人が、地元で見慣れない若い男女2名が投票していたのを不審に思い、投票所入場券を確認したら別人だったため、なりすまし投票が発覚しました。

 そのため当会では、被疑者は市外在住の可能性のある男女2名であると認識していました。

 ところが、報道では「同市など若い男女3名」とあるため、市内に住む若い世代の人物がさらに1名関与していたことになります。

 もし、なりすまし投票で、本人らが入場券を男女2名に故意に渡したのであれば、被疑者は4名になるはずです。あるいは、本人は1名で、もうひとりの分も男女2名に故意に渡したのであれば、「同市など若い男女3名」というシチュエーションに合致します。したがって、どうやら本人1名がもうひとりの本人には黙って、わざと2名分の投票所入場券を別の男女2名に、渡して投票依頼をした可能性が考えられます。

 しかし、なぜ自分で投票所にいかなかったのか?わざと別の男女に身代わり投票をさせる必要があったのか?疑問は尽きません。

■このように、地元北野殿地区に住む、前市長を支援した方々と、新市長を支援した方々の双方の皆さんから、せっかくなりすまし投票の真相究明を依頼されたにもかかわらず、当会の力不足で、真相解明には至りませんでした。

 しかし、警察が当会の告発状を、単なる「告発の相談」として扱い、警察が被疑者を書類送検したにもかかわらず前橋地検が理由を示さないまま不起訴処分にした経緯を見るにつけ、本件が政治的な配慮で幕引きされたことが十分にうかがえます。

 ちなみに、安中署に今回のなりすまし投票事件を通報した安中市選管にも、不起訴処分の通知はおろか、その理由についても警察や検察から何も知らせがないそうです。これでは再発防止の対応策もきちんと立てようがありません。

 となると、警察や検察に政治的な影響力を行使できるパワーを持つ候補者側が、今回のなりすまし投票に絡んでいる、というふうに当会では結論付けることにしました。

 安中市では、20年前に史上空前の巨額横領事件が発生しており、その捜査の過程で大きな政治的圧力があったことが当会の調査で判明しています。おそらく、今回の公職選挙法に抵触するなりすまし投票事件が、不起訴処分で幕引きされたのも、それと同じ理由であると見られます。

■ところで、あと2か月足らずで安中市でも統一地方選挙で、県議選と市議選が行われます。おそらく、表面化しなくでも、水面下ではなりすまし投票事件が発生する可能性が十分あり得ると想定されます。

 そのため、再発防止の観点から、いくつか提言をしておきたいと思います。

 既に住基ネットにもみられるように、選挙権を有する住民の個人情報については、既に市役所のパソコン画面には住民ひとりひとりの情報が入っている筈です。おそらく、本人の写真はもとより、市税の納付状況、自動車の保有状況、家族構成、子どもの通学先などのデータが入力されていて、画面をクリックするだけで、自由に検索し閲覧できるようになっているものと見られます。

 しかも、住基ネットの整備により、ネットを通じて全国の自治体の情報がリンクしており、市役所のパソコンからは全国民の個人情報が見放題だとも言われています。たとえば、ひらがなで、「小川」の「お」と入力すると、その発音の姓を持つ人物のデータが全て、何十ページもわたって表示されます。それを特定してクリックしない限り、検索の証拠は残りません。全部閲覧可能であるはずです。

 だから、投票所では、市役所のLANと接続しておけば、入場者の氏名と個人データを顔写真で、瞬時に本人かどうか特定することは、物理的に可能なはずです。

 もちろん、このように個人情報を子細に管理している現状を住民にしられるとまずいでしょうから、リスク管理のために、あえて出先の投票所では、そうしたシステムにしていないのかもしれません。

■いずれにしても、投票率が年々低下する傾向にあり、選挙に行かない人が多い現状では、選管から郵送された投票所入場券が郵便受けから盗まれたとしても、「どうせ、投票には行かないのだから・・・」と関心のない人が増えていることから、こうした手口は十分考えられます。

 なりすまし投票という違法行為が、発覚していないというだけで、今回の事件のように表沙汰になったのは、氷山の一角かもしれません。自治体によっては、「入場券は忘れた」と言って、本人の名前と住所生年月日を覚えていれば、身分証が無くても簡単に投票で来てしまう場合も少なくありません。

 やはり、身分を証明する証(できれば顔写真付き)の提示を求めたりすべきです。そしてそれが不十分の場合は、顔写真を撮影するなどして、不正防止のための抑止対策を講ずるべきでしょう。

■しかし、それでは投票に来た人に余計な負担がかかるので、投票率の低下が懸念されるという声も一方では出てくることでしょう。

 となれば、既に構築されてしまっている住基ネットをベースとした住民の個人情報管理システムを駆使して、選挙の不正を防止するしかありません。

 それでも不正投開票は根絶できないでしょう。なぜなら、投票用紙の管理、期日前投票箱の管理、不在者投票の管理、開票場の職員の行動の管理など、ずさんな面が多々あるからです。

 行政には、公正な選挙実現に向けた不断の努力が求められます。当会も、明るい選挙の実施に向けて引き続き尽力する所存です。

【ひらく会情報部】
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