2009/2/15  10:13

農業振興を忘れ「花見酒」状態の農協に果たして明日は来るのか?  群馬県内金融機関不祥事件

■平成21年1月16日(金)に碓東支所の2階会議室でJA碓氷安中の緊急の説明会が開催されました。会場には、JA碓氷安中の幹部が勢揃いしたほか、市役所からも職員が来ており、説明者側は総勢8名でした。一方、参加者側は、平日の昼間であったため、農協組合員の地区支部長と隣組の組合員が主で、年配者が殆どを占めていました。

 JA側の説明の内容は、2月に碓東支所を閉鎖し、近日中に県内の単位農協を全部で6つに再編するため、JA碓氷安中もおそらく今年度末までには近隣のどこかの農協と一緒になる予定だということです。毎年2億円近い赤字体質に陥っていることも報告されました。総代会での収支報告では、毎年、数百万円程度の黒字決算だったはずですが、不良資産を自己査定して、貸倒引当金の金額を、最終的に少しだけ黒字に見せかけるように、逆算してきたツケがいよいよ表面化したようです。

これまで、農協の基盤を支えてきた共済事業や信用事業にも陰りがみえてきたようです。信用事業については、群馬県信連の提携や合併も取り沙汰されているようです。また農協による税金の自動引き落としや、代理業務は今後やめる方針とのことです。



■説明会では非常に重要な問題が提起されたため、出席した各地の組合員から次々と質問が出されました。板鼻の組合員からは「金銭に関係することだけなのか。本日ここに召集した人はそういう人が来ているのか。重大な話なのだから総代にも、こういうときには召集する必要があったのではないのか?」と鋭い質問が出されました。

これに対して、農協側から「総代は総代会(株主総会にあたるイベント)の時だけ出席してもらうことになっており、こういう説明会では総代は不要だ」という回答がありました。

そのほかに参加者からは、ATMの設置がどうなるのか、碓東支所がなくなっても、職員が電話で預金の引き出しや預け入れについて対応してくれないか、碓東支所の建物があくのなら児童保育所として活用できないか、などの質問や要望が出ました。

これに対して、農協側からは、ガソリンスタンド事業は残す、児童保育所は国道が目の前にある場合は設置できない、などという回答がありました。

■まさに耳を疑うような重大説明でしたが、いわゆる株主代表にあたる総代を対象にせず、平日の昼下がりに、地元の農協組合員の支部長らを相手に説明しただけで、一件落着のようです。ちなみに、JA碓氷安中が出している広報誌「めぐみ」には、この話題について掲載されていません。

 しかし、この説明会の背景にあるものを、参加した組合員は敏感に感じ取りました。それは、JA碓氷安中のような資力のない単位農協を、全国津々浦々に傘下として多数持っている農林中央金庫(農林中金)が、例のサブプライム問題等で、巨額の含み損を抱えていることです。

 農林中金は、国内34店舗、海外5店舗を持ち、従業員数2700人余りの金融機関です。全国の農家がJAに預けたカネを吸い上げて、その資金運用のため、国内外の株式や債権、証券化商品に幅広く投資しています。現在の理事長は元農林水産事務次官の上野博史氏です。

 2007年3月期の資本金は1兆4840億円、総資産68兆4872億円、2008年9月期の貸出金残高8兆8000億円、預金残高38兆8000億円でした。多額の預金量に比べて、貸出金が少ないのは、その残りをいろいろな金融商品に投資してからです。そのため、経営破綻したリーマン・ブラザースのような欧米の投資銀行と同様に、債務担保証券(CDO)等への積極的な投資が焦げ付いてしまい、経営を脅かしているのです。

■この国内最大の機関投資家が、資本金を上回る1兆5千億円もの含み損を出し、その補填に公的資金を使わないことを先日発表しました。ということは、各都道府県にある信用農業組合連合会(県信連)やJAが増資に応ずることが既に決定していることになります。傘下のJAが、農林中金の保有する有価証券の目減りを補うというのです。

 県信連やJAの経営も青息吐息ですが、親の危機に、天下りの経営陣の責任を問うことも無く、増資に応じることが既に了解済みのようです。JA碓氷安中も、そうした方針を打ち出したことになります。周辺の他のJAと合併までしても、親を助けなければならない事情はなぜでしょうか。全国の農家から預かったカネを親がスッてしまったので、さらに元金を補充して、農林中金の事業を継続させて、投資を回収できるようにしてやる都合があるようです。

増資について農林中金は「増資の期限は3月末までなので、今まさに各JAで検討してもらっているところ」だと述べています。3月末までに、JA碓氷安中が、早急に近隣のJAと合併しなければならない事情はここにあるようです。全国の農家から預かったカネが紙くずにならないように、さらに、傘下のグループ内から、資本を調達しようというのですが、よく考えてみると、いわゆる落語で知られる「花見酒」という気がします。

■熊さんと八つぁんが、酒を1升買って花見に行く途中、ガマンできずに、熊さんが「100円出すから少し飲ませろ」と八つぁんに頼み込み、チビチビとやっているうちに、今度は八つぁんがこらえきれずに、先ほど受け取った100円を熊さんに払って、グビグビやったと思ったら、それを見ていた熊さんが…、というわけで、花見会場に到着したときには、二人の間に空の1升ビンが転がっていたという話です。

 金融機関の資本増強には、やってはいけない「禁じ手」があります。グループ内で資本を融通しあうやり方で、共倒れにならないようにするために設けた「ダブル・ギアリング規制」というルールです。外部から資金調達をしないで、グループ内で資本の持ち合い(ダブル・ギアリング)を行なうと、グループ内で資金が還流されるだけなので、財務基盤の強化にはならず、花見酒と同じ結果になってしまいます。

農林中金と信連やJAのような「親子関係」にある協同組織の金融機関の持ち合い基準としては、信用金庫や信用組合の場合、「親」金融機関の資本全体の「20%未満」であれば認められています。

 ところが1923年に設立された農林中金の場合、1986年に特別民間法人となり、農林中央金庫法を根拠法とする純粋な民間金融機関となりましたが、同年以降も、相変わらず理事長は歴代農水省事務次官の天下りポストになっており、銀行免許を持つ金融機関でありながら所管が金融庁ではなく農林水産省となっていて、通常の民間金融機関とは異なる側面を持っています。そのため、この持ち合い基準の対象外とされて、傘下のJAから好きなだけ資本調達した分を自己資本に算入できるのです。本当に、組合員が預けた虎の子の預金は大丈夫なのでしょうか。

■2008年11月に、巨額損失にもかかわらず天下りの上野博史理事長に高額報酬が払われていたことが報じられました。2000年から現職に就いた同理事長は2009年6月に任期満了を迎えます。農林中金は、現在、理事長をはじめ13人もいる理事らの報酬を見直す方向で検討中と言われていますが、のらりくらりとしています。その背景には、各地のJAによる増資さえ得られれば、公的資金による資本注入が不要となり、経営責任の反省がうやむやにできると思惑があるようです。

 そこで、心配になった某組合員はさっそく農協に退会届を出そうとしたところ、「直ぐには退会できない決まりになっている」と言われました。天下りの理事長の高額報酬に比べれば一週間分にも満たない金額とはいえ、虎の子の出資金が無事に戻るかどうか、当分やきもきする日が続くといって嘆いています。

■東邦亜鉛安中精錬所の周辺農地の汚染土壌問題でも、農協は解決に向けて何も動こうとしません。岩野谷の大谷地区の農地の真ん中に、サイボウ環境の廃棄物処分場計画が進められたときにも、JA碓氷安中は、サイボウ環境の地元関係者に融資をしたうえに、進入道路建設賛成の同意書を組合長名で市長宛に提出していました。毎年、組合員から500円ずつ徴収している農政カンパと称する募金の使途は、与党政治家への献金等に使われたようですが、その結果、ますますノー政に拍車をかけてきました。

 各農協は、農産物販売や農業資材の購入など農業関連事業の大幅な赤字を、これまで信用事業や共済事業の黒字で穴埋めしてきました。その原資として、農林中金の有価証券運用益による損失補填を毎年3千億円規模で行ってきていました。いよいよ、各農協がそのお返しをすることになります。従来のシステムが危機を救うのか、それとも、破綻して、農協崩壊の引き金となるのか、今年の動向がカギになると思われます。

【ひらく会情報部】
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