2015/9/7  23:09

裁判所を抱き込み粛々と進む八ッ場ダム予定地の共有地における共有持分移転登記手続請求訴訟  八ッ場ダム問題

■先月、平成27年8月21日(金)10時15分から、前橋地裁第22号法廷で、一つの裁判が行われました。題して平成27年(ワ)第63号共有持分移転登記手続請求事件。原告は川原湯区で、訴訟代理人は高橋勇雄、被告は豊田康子外17名です。前橋地裁の担当部署は民事第1部C係、裁判官は後藤英時、書記官は萩原いずみです。4月に第1回口頭弁論が行われてから今回が3回目の弁論です。


 原告席には若手の弁護士が一人。おそらく高橋・須藤弁護士事務所の職員の一人と思われます。被告席には4名ほど着いていましたが、うち3名はやはり弁護士の様子です。

 傍聴をしていましたが、裁判書類の書類名のやり取りだけで、詳しい状況は分かりませんでした。ところが、被告席の一人のかただけが、八ッ場ダム問題について率直な意見を発言していました。しかし裁判官はそれを遮るように「ここではそういう話をする場ではありませんから」と訴訟指揮をしました。

 そして、開廷から10分あまりで裁判長は、「では、これにて弁論を終結し、次回判決公判は、10月2日午後1時10分とします。判決文は当事者宛に送るので、とくにこの場に出席しなくてもよろしい」と述べると退出していきました。

■請求事件名をみれば、これが八ッ場ダム予定地の川原湯地区にある共有地を、区という任意団体が、各入会権を持つ所有者の持分を全て区に移転することを裁判所に求めた請求訴訟であることが分かります。

 当会も公述人として参加した一級河川利根川水系八ッ場ダム建設工事に係る公聴会は、平成27年6月26日と27日の両日に開催されましたが、これは土地収用法(昭和26年法律第219号)第23条第1項の規定に基づき開催され、土地収用法施行規則(昭和26年建設省令第33号)第11条の2第2項の規定に基づき、公述したものです。

 この公聴会自体、単なるセレモニーに過ぎないと見られていますが、今年4月から前橋地裁で行われているこの請求訴訟も、土地収用手続日程に沿って進められていることは明らかです。

■八ッ場ダム予定地の事業用地のうち、7%相当が未買収地とされています。このうち、ダム本体の上流側で最も堤体に近い川原湯地区における共有地について、国交省の土地収用管理室では、効率的に順々に片付けようという意図が見え見えです、

 弁論が終結後、被告のひとりのかたにインタビューをしたところ、首都圏に在住していて、川原湯に曾祖父の名義で共有地の権利を保有しているため、区から被告として訴状が送られてきたとのことでした。

 そもそも共有地は、村の住民ら全員が共有権利をそれぞれの持分として持っているわけですが、なんでも法律が変わって、村(=区)が任意団体として裁判ができるようになったのだそうです。

 最初、いきなり訴状が送られてきたうえに、しかも3代前のふるさとの見たこともない山林のことなので、否応なく被告となったほとんどのかたがたは、認諾してものとみられます。

 そのかたは、こうした区(=村、すなわち行政)のやり方に納得がいかないとして、法廷できちんと意見を述べるために、これまで3回の弁論の都度、はるばる仕事をやりくりして、足を運んで出廷したのだそうです。

■傍聴をしていて痛感させられたことは、裁判所が明らかに結論ありきで、行政の都合の良いように形式的に判決を出すための儀式をやっているということです。

 10月2日には、当会が係争中の大同スラグ不法投棄農道舗装工事にかかる住民訴訟の第2回公判が午前10時半に前橋地裁で開かれます。その後、午後1時10分から、この共有持分移転登記手続請求事件の判決公判にも顔を出してみたいと考えております。

【市民オンブズマン群馬事務局からの報告】

※参考情報「共有」(ウィキペディアより引用)
<概説>
広義の共有は狭義の共有と区別するため共同所有とも呼ばれる。多数人が共同して一つの物を所有する関係を共同所有関係という[1]。共同所有には、団体主義的な色彩が強いものから個人主義的な色彩が強いものまでさまざま存在する。ドイツ法の影響の下、講学上は以下の三類型に分類される。
・総有(Gesamteigentum)
もっとも団体主義的な色彩が強い類型。個々の共有者の持分の大きさは観念できないため、利用方法の決定には、持分権を有する者全員の合意が必要となる。権利能力なき社団における共同所有形態はこれであるとされる。民法上の組合が、構成員全員の黙認のもと、個々の共有者の持分の大きさを観念せずに運用されるに至った場合(慣習的に社団化した場合)、結果的に持分権者全員の合意が必要となり、総有となる。各人の持分権の大きさを観念しえないため、単独の構成員による持分の処分(売却など)や分割請求は不可能である。総有関係を解消し合有や共有へ移行するためには、構成員全員の合意が必要である。
・合有 (Gesamthandseigentum)
総有と共有(狭義)との中間的な類型。個々の共有者の持分は観念できるものの、分割請求などは大きく制約される。共同信託や組合がこれである。夫婦間の財産関係(264条参照)については争いがある。利用方法の決定には、持分権における過半数の合意が必要となる。
・共有(狭義の共有、Miteigentum)
もっとも個人主義的な色彩が強い類型。個々の共有者の持分は具体的に観念され、分割請求なども自由になしうる。

【当会注】
 今回の平成27年(ワ)第63号共有持分移転登記手続請求事件では、裁判所は、村の共有地について、「総有」の観点から、「狭義の共有」とは異なる判断をするつもりのようです。
 実際、国交省の地方整備局河川事務所用地課作成の「相続人多数共有地に関する処方箋」では、共有の考え方について次のように記載しています。↓
http://www.kkr.mlit.go.jp/plan/happyou/thesises/2013/pdf06/08.pdf
 ・・・民法では第249条以降に共有を規定しています。各共有者は持分を有し、自由に譲渡することや持分に基づく分割請求が認められています(狭義の共有)。しかし、1つのものに数名の所有者がいる状態がすべて上記の「狭義の共有」に当たるとは限らず、「総有」或いは「合有」といった広い意味での共同所有の状況が存在します。総有は団体主義的な色彩が強く、共同所有の持分が否定又は不明確なものとされ、利用権は有するが持分の処分や分割請求ができません。利用方法の決定には、持分権を有する者全員の合意が必要となります。これには権利能力なき社団の所有形態や入会権が該当します。合有は総有と共有(狭義)との中間に位置し、個々の共有者の持分は観念できるものの、分割請求等は大きく制約されており(合有団体から脱退の際 は持分権の精算が可能)、共同信託や組合がこれに当たります。利用方法の決定には、持分権における過半数の合意が必要となります。
(表1)共同所有の形態
 形態/ 持分/ 持分の譲渡/ 分割請求/ 公租公課/ 法概念/ 類型
○共有 (狭義)/ 肯定/ 可能/ 可能/ 各自/ 民法249条〜262条/ 個々人の所有
○合有/ 肯定/ 制限/ 不可能/ 一部の者に委任/ 組合(民法667条〜688条)/ 共同信託、組合
○総有/ 否定又は不明確/ 不可能※/ 不可能/ 一部の者に委任/ 判例・学説、入会権(民法263条)/権利能力なき社団、入会
※基本的にはできないが、地域の慣習による
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