2016/7/18  23:19

高崎市のデタラメ行政・・・若宮苑を巡る介護施設文書偽造疑惑に目をつぶる市行政の事なかれ体質(その1)  高崎市の行政問題

■高崎市役所のすぐ南にある清涼園における身障者虐待通報を同市福祉部障害福祉課と同指導監査課で握りつぶした問題や、市内の建築確認手続きを巡り同市建設部建築指導課と農業委員会による建築基準法及び農地法の定めを無視したデタラメな許認可業務について、当会会員の皆さんから逐次報告がなされていますが、今度またもや、高崎市の福祉行政を巡る問題が発覚しました。
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若宮苑を併設する上大類病院。


 今回の舞台は高崎市上大類町にある介護老人保健施設若宮苑です。同施設は、医療法人十薬会が1990年4月16日に事業を開始した認短(入所・通所)サービスを提供する老人保健施設で、上大類病院に併設されており、定床数60名/通所定員50名に対して介護職員が22人いる模様です。

 この問題に取り組んでいる当会会員からの情報によると、家族のための同施設を利用したところ、必要な書類に署名をした覚えがないのにいろいろなサービスを受けたことになっており、それらのために支出された税金を取り戻す必要があるとして、高崎市に対して要請してきました。

 このため当会会員は、必要な情報について高崎市情報公開条例を利用して入手し、それらから判明した自ら署名したとされる文字の筆跡鑑定まで第三者機関に依頼して提出しましたが、高崎市はなぜか当会会員の証拠提出を無視したまま、一向に対応策を取ろうとしませんでした。

 そのため業を煮やした当会会員は2016年4月11日付で高崎市監査委員に対いて監査請求書を提出しました。ところが、高崎市監査委員は同6月10日付で、高崎市職員や同施設関係者の言い分ばかりを認めて、組織的・意図的な仕業ではないとして、当会会員の請求を棄却する旨の監査結果通知を、当会会員に送ってきました。

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                        第70−1号
                    平成28年6月10日
 請求人 岩崎 優 様
 代理人弁護士 ■■■■様
                高崎市監査委員 村 上 次 男
                   同    有 賀 義 昭
                   同    松 本 賢 一
                   同    石 川   徹

   高崎市職員措置請求に係る監査の結果について(通知)

 平成28年4月11日付けで提出された高崎市職員措置請求書につぃて、地方自治法(昭和22年法律第67号)第242条第4項の規定に基づき監査を行ったので、その結果を通知します。

第1 請求の受付
1 受付日
  平成28年4月12日(火)

2 請求人
(1)請求人
   住所 高崎市剣崎町906
   氏名 岩崎 優
(2)代理人弁護士
   住所 ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
   氏名 ■■■■

3 請求の内容
 平成28年4月11日付けで提出された高崎市職員措置請求書の内容を要約すると、以下のとおりである。
(1)本件請求の概要について
 請求人の母(以下、「入所者」という。)は、若宮苑へ次表のとおり入所していた。
    入所日         退所日       備考
平成26年12月02日 平成26年12月22日
平成27年01月06日 平成27年01月08日
平成27年04月06日 平成27年お4月29日 以下「本件入所1」という。
平成27年05月20日 平成27年06月05日 以下「本件入所2」という。
平成27年06月20日 平成27年08月12日 以下「本件入所31という。
平成27年09月18日 平成27年10月15日 以下「本件入所4」という。

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 本件入所1、本件入所3及び本件入所4は介護保健施設サーピスであるが、若宮苑は介護保険法(平成9年法律第123号)で定める施設サービス計画(以下、「ケアプラン」という。)を作成する時期が遅れケアプランなしで施設サービスが提供された期間が存在し、又は作成されず、作成しても入所者の文書による同意及びその交付をせずに介護保健施設サービスを提供し、高崎市から施設介護サービス費の支払いを受けた。
 本件入所2は短期入所療養介護であるが、若宮苑は介護保険法で定める短期入所療養介護計画(以下、「ケアプラン」という。)を作成する時期が遅れケアプランなしで居宅サービスが提供された期間が存在し、さらに入所者の文書による同意及びその交付をせずに居宅サービスを提供し、高崎市から居宅介護サービス費の支払いを受けた。
 以上のように若宮苑が介護報酬の支払いを受けたことは、介護保険法第22条第3項が定める「偽りその他不正の行為」により支払いを受けたものに他ならず、高崎市は若宮苑に対し、その額の返還とそれに100分の40を乗じた額を徴収すべき義務があるところ、高崎市長はこれを怠っている。本件監査請求は、高崎市長が若宮苑に請求することを求めるものである。
(2)本件入所1について
 入所者が若宮苑に入所したのは平成27年4月6日であるが、ケアプランが作成されたのは4月25日であり、退所日である4月29日のわずか4日前である。すなわち、入所日である4月6日から4月25日までの間は、ケアプランなしで介護保健施設サービスが提供されていた。
 介護保健施設サービスは、ケアプランに基づいて提供されるものであり、当初からケアプランがなければ、そもそも利用者にあわせた適切な介護、療養は不可能である。ケアプランを欠くことは介護保険法に違反する。さらに、当該ケアプランは、入所者の文書による同意及びその交付がなされておらず、介護老人保健施設の人員、施設及び設備並びに運営に関する基準(平成11年3月31日厚生労働省令第40号)に違反する。
(3)本件入所2について
 入所者が若宮苑に入所したのは平成27年5月20日であるが、ケアプランが作成されたのは6月4日であり、退所日の前日である。すなわち、入所日から退所日の前日までの間は、ケアプランなしで居宅サービス(短期入所療養介護)が提供されていたのであって、介護保険法違反である。さらに、当該ケアプランは、入所者の文書による同意及びその交付がなされておらず、指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準(平成11年3月31日厚生労働省令第37号)に違反する。
(4)本件入所3について
 入所者が若宮苑に入所したのは平成27年6月20日であるが、ケアプランが作成されたのは7月15日であり、入所日から約25日間は、ケアプランなしで介護保健施設サービスが提供されていたものであり、介護保険法違反である。さらに、当該ケアプランは、入所者の文書による同意及びその交付がなされておらず、介護老人保健施設の人員、施設及び設備並びに運営に関する基準に違反する。
 加えて、きわめて重大な違法事由として、ケアプラン第2表(以下、「栄養マネジメント計画書」という。)の利用者(家族)確認欄の請求人名義の署名が偽造されている点である。請求人が当該計画書に署名したことはなく、名前を間違えて書いている等、外見上、請求人本人の署名でないことは明らかであるが、筆跡鑑定の結果も同署名の筆跡は、請求者の筆跡でないことが明らかとなっている。利用者家族同意を偽造し、当該施設の用に供することは、いうまでもなく私

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文書偽造、同行使罪に該当し、違法である。
(5)本件入所4について
 ケアプランは全く作成されていない。したがって、当然、入所者の文書による同意及びその交付もなされていない。
 重大な違法事由として、本件入所3と同様、栄養マネジメント計画書の利用者(家族)確認欄の請求人名義の署名が偽造されている点がある。名前を間違えて書いている等、外見上、請求人本人の署名でないことは明らかであるが、筆跡鑑定の結果も同署名の筆跡は、請求人の筆跡でないことが明らかとなっている。利用者家族同意を偽造し、当該施設の用に供することは、いうまでもなく私文書偽造、同行使罪に該当し、違法である。
(6)本件介護報酬が介護保険法第22条第3項により徴収すべきものであること
 本件入所1から本件入所4は、ケアプランが全く存在しないか、入所当初よりケアプランが存在しなかったものであり、かつ、入所者の文書による同意とその交付を欠いており、介護保険法が定める介護保健施設サービス又は居宅サービス(短期入所療養介護)としての要件を満たしておらず、若宮苑が介護報酬を舜給したことは法律上の原因を欠く。
 事業者が、ケアプランが存在せず若しくは入所者の文書による同意とその交付を欠いたまま又はケアプランの利用者(家族)同意欄を偽造して介護報酬の支給を受けたことは、介護保険法第22条第3項が定める、「偽りその他不正の行為」によって介護報酬の支給を受けたことに他ならず、高崎市は、若宮苑に対し、その額の返還とこれに対し100分の40を乗じた額を徴収すべき義務があるところ、高崎市長はこれを怠っているので、監査委員は高崎市長に対し118万2063円の返還及びこれに100分の40を乗じた額を請求するよう勧告せよ。

   事実証明書
甲1 高崎市作成にかかる苦情申立についての確認結果
甲2 ケアプラン総合計画書等(本件入所1関係)
甲3 ケアプラン総合計画書等(本件入所2関係)
甲4 ケアプラン総合計画書等(本件入所3関係)
甲5 鑑定書
甲6 栄養マネジメント計画書等’(本件入所4関係)
甲7の1、2 介護保険給付費のお知らせ

4 請求の要件審査
 本件措置請求書は、地方自治法第242条第1項の所定の要件を満たしているものと認め、平成28年4月18日に4月12日付けでこれを受理することを決定した。なお、軽微な事項について4月18日に補正がされた。

第2 監査の実施
 本件監査請求について、地方自治法第242条第4項の規定により、次のとおり監査を実施した。
 なお、寺口優監査委員が平成28年5月15日に退任し、石川徹監査委員が5月16日に就任した。

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1 請求人の陳述
 地方自治法第242条第6項の規定により、平成28年4月27日に請求人に対し新たな証拠の提出及び陳述の機会を設けたところ、請求人及び代理人が出席し、おおむね以下のとおりの陳述を行った。なお、新たな証拠の提出として、平成28年3月16日付けで医療法人十薬会理事長から高崎市長に提出された「調査・報告依頼に対する報告」が提出された。
(1)若宮苑は、介護保険法に違反しただけでなく、私文書偽造の犯罪行為までして不正受給しているにもかかわらず、高崎市は結果ありきの調査を3度も実施した。その調査において私からの筆跡鑑定書を受理せずに、適正な調査を怠った。ケアプランの作成を4度も怠り不正受給した若宮苑の介護保険法違反は明白であるが、高崎市は処分を行わない方針であり、その支払いの返還さえも求めない他に、私文書偽造されている栄養マネジメント計画書にまで給付を算定している。
(2)速やかに以下の5点の措置を講じるよう、高崎市長に勧告することを求める。
 @不正に受給された介護報酬に法定金利を加え、返還若しくは法的手段により回収を図ること。
 A公金の返還、回収を確実なものとするために、予備的に法的手段を講ずること。
 B警察署に被害届を提出し、公金を私文書偽造にて不正に受給したことは犯罪行為であり、高崎市に損害を与え極めて悪質であり厳しく対処すべき事案であること。
 C不正受給により高崎市の損害を事前に是正するために必要な措置として、ケアマネージャーの登録消除及び栄養土免許剥奪を速やかに群馬県知事に報告すること。
 D刑事事件の犯罪を事後に是正するために必要な措置として若宮苑の処分をすること。
(3)若宮苑の介護保険法違反及び私文書偽造の犯罪を、事前・事後に是正するために最も重要なのは、介護保険法に基づきケアマネージャーの登録消除の報告を知事に怠っていることである。若宮苑には相談員や支援専門員が複数おり、厳密に誰が誰の担当という割り振りではなく、全員で入所者全体を見ているという形をとっているというが、私の母は自分の担当ケアマネージャーが誰なのか知らずに利用した。ケアプラン作成を4度も怠り、モニタリングは全てを怠り、介護を必要とする高齢者にとっては不安であるので、速やかに若宮苑の指定取消し及びケアマネージャーの登録消除を高崎市長に勧告することを求める。
(4)高崎市は私の筆跡鑑定書の受理を頑なに拒み続け、若宮苑への実地調査では偽造であるという確認ができなかったと報告している。確認できなかったというが、確認方法及び確認手段はどのようなものだったのか。私の筆跡鑑定書を活用しなくては、何百回、何千回実地調査を行っても高崎市の大切な財源は返還させることは不可能である。それどころか不正に受給をされ続けることであろう。速やかに被害届を警察に提出するよう高崎市長に勧告することを求める。
(5)医療法人十薬会理事長が高崎市長宛に提出した「調査・報告依頼に対する報告」において、私文書偽造の犯罪が行われた平成27年7月1日及び9月22日に私に対応した職員が、私に内容を伝えサインをもらったとの証言が記載されている。高崎市長宛に虚偽の報告書を提出した若宮苑及びケアプランの作成を4度も怠り不正受給したケアマネージャー並びに私文書偽造の犯罪を犯した職員。これら全てが高崎市に損害を与えておるので、事件の全貌を明らかにし、私たちが安心して暮らす高崎市に大切な財源が返還されるように高崎市長に処分の勧告をするよう求める。
(6)以上が、請求人のおおまかな陳述であるが、監査委員との質疑で次の主張があった。
 ア 本件監査請求を行ったのは、ケアプランが作成されずにサービスが提供されていることを是正したいためであり、入所者への処遇、サービス等に不満があったためではない。

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 イ 平成26年12月2日の初回の入所でケアプランの作成は遅かった。初回の落ち度は見逃すにしても、5回も繰り返したら、不正又は偽りの手段と言える。繰り返しであることで悪質性が高い。故意と同一視できるのではないか。単なる過失、ミスでは済まされない。

2 若宮苑からの聴取
 平成28年5月10日に関係人である若宮苑職員から聴取を行った。その要旨は、おおむね以下のとおりである。
(1)本件入所1について
 入所前に、入所者及び家族から施設サービスヘの要望等の聞き取りと入所前アセスメントを行い、それらを基に暫定ケアプランを作成し、平成27年4月4日にその内容について入所者又は家族に説明し、書類に入所者の同意のサイン(以下、(同意のサイン1という。)をもらった。
 栄養マネジメント計画書(アセスメント及び栄養ケア計画等を記人)を4月6日に作成し、4月16日に同意のサインをもらった。
 リハビリテーション実施計画書(アセスメント及びリハビリテーションプログラム等を記入)を4月7日に作成し、4月7日に同意のサインをもらった。なお、本件措置請求書に添えられている本件入所1に係る事実証明書としての甲第2号証のリハビリテーション実施計画書は、本件入所2で作成したものである。本件入所2のリハビリテーション実施計画書は、本件入所1のデータに追加や変更等を行い作成したものであるが、計画評価実施日の更新を失念したため平成27年4月7日のままとなっている(監査委員が、若宮苑の提示した当該本件入所1のリハビリテーション実施計画書を確認した)。
 本ケアプランを通常より遅れて4月25日に作成したが、4月28日に退所のため同意のサインをもらわなかった。
 なお、若宮苑では、本ケアプランについて、入所から1〜2週間後を目安に作成している。各専門職が入所後の入所者の状態を確認し、適切なプラン作成に時間を要すためであるが、その間は暫定ケアプランに基づきサービスを提供する。ただし、状態が急に変わった場合や、入所前に想定した状態と異なる場合は、早急にサービス担当者会議で協議し、本ケアプランに移行する。
(2)本件入所2について
 当該入所は緊急短期入所であった。入所者が5月20日に上大類病院を外来受診し、入所者家族の申し出により若宮苑へ緊急短期入所となったものである。
 暫定ケアプランは作成しなかった。本人の状態は3週間前の退所時から基本的に変わらなかったので、前のケアプランを使いサービスを提供し、変わった点や付け加える点をサービス担当者会議で話し合う。このケースでは、入所当日のサービス担当者会議の中で、転倒防止のためベッドの配置を変更している。また、「専門職(チーム)アセスメント及び実施計画内容等の要点」(入所者の状態、それに応じたプランを随時記入し、サービス担当者会議では資料とする)にも記入している。なお、短期入所のため、居宅のケアプランも参考にしている。
 リハビリテーション実施計画書を作成したが、同意のサインをもらわなかった。(1)で説明したとおり、本件措置請求書に添えられている本件入所1に係る事実証明書としての甲第2号証のリハピリテーション実施計画書は、本件入所2で作成したものである。
 本ケアプランを6月4日に作成したが、6月5日に退所のため同意のサインをもらわなかった。
(3)本件入所3について

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 暫定ケアプランは作成しなかった。本人の状態は基本的に変わらなかったので、前のケアプランを使いサービスを提供した、変わった点や付け加える点をサービス担当者会議で話し合った。
 栄養マネジメント計画書を6月22日に作成し、7月1日に同意のサインをもらった。
 リハビリテーション実施計画書を6月24日に作成したが、同意のサインをもらわなかった。
 本ケアプランを7月15日に作成したが、同意のサインをもらわなかった。施設入所者の状態に応じ、どの施設入所者をサービス担当者会議にかけるか日程を組んでいるため、状態の安定している入所者の本ケアプランの作成が7月15日になった。同意のサインをもらわなかったのは、コンプライアンスが徹底されていないスタッフがいたことや、組織としてチェックする機能が不十分であったためである。
(4)本件入所4について
 暫定ケアプランは作成しなかった。本人の状態は基本的に変わらなかったので、前のケアプランを使いサービスを提供した。変わった点や付け加える点をサービス担当者会議で話し合った。
 栄養マネジメント計画書を9月18日に作成し、9月22日に同意のサインをもらった。
 リハビリテーション実施計画書を9月28日に作成したが、同意のサインをもらわなかった。
 本ケアプランは作成していない。アセスメントは作成したが、コンプライアンスが徹底されていないスタッフ、組織としてのチェックする機能の不十分さにより本ケアプランの作成に至らなかった。
(5)その他
 ア 同意のサインの偽造については、ありえないことである。担当の栄養士がフロアの椅子で説明し、同意のサインをもらっている。
 イ 入所者の当初からの担当者の施設での呼び名は支援相談員である。運営規定の説明の中で色々な職種があるので、介護支援専門員を兼務していることを伝えている。施設に掲示もしている。
 ウ 入所と退所を繰り返している。このような入所と退所の繰り返し方は異例である。
 エ なお、初回の入所(平成26年12月2日入所)は本件監査請求の対象外であるが、書類の作成状況について若宮苑から聞き取りを行った。その結果は次のとおりである。
(ア)インテーク:ニーズアセスメント・シート(病歴、本人及び家族の入所の目的等を記人したもの)を平成26年11月27日に作成。
(イ)暫定ケアプランを11月29日に作成し、12月2日に同意のサインをもらった。
(ウ)栄養マネジメント計画書を12月2日に作成し、12月17日に同意のサインをもらった。
(エ)リハビリテーション実施計画書を12月3日に作成し、12月4日に同意のサインをもらった。
(オ)本ケアプランを12月18日に作成し、12月19日に同意のサインをもらった。
(力)12月22日に退所した。

3 介護保険関係職員からの聴取
 福祉部を監査対象部局とし、平成28年5月10日に福祉部の指導監査課、長寿社会課及び介護保険課、並びに平成28年3月31日以前に当該課に配属されていた職員のうち関係する者から、本件監査請求について聴取を行った。その要旨は、おおむね以下のとおりである。
(1)ケアプランについて

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 ア 本件入所1について、若宮苑は暫定ケアプランを作成し、平成27年4月4日に同意のサインをもらっている。若宮苑は暫定ケアプランと呼んでいるが、法令に暫定ケアプランという規定はない。当該暫定ケアプランは法令の要件を満たしており、これは本ケアプランであると認識している。
   4月4日に本ケアプランは作成され、同意のサインをもらっている。4月25日の本ケアプランは若宮苑が独自に、より詳細なケアプランを作ろうとしたものである。
 イ 入所前にケアプランを作成できない場合もある。厚生労働省によると、入所前にケアプランを立てるものだが、間に合わない場合はできるだけ速やかに作成するものとしている。
 ウ ケアプランを作成していないケースの扱いについて厚生労働省によると、施設で全員分、誰のケアプランも作成していなければ別だが、本件については、入所・退所を繰り返しており指導レベルとのことだった。
 エ 本件以外にも若宮苑においてケアプランの未作成があるのかどうか、他の入所者について抽出して調査したところ、問題になるものはなかった。なお、若宮苑以外の施設においても、ケアプランが未作成のケースがあり、その際は文書指摘している。
(2)その他
 同意のサインの偽造については、判定する能力がないのでわからない。明らかに偽造とわかるケースではない。若宮苑は本人に書いてもらったと回答している。

4 監査の着眼点
 本件入所1から本件入所4について、ケアプランを作成する時期が遅れケアプランなしでサービスが提供された期間が存在し、又は作成されず、作成しても入所者の文書による同意とその交付を欠くなどして若宮苑が介護報酬の支払いを受けたことが、介護保険法第22条第3項「偽りその他不正の行為」によって介護報酬の支払いを受けたことにあたるかどうか。

第3 監査の結果

1 本件監査に係る主な法令等
(1)介護保険法
 加齢に伴い要介護状態となり介護等を要する者等が、尊厳を保持し、その有する能力に応じ自立した日常生活を営めるよう、必要な介護サービスを提供するため介護保険制度を設け、もって国民の保健医療の向上及び福祉の増進を図ることを目的とする。
 ア 介護保健施設サービス
(ア)「施設サービス」とは、介護福祉施設サービス及び介護保健施設サービスをいい、「施設サービス計画」とは、介護老人福祉施設又は介護老人保健施設に入所している要介護者について、これらの施設が提供するサービスの内容、これを担当する者その他厚生労働省令で定める事項を定めた計画をいう(第8条第26項)。
(イ)「介護老人保健施設」とは、要介護者に対し、施設サービス計画に基づいて、看護、医学的管理の下における介護及び機能訓練その他必要な医療並びに日常生活上の世話を行うことを目的とする施設として、第94条第1項の都道府県知事の許可を受けたものをいい、「介護保健施設サービス」とは、介護老人保健施設に入所する要介護者に対し、施設サービス計画に基

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づいて行われる看護、医学的管理の下における介護及び機能訓練その他必要な医療並びに日常生活上の世話をいう(第8条第28項)。
(ウ)市町村は、要介護被保険者が、次に掲げる施設サービスを受けたときは、当該要介護被保険者に対し、当該指定施設サービス等に要した費用について、施設介護サービス費を支給する。
   ただし、当該要介護被保険者が、第37条第1項の規定による指定を受けている場合において、当該指定に係る種類以外の施設サービスを受けたときは、この限りでない。
 一 都道府県知事が指定する介護老人福祉施設により行われる介護福祉施設サービス
 ニ 介護保健施設サービス(第48条第1項)
 (エ)要介護被保険者が、介護保険施設から指定施設サービス等を受けたときは、市町村は、当該要介護被保険者が当該介護保険施設に支払うべき当該指定施設サービス等に要した費用について、施設介護サービス費として当該要介護被保険者に支給すべき額の限度において、当該要介護被保険者に代わり、当該介護保険施設に支払うことができる(第48条第4項)。
(オ)市町村は、介護保険施設から施設介護サービス費の請求があったときは、第2項の厚生労働大臣が定める基準及び第88条第2項に規定する指定介護老人福祉施設の設備及び運営に関する基準又は第97条第3項に規定する介護老人保健施設の設備及び運営に関する基準に照らして審査した上、支払うものとする(第48条第6項)。
(力)市町村は、第41条第1項に規定する指定居宅サービス事業者、第42条の2第1項に規定する指定地域密着型サービス事業者、第46条第1項に規定する指定居宅介護支援事業者、介護保険施設、第53、条第1項に規定する指定介護予防サービス事業者、第54条の2第1項に規定する指定地域密着型介護予防サービス事業者又は第58条第1項に規定する指定介護予防支援事業者が、偽りその他不正の行為により第41条第6項、第42条の2第6項、第46条第4項、第48条第4項、第51条の3第4項、第53条第4項、第54条の2第6項、第58条第4項又は第61条の3第4項の規定による支払を受けたときは、当該指定居宅サービス事業者等から、その支払った額につき返還させるべき額を徴収するほか、その返還させるべき額に100分の40を乗じて得た額を徴収することができる(第22条第3項)。
 イ 短期入所療養介護
(ア)「短期入所療養介護」とは、居宅要介護者について、介護老人保健施設その他の厚生労働省令で定める施設に短期間入所させ、当該施設において看護、医学的管理の下における介護及び機能訓練その他必要な医療並びに日常生活上の世話を行うことをいう(第8条第10項)。
 (イ)市町村は、要介護認定を受けた被保険者のうち居宅において介護を受けるものが、都道府県知事が指定する者から当該指定に係る居宅サービス事業を行う事業所により行われる居宅サービスを受けたときは、当該居宅要介護被保険者に対し、当該指定居宅サービスに要した費用について、居宅介護サービス費を支給する。ただし、当該居宅要介護被保険者が、第37条第1項の規定による指定を受けている場合において、当該指定に係る種類以外の居宅サービスを受けたときは、この限りでない(第41条第1項)。
(ウ)居宅要介護被保険者が指定居宅サービス事業者から指定居宅サービスを受けたときは、市町村は、当該居宅要介護被保険者が当該指定居宅サービス事業者に支払うべき当該指定居宅サービスに要した費用について、居宅介護サービス費として当該居宅要介護被保険者に対し支給すべき額の限度において、当該居宅要介護被保険者に代わり、当該指定居宅サービス事業者に支払うことができる(第41条第6項)。

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(2)介護老人保健施設の人員、施設及び設備並びに運営に関する基準介護保険法第97条第1項から第3項までの規定に基づき、介護老人保健施設の人員、施設及び設備並びに運営に関する基準を定めている。
 ア 介護老人保健施設は、施設サービス計画に基づき、入所者の要介護状態の軽減又は悪化の防止に資するよう、その者の心身の状況等を踏まえて、その者の療養を妥当適切に行わなければならない(第13条第1項)。
 イ 介護保健施設サービスは、施設サービス計画に基づき、漫然かつ画一的なものとならないよう配慮して行われなければならない(第13条第2項)。
 ウ 介護老人保健施設の従業者は、介護保健施設サービスの提供に当たっては、懇切丁寧を旨とし、入所者又はその家族に対し、療養上必要な事項について、理解しやすいように指導又は説明を行わなければならない(第13条第3項)。
 エ 介護老人保健施設の管理者は、介護支援専門員に施設サービス計画の作成に関する業務を担当させるものとする(第14条第1項)。
 オ 施設サービス計画に関する業務を担当する介護支援専門員(以下「計画担当介護支援専門員」という。)は、施設サービス計画の作成に当たっては、入所者の日常生活全般を支援する観点から、当該地域の住民による自発的な活動によるサービス等の利用も含めて施設サービス計画上に位置付けるよう努めなければならない(第14条第2項)。
 力 計画担当介護支援専門員は、施設サービス計画の作成に当たっては、適切な方法により、入所者について、その有する能力、その置かれている環境等の評価を通じて入所者が現に抱える問題点を明らかにし、入所者が自立した日常生活を営むことができるように支援する上で解決すべき課題を把握しなければならない(第14条第3項)。
 キ 計画担当介護支援専門員は、前項に規定する解決すべき課題の把握(以下「アセスメント」という。)に当たっては、入所者及びその家族に面接して行わなければならない。この場合において、計画担当介護支援専門員は、面接の趣旨を入所者及びその家族に対して十分に説明し、理解を得なければならない(第14条第4項)。
 ク 計画担当介護支援専門員は、入所者の希望、入所者についてのアセスメントの結果及び医師の治療の方針に基づき、入所者の家族の希望を勘案して、入所者及びその家族の生活に対する意向、総合的な援助の方針、生活全般の解決すべき課題、介護保健施設サービスの目標及びその達成時期、介護保健施設サービスの内容、介護保健施設サービスを提供する上での留意事項等を記載した施設サービス計画の原案を作成しなければならない(第14条第5項)。
 ケ 計画担当介護支援専門員は、サービス担当者会議の開催、担当者に対する照会等により、当該施設サービス計画の原案の内容について、担当者から、専門的な見地からの意見を求めるものとする(第14条第6項)。
 コ 計画担当介護支援専門員は、施設サービス計画の原案の内容について入所者又はその家族に対して説明し、文書により入所者の同意を得なければならない(第14条第7項)。
 サ 計画担当介護支援専門員は、施設サービス計画を作成した際には、当該施設サービス計画を入所者に交付しなければならない(第14条第8項)。
(3)指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準介護保険法第42条第1項第2号並びに第74条第1項及び第2項の規定に基づき、指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準を定めている。

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 ア 指定短期入所療養介護事業者は、利用者の要介護状態の軽減又は悪化の防止に資するよう、認知症の状況等利用者の心身の状況を踏まえて、当該利用者の療養を妥当適切に行わなければならない(第146条第1項)。
 イ 指定短期入所療養介護は、相当期間以上にわたり継続して入所する利用者については、次条第一項に規定する短期入所療養介護計画に基づき、漫然かつ画一的なものとならないよう配意して行わなければならない(第146条第2項)。
 ウ 短期入所療養介護従業者は、指定短期入所療養介護の提供に当たっては、懇切丁寧を旨とし、利用者又はその家族に対し、療養上必要な事項について、理解しやすいように指導又は説明を行わなければならない(第146条第3項)。
 エ 指定短期入所療養介護事業所の管理者は、相当期間以上にわたり継続して入所することが予定される利用者については、利用者の心身の状況、病状、希望及びその置かれている環境並びに医師の診療の方針に基づき、指定短期入所療養介護の提供の開始前から終了後に至るまでの利用者が利用するサービスの継続性に配慮して、他の短期入所療養介護従業者と協議の上、サービスの目標、当該目標を達成するための具体的なサービスの内容等を記載した短期入所療養介護計画を作成しなければならない(第147条第1項)。
 オ 短期入所療養介護計画は、既に居宅サービス計画が作成されている場合は、当該計画の内容に沿って作成しなければならない(第147条第2項)。
 力 指定短期入所療養介護事業所の管理者は、短期入所療養介護計画の作成に当たっては、その内容について利用者又はその家族に対して説明し、利用者の同意を得なければならない(第147条第3項)。
 キ 指定短期入所療養介護事業所の管理者は、短期入所療養介護計画を作成した際には、当該短期入所療養介護計画を利用者に交付しなければならない(第147条第4項)。

2 事実関係及び判断
(1)本件入所1について
 ア 「暫定ケアプラン」について
   平成27年4月6日に入所するにあたり暫定ケアプランが作成され、4月4日の同意のサインが記入されている。当該暫定ケアプランの内容を確認すると、入所前に本人及び家族に面談し、どのようなサービスを希望しているか聞き取りを行った「プレ・インテーク・シート」や、入所前アセスメントに基づき作成されていることが認められた。例をあげると、家族の希望は、「可能な限りリハビリを実施して、筋力維持、向上を目標」「日中間は可能な限り横にならぬように心がけたい」とプレ・インテーク・シートに記入されている。これらに基づいて、当該暫定ケアプランは、「廃用による全身持久力、筋力の低下が主症状。それにより各動作の耐久性、安定性の低下が生じている。生活活動、参加機会を通じて改善を図る、また精神面の賦活にもつながればよい」と記入され、「起床、排泄、歩行の安定性を高める」「普通起床。歩行車歩行。ベッド脇にポータブルトイレと歩行器を設置し自ら使用しやすいようにする」とプランが立てられている。
 イ 「栄養マネジメント計画書」について
   栄養マネジメント計画書が作成され、4月16日の同意のサインが利用者確認欄に記入されている。当該計画書の内容を確認すると、現在の状況・状態を示すアセスメント項目が18項

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 目あり、その結果に基づき栄養ケア計画が立てられている。計画の例をあげると、「必要力口リー摂取し体力をつけるため、適宜形態や食事量の調整を検討していく。水分が不足しないよう摂取促し、脱水予防」「比較的少食のため安定して必要カロリーが取れるよう摂取状況観察しながら嗜好の確認等行っていく」と記入されている。この計画に基づき、入所者の状態に応じたサービスが提供されたと考えられる。
 ウ 「リハビリテーション実施計画書」について
   本件措置請求書に添えられている本件入所1に係る事実証明書としての甲第2号証のリハビリテーション実施計画書は、表題の右側に【短期】の表示があり、同意のサインはない。一方、若宮苑は、甲第2号証のリハビリテーション実施計画書は本件入所2で作成したものであると説明し、本件入所工で作成したとするリハビリテーション実施計画書を提示した。内容を確認すると、表題の右側に【入所】の表示があり、計画評価実施日は平成27年4月7日であり、同意のサインが4月7日付けで記人されていた。
 請求人が甲第2号証のリハビリテーション実施計画書を入手した経緯は、高崎市福祉部長寿社会課が若宮苑の実地調査で書類の提出を受け、その書類の一部の写しを請求人からの依頼に 応じ交付したものである。そうすると、請求人が甲第2号証のリハビリテーション実施計画書を本件入所1のものと考えたのは、その計画評価実施日の平成27年4月7日によるものと思われる。一方、若宮苑は、甲第2号証のリハビリテーション実施計画書の作成経緯について、本件入所1のデータに追加や変更等を行い作成した際に、日付の更新を失念したため平成27年4月7日のままとなっていると説明している。若宮苑の説明に不自然な点はなく、表題の右側の【入所】又は【短期】の表示の違いも若宮苑の説明に沿うものである。以上から、本件入所1で作成されたリハビリテーション実施計画書は、若宮苑の提示する【入所】の表示のあるものであり、本件入所2で作成されたリハビリテーション実施計画書は、甲第2号証のリハビリテーション実施計画書で【短期】の表示のあるものと判断する。
 本件入所1では、リハビリテーション実施計画書が作成され、4月7日の同意のサインが記入されている。リハビリテーション実施計画書の内容を確認すると、現在の評価及び目標の項目が14項目あり、訓練の内容や、実施上の注意点が記人されている。本人及び家族の希望欄には、「リハビリをして筋力をつけて在宅復帰させたい」「日中はトイレまで自分で行かせてやりたい」と記人されている。リハビリ計画の短期目標は、「施設内の生活動作を見守りで行うことができる。ベッドから離れて生活できる」と、長期目標は、「自宅内を独歩または伝い歩きで安全に移動することができる」と記入されている。リハビリテーションプログラム欄には、関節可動域訓練、全身筋力訓練、起居動作訓練、バランス訓練、歩行訓練、日常生活訓練及び余暇活動について、それぞれ取組方針が記入されている。栄養マネジメント計画と同様に、このリハビリ計画に基づき、入所者の状態に応じたサービスが提供されたと考えられる。
 エ 「本ケアプラン」について
  若宮苑の本ケアプランの作成時期は、各専門職が入所後の入所者の状態を確認し、適切なプランを作成するため、入所から1〜2週間後を目安に作成しており、本件入所1では入所から19日目にあたる4月25日にサービス担当者会議を開催し、本ケアプランを決定していた。本ケアプランの内容を確認すると、[安全にトイレで排泄を行いたい]という課題に対し、「本人希望時、または定時でトイレ誘導をおこなう。」「立位時、下衣操作を自己にて行う。厚着のため適宜介助行う。」などケア内容が記入されている。また、「自分で出来る事を増やしたい」

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という課題に対し、「1日をとおして歩行器を使用し過ごす。職員見守り。転倒には十分注意をする」「口腔ケア・整容は洗面所前の椅子に移り、自己にて行う」とケア内容が記入されている。当該本ケアプランについては、4月25日にサービス担当者会議で決定しており、続いて本人及び家族への説明と同意を得る段階となるが、4月28日に入所者が退所となったため、説明し同意を得ることがなかったと、若宮苑は説明している。なお、退所日について、本件措置請求書は4月29日と記載している。
   介護保険関係職員は、本件入所1の暫定ケアプランは、ケアプランの要件を満たしており、本ケアプランであると認識しているという見解であった。
 オ 判断
   本件入所1で若宮苑が本ケアプラン作成前に作成した書類は、暫定ケアプラン、栄養マネジメント計画書及びリハビリテーション実施計画書であり、この間、入所に先立って入所者及び家族の希望を把握し、入所前アセスメントを実施し、入所後は入所者の状態を把握し、入所者に適した栄養及びリハビリテーション計画を作成し、同意のサインが記入されていた。入所者及び家族の意向に沿ったサービスが提供されていたものと考えられる。
   本ケアプランは、各専門職が入所後の入所者の状態を確認し、適切なプランを作成するため1〜2週間かかる。そのため、入所前に暫定ケアプランを作成していると、若宮苑は説明する。若宮苑に限らずどの施設でも同様に、効果的かつ実現可能な質の高い本ケアプランを作成するためには時間がかかるものと思われる。
   請求人は、本ケアプランが入所から19日目に作成されたこと、作成したが数日後に退所したため入所者の書面による同意とその交付を欠いたことなどを違法としているが、これらのことが「偽りその他不正の行為」(介護保険法第22条第3項)といえるのか事実関係を総合し判断すると、本ケアプランの作成時期が遅れたことなど事務手続きに一部適正を欠く取り扱いが見られたものの、暫定ケアプラン等に基づき入所者に必要なサービスが提供されていたものと判断され、介護報酬の返還及び加算金の請求対象となる「偽りその他不正の行為」とまではいいきれず、請求に理由はない。
(2)本件入所2について
 ア 本件入所2までに作成された書類について本件入所1の退所から、21又は22日後の入所(5月20日)である。
   若宮苑によると、本件入所2は緊急の短期入所であり、入所者が5月20日に上大類病院を外来受診し、入所者家族の申し出により若宮苑へ緊急短期入所となったものである。暫定ケアプランは作成されていない。
   ここで、本件入所2までに作成された書類について確認すると、次のとおりである。
 ○初回入所(平成26年12月2日入所)で作成された書類
  ・暫定ケアプラン(同意のサインあり)
  ・栄養マネジメント計画書(同意のサインあり)
  ・リハビリテーション実施計画書(同意のサインあり)
  ・本ケアプラン(同意のサインあり)
 ○本件入所1で作成された書類
  ・暫定ケアプラン(同意のサインあり)
  ・栄養マネジメント計画書(同意のサインあり)

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  ・リハビリテーション実施計画書(同意のサインあり)
  ・本ケアプラン(同意のサインなし)
   以上、記載したものは入所者の同意を要する書類であり、その他に「療養記録」等が若宮苑に保管され、日々のサービスに活用されている。
 イ 本ケアプラン作成までの状況について
   緊急短期入所であり、暫定ケアプランは作成されていない。入所者の状態は3週間前の退所時から基本的に変わらなかったので、前のケアプランに基づきサービスを提供し、入所当日のサービス担当者会議で転倒防止のためのベッドの配置変更を決定したことが認められる。入所者の状態に変化があれば、ほぼ毎日開催しているサービス担当者会議で協議し、すぐに本ケアプランを作成できる体制になっていると若宮苑は説明している。
   リハビリテーション実施計画書については、(1)ウで判断したとおり、作成されているものの、同意のサインはない。
   サービス担当者会議で使用する資料である「専門職(チーム)アセスメント及び実施計画内容等の要点」を確認すると、各専門職が今回の入所後の入所者の状態を把握し、それに応じたプランを検討しているものが認められた。
 ウ 本ケアプランについて
   本ケアプランは、入所から15日目にあたる6月4日にサービス担当者会議で決定されたものの、その翌日である6月5日に入所者が退所となったため、説明し同意を得ることはなかったと若宮苑は説明している。
 エ 判断
   本件入所2は、緊急短期入所であり、入所前に作成する暫定ケアプランは作成されていない。
   入所当日のサービス担当者会議で、前回のケアプランに基づき、ベッドの配置変更を決定したことが認められる。若宮苑の説明する、入所者の状態に変化があれば、ほぼ毎日開催しているサービス担当者会議で協議し、すぐに対応することができるという体制は、可能なものと思われる。
   請求人は、本ケアプランが入所から15日目に作成されたこと、作成したが翌日に退所したため入所者の文書による同意とその交付を欠いたことなどを違法としているが、これらのことが「偽りその他不正の行為」(介護保険法第22条第3項)といえるのか事実関係を総合し判断すると、本ケアプランの作成時期が遅れたことなど事務手続きに一部適正を欠く取り扱いが見られたものの、前のケアプランやサービス担当者会議の結果に基づき、入所者に必要なサービスが提供されていたものと判断され、介護報酬の返還及び加算金の請求対象となる「偽りその他不正の行為」とまではいいきれず、請求に理由はない。
(3)本件入所3について
 ア 本ケアプラン作成までの状況について
   本件入所2の退所(6月5日)から、15日後の入所(6月20日)である。
   暫定ケアプランは作成されていない。入所者が繰り返し入所しており状態を把握していること、状態が以前と基本的に変わっていないことから、以前のケアプランによりサービスを提供していた。また、入所者の状態に変化があれば、ほぼ毎日開催しているサイビス担当者会議で協議し、すぐに内容を変更した本ケアプランを作成できる体制になっていた、と若宮苑は説明している。

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   リハビリテーション実施計画書が作成されたが、同意のサインはない。当該計画書の内容を確認すると、「今回は心不全による人院治療後であり、過剰な負荷に注意して行っていきます。」と、新たな記入がされていた。これは、今回の入所に至る経緯を把握した上で、注意点を追加したものと認められる。
   サービス担当者会議で使用する資料である「専門職(チーム)アセスメント及び実施計画内容等の要点」を確認すると、介護、リハビリ及び栄養等の分野において、今回の入所に至る経緯を把握した上での記入が認められた。
 イ 栄養マネジメント計画書の同意のサインについて
   栄養マネジメント計画書が作成され、7月1日の同意のサインが利用者確認欄に記人されている。一方、請求人は当該同意のサインについて偽造した署名であると主張しているので、この点について判断する。なお、本件入所4についても、請求人から同意のサインについて偽造した署名であると主張しているので、ここで、あわせて判断する。
   当該署名について、請求人は、「名前を間違えて書いている等、外見上、請求人本人の署名でないことは明らかである。筆跡鑑定の結果も当該署名の筆跡は、請求者の筆跡でないことが明らかとなっている」と主張する。
   一方、若宮苑は、同意のサインである署名を偽造することは、ありえないことであると主張する。高崎市長の調査依頼に対する報告書では、担当の栄養士がフロアの椅子で説明し、同意のサインをもらっていることを報告している。
   介護保険関係職員は、「同意のサインが偽造した署名であるかどうかは、判定する能力がないのでわからない。明らかに偽造とわかるケースではない」と主張する。
   監査委員が当該署名を確認したが、偽造した署名であるかどうかを判断することは困難であり、判断がつかなかった。なお、請求人は、「名前を間違えて書いている」と主張するが、名前の部分はいずれも略字的崩文字であり、名前を間違えて書いているかどうかについても判断がつかなかった。
 ウ 本ケアプランについて
  7月15日に開催されたサービス担当者会議で、本ケアプランが決定されたが、同意のサインはない。当該本ケアプランの作成時期については、施設入所者の状態に応じ、どの施設入所者をサービス担当者会議にかけるか日程を組んでいるため、状態の安定している入所者の作成が遅くなったと、若宮苑は説明する。
   同意のサインについては、本件入所1及び本件入所2とは事情が異なる。若宮苑は、同意のサインのない理由について、コンプライアンスが徹底されていないスタッフがいたこと、組織としてチェックする機能が不十分であったことを説明している。これは、同意のサインを得る事務を行う職員が、その事務に遅滞があった、又は失念した、あわせて組織のチェック機能が不十分であったとするものである。
 エ 判断
   本ケアプランは作成されたが、同意のサインがない。当該本ケアプランの作成は、各専門職が入所者へ日々のサービスを提供する中で、入所者に適したプランを検討し、資料を作成し、サービス担当者会議で本ケアプランを決定していることが認められる。入所者の文書による同意とその交付がないことについて、これまでの事実関係から判断すると、若宮苑が組織的に、又は意図的に、同意を得ず交付しなかったということはできず、事務の遅滞又は失念、あわせ

<P15>
て組織のチェック機能の不十分さによるものということができる。
   請求人は、本ケアプランが入所から25日目に作成されたこと、作成したが事務の遅滞又は失念等により入所者の文書による同意とその交付を欠いたことなどを違法としているが、これらのことが「偽りその他不正の行為」(介護保険法第22条第3項)といえるのか事実関係を総合し判断すると、本ケアプランの作成時期が遅れたことなど事務手続きに一部適正を欠く取り扱いが見られたものの、入所者が繰り返し入所しており状態を把握していることなどに基づき、入所者に必要なサービスが提供されていたものと判断され、介護報酬の返還及び加算金の請求対象となる「偽りその他不正の行為」とまではいいきれず、請求に理由はない。
(4)本件入所4について
 ア 本ケアプラン以外の計画書等の状況について
   本件入所3の退所(8月12日)から、37日後の入所(9月18日)である。
   暫定ケアプランは作成されていない。入所者が繰り返し入所しており状態を把握していること、状態が以前と基本的に変わっていないことから、以前のケアプランによりサービスを提供していた。入所者の状態に変化があれば、ほぼ毎日開催しているサービス担当者会議で協議し、すぐに内容を変更した本ケアプランを作成できる体制になっていたと、若宮苑は説明する。これは、本件入所3と同様である。
   栄養マネジメント計画書が作成され、9月22日の同意のサインが利用者確認欄に記入されている。なお、請求人は当該同意のサインについて偽造であると主張しているが、これについては、(3)イで判断したとおりである。
   リハビリテーション実施計画書が作成されたが、同意のサインはない。
   サービス担当者会議で使用する資料である「専門職(チーム)アセスメント及び実施計画内容等の要点」を確認すると、各専門職において、今回の入所後の入所者の状態を把握し、それに応じたプランを検討しているものが認められた。各専門職が、サービス担当者会議に向けて資料の作成を行っていたと考えられる。
 イ 本ケアプランについて
   本ケアプランは作成されていない。その理由について、コンプライアンスが徹底されていないスタッフがいたこと、組織としてチェックする機能が不十分であったと、若宮苑は説明している。本ケアプランは各専門職の協同作業により作成するものであるが、最終的な取りまとめを行う職員において、その事務に遅滞があった、又は失念した、あわせて組織のチェック機能が不十分であったとするものである。
 ウ 判断
   本ケアプランは作成されず、以前のケアプランによりサービスが提供された。当然、本ケアプランの入所者の文書による同意とその交付も欠いている。その一方、各専門職においては、今回入所後の入所者の状態を把握し、それに応じたプランを検討しているものが認められた。
   各専門職において、本ケアプラン作成のための事務が進められていたと考えられる。
   本ケアプランが作成に至らなかったのは、取りまとめ役の職員の事務の遅滞又は失念、あわせて組織のチェック機能の不十分さと若宮苑は説明している。このことについて、これまでの事実関係から判断すると、若宮苑が組織的に、又は意図的に、本ケアプランを作成しなかったということはできず、事務の遅滞又は失念、あわせて組織のチェック機能の不十分さによるものということができる。したがって、介護報酬の架空請求や人員基準の偽装などの不正事件と

<P16>
は異質なものであり、その内容や態様は大きく異なるということができる。
   請求人は、本ケアプランが作成されなかったこと、したがって、入所者の文書による同意とその交付を欠いていることなどを違法としているが、これらのことが「偽りその他不正の行為」(介護保険法第22条第3項)といえるのか事実関係を総合し判断すると、本ケアプランが作成されないなど事務手続きに適正を欠く取り扱いが見られたものの、入所者が繰り返し入所しており状態を把握していることなどに基づき、入所者に必要なサービスが提供されていたものと判断され、介護報酬の返還及び加算金の請求対象となる「偽りその他不正の行為」とまではいいきれず、請求に理由はない。
(5)初回入所から本件入所4までを通して
   代理人は、陳述の際の質疑の中で、初回の入所については、ケアプランの作成、説明、同意及び交付が遅いこと、本件入所1から本件入所4については、ケアプランが存在せず又は入所者の文書による同意とその交付を欠くことが4回繰り返されたことなどをもって、繰り返しで悪質性が高い、故意と同一視できるのではないかと主張する。しかしながら、(1)から(4)で判断したとおりであり、繰り返しであることなどをもって「偽りその他不正の行為」(介護保険法第22条第3項)といえるのか事実関係を総合し判断すると、事務手続きに適正を欠く取り扱いが見られたものの、入所者が繰り返し入所しており状態を把握していることなどに基づき、入所者に必要なサービスが提供されていたものと判断され、介護報酬の返還及び加算金の請求対象となる「偽りその他不正の行為」とまではいいきれず、請求に理由はない。
(6)その他
   陳述において請求人から、若宮苑の指定取消、ケアマネージャーの登録消除、栄養士免許の剥奪、私文書偽造の被害届の提出を、高崎市長に勧告するよう求める発言があったが、いずれも住民監査請求の対象外であることを念のため記す。

3 結論
 以上のことから、請求に理由がないので棄却とする。

4 意見
 監査対象部局においては、本件入所1から本件入所4について、平成27年12月1日及び12月21日に若宮苑にて実地調査を実施し文書指摘を行っているが、市民が安心して介護保険制度を利用するためには介護事業者の指導・育成はきわめて重要であり、今後とも介護保険制度の適正な運用に向け介護事業者の指導・育成を望むものである。
**********

■こうして、高崎市監査委員は、当会会員の重要な事実証拠の提出や陳述にもかかわらず、「不適切な取り扱いがあったものの・・・までは言えない」とするいつもの曖昧表現をつかって、役所の不作為的犯罪行為を看過する姿勢を見せ、事件の根幹に踏み込むことなく、当会会員の請求を棄却してしまったのでした。

 この高崎市監査委員の論理で行くと、偽造文書をもとに、高崎市職員が公金の支出に必要な公文書を作成し、それをもとに公金を支出した行為は、重大な犯罪にあたる可能性があるにもかかわらず、問題ないということになります。

 公務員の皆さんには、目の前で不正行為があったことを目撃したら、それを告発する義務がありますが、どういうわけか、守秘義務ばかり念頭において、自らの不作為を棚に上げる傾向が強いようです。

 こうして、役所の監査委員のシステムが、公務員の公務員による公務員のための制度になり下がったことから、当会会員は次の段階にコマを進めることを決意したのでした。

【市民オンブズマン群馬事務局からの報告・この項続く】
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